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解説記事2025年04月21日 巻頭特集 企業実務の現場から見たCFC税制の課題(前編)(2025年4月21日号・№1071) −国際最低課税額の制度導入も踏まえて

巻頭特集
対談
企業実務の現場から見たCFC税制の課題(前編)
−国際最低課税額の制度導入も踏まえて
 北海道大学大学院法学研究科教授 元国税審判官 佐藤修二
 外国法共同事業 ジョーンズ・デイ法律事務所 弁護士 片平享介


 グローバル・ミニマム課税の法制化の進展とともに、CFC税制の在り方への関心が高まっている。こうした中、企業や国際税務の専門家から指摘されているのが、本来課税されるべきでない所得が課税対象となるオーバーインクルージョンの問題だ。
 そこで本誌では、CFC税制の実務に精通する外国法共同事業 ジョーンズ・デイ法律事務所の片平享介弁護士と、元国税審判官で、弁護士時代にはCFC税制を巡る税務訴訟の代理人を務めた経験も有する北海道大学大学院法学研究科の佐藤修二教授の対談を企画し、現行CFC税制の問題点と企業の立場から見た今後のCFC税制の在り方について語っていただいた。本対談はまず、現地では課税されないであろう組織再編行為から課税対象金額が生じたとの認定を受け当該組織再編が中断に追い込まれるというCFC税制の問題点を浮き彫りにしたルネサスエレクトロニクスの事例を紹介した上で、CFC税制の個別のルールについて実務上の論点を深堀りする形で進んだ。【前編】となる本稿では、条文のシンプルさゆえに射程範囲が明確でないとの指摘が多い「非課税所得」と、平成29年度税制改正によって追加された従来の受動的所得とは性質の異なる所得類型である「異常所得」をテーマに取り上げる。 (本文中、敬称略)
※なお、本対談で取り上げるのはあくまで一般的な問題であり、対談者が担当した特定の案件を念頭に置いたものではないこと、また対談の内容は対談者の個人的見解であり、所属する組織の見解とは無関係であることを念のためお断りさせていただく。

はじめに

佐藤:今回は、米国に本拠を有するジョーンズ・デイ法律事務所の東京オフィスで国際税務に携わっておられる片平享介先生に、CFC税制につき、実務現場で苦労されている点や、疑問を感じておられる点についてお伺いしたいと思います。片平先生と私は、第一東京弁護士会の弁護士業務改革委員会第一部会(税務部会)において、同じく副部会長として一緒に仕事をした経験があります。
片平:ただいまご紹介に与りました、ジョーンズ・デイ法律事務所の片平と申します。佐藤先生は、北海道大学で教鞭をとる前は、国税審判官を経験し、租税訴訟に通じた弁護士として名を馳せられていましたが、私はどちらかというと平時対応、すなわち取引段階のタックスプランニングの方に関与しています。そのため、CFC税制についても、訴訟などを通じて公になっていない実務上の問題に日々直面しており、CFC税制が企業の健全な事業活動の妨げになっているような事態も目の当たりにしています。さらに、近年では国際最低課税額に対する法人税の創設など、いわゆるグローバル・ミニマム課税の法制化が進みつつあり、事務手間の観点からもCFC税制の在り方を見直す必要性があるように考えています。これらの問題点について少しでも関心が高まればいいと思い、この対談をお引き受けいたしました。

1.ルネサスエレクトロニクスの海外M&A事例

佐藤:まず、CFC税制の問題性が日本の企業実務で大きく注目された事例として、昨年(2024年)、報道された、ルネサスエレクトロニクスの事例について、片平先生からご紹介をいただきたいと思います。
片平:私も新聞報道を通じて知ったのですが、この件は、ルネサスが、フランスの上場企業であるシーカンス・コミュニケーションズを買収しようとした案件です。予定されていた買収及び買収後の統合スキームは非常に複雑なのですが、米国SECにファイリングされた資料などを見ると、ルネサスがドイツの子会社(買収会社)を通じて公開買い付けを行い、一定数のシーカンス株の買い付けに成功したあとに、①シーカンスがフランス国内で現物出資を行い、その資産と負債のすべてを新設子会社に移転する、②シーカンスを被合併法人、ドイツの新設会社(買収会社の子会社)を合併法人とする合併を行う、③さらに、上記新設会社を被合併法人、買収会社を合併法人とする合併を行い、最終的に少数株主を締め出してルネサスの完全子会社とする、というように、フランスとドイツにまたがる複数の組織再編行為が予定されていたようです(前頁図表1参照)。

