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解説記事2024年06月03日 税務マエストロ 令和6年度消費税改正(下)(2024年6月3日号・№1029)

税務マエストロ
令和6年度消費税改正(下)
#301
 税理士 熊王征秀

Ⅳ 高額特定資産を取得した場合の特例

 金や白金の地金等は一の取引単位の金額調整が容易であることから、インゴットの取得価額が1,000万円未満であれば、高額特定資産には該当しないことになる。結果、金を購入して消費税の還付を受けた翌課税期間において簡易課税制度又は2割特例の適用を受けることができたことから、課税期間中の金又は白金の地金等の合計購入金額が200万円以上の場合にも、3年縛りの規定を適用することとした(消法12の4③、37③五、消令25の5④、消規則11の3)。

Ⅴ 仮払消費税等の処理方法

 非登録事業者からの課税仕入れについて、80%(50%)控除の経過措置の適用を受けようとする事業者が税抜経理方式を適用する場合、仮払消費税として計上することができるのは80%(50%)部分に限られる。
 よって、非登録事業者から減価償却資産を取得した場合には、仕入税額控除の対象とならない20%(50%)部分は取得価額に算入する必要があるので、「取得価額×10/110」を仮払消費税として計上することはできない(消費税経理通達関係Q&A問1)。
 ただし、簡易課税制度(2割特例)の適用を受ける事業者が税抜経理方式を採用する場合には、みなし仕入率(80%)により仕入控除税額を計算するので、80%(50%)控除の経過措置を適用する必要がない。こういった理由から、簡易課税(2割特例)適用事業者は、インボイスを交付しない非登録事業者からの課税仕入れであっても10/110(8/108)の仮払消費税等を計上することを認めることとしたものである。
 また、経過措置期間終了後は仮払消費税等が計上できなくなることから、あえて経過措置適用期間でも仮払消費税等を計上しないことも認めることとした(消費税経理通達関係Q&A問1−2・問10)。
<具体例>
 免税事業者から備品を110万円で購入した場合の仮払消費税等の金額と減価償却資産の取得価額は次のようになる(単位:円)。

 ただし、簡易課税制度(2割特例)の適用を受ける事業者が税抜経理方式を採用する場合には、仮払消費税等の金額は100,000円、減価償却資産の取得価額は1,000,000円とすることができる。

参考

 会計ソフトがインボイス制度に対応していないなどの理由により、免税事業者から取得した減価償却資産について、会計上、取得価額の10/110を仮払消費税として計上した場合には、法人税の申告に当たり、別表調整が必要となる。

 消費税経理通達関係Q&A問8では、法人税別表による税額調整の方法を紹介しているが、経理通達で紹介されているような複雑な別表調整よりも、決算修正仕訳で税務上の適正額に修正してから法人税の申告書の作成作業に移行した方が実践的ではないかと思われる(私見)。
 そこで、Q&Aの問8で解説している「別表調整の方法」と「決算修正による方法」をそれぞれ掲載するので参考にされたい。

 令和5年10月1日~令和8年9月30日期間中に免税事業者から減価償却資産を取得した場合の取扱い

問8 当社(9月決算法人、金融業)は、令和5年10月1日に免税事業者から国内にある店舗用の建物を取得し、その対価として1,320万円を支払いました。当社は税抜経理方式で経理をしており、本件取引について支払対価の額の110分の10相当額(120万円)を仮払消費税等の額として経理をしました。また、当社の消費税の課税期間は事業年度と一致しており、当該課税期間の課税売上割合は50%で、仕入税額控除の計算は一括比例配分方式を適用しているところ、当該事業年度において、仮払消費税等の額として経理をした金額は本件取引に係る120万円であり、仮受消費税等の額として経理をした金額は120万円でした。決算時において、納付すべき消費税等の額が72万円算出されたため、仮受消費税等の額から仮払消費税等の額を控除した金額との差額が72万円生ずることとなり、その差額を雑損失として計上しました。この場合の課税仕入れに係る法人税法上の取扱いはどうなりますか。
  なお、この建物は取得後直ちに事業の用に供しており、耐用年数20年で定額法により減価償却費を算出しています。

【回答】
 以下のような申告調整を行います。

【解説】
1 決算修正で税務上の適正額に修正するケース

○決算修正により建物の帳簿価額を税務上の適正額に修正すると12,240,000円(12,000,000円+240,000円)、仮払消費税等の金額は960,000円(1,200,000円−240,000円)になる。

