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コラム2019年11月18日 SCOPE 東京地裁、最高裁判決の射程範囲を広く解釈(2019年11月18日号・№811)

通常馬券の所得を一時所得とした国の主張排斥
東京地裁、最高裁判決の射程範囲を広く解釈


 東京地裁民事3部(古田孝夫裁判長)は10月30日、競馬の払戻金に係る所得(「競馬所得」)の所得区分、すなわち、競馬所得が「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」(所得税法34条1項)に当たるか否かが争われた事案について、通常馬券の購入に係る競馬所得は雑所得、WIN5の購入に係る競馬所得は一時所得とする判決を言い渡した。

無申告⇒一時所得申告⇒雑所得での更正の請求

 原告は、通常馬券を自動的に購入する競馬予想ソフトウェア「A」を使用して通常馬券を購入するようになり、対象年の中央競馬のレースについても、「A」を使用して通常馬券を購入していた。また、WIN5に係る馬券については、競馬のデータベースソフトウェア「B」を使用した上で、別途、購入していた。
 当初無申告だった原告は、本件競馬所得(通常馬券及びWIN5)を一時所得として確定申告書を提出した。その後原告は、本件競馬所得は雑所得に該当するとし更正の請求を行ったが、所轄税務署長は原告に対し、いずれの請求についても更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。原告は、更正をすべき理由がない旨の通知処分の取消しを求めて提訴した。

課税庁、「最高裁判例よりも規模が小さい事案」と主張

 本件の争点は競馬所得の所得区分であり、本件競馬所得が「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」(所得税法34条1項)に当たるか否かが争われた。争点に関する当事者の主張は以下の通りである。
① 国(被告)の主張
 本件競馬所得は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」ではなく、一時所得に該当する。
 最高裁平成27年判決及び最高裁平成29年判決によれば、ある所得が「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」に当たるか否かは、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断される。
 原告は、1日当たり数十万円から数百万円、1年当たり数千万円の馬券を購入していたにすぎず、このような馬券購入の規模は、最高裁平成27年判決及び最高裁平成29年判決の事案における馬券購入の規模と比較して小さい。
 これらの点から、原告が馬券を網羅的に購入していたとは言い難いし、ほぼ全てのレースで馬券を購入することを目標として馬券の購入を続けていたともいえない。したがって、原告の通常馬券の購入について、一体の経済的活動と評価することはできず、継続的行為に当たるとはいえない。
② 原告の主張
 本件競馬所得は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」であり、雑所得に該当する。原告による馬券の購入は、独自のノウハウに基づいて、個々の馬券の的中に着目せず、長期間かつ多数回にわたり行われたものである。原告による馬券の購入は、多額の利益を恒常的に得るものであり、客観的にみて利益が上がると期待し得る行為といえる。原告による一連の馬券の購入は、一体の経済的活動といえ、本件競馬所得は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」として、雑所得に該当する。

東京地裁、馬券購入金額を考慮し「継続的行為から生じた所得」と判示

 東京地裁は、次のとおり判示した。
① 通常馬券は雑所得
 原告の通常馬券の購入額は、1日当たり数十万円から数百万円、年間数千万円の通常馬券を購入し続けていた。このような原告の馬券購入の期間、回数、頻度その他の態様に照らせば、原告の上記一連の行為は、継続的行為といえるものである。加えて、通常馬券に係る開催レース中の購入レースの割合は、平成24年が70.9%、平成25年が67.6%、平成26年が76.5%と相当程度の頻度であり、少なくとも平成26年までの5年間にわたり、同様の方法で通常馬券を購入し続けていたこと等の事情が認められる本件においては、原告が馬券を購入した金額は、継続的行為に当たるという上記の評価を支えるのに十分な金額であるといえる。
 馬券の購入行為の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等によれば、原告は回収率が総体として100%を超えることが期待し得る独自のノウハウに基づき馬券を選別して購入を続けていたということができ、そのような原告の上記の一連の行為は、客観的にみて営利を目的とするものであったといえる。
 以上によれば、本件競馬所得のうち通常馬券の的中による払戻金に係るものは、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」として、雑所得に該当すると認められる。
② WIN5は一時所得
 原告によるWIN5に係る馬券の購入は、具体的な購入の態様が明らかでなく、一体の経済的行為と見ることができない本件においては、継続的行為であるとも、客観的にみて営利を目的とするものであるとも評価することができない。したがって、本件競馬所得のうちWIN5に係る馬券の的中による払戻金に係るものは、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」とはいえず、一時所得に該当するものと認められる。
③ 外れ馬券の購入代金は必要経費
 本件の通常馬券の的中による払戻金に係る雑所得においては、回収率が総体として100%を超えるように長期間にわたって多数の馬券を頻繁かつ継続的に購入しており、そのような一連の馬券の購入により利益を得るためには、外れ馬券の購入は不可避であったといわざるを得ないから、外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金が、雑所得の収入金額である当たり馬券の払戻金を得るため直接に要した費用として、上記必要経費に当たると認めるのが相当である。

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