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解説記事2024年09月16日 SCOPE ストックオプション・プール、実質SO税制の適用は限定的か(2024年9月16日号・№1043)

有利発行に該当するかがポイントも
ストックオプション・プール、実質SO税制の適用は限定的か


 改正産業競争力強化法では、会社法の特例として「募集新株予約権の機動的な発行」に関する制度が創設された。いわゆるストックオプション・プールと呼ばれるものだ。普及の鍵を握るのは税制上の措置だが、経済産業省は9月2日、ストックオプション・プールにより発行されたストックオプションであっても、税制適格ストックオプションとしての要件を満たしている限り、ストックオプション税制の適用が可能であるとの見解を明らかにした(本誌1042号11頁参照)。対象となるスタートアップ企業にとっては朗報といえるが、有利発行の場合は、権利行使価額や権利行使期間を取締役会に委任することができず、現行と同様、株主総会の特別決議が必要となるので留意したい。何をもって有利発行に該当するかは一概には言えず、実務上、判断に迷うところだが、慎重を期すのであれば、株主総会の特別決議が必要となり、ストックオプション・プールのメリットが大きく損なわれる。

要件満たせばストックオプション・プールもSO税制の適用は可能だが

 先の通常国会で成立した「新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律」(改正産業競争力強化法)が令和6年9月2日から施行されている(一部除く)。改正産業競争力強化法では、会社法の特例として、米国で普及しているストックオプション・プールと呼ばれる「募集新株予約権の機動的な発行」に関する制度が創設されている。
 現行の会社法では、ストックオプションの発行数等の募集事項を株主総会の特別決議によらなければならず、取締役会に委任することができる事項も具体的な発行数(上限内)や金額(最低額以上)、割当日といった一部に限定されることに加え、委任可能な有効期間は1年間に制限されている。今回の会社法の特例では、経済産業大臣及び法務大臣の確認を受けることを要件として、取締役会に委任することができる期間を会社設立から15年間とするほか、権利行使価額及び権利行使期間についても取締役会に委任することが可能になっている(図表参照)。発行のたびに株主総会の特別決議を行うことなく、ストックオプションの柔軟かつ機動的な発行が可能になるとされており、ストックオプションを付与することで優秀な人材を確保するスタートアップ企業にとっては大きな改正となっている。


 税制上の取扱いについても、経済産業省が明らかにしたところによれば、ストックオプション・プールにより発行されたストックオプションであっても、税制適格ストックオプションとしての要件を満たしている限り、ストックオプション税制の適用が可能であるとの見解を明らかにしている。
 スタートアップ企業にとっては朗報といえそうだが、ここで大きなネックとなるのが有利発行であるか否かという点だ。

有利発行の場合は権利行使価額等を取締役会に委任できず

 今回のストックオプション・プールの場合、ストックオプションの発行がいわゆる有利発行になるときには、既存の株主保護の観点から、①権利行使価額、②権利行使期間、③新株予約権の上限、④新株予約権の割当日を当該決議の日から1年以内とする旨を株主総会の特別決議によらなければならないとされている(改正産業競争力強化法21条の19第4項)。このため、有利発行の場合は、会社法の特例として取締役会に最大で15年間委任することができた事項である権利行使価額や権利行使期間について、現行と同様、株主総会の特別決議が必要となり、ストックオプション・プールを利用するメリットが大きく損なわれてしまうことになる。
有利発行に該当するか否かは一概に言えず
 しかし、何が有利発行に当たるかどうかは一概には言えず、ケースバイケースとなる。経済産業省もスタートアップ企業が発行するすべてのストックオプションが有利発行に該当するわけではないとしている。場合によっては外部の算定機関に価額算定を依頼する必要も出てきそうだが、慎重を期すのであれば、権利行使価額や権利行使期間について、株主総会の特別決議を行うことが無難といえる。ストックオプション・プールが普及するかどうかは、今後の実務を待つ必要があり、しばらくは不透明な状況が続きそうだ。

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