会社法ニュース2013年10月14日 弁護士報酬の請求権に短期消滅時効の壁(2013年10月14日号・№519) 本件委任契約の中途解約時に返済期の合意なし、時効は解約時から進行

弁護士報酬の請求権に短期消滅時効の壁
本件委任契約の中途解約時に返済期の合意なし、時効は解約時から進行

依頼者に対する弁護士報酬請求事件、2年の短期消滅時効の成立により弁護士の請求を棄却(東京地裁平成25年7月18日判決)。
本件委任契約の中途解約時に弁護士報酬の返済期などに関する明示や合意なし。中途解約時までの報酬請求権の時効は解約時から進行。
 民法は、債権の消滅時効の原則的な時効期間を10年としつつ(民法167①)、その例外として短期消滅時効の制度を設けている。
 たとえば、民法172条では、弁護士の職務に関する債権の消滅時効は、「2年」である旨が規定されている。また、同条では、消滅時効の起算点は、「事件終了時」と規定されている。ただ、弁護士の職務に関する債権について、返済期の合意があった場合は、時効の起算点はその返済期とされている(明治40年3月16日大審院判決)。
 今回の事案は、この「返済期の合意」がなかったことが、弁護士報酬請求の棄却につながったと指摘することができるものだ。
 具体的にみると、被告(依頼者)は、原告(弁護士)に対して遺留分減殺請求の手続きを委任していたが、依頼者の希望により弁護士の同意のもと委任契約が解約された。
 委任契約が途中で解約された場合、中途解約時までの報酬を請求することができるため(民法648③参照)、本事案の弁護士は、依頼者に対して中途解約時までの報酬を請求する訴訟を提起していた。
 しかし、弁護士は、委任契約の中途解約の際に、その中途解約時までの報酬の返済期などに関する明示や合意をしていなかった。そのため、本件弁護士報酬については、「事件終了時」である契約解約時点から時効が進行することとなったため、2年の短期消滅時効の成立により、弁護士報酬請求が棄却される格好となった(参照)。

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