税務ニュース2013年12月09日 新株予約権買戻しによる節税封じ込めへ(2013年12月9日号・№526) 26年度改正、非適格ストック・オプションの買戻し対価は「給与所得」

新株予約権買戻しによる節税封じ込めへ
26年度改正、非適格ストック・オプションの買戻し対価は「給与所得」

非適格ストック・オプションを発行会社に譲渡した場合の所得区分が、現行の譲渡所得から給与所得に改正へ。
付与されたストック・オプションを行使せずに会社に売却することで申告分離課税の適用を受ける高額所得者の節税策を封じ込め。
 ストック・オプションを付与された後に株価が上昇した場合、通常は権利行使して株式を取得し、これを株式市場で売却することになる。これに対し、ストック・オプションを行使せずに発行会社に売却することにより所得税額を圧縮する節税策が、高額所得者の間で活用されてきた。
 なぜこれが節税になるのか説明しよう。
 租税特別措置法上、株式等の譲渡所得には申告分離課税(税率は15%)が適用されるが(措法37条の10①)、ここでいう「株式等」には新株予約権が含まれる(同②一)。したがって、ストック・オプションの権利を行使せずにこれを発行会社に譲渡した場合には、ストック・オプションが無償で付与されていれば譲渡対価全額が譲渡所得課税の対象となり、申告分離課税による税率15%が適用される(通常、会社は「時価-権利行使価額」を譲渡対価として支払う)。
 ストック・オプションを発行会社に売却して対価を得る行為は、会社から金銭で報酬をもらう行為と実質的には何ら変わらない経済的効果があるが、報酬という形をとると給与所得課税の対象となり累進税率が適用されることになるのに対し、ストック・オプションの売却という形をとると申告分離課税が適用され一律15%の税率で済む。この累進税率と15%の差分が節税となるわけだ。
 こうしたなか平成26年度税制改正では、税制非適格ストック・オプションを発行会社に譲渡した場合の所得区分を、現行の譲渡所得から「給与所得」に変更する改正が実施される方向となったので要注意だ。この改正は「納税環境の整備」として、自民党税制調査会にも提案されており、実現は確実となっている。税調の資料には上述した節税策についての言及はないが、これを念頭に置いた改正であることは間違いないだろう。
 なお、この改正は税制非適格ストック・オプションのみを対象としているおり、税制適格オプションは対象外となっている。これは、税制適格ストック・オプションでは、そもそも「ストック・オプション(新株予約権)の譲渡が禁止されていること」が適格要件になっているからだと思われる(措法29条の2①四)。

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