○繰延消費税額等の金額は480,000円、償却限度額は48,000円となり、仮払消費税等の残額は480,000円(960,000円−480,000円)になる。

2 法人税法別表四・五(一)により調整するケース(問8の回答)
○仮払消費税等を経由して雑損失に振り替えた仮払消費税等の金額240,000円は、償却費として損金経理をした金額に含まれることとなるので、減価償却の償却超過額は228,000円となる。

○雑損失として損金経理した720,000円から建物の減価償却費となる240,000円を差し引いた残額(480,000円)が、繰延消費税額等の損金算入額となるので、繰延消費税額等の償却超過額は432,000円となる。

Ⅵ プラットフォーム課税の創設

 プラットフォーム課税とは、国外事業者が日本の消費者に向けて行うデジタルサービス(電気通信利用役務の提供)に対する課税漏れを防ぐため、納税義務者となる国外事業者に代わり、サービスの仲介者(プラットフォーマー)に申告納税義務を負わせる制度である(消法15の2、消令29、消規11の5)。
※プラットフォーマー……Amazon、Google、Facebook、Uberなどが世界的に有名なプラットフォーマーである。

1 デジタルサービス(電気通信利用役務の提供)とは?
 電気通信回線を介して行われる電子書籍・音楽・オンラインゲーム・広告の配信等の「電気通信利用役務の提供」については、役務の提供を受ける者(受益者)の住所等が日本国内にあれば国内取引となる(消法4③三)。
 また、国外事業者が国内に向けて行う「電気通信利用役務の提供」を「事業者向け電気通信利用役務の提供」と「事業者向け電気通信利用役務の提供以外の電気通信利用役務の提供」に区分し、「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、国外事業者の納税義務を役務の提供を受ける事業者(受益者)に転換する(リバースチャージ方式)。
 「事業者向け電気通信利用役務の提供以外の電気通信利用役務の提供」については、役務の提供を行う国外事業者が日本の消費税の申告と納税義務を負うことになる(国外事業者申告納税方式)。
 このうち、プラットフォーム課税の対象となるのは「国外事業者申告納税方式」が適用されるデジタルサービスだけであり、リバースチャージ方式が適用される取引についてはプラットフォーム課税の適用はない。

<具体例>

 サービスの対価(税抜)が100、消費税が10%(10)の場合の課税関係は次のようになる。

2 プラットフォーム課税とは?
 プラットフォーム課税とは、国外事業者がデジタルプラットフォームを介して行う「事業者向け電気通信利用役務の提供以外の電気通信利用役務の提供」による取引金額が50億円を超える場合に、特定プラットフォーム事業者が行った取引とみなして届出書の提出や申告・納税義務を負わせるという制度である。

Ⅶ 輸出物品販売場制度の見直し

1 検討事項
 外国人旅行者への免税物品の販売について、国内での横流しなどによる不正行為を防止するために、免税物品の販売時には課税し、出国を確認後に消費税等相当額を返金する制度に変更することを計画している。

2 輸出物品販売場における免税制度
 輸出物品販売場(DFS)で免税購入対象者(外国人旅行者)に販売した商品は、その購入した外国人旅行者により国外に輸出され、最終的に国外で消費、使用されることになる。そこで、免税ショップで所定の手続きの下に販売されたものについては、その譲渡について消費税を免除することとしている(消法8、消令18)。

3 罰則と抜本的見直しの方向性
 輸出物品販売場で免税対象物品を購入した外国人旅行者のなかには、免税で購入した物品を日本国内で横流しをした上で、出国時のチェックを免れるためにパスポートに貼付された購入記録票を自ら剥がす者もいるようである。
 免税対象物品は、当然のことながら出国の際に持ち帰ることが義務付けられており、国内での売買(横流し)には厳しい罰則規定が設けられている(消法8③~⑥)。

 しかし、上記のような罰則規定があるにもかかわらず、免税品の横流し等の不正事例は後を絶たない。出国時に捕捉して即時徴収しようにもその多くは納税資金を持ち合わせておらず、ほぼ全てが滞納となったまま、海外へ出国されている状況である(税関検査は任意であり、検査を受けないことを理由に出国を止めることはできない)。
 こういった実態を踏まえ、免税店が免税品の持ち出しを確認できた後で消費税相当額を返金する制度への見直しを検討することとしている。
※参考文献:消費税法講義録(中央経済社)第4版 118頁・資料(納税環境整備)令和5年11月30日 自民党税調資料33~37頁

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