税務ニュース2020年10月30日 自社株対価MA、措置法で実現の可能性(2020年11月2日号・№856) 譲渡の強制性や株・現金のミックスの点で組織再編税制とは整合せず
令和2年度税制改正での導入が見送られ、同年度大綱に「組織再編税制等も含めた理論的な整理を行った上で」再検討する旨が記載された自社株対価M&Aに係る課税繰延べは、再び経済産業省の令和3年度税制改正要望に盛り込まれ、産業界の期待を集めている。しかし、大綱にいう「組織再編税制との理論的な整理」を行えば、両者は必ずしも整合しない恐れがある。
まず、株式の譲渡の「強制性」だ。例えば合併や株式交換では、被合併法人の株主や株式交換完全子法人の株主はその意思にかかわらず「強制的」に株式を譲渡し、その代わりに合併法人や株式交換完全親法人の株式を得ることになるが、自社株対価M&Aの場合、買収者のオファーを断わり、ターゲット会社の株式を保有し続けることもできる。
また、現行の産業競争力強化法に基づく自社株対価M&Aでは、対価は「自社株のみ」とされているのに対し(強化法2条⑫)、改正会社法上の株式交付の対価はこれとは異なり、株式交付親会社は、株式交付に際し、株式交付親会社の株式と併せて金銭等を対価として交付することができる(会社法774条の3①五)。合併などの組織再編税制では基本的に現金を対価に混入させると適格要件を満たさないこととなる(合併法人が被合併法人の株式の2/3以上を有する場合を除く)のは周知の通りである。
このように、自社株対価M&Aを組織再編税制と整合的なものとして措置するのは困難との見方がある。したがって、仮に令和3年度税制改正で自社株対価M&Aに係る課税繰延べが実現するとすれば、法人税法本法(組織再編税制)ではなく、租税特別措置法で手当てされることになろう。
そもそも企業にとっては、課税繰延べが法人税法本法か租税特別措置法のいずれで手当てされるかは核心部ではなく、むしろ、産業競争力強化法に基づく「特別事業再編計画」が廃止できるか(使い勝手が改善されるか)、措置が恒久化できるかに関心がある。与党税調幹部も議論の進展を指示する中、令和3年度税制改正議論においては、これらの点が焦点となる可能性があろう。
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