 ここで簡単にCFC税制の概要をおさらいしたいと思いますが、CFC税制は、外国子会社等(外国関係会社)を利用した租税回避を抑制すべく、一定の条件に該当する外国関係会社の所得(課税対象金額)を、親会社の所得とみなして課税する制度です。注意しなければならないのは、現行のCFC税制の適用は、外国関係会社が表面的な意味での低税率に服している場合に限られないという点です。これには二つの側面があり、まず「低税率」に服しているかどうかの判定を、単純に本店所在地国の法定税率に依拠して行うのではなく、日本の税法の観点から計算した「租税負担割合」という概念で行います。さらに、従来のようなトリガー税率(租税負担割合20%)の考え方を廃止し、租税負担割合が20%以上であっても、外国関係会社の所得や事業の内容に照らしてその実態が十分でないと判断される場合には、依然として合算の対象になるという点です。ルネサスの件で舞台となったフランスもドイツも、法人税の税率がそれほど低い国ではありません(財務省の資料によれば、日本の法人税の実効税率が29.74%であるのに対し、フランスとドイツの実効税率はそれぞれ25.00%及び29.93%です。)。それでも、外国関係会社の活動内容次第で、ルネサスがCFC税制の適用を受けて課税される可能性があったということです。
 おそらく、ルネサスの件で懸念の対象となったのは、一連の組織再編行為に基因するシーカンスの資産・負債の譲渡益がCFC税制上の課税対象金額とみなされ、合算の対象になるのではないかという点だったと思われます。そのため、ルネサスは、CFC税制上の取扱いを東京国税局に照会するとともに、公開買い付けを開始する前にシーカンスとの間で基本合意書を締結し、東京国税局から一定の期日までに照会結果が得られなかったり、不利な照会結果が出た場合に、基本合意書の解除を通じて公開買い付けを中止できる権利を留保していました。そして、実際に東京国税局からCFC税制の適用対象になる旨の回答を得たため、ルネサスは解除権を行使して買収を中断した、ということのようです。
 新聞報道によれば、ルネサスが一連の組織再編行為を企図していた理由は、シーカンスを迅速に完全子会社化するためであり、節税が目的ではなかったとのことです。少なくとも、買収自体に日本の税負担を軽減する意図はなかったでしょう。CFC税制の趣旨が外国子会社等を利用した租税回避の抑制にあるとすれば、税負担軽減の意図がなく、事業上のシナジー効果を企図して行う外国会社の買収行為に対してCFC税制を形式的に当てはめ、現地では課税されないであろう組織再編行為から課税対象金額が生じたものと認定し、日本の親会社に課税するような制度には、やはり問題があるように思います。
佐藤:丁寧なご説明をありがとうございます。おっしゃるとおり、租税回避的な要素がなく、しかも社会的・経済的に有用なM&A取引がCFC税制によって阻害されるようであれば、問題がありますね。

2.非課税所得

佐藤:ここからは、CFC税制の個別のルールに沿って、実務上の論点を見ていきたいと思います。まず、非課税所得について、キャピタルゲインが非課税となっている国が少なくないところ、これによってCFC税制が発動されることがある点について、お伺いしたいと思います。
片平:佐藤先生ご指摘のとおり、国によっては、一定の要件を満たす株式の譲渡益などを非課税とする、いわゆる資本参加免税が採用されている場合があります。有名なのはオランダです。これに対し、日本の税制上は株式の譲渡益は原則として課税所得となりますので、資本参加免税を採用している国に子会社を設立し、その外国子会社を通じてある株式を譲渡した場合、日本であれば譲渡益に対して課税されたにもかかわらず、実際にはどこの国でも課税されない(配当として日本に還流させても、外国子会社配当益金不算入制度が使える)ということが起こり得ます。
 先ほど、外国関係会社が低税率に服しているかどうかの判定を「租税負担割合」の計算を通じて行うと述べました。この租税負担割合という概念は、まさにこの株式譲渡益の非課税のような問題に対処するためのものです。つまり、CFC税制の趣旨(外国子会社等を利用した租税回避の抑制)を果たすために、我が国で所得と認識されているものについては、現地で所得の範囲外とされている場合であっても、それを分母に含めて租税負担割合を計算することになっているのです。
 簡単な計算例を挙げます。オランダにおける法人所得税の税率は25.8%の比例税率であると仮定し、オランダ在外国関係会社のある事業年度における現地の課税所得が100、法人税額が25.8であるとします。そして、同じ事業年度において、資本参加免税によって非課税とされた金額が100あったとします。この場合、表面税率は25.8%(25.8/100)ですが、租税負担割合の計算上、非課税とされた金額100を分母に含める必要があるので、租税負担割合としては半分の12.9%(25.8/200)となります。これがいわゆる「非課税所得」であり、条文上は「その本店所在地国の法令の規定により外国法人税の課税標準に含まれないこととされる所得の金額(支払を受ける配当等の額を除く。)」(措令39の17②一イ)と表現されています(図表2参照)。

