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税務ニュース2003年09月19日 東京高裁、萬有製薬事件で逆転判決!国側敗訴!(2003年9月22日号・№036) 「支出の目的」、「行為の形態」から「交際費等」に該当せず

東京高裁、萬有製薬事件で逆転判決!国側敗訴!
「支出の目的」、「行為の形態」から「交際費等」に該当せず


東京高等裁判所第19民事部(浅生重機裁判長)は、9月9日、大学病院の医師等の英文添削に係る差額負担分を交際費等に該当するとした更正処分について争われた控訴審で、差額負担分は、「交際費等」に該当しないものと判示して、原判決を取消し、更正処分(追徴課税)の一部を取消した(平成14年(行コ)第242号)。

事案の概要
 控訴人(萬有製薬株式会社)は、その医薬品を販売している大学病院の医師等から、英文添削の依頼を受け(①)、これをアメリカの添削業者に外注(②)していた。

 控訴人は、医師等から徴収した英文添削の料金(①)の3倍以上の料金(②)を支払い、その差額(②-①)(平成6年3月期1億4513万円余・平成7年3月期1億1169万円余・平成8年3月期1億7506万円余)を負担していた。国は、英文添削の依頼をした医師等が控訴人の「事業に関係ある者」に該当し、本件負担額の支出の目的が医師等に対する接待等のためであって、本件負担額は交際費に該当するとして、控訴人の法人税について更正処分を行った。
 本件は、控訴人が、本件負担額は交際費ではなく損金の額に算入が認められる寄附金であると主張して、上記更正処分の取消しを求めた事案である。
 原判決(東京地裁平成11年(行ウ)第20号)は、控訴人の請求を棄却し、これに対し、控訴人が不服を申し立てたものである。

控訴審での争点
 控訴人は、控訴審で、①支出の相手方が「事業に関係ある者」に該当するか、②支出の目的が、措置法61条の4③に規定する「交際費等」の意義(接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの)に該当するかについて、本件英文添削を開始した経緯などを明らかにしながら、追加主張を行った。

控訴審の判断
 東京高裁は、「交際費等」に該当するかの判断基準を①「支出の相手方」(事業に関係ある者)、②「支出の行為」(事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図る。)、③「行為の形態」(接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為)、であるとし、控訴人の主張に即して検討を加え、本件負担は、②③の要件に該当しないとして、「交際費等」への該当を否定した。

控訴審の認定
 東京高裁の認定は次のようなものだ。
 ①英文添削の経緯及び動機は、主として、若手研究者らへの研究発表の便宜・支援と認められ、研究者・医療機関との取引関係を円滑にするという意図・目的があったとしても、主たる動機とは、認めがたい。②負担差額は相当に高額であるが、1件当たりの負担額は決して大きなものではない。控訴人の申告所得額の1%未満であり、特定の意図に基づくものと推認できるものではない。③英文添削が効を奏し、研究者らが直接の利益を得られる場合は必ずしも多くはない。④英文添削は、それ自体が直接相手方の歓心を買うような行為ではなく、むしろ、学術研究に対する支援・学術奨励という意味合いが強い。これを、「その他これらに類する行為」として解釈するには無理がある。⑤研究者らにおいて、差額相当の利益があることについて明確な認識がない場合に、その行為態様を金銭の贈答と同視することができない。
「交際費等」に係る第1審・控訴審の判示事項
第1審(東京地裁)の判断
控訴審(東京高裁)の判断
「交際費等」に該当するかの判断基準 「交際費等」に該当するには、
①「事業に関係ある者」のための支出であること、
②支出の目的が接待等を意図するものであるかが検討されるべきであり、支出の目的が接待等のためであるか否かについては、当該支出の具体的事情を総合的に判断すべきであって、当該支出の目的は、外部から認識し得る客観的事情も総合して認定すべきである。
 「交際費等」に該当するためには、次の3つの要件を充足させなければならない。
①「支出の相手方」が事業に関係ある者であり、
②「支出の目的」が事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図ることであるとともに、
③「行為の形態」が接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であること。
事業に関係ある者 英文添削を依頼した研究者が「事業に関係ある者」に該当しないとはいえない。 全体としてみて、その依頼者である研究者らが、「事業に関係のある者」に該当する可能性は否定できない。
支出の目的 本件差額負担額は、医薬品の販売に係る取引関係を円滑に進行する目的で支出したものというべきであり、その支出は、接待等を目的として行われたものであるというべきである。 本件差額負担額は、その支出の動機・金額・態様・効果等からして、事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図るという接待等の目的でなされたと認めることは困難である。
相手方の認識・行為の形態 接待等の相手方が当該支出によって利益を受けることが必要であるとはいえず、相手方において、当該支出によって利益を受けていると認識できるような客観的状況の下に行われることが必要ではない。 相手方(医師等)の歓心を買うような行為というよりも学術奨励という意味合いが強い。その具体的態様等からしても金銭の贈答等と同視できるような性質のものではなく、ある程度幅を広げて解釈したとしても、本件英文添削の差額負担がそれに当たるとすることは困難である。

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