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解説記事2026年02月23日 未公開裁決事例紹介 非上場株評価の株特外しに評価通達6項適用裁決(2026年2月23日号・№1112)

未公開裁決事例紹介
非上場株評価の株特外しに評価通達6項適用裁決
租税負担軽減の意図などを認め課税処分を支持


○非上場株式の評価における「株特外し」に対して評価通達6項を適用した課税処分の適法性が争われた裁決(令和7年5月28日・高裁(諸)令6第13号)。審判所は、株特外しにより租税負担が著しく軽減されたこと及び相続人らが租税負担の軽減の意図を有していたことを認定したうえで、本件において評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは実質的な租税負担の公平に反するというべきであり、合理的な理由があると認められるから平等原則に違反するということはできないと判断したうえで課税処分は適法であると結論付けた(本誌1111号4頁参照)。

主  文

 審査請求をいずれも棄却する。

基礎事実等

(1)事案の概要
 本件は、審査請求人らが、被相続人から相続時精算課税に係る贈与により取得した取引相場のない株式の価額について、財産評価基本通達の定める方法により評価し、その価額を相続税の課税価格に加算し、相続税の申告をしたところ、原処分庁が、財産評価基本通達の定めによって当該株式を評価することが著しく不適当であるとして、国税庁長官の指示を受けて評価した価額により相続税の更正処分等をしたのに対し、審査請求人らが、原処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)関係法令等(省略)
(3)基礎事実及び審査請求に至る経緯