 現行のCFC税制では、租税負担割合が20%以上であっても、外国関係会社がペーパーカンパニーその他の類型に当てはまれば、全体合算の対象となります。ここでいう「ペーパーカンパニー」というのは、固定施設もなく、かつ自律的な管理支配もされていない状態の会社という意味です。他方、租税負担割合が20%未満になると、ペーパーカンパニーではないというだけでは不十分で、より厳しいテスト(経済活動基準)をクリアしないと全体合算は免れませんし、そのテストを満たしても一定の類型の所得については部分合算の対象になります。このようなCFC税制の仕組みによって、租税負担割合が20%以上であれば合算の対象ではなかったにもかかわらず、「非課税所得」を分母に入れて計算することで租税負担割合が20%を下回り、より厳しいテストが適用されることで、親会社が課税されるという事態が生じるわけです。
佐藤:私自身も、キャピタルゲインが非課税となる国との関係でこのような課税結果が生じることは昔から知っていたのですが、お恥ずかしながら、具体的な問題意識を持っていませんでした。このような課税に対しては、企業の実務現場からは、不合理であるという感想があるのでしょうか。
片平:佐藤先生のご発言は至極正当だと思います。私も非課税所得自体が全面的に悪だとは思っておらず、むしろ、CFC税制の趣旨からすれば、我が国の税制との比較という視点を捨象することはできないと思います。そのために、一般的には、非課税所得を分母に加算して租税負担割合を計算することは問題のない制度だと認識されているのかもしれません。
 私が実務を通じて感じるのは、非課税所得は、CFC税制上きわめて重要な機能を果たしているにもかかわらず、条文の文言があまりにシンプルにできていて、射程範囲が明確化されていないという点です。まず、非課税所得は、租税負担割合の計算上分母に含めるというだけではなく、(課税対象金額算出の前提となる)適用対象金額にも含めなければならないことに留意が必要です。すなわち、非課税所得は、租税負担割合及び適用対象金額の計算という、CFC税制の根本に直結する、極めて重要な機能を有しています。ところが、非課税所得を定義する条文上の文言としては、先ほど述べた「その本店所在地国の法令の規定により外国法人税の課税標準に含まれないこととされる所得の金額」というだけです。この文言だけを見ると、我が国の税法上所得を構成する金額であれば、すべからくここに入るように読め、射程範囲が明確でありません。また、法人税法上「所得の金額」とは益金から損金を控除したネットの概念とされているため、非課税所得の計算においてもプラスの所得(益金)だけではなくマイナスの所得(損金)も考慮に入れるべきですが、この非課税所得は加算項目として挙げられているので、損益通算がどこまで認められるかは明確ではありません。さらに、外国関係会社が低税率に服しているかどうかの判定を我が国税制上の取扱いとの比較で行うというのが租税負担割合の趣旨だとすれば、現地税制上課税標準に含まれないかどうかを形式的にみるのではなく、我が国税制との比較の観点からより実質的に判定すべきではないかという疑問が生じるわけです。非課税所得の条文上の文言は、このような実質的な判定を可能にするほど精密にはできていないという点が問題だと考えています。
佐藤:丁寧なご説明をありがとうございます。CFC税制も、制定当初からずいぶん時間が経っており、改正は積み重ねられているものの、残された問題も多いということが分かりますね。そのように非課税所得をめぐって生ずる実務上の諸問題に関しては、日本租税研究協会の研究会の議論があったと思います。その内容についてご説明いただけますでしょうか。
片平:実務レベルでは、この非課税所得の射程をより明確にしようという試みがなされています。その代表格が、佐藤先生からご指摘のあった、日本租税研究協会の下部研究機関が、国税当局との協議なども踏まえて作成した報告書(平成26年「外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)における課税上の取扱いについて」)です。この報告書では、外国関係会社の本店所在地国において恒久的に課税されないものだけが非課税所得となると解すべきであり、従って課税繰り延べであれば非課税所得には該当しないという考え方が示されています。そして、報告書を作成した機関によれば、このような考え方は国税当局のお墨付きを得たものであるとのことです。また、同じ日本租税研究協会が発行している「租税研究」という雑誌上で、非課税所得の計算上複数の取引から生じる損益を、マイナスにならない限度で通算することは許されるという考え方が紹介されています(小西勉「実務講座 法人税Q&A」租税研究2024年7月号)(図表3参照)。これらの解釈は、先ほど述べた租税負担割合の趣旨に適ったものであり、非課税所得の実務における事実上の規範として機能しているという理解です。しかしながら、いずれも条文化されておらず、通達でもないため、国税当局や裁判所に対する法的拘束力はないと言わざるを得ません。このように法的に不安定な状況のなかで、非課税所得の解釈及び適用を行わなければならないというが実務の現状です。かかる現状に対応するためには、最低限、これらの取扱いを通達に明記し、課税現場で混乱が生じないようにすべきであると考えています。

