解説記事2023年04月17日 SCOPE 企業会計審議会が15年ぶりに内部統制評価・監査基準を改訂(2023年4月17日号・№975)
「売上高の2/3」等の指標の機械的適用は不要
企業会計審議会が15年ぶりに内部統制評価・監査基準を改訂
企業会計審議会(会長:徳賀芳弘京都先端科学大学副学長/京都大学名誉教授)は4月7日、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」を決定し、鈴木俊一金融担当大臣に答申した。1月19日まで意見募集を行っていた公開草案からの内容面での変更はない。大幅な改訂はおよそ15年ぶりとなる。経営者による内部統制の評価範囲の決定では、例示されている「売上高等のおおむね3分の2」などを機械的に適用すべきではないことを明記し、リスク・アプローチを徹底する観点から重要な事業拠点の選定において利用した指標とその一定割合など、決定の判断事由を含めて記載することとした。適用は令和6年4月1日以後開始する事業年度における財務報告に係る内部統制の評価及び監査からとなる。なお、別途、開示等の取扱いを定めた「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」等が4月10日に公表されており(5月12日17時まで意見募集)、夏頃までには確定される予定だ(令和6年4月1日施行)。
COSO改訂や内部統制報告制度の実効性の懸念に対応
今回の改訂は、米国のCOSO(トレッドウェイ委員会支援組織委員会)の内部統制の基本的枠組みに関する報告書の改訂のほか、経営者による内部統制の評価範囲の外で開示すべき重要な不備が明らかになるといった事例が見受けられるなど、内部統制報告制度の実効性に関する懸念が指摘されていることを踏まえたものである。
非財務情報に係る開示の進展やCOSO報告書の改訂を踏まえ、内部統制の目的の一つである「財務報告の信頼性」を「報告の信頼性」に変更。報告の信頼性は、組織内及び組織の外部への報告(非財務情報を含む)の信頼性を確保することと定義するとともに、金融商品取引法上の内部統制報告制度については、あくまでも「財務報告の信頼性」の確保が目的である旨を強調した。
また、内部統制とガバナンス及び全組織的なリスク管理(ERM)は一体的に整備及び運用されることの重要性を明らかにし、これらの体制整備の考え方として、3線モデル等を例示した。
リスク・アプローチの観点から利用した指標等の判断事由を具体的に記載
経営者が内部統制の評価対象とする重要な事業拠点や業務プロセスを選定する指標については、例示されている「売上高等のおおむね3分の2」や「売上、売掛金及び棚卸資産の3勘定」を機械的に適用すべきでないことなどを記載。今後、段階的な削除を含め、内部統制部会で検討を行うとしている。
これを踏まえ、リスク・アプローチの観点から、内部統制報告書には、財務報告に係る内部統制の評価の範囲について、①重要な事業拠点の選定において利用した指標とその一定割合、②評価対象とする業務プロセスの識別において企業の事業目的に大きく関るものとして選定した勘定科目、③個別に評価対象に追加した事業拠点及び業務プロセスについて、決定の判断事由を含めて具体的に記載することとした。この点、金融庁によると、指標は、企業により事業又は業務の特性等が異なることから一律に示すことは難しいとした上で、内部統制の評価範囲を決定するにあたっては、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性を考慮して適切に判断するとしている。
また、経営者の評価範囲外の事業拠点又は業務プロセスにおいて開示すべき重要な不備が識別された場合には、当該事業拠点又は業務プロセスについては少なくとも開示すべき重要な不備が識別された時点を含む会計期間の評価範囲に含める旨が明確化された。
前年度からの是正状況を記載
付記事項としては、内閣府令案において、前年度に開示すべき重要な不備を報告した場合における開示すべき重要な不備に対する是正状況を記載すべき項目として追加している。なお、前年度の期末後に、開示すべき重要な不備に対する是正措置を実施し、内部統制報告書の提出日までに当該開示すべき重要な不備が是正され、提出日時点では財務報告に係る内部統制が有効である旨を報告した場合においては、前年度の内部統制報告書に当該開示すべき重要な不備の是正状況が記載されることになるため、当期の内部統制報告書に開示する必要はないとしている。
訂正の経緯や理由等を訂正内部統制報告書に開示
そのほか、開示すべき重要な不備が当初の内部統制報告書ではなく、後日、内部統制報告書の訂正によって報告される事例が多いことを踏まえ、事後的に内部統制の有効性の評価が訂正される際には、訂正内部統制報告書において、具体的な訂正の経緯や理由の開示を求めるとしている。
この点、公表された内閣府令案によれば、①開示すべき重要な不備の内容、②開示すべき重要な不備を是正するために実施された措置がある場合には、措置の内容及び措置による開示すべき重要な不備の是正の状況、③財務報告に係る内部統制の評価結果を訂正した経緯、④訂正の対象となる内部統制報告書に開示すべき重要な不備の記載がない理由について記載することとされている。
非財務情報などは中長期的な課題に
なお、サステナビリティ等の非財務情報の内部統制報告制度における取扱いや、ダイレクト・レポーティングの採用、内部統制に関する「監査上の主要な検討事項」を採用することなどは、法改正を含む検討が必要なことから、中長期的な課題にとどまっている。

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