解説記事2022年12月19日 SCOPE 令和6年1月から恒久化した新NISA制度に一本化(2022年12月19日号・№959)

生涯非課税限度額は合計1,800万円に
令和6年1月から恒久化した新NISA制度に一本化


 令和5年度税制改正では、NISA制度の抜本的拡充・恒久化が図られることになった。3つある現行のNISA制度を一本化するもので、つみたてNISAを基本としつつ、一般NISAの機能を引き継ぐ「成長投資枠」を導入。非課税保有期間を無期限化する。現行制度ではつみたてNISAと一般NISAは選択適用であったが、成長投資枠との併用を可能とし、両者を合わせると生涯非課税限度額は1,800万円にのぼる。

株式等を売却した場合には売却分の非課税投資枠が復活

 「経済財政運営と改革の基本方針2022」(いわゆる骨太の方針)の通り、令和5年度税制改正では、NISAの抜本的拡充・恒久化が実現することになった。
 2014年1月からスタートしたNISA制度だが、現在は、「つみたてNISA」「一般NISA」「ジュニアNISA」の3つの制度がある。令和2年度税制改正では、一般NISAについては積立投資を行っている場合には別枠の非課税投資を可能とする2階建ての制度に見直すこととされ、令和6年1月からスタートすることとなっていた。また、ジュニアNISAについては、利用実績が乏しいことから適用期限の延長はせず、新規の口座開設を令和5年末までで終了することとされた。
 今回の改正では、残るつみたてNISAを基本としつつ、一般NISAの機能を引き継ぐ「成長投資枠」を導入する(参照)。現行のNISA制度とは異なり、併用も可能だ。年間の投資上限額はつみたて投資枠は120万円(現行40万円)、上場株式・投資信託等を対象とした成長投資枠は240万円(現行120万円)とする。非課税保有期間を無期限化し、両者を合わせた生涯非課税限度額は1,800万円(このうち成長投資枠は1,200万円)まで認めることとする。

 また、生涯非課税限度額については、スイッチングを可能にする。現行、保有している株式等を売却して他の株式等を購入する場合、その分の非課税投資枠が必要となる。しかし、個人のライフスタイルに合わせ株式投資ができるよう、株式等を売却した場合には、その分の非課税投資枠が復活するよう制度を見直すこととしている。
 なお、令和5年末まで現行のNISA制度が存続することになるが、これまで投資した商品については、新しいNISA制度の外枠で現行制度における非課税措置を適用することができるとしている。
スタートアップへの再投資は非課税に
 また、令和5年度税制改正では、スタートアップへの再投資に係る非課税措置が創設される。保有株式を売却し、自己資金による起業やプレシード・シード期のスタートアップへの再投資を行う際、再投資した分の譲渡益には課税を行わないとする措置を創設する。上限は20億円とされており、上限を超えた分については課税の繰延を認める。なお、プレシード・シード期のスタートアップとは、現行のエンジェル税制の対象企業である未上場ベンチャー企業のうち、①設立5年未満、②前事業年度まで売上が生じていない又は売上が生じているが前事業年度の試験研究費等が出資金の30%以上、③営業損益がマイナス、という状況であることとされている。
 投資段階だけではなく、譲渡段階での優遇措置も講じられる。譲渡損の他の株式譲渡益との損益通算や、当該株式譲渡損の3年間の繰越控除を認める。加えて、自己資金を用いた起業については、同族要件を満たせない場合であっても、事業実態(販管費対出資金比率30%以上要件等)が認められれば適用が受けられるようにし、プレシード・シード期のスタートアップへの投資については、外部資本要件を1/6から1/20に引き下げる。
 適用は令和5年4月1日以降の再投資について適用される。
30億円超の高所得者に対して追加負担
 その一方では、所得が1億円を超えると税負担率が下がるといういわゆる「1億円の壁」を是正するための措置が講じられる。
 具体的には、「(合計所得金額−特別控除額(3.3億円))×22.5%」で算出した数字が所得税額を上回った場合に限り、差額分を申告納税するというもの。所得が約30億円を超える者が対象となる見込みで、仮に所得50億円程度の場合は負担率が2〜3%増加するとしている。

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