佐藤:ありがとうございます。日本租税研究協会は権威のある公益的な組織ではありますが、基本的には民間団体ですから、国税庁が見解を出した、ということとは異なりますし、日本租税研究協会側がいう「お墨付き」を国税庁側が公に是認しているわけではないため、不安定さが残ることは否めませんね。ところで、この種の問題は、いわゆるOECDの柱2に対応して導入された国際最低課税額に係る制度についても起こり得るようですが、そちらではどのような対応がなされているのでしょうか。
片平:ご指摘のとおり、令和5年度税制改正で導入された国際最低課税額に対する法人税においても、類似の問題が生じ得ますが、こちらでは異なるアプローチが採用されています。国際最低課税額制度は、一定の多国籍企業グループ等に対してのみ適用される制度であり、その構成会社等の実効税率を国単位で計算し、国別実効税率が15%を下回る場合に、内国法人(最終親会社など)に対して課税を行うというものです。外国子会社等の活動に起因して日本の親会社が課税されるという意味ではCFC税制との共通点がありますが、国際最低課税額制度は、「BEPSプロジェクト」という国際的な取組みの一環として法制化されたものであり、その狙いは、多くの国が最低税率15%の課税を確保するという仕組みを共同で採用することで、低い法人税率や優遇税制によって外国企業を誘致する法人税引き下げ競争(「底辺への競争(race to the bottom)」などと揶揄されています。)を抑止する点にあります。この国際最低課税額制度における実効税率は、基本的に会計をベースにして計算するのですが、税会不一致が典型的に問題となる一定の項目については、あらかじめ、あるいは選択によって、分母の金額から除外するとされています。かかる除外項目のひとつとして「除外資本損益」というものがあり、一定の株式の譲渡損益は、実効税率の計算上分母に含めなくてよいとされているのです。さらに、国際最低課税額制度のもとでは、税効果会計に似た仕組みを採用することで、課税繰延べ措置によって当年度の実効税率が下がりすぎないような配慮もされています。
 もちろん、CFC税制と国際最低課税額制度では趣旨が異なるため、後者の仕組みをそのまま前者に採用せよという単純な話ではないのですが、形式的に文言に該当すればなんでも分母に加算すべきと読めてしまう非課税所得の規定は、国際最低課税額制度と比べた場合に、少し粗すぎるのではないかと思えてしまいます。
佐藤:ありがとうございます。国際最低課税額制度では、緻密な対応がなされているということが分かりました。

3.異常所得

佐藤:次に、平成29年度改正によって導入された異常所得について伺いたいと思います。どのような場面で、実務上の疑問が生じてくるでしょうか。
片平:先ほど、外国関係会社に係る租税負担割合が20%未満になると、経済活動基準をクリアしても、一定の類型の所得については部分合算を免れないという話をさせていただきました。この部分合算の対象となる所得の金額を「特定所得の金額」というのですが、従来は利子や配当など、実質的活動がなくても稼得できる受動的所得が限定列挙されていました。ところが、平成29年度税制改正によって、特定所得の金額の範囲が見直され、それまでのいわゆる受動的所得とは性質の異なる所得類型が新たに追加されました。それが佐藤先生のいわれた「異常所得」と呼ばれるものです。
 財務省の解説によれば、異常所得は「外国関係会社の資産規模や人員等の経済実態に照らせば、その事業から通常生じ得ず、発生する根拠のない所得」と位置付けられています。具体的には、ある事業年度における外国関係会社の会計上の税引後当期利益の金額をベースに、利子や配当など他の類型の特定所得の金額がないものとして計算された所得の金額から、一定の「所得控除額」を差し引いて算出するとされています。この所得控除額を構成するのは、総資産の額と減価償却累計額、及び人件費となります。厳密には、これらの金額の合計額の50%だけが所得控除額となるのですが、このように外国関係会社の資産に関する金額や人件費の金額について所得控除を認めることで、モノやヒトという経済実態に比べて不釣り合いに大きい所得の金額を、異常所得として部分合算の対象にしようというものです(図表4参照)。

