税務ニュース2023年06月16日 財産評価に金融検査マニュアルは使えず(2023年6月19日号・№983) 審判所、父からの債権の譲受価額は「著しく低い価額の対価」に該当

  • 請求人が父から受けた債権の譲受価額が相続税法7条の「著しく低い価額の対価」に該当するか争われた裁決(東裁(諸)令4第8号)。
  • 審判所は、譲受価額は評価額のわずか5%にすぎず、「著しく低い価額の対価」に該当すると判断。また、贈与税における財産評価に金融検査マニュアルは使用できないとの見解示す。

 本件は、請求人が父から貸付金債権をその債権額より低い価格で譲り受けたことについて、原処分庁が貸付金債権の価額を債権額と同額であると評価し、譲受価額が相続税法7条に規定する「著しく低い価額の対価」に当たるとして、贈与税の更正処分等を行ったことから、これを不服として原処分の全部の取消しを求めた事案である。
 審判所は、債権の「時価」については相続税法22条に規定する「時価」と同様に、原則として財産評価基本通達204(貸付金債権の評価)及び205(貸付金債権等の元本価額の範囲)の定めにしたがって評価すべきであるとした上で、本件については評価通達205に定める「その他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる時」に該当するか否かを検討すべきであるとした。
 審判所は、本件法人は債務超過になっているものの、負債全体の約半分を占める短期借入金の内訳は、その大部分が請求人等からの債権に係る借入れであり、譲受時点で直ちに返済しなければならない債務ではないことに加え、一般的に債務超過の状態になったとしても、直ちに債務者が経済的に破綻していることにはならないと指摘。したがって、本件債権は、評価通達205に定める「その他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」に該当するとはいえないとした。加えて、本件譲受けは、請求人の父が、請求人が代表取締役を務める法人に貸し付けた金銭に係る債権を請求人に対して譲渡したものであって、譲受価額は、第三者間で成立する客観的な交換価値を示すものと認めることはできず、譲受価額も414万円であり、評価額(8,280万円)のわずか5%にすぎないことからすると、「著しく低い価額の対価」に該当するとして、請求人の請求を棄却した。
 請求人は、債権の譲渡の場合は金融検査マニュアルの実質基準等により判断すべきであると主張したが、審判所は、金融検査マニュアルと評価通達とはその趣旨目的を異にするものであり、贈与税における財産の評価の際に金融検査マニュアルを使用して評価することは合理的な方法ということはできないとの見解を示した。

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