税務ニュース2023年07月14日 分割協議書にない財産の修正申告で誤解(2023年7月17日号・№987) 分割協議は再分割に当たらず、贈与税の課税関係もなし
遺産分割協議書には個々の財産を誰が取得するのかを記載するが、家財等の少額な財産の全容把握は容易ではない。そこで、例えば共同相続人が「配偶者乙」「子A」「子B」のケースでは、「配偶者乙は現金、家屋、家庭用財産など、A及びBが取得する以外の全財産を取得する」といったバスケット条項を設けることが多い。このような遺産分割協議書が存在する場合に税務調査を受け、調査官から「家族名義預金3億円」について、その金員の出捐者が被相続人であったこと及びバスケット条項を根拠に、乙の相続財産として修正申告するよう指導されることがある。
この場合、たとえ共同相続人が本件預金が被相続人の遺産に含まれることに納得したとしても、乙の将来の二次相続を考慮し、本件預金について新たな分割協議を行いたい意向を示すことがある。これに対し顧問税理士等は、新たな分割協議は再分割にあたり贈与税等の課税関係が生ずるため困難と考えることが多い。
しかし、平成27年10月2日裁決は、「個別的財産の遺産分割を定める条項により各人が取得する財産以外の財産を一部の者に取得させる旨の本件条項のようなものは、個別的財産の遺産分割による取得を定めた条項を設けた上での補充的なものであり、失念していた財産や家財道具を被相続人と同居していた家族等の適当な者に取得させるために用いられるものと考えられ、個別的な記載のない相当高額な財産は、当該補充的条項にその高額な財産をも含める旨合意されているなどの特別の事情がない限り、含まれないと解するのが自然」との判断を示している。要は、分割協議書に記載のない高額財産は、特別な事情がない限り当初の分割協議の対象財産には含まれないため、当該財産について新たに分割協議を行ったとしても、それは当初の分割協議の再分割には当たらないということだ。
したがって、調査官には本裁決を提示し、「共同相続人は本件預金が相続財産に含まれることを知らなかった以上、本件預金の新たな分割協議は、当初の遺産分割協議の再分割には当たらないため、新たな分割協議に基づき修正申告できる」旨を説明するのが妥当と言えよう。
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