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解説記事2019年10月28日 ニュース特集 通達と異なる課税処分を司法も容認(2019年10月28日号・№809)

ニュース特集
課税当局、通達を逆手に取った租税回避には当該通達の“不適用”で対抗
通達と異なる課税処分を司法も容認


 通達に沿った税務処理を否認する課税処分を不服として提起した訴訟で、納税者の主張が相次いで斥けられている。これに対し実務家からは、「法的安定性」と「予測可能性」の確保という観点から、通達に反する課税処分を安易に容認することを問題視する声が上がっている。
 本特集では、①相続財産である不動産の評価について、財産評価基本通達総則6項(この通達の定めにより難い場合の評価)の適用があった事案(東京地裁令和元年8月27日判決、平成29年(行ウ)第539号)、②消費税法基本通達9-1-13(固定資産の譲渡の時期)のただし書き(契約基準)の適用が認められなかった事案(東京地裁平成31年3月15日判決、平成29年(行ウ)第144号)を取り上げ、実務への影響を検証する。

財産評価基本通達総則6項適用事案

通達評価を否認し、鑑定評価で更正処分
 次頁ののとおり、本事案では、課税当局は納税者が財産評価基本通達により算出した不動産の評価額が不適当であるとして財産評価基本通達総則6項(この通達の定めにより難い場合の評価)を適用し、「鑑定評価」に基づき更正処分を行った。財産評価基本通達による評価額と更正処分による評価額(鑑定評価額)との間には4倍弱(9億3,900万円余)もの乖離が生じていた。
 総則6項も財産評価基本通達の一部を構成していることから、総則6項が適用された課税処分であっても、一概に「通達に反した課税処分」とはいえない。一方で、相続税実務が財産評価基本通達に依拠しているという実態がある中、納税者(実務家)からすれば、「なぜ課税庁が自ら明らかにしている取扱いである財産評価基本通達に基づく評価が認められないのか」という素朴な疑問が生じる。そうなった事情がベールに包まれたままであれば、法的安定性と予測可能性を確保することは不可能だろう。

【表】総則6項が適用され、鑑定評価での更正処分が行われた事案の概要

① 被相続人(94才で死亡)の孫が被相続人の養子となり、共同相続人の1人となっている。
② 対象不動産の購入は、被相続人の相続開始の3年程度(2年半~3年半)前の時期に行われたものである。
③ 対象不動産の購入資金は金融機関等からの借入であり、金融機関では、相続対策のための不動産(収益物件)購入との借入れ理由の記録(貸出稟議書への記載)を残している。
④ 対象不動産の通達評価額と更正処分での評価額(鑑定評価額)との間には4倍弱(9億3,900万円余)の乖離が生じている。
⑤ 対象不動産の通達評価額は、被相続人の当該物件の購入価額とも大きな乖離が生じている。
⑥ 対象不動産のうちの1件は、相続開始後9月程度経過後に売却しているが、その売却価額は更正処分での評価額(鑑定評価額)に近いものであった。

 相続対策のための不動産購入自体は一般的に行われているだけに、不動産関係者や金融関係者、また相続税申告業務に携わる税理士等の実務家も、総則6項が適用されるに至った事情を理解しておく必要がある。
 判決では、通達評価額と鑑定評価額の乖離に着目し、相続税評価額とは結局「相続税法の規定する時価(客観的な交換価値)」であるという“原点”に帰着している。実務家からすると、定量的な判断基準の明示を求めたくもなるところだが、判決では、相続税の軽減を過度に追求した結果として「実質的な公平を著しく害する」との指摘がされるにとどまっている。
時価との乖離や高齢になってからの物件取得や借入には要注意
 判決はまた、「経緯」「動機」にも着目する。一連の不動産の取得に対して、「相続人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、それを期待して、あえてそれらを企画して実行したと認められ」るとの事実関係の下では、「評価通達の定める評価方法以外の評価方法によって評価することが許されるというべき」との判断を示している。
 本判決を踏まえ実務家が留意しなければならないのは、「相続税の軽減」という目的のために通達評価額と時価との乖離が生じている物件を探すような行為は、今後も評価通達の適用否認(=総則6項の適用)が考えられるということだ。また、判決でも指摘されているように、被相続人が高齢になってからの物件の取得や、病気になってからの借入れといった行為も、通達上の評価額と時価との乖離率(乖離額)と相まって相続税対策と判断される要因となりかねない点、注意したい。

