解説記事2023年07月03日 実務解説 四半期報告書 作成上の留意点(2023年6月第1四半期提出用)(2023年7月3日号・№985)
実務解説
四半期報告書 作成上の留意点(2023年6月第1四半期提出用)
公益財団法人財務会計基準機構 企業会計基準委員会 専門研究員 桐島雄太
《まとめ》
・改正「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等は、当第1四半期連結会計期間から早期適用可能。一部については適用初年度の経過措置あり。
・このほか、「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」、「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い」等についても留意が必要。
Ⅰ はじめに
本稿は、2023年6月第1四半期の四半期報告書の記載にあたり、企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)から改正・公表された企業会計基準等に関する留意点を中心に解説する。なお、文中において意見に関する部分は私見であることをあらかじめ申し添えておく。
Ⅱ 2022年改正「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」等に係る留意点
1 概 要
ASBJは、2018年2月に企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等(以下「企業会計基準第28号等」という。)を公表し、日本公認会計士協会における税効果会計に関する実務指針のASBJへの移管を完了したが、その審議の過程で、次の2つの論点について、企業会計基準第28号等の公表後に改めて検討を行うこととしていた。
(1)税金費用の計上区分(その他の包括利益に対する課税)
(2)グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等(子会社株式又は関連会社株式)の売却に係る税効果
移管の完了後、まずは、その他の包括利益に対して課税される法人税等の計上区分について審議を開始したが、2020年度の税制改正においてグループ通算制度が創設されたことに伴い、グループ通算制度を適用する場合の取扱いについての検討を優先し、審議を中断していた。その後、2021年8月に実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」を公表した後に、その他の包括利益に対して課税される法人税等の計上区分について検討を再開するとともに、グループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果の取扱いについても検討を開始した。
このような経緯を踏まえてASBJにおいて審議された結果、2022年10月に企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下「2022年改正会計基準」という。)、企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「2022年改正適用指針」という。)(以下合わせて「2022年改正法人税等会計基準等」という。)の改正が行われ、その他の包括利益に対して課税される法人税等の計上区分及びグループ法人税制が適用される場合の子会社株式等の売却に係る税効果等の見直しが行われた。
2022年改正法人税等会計基準等は、2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用するとされている。ただし、2023年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することができるとされている。また、その他の包括利益に対して課税される法人税等の計上区分の改正については、適用初年度の経過措置が定められている。なお、その詳細は、花澤徳裕「改正企業会計基準第27号『法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準』等の概要」(No.961)を参照いただきたい。
2 主要な経営指標等の推移
遡及適用を行った場合には、主要な経営指標等の推移の記載において、前期に係る主要な経営指標等に当該遡及適用の内容を反映するとともに、その旨を注記しなければならないとされている(企業内容等の開示に関する留意事項について(開示ガイドライン)24の4の7.7が準用する開示ガイドライン5−12−2)。
したがって、2022年改正法人税等会計基準等の適用初年度において、過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合、主要な経営指標等の推移において、遡及処理を行った旨を注書きすることとなる(記載事例1)。また、2022年改正法人税等会計基準等の適用初年度において、2022年改正会計基準第20−3項ただし書き及び2022年改正適用指針第65−2項(2)ただし書きを適用した場合も、同様である(記載事例2)。


3 冒頭記載
会計基準等を早期適用する場合、経理の状況の冒頭に四半期連結財規等の附則に基づいている旨の記載をすることが望ましいと考えられ、記載事例3のように、連結財規を改正する府令の附則により、改正後の四半期連結財規に基づいて作成している旨を記載することが考えられる。

4 会計方針の変更に関する注記
2022年改正法人税等会計基準等の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用することとなる。なお、2022年改正法人税等会計基準等においては、一部について適用初年度の経過措置も定められている。記載事例4は2022年改正会計基準第20−3項ただし書き及び2022年改正適用指針第65−2項(2)ただし書きの経過措置を適用した場合の会計方針の変更に関する注記の記載事例である。

Ⅲ その他
1 「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」に係る留意点
2022年8月26日にASBJから実務対応報告第43号「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」が公表された。当該実務対応報告は2023年4月1日以後に開始する事業年度の期首から適用することとされている。その詳細は、若尾健二「実務対応報告第43号『電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い』の解説」(No.949)を参照いただきたい。
2 「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い」に係る留意点
2023年3月31日にASBJから実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い」が公表された。当該実務対応報告は、公表日以後適用することとされている。その詳細は、花澤徳裕「実務対応報告第44号『グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い』の概要」(No.977)を参照いただきたい。
当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
週刊T&Amaster 年間購読
新日本法規WEB会員
試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。
人気記事
人気商品
-
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -
Copyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.