税務ニュース2021年06月18日 相続人への求償債権の消滅巡り控訴棄却(2021年6月21日号・№887) 東京高裁、「黙示の債務免除」もなかったものと認定
本件は、被相続人Mの相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税について、所轄税務署長が、Mの相続人(控訴人)Aに対する求償債権(以下「本件求償債権」という。)を本件相続により取得した財産として課税価格に計上した上で、課税処分をしたことについて、控訴人らが、本件相続の開始前に、MがAに対して本件求償債権につき債務を免除する黙示の意思表示(民法519条)をしたことにより、本件求償債権は消滅したと主張し、上記処分の取消しを求めていた事案である。
東京地裁は令和2年9月25日、A及び控訴人Cが通則法77条1項の申立期間を徒過したことについて正当な理由はないとして、A及びCの訴えをいずれも却下し、Mが本件相続の開始前にAに対し、本件求償債権につき債務を免除する意思表示をしたとは認められないとして、控訴人Bの請求を棄却した。
控訴人らは、①全体を総合してみると、債権放棄・債務免除していたからこそあり得る事実関係である、②一般的な常識・社会通念に照らして、Mが本件求償債権を放棄し又は同債権に係る債務を免除していたことは明らか、と補足主張した。控訴人らの補足主張に対し国は、「控訴人らの主張は、相続税や贈与税を回避するための身勝手な言い訳にすぎない。」と反論。東京高裁は、原判決どおり、A及びCの訴えは不適法であり、Bの請求は理由がないと判断し、本件控訴を棄却する判決を言い渡した。
補足主張に対する東京高裁の判断として、「本件和解条項中に、Mが本件求償債権を放棄し又は同債権に係る債務を免除した場合の帰すうについて、明示的な条項を置かなかったのはなぜか」などの疑問を提起し、「本件和解条項中にMが本件求償債権を放棄し又は同債権に係る債務を免除した場合の帰すうについて明示的な条項を置いていないが、その理由としては、上記免除の有無についてあいまいなままにしておきたかったこと、又は、これを明記すると債務免除益に対する贈与税の可能性が高まるため、これを避けようとしたことが考えられる。」などと判示した。さらに、「これらの事情を総合すれば、本件において、M及び控訴人Aは、あえて債務免除に係る手続きをしなかったものであり、本件求償債権につき債務を免除する黙示の債務免除もなかったものと認定するのが相当である。」として、控訴人らの補足主張を斥けた。
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