消費税法基本通達9-1-13ただし書き(契約基準)の適用が否認された事案

同様の考え方に基づく否認の先例になる恐れ
 所得税基本通達、法人税基本通達、消費税法基本通達はそれぞれ、固定資産の譲渡の収入すべき時期(譲渡の時期)を「その引渡しがあった日」としつつ、「ただし書」として、納税者の選択により、その固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときはこれを認める旨定めている。
 本事案は「金売買を利用した消費税還付スキーム」と称されるものの一類型であるが、課税当局は、納税者が消費税法基本通達9-1-13ただし書で認めることとされているいわゆる「契約基準」に基づき「課税仕入れを行った日」を不動産売買契約の締結日(4月25日)とすることを否認したうえで、本事案における「課税仕入れを行った日」とは、不動産の売買代金の支払が行われた5月30日である旨主張、これが裁判所に認められた。
 通達を法源としない裁判所の判断はともかく、本事案で課税庁がどのような考え方で通達を適用しないとする課税処分を行ったのかは、今後も同様の考え方に基づく課税処分の先例にもなりかねないので注意したい。
 ここで確認しておきたいのが、法人税基本通達の発遣時に公表された「法人税基本通達の制定について」と題された文書である。同文書は、通達が個々の事案に妥当するよう弾力的に運用されることを期する旨を明記しつつ、「いやしくも、通達の規定中の部分的字句について形式的解釈に固執し、全体の趣旨から逸脱した運用を行ったり、通達中に例示がないとか通達に規定されていないとかの理由だけで法令の規定の趣旨や社会通念等に即しない解釈におちいったりすることのないように留意されたい。」と結んでいる。この考え方は、他の通達の具体的運用に当たっても適用すべきものであろう。上記文書は、通達が国税庁長官から国税職員への職務命令であることから、個々の事案に通達を杓子定規に当てはめないようにという、納税者に対する融和的な取扱いを求めたものとも解されるが、一方で、通達の取扱いを奇貨とした租税回避(還付)事案に対しては通達を杓子定規に当てはめず、毅然とした対応(課税処分)をとるよう、国税職員の背中を押すものとも解釈できよう。
通達の取り扱い自体を司法の判断に
 国は裁判で「法人税基本通達2-1-14ただし書は、引渡しに係る事実関係が外形上明らかではなく、引渡しの日の時期を認識することが困難な場合を前提とするものであり、資産の引渡しが明らかな場合には、適用されないものというべきである。」と、契約基準が限定的にしか利用できないことを、法人税上の取扱いも念頭に主張する。しかしながら、この主張は裁判所が通達を法源としていないがゆえに、「引渡基準」が原則であることを鮮明にするための強弁にも見える。契約基準が限定的にしか認められないのであれば、そうと分かるように通達を書き換えることが必要であろう。
 裁判の前審である裁決要旨には、「租税負担の公平を著しく害する特段の事情がある場合に当たるというべきであるから、本件において、本件通達のただし書(契約基準)の適用は認められない。」とあるが、裁判における国の主張の根底には、消費税還付スキームという“特段の事情”がある事案では、通達の適用を否認することのリスク(画一的な取り扱いにより課税の公平を求める立場からの批判)よりも、仕入税額控除の趣旨及び社会通念から裁判所の理解は得られるとの判断があったものと思われる。
 本事案を踏まえると、実務家には、節税事案や消費税還付事案においては、法の趣旨や社会通念の考慮が一層求められよう。「制定について」にもあったように、通達の形式・文言に盲従し、自己に有利な解釈に基づきタックスプランニングを組成したとしても、課税当局は、“特段の事情”が認められる場合には、通達とは異なる課税処分を行ったうえで、通達の明文の取り扱い自体も司法の判断に委ねるという手段に打って出る可能性があることを理解しておくべきだろう。

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