 このように、従来は実質的活動がなくても稼得できる受動的所得を限定列挙して課税の対象としていたところ、平成29年度税制改正による異常所得の導入により、モノやヒトという経済実態を超えると目される所得については、事業活動から発生するものであっても広く課税の対象にする、ということになりました。一般的に、総資産利益率(ROA)は企業の収益性をはかる財務指標とされており、ROAが高いことは資産が効率よく利用されていることを意味するのですが、CFC税制では、ROAが高いと部分合算の対象とされてしまうことになります。
佐藤:ROAが高いと課税される、というのはビジネス的に見て違和感がありますよね。
片平:はい。
 それはともかくとして、実務的に見ると、この異常所得の問題点は、正常な事業活動から生じる所得と、財務省がいう「その事業から通常生じ得ず、発生する根拠のない所得」を合理的に区分できないという点だと思います。それが典型的に問題となるのは、固定資産の売却益や、後述する債務免除益など、単年度で比較的多額の所得が発生するケースです。こういった臨時に発生する利益は、正常な事業活動の過程においても当然に発生するものですが、異常所得の計算式を形式的に当てはめると、租税回避とは無縁の臨時の利益であっても、異常所得を構成してしまう場合があります。特に固定資産の売却益は、一時の多額な利益が生じることに加え、総資産の額や減価償却累計額の減少を通じて所得控除額が減ることにもなりますので、異常所得の発生につながりやすいといえます。このように、経済活動基準を満たした外国関係会社による、正常な事業活動から発生する所得であっても、広く部分合算の対象となり得るという点が、異常所得の問題点だと考えています。
佐藤:確かに、固定資産を売却することは、しょっちゅうではなくてもビジネスの通常の流れで発生することなので、それが「異常」だということには違和感がありますね。ちなみに、この点、先ほど非課税所得の関係でも話題にした国際最低課税額制度ではどのようになっているのでしょうか。
片平:国際最低課税額制度においては、不動産の譲渡益について、選択によって5対象会計年度に配分する調整が認められていたり、破産手続等のために生じた債務免除益や債務の消滅の日から1年以内に支払不能に陥るおそれがあった場合の債務免除益について、選択により、実効税率の計算上の分母から除外できる制度が設けられています。しかしながら、CFC税制については同様の制度はなく、臨時的な所得の発生による異常所得の問題については、効果的な対応が難しいのが現状だと思います。
佐藤:ありがとうございます。この問題についても、国際最低課税額制度の合理的な対応と、CFC税制のそうではないところが対照的に思えますね。
(後編に続く)

佐藤修二 (さとう しゅうじ)
1997年 東京大学法学部卒業。2000年 弁護士登録。2005年 ハーバード・ロースクール卒業(LL.M.)。2011年~14年 東京国税不服審判所(国税審判官)。2019年~22年 東京大学大学院法学政治学研究科客員教授。2022年~現在 北海道大学大学院法学研究科教授。著書に、『租税と法の接点』(大蔵財務協会、2020)、 『夏休みの自由研究のテーマにしたい「税」の話』(共著、中央経済社、2020)、『事例解説 租税弁護士が教える事業承継の法務と税務』(監修、日本加除出版、2020)、『対話でわかる国際租税判例』(共著、中央経済社、2022)、『対話でわかる租税「法律家」入門』(編著、中央経済社、2024)など。

片平享介 (かたひら きょうすけ)
ジョーンズ・デイ法律事務所オブカウンセル。2007年入所以来、15年以上にわたり、主に日本や米国の多国籍企業に対して国際税務に関するアドバイスを提供する。税務調査対応などの紛争解決のみならず、組織再編成、リストラクチャリング、CFC税制及び不動産取引などの分野において、プランニング段階や税制改正時の税務アドバイスを日常的に行っている。2014年ニューヨーク大学ロースクール卒業(修士、国際租税プログラム)後、ワシントンD.C.オフィスおよびニューヨークオフィスにて米国税務プラクティスにも従事した経験がある。Chambers Asia-Pacific、The Legal 500 Asia Pacific及びThe Best Lawyers in Japanにて日本の税務弁護士として選出されている。

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