カートの中身空

税務ニュース2013年07月29日 相続した土地への二重課税問題で判決(2013年7月29日号・№509) 東京地裁、相続土地の含み益への譲渡所得課税は二重課税に該当せず

相続した土地への二重課税問題で判決
東京地裁、相続土地の含み益への譲渡所得課税は二重課税に該当せず

相続時までの土地の値上がり益に、相続税と所得税が課税されることが二重課税に該当するか否か。東京地裁(川神裕裁判長)は二重課税に該当しないとして、納税者の主張を棄却する判断を示す。
納税者は控訴、現在東京高裁で審理中。
 いわゆる長崎年金事件において、最高裁が、年金の方法により支払を受ける保険金を巡り、年金受給権に相続税が課税され、さらに毎回受け取る年金に所得税が課税されることが二重課税に該当するとの判断を示したことは記憶に新しい(最高裁第三小法廷平成22年7月6日判決)。
 この最高裁判決を受けて、相続時までの土地の値上がり益について、土地の相続時に相続税が課税され、さらに相続人がその土地を譲渡した際に所得税が課税されることも、二重課税に該当するのではないかとの指摘が多くの実務家からなされていたが、この問題に対して、裁判所の判断が示されたことが本誌取材により明らかとなった(東京地裁平成25年6月20日判決)。
 東京地裁民事第2部の川神裕裁判長は、相続人が被相続人から相続により取得した資産を譲渡した場合、相続税の課税対象となる資産の相続開始時における価額に相当する経済的価値の中には、被相続人の保有期間中に発生し蓄積された資産の増加益が未実現のまま含まれているということができると指摘。
 しかし、相続税の課税対象が、相続人が相続により取得した財産の経済価値であるのに対して、譲渡所得課税の対象となる被相続人の保有期間中の増加益は、資産の値上がり益として発生し蓄積された資産の増加益(被相続人がその資産を譲渡していれば被相続人に帰属すべき利益)が相続人によるその資産の譲渡により実現したものであるため、その資産の譲渡により相続人に帰属する所得に所得税を課したとしても、実質的に同一の経済的価値に対する相続税と所得税との二重課税が行われることとなるとまではいうことはできないと判断して、納税者の主張を棄却する判決を言い渡している。
 なお、本判決を不服とする納税者は控訴したため、本事案は現在、東京高裁で審理中だ。また、同様の問題を審理している別の訴訟事案が、現在、東京地裁民事第38部に係属している(本誌477号10頁参照)。
 この相続した土地への二重課税を巡る問題は、実務に大きな影響を及ぼす可能性があるだけに、これらの事案の行方に注目が集まる。

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