 当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ ×××(以下「×××」という。)は、不動産の売買及び仲介等並びに有価証券の保有及び運用等を目的として、×××に設立された法人であり、取締役会非設置会社である。
  そして、×××の平成22年4月1日から平成23年3月31日までの事業年度(以下「平成23年3月期」といい、他の事業年度についても同様に表記する。)ないし平成28年3月期の役員は、被相続人×××(以下「本件被相続人」という。)、本件被相続人の配偶者及び本件被相続人の長男である審査請求人×××(以下「請求人×××」という。)である。
ロ 本件被相続人は、×××の平成23年3月期ないし平成28年3月期において、×××の株式全体の95%(190株)を保有しており、残りの5%(10株)については、平成23年3月期ないし平成27年3月期において本件被相続人の配偶者が、平成28年3月期において×××が、それぞれ保有していた。
ハ 平成23年3月期における×××の「貸借対照表」には、別表1−1の「平成23年3月期」欄のとおり記載され、そのうち資産の部合計に占める主要資産の構成比は別表1−2の「平成23年3月期」欄のとおりである。
ニ ×××は、平成23年7月8日、×××(×××。以下同じ。)から×××の借入れを行い、本件被相続人に対して×××の貸付けを行った。
ホ ×××は、平成24年12月26日、×××から×××の借入れを行い、平成25年1月23日に、×××及び×××の2筆の土地並びに当該土地上の建物に係る信託受益権を×××で取得した。
へ ×××は、平成25年7月10日、×××から×××の借入れを行い、平成26年1月16日に、×××及び×××の2筆の土地に係る信託受益権を×××で取得した。
ト ×××は、平成26年2月20日、×××から×××の借入れを行い、平成26年2月28日に、×××及び×××の2筆の土地並びに当該土地上の建物に係る信託受益権を×××で取得した。
チ ×××は、平成27年7月29日、×××から×××の借入れを行い、平成27年7月24日付で、任意組合との間において、×××航空機1機の航空機リース事業に係る契約を締結し、当該任意組合に対して、平成27年7月29日に×××の出資(以下、当該航空機のほか、上記ニの貸付けに係る貸付債権、上記ホないしトの信託受益権の取得を併せて「本件各資産の取得」という。)を行った。
ル ×××の平成24年3月期ないし平成28年3月期における「貸借対照表」には、それぞれ別表1−1の各欄のとおり記載され、そのうち資産の部合計に占める主要資産の構成比は別表1−2の各欄のとおりである。
ヌ 本件被相続人と請求人×××の長男であり本件被相続人の孫である審査請求人×××(以下「請求人×××」といい、請求人×××と併せて「請求人ら」という。)は、平成28年3月24日、本件被相続人から請求人×××に対し、×××の株式(以下「本件株式」という。)190株(以下「本件贈与株式」という。)を贈与(以下「本件贈与」という。)する旨の贈与契約を締結した。
レ 請求人×××は、平成29年3月14日、本件贈与株式の評価額を1株当たり×××、合計×××とした上で相続時精算課税制度を選択して、平成28年分の贈与税(以下、当該相続時精算課税に係る贈与税を「本件贈与税」という。)の申告書を×××に対して提出した。
ヲ 請求人×××は、本件贈与税の申告書において、×××の株式保有割合が43%であることから、×××は株式保有特定会社に該当せず、中会社に該当するとして、本件贈与株式の評価について、評価通達179の(2)の定めによる評価方法を採用した。
ワ 本件被相続人は、×××に死亡し、その相続(以下「本件相続」という。)が開始した。
  本件相続が開始したことによって、請求人×××は本件被相続人が作成した遺言書に基づき、請求人×××は他の相続人(本件被相続人の長女及び二女)との遺産分割協議に基づき、それぞれ財産を取得した。
カ 本件被相続人の長女、二女及び請求人らは、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の申告を別表2の「申告」欄のとおり、共同で、法定申告期限内に行った。なお、請求人×××は、本件相続税の課税価格を、自身が本件相続によって取得した財産の価額及び相続時精算課税適用財産の価額(本件贈与株式の価額(×××))であるとして申告していた。
ヨ 原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)は、令和3年12月8日、請求人らに対する相続税の調査(以下「本件調査」という。)を開始した。
タ 原処分庁は、本件贈与株式を評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められるとして、本件贈与株式の価額を評価通達6の定めにより国税庁長官の指示を受けて評価した。具体的には、原処分庁は、×××と×××が締結した令和5年1月11日付の契約書に基づき同社が作成した同年3月30日付の株式価値算定書(以下「本件株式価値算定書」という。)を基礎資料として、平成28年3月24日現在における本件株式の1株当たりの価額を×××と評価した(以下、原処分庁の評価した本件贈与株式の価額を「原処分庁評価額」という。)。なお、本件株式価値算定書の概要は、別紙2のとおりである。おって、日本公認会計士協会が作成した企業価値評価ガイドラインには、企業価値の算定に当たり、インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ及びネットアセット・アプローチを掲げ、それぞれのアプローチに属する各評価方法を明記した上で、このうちどの評価方法を用いるかについては、評価目的、評価会社の状況、その他の状況を加味しながら決定することになる旨の記載があり、単一の評価方法に依拠する単独法によることが相当な場合もあるが、株式の価値形成要因が多岐にわたるため多面的な分析が必要であることや、各評価方法がそれぞれ優れた点を持つと同時に様々な問題点を有することなどから、複数の評価方法を適用し、総合評価をすることが実務上一般的とされている旨が記載されている。
レ 原処分庁は、本件調査に基づき、本件贈与株式の価額を原処分庁評価額とし、請求人らに対し、令和6年3月15日付で、本件相続税について、別表2の「更正処分等」欄のとおりの更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下、それぞれ「本件更正処分」及び「本件賦課決定処分」という。)をした。
ソ 請求人らは、原処分に不服があるとして、令和6年6月11日に審査請求をした。

争点および主張

 本件更正処分について、本件贈与株式の価額を評価通達の定めによって評価した価額を上回る価額とすることが、租税法上の一般原則としての平等原則に違反しないか否か(具体的には、主として、×××による本件各資産の取得の意思決定に当たり、本件被相続人又は請求人×××に本件相続に係る租税負担の軽減の意図が存していたか否か。)。当事者の主張は、のとおり。

【表】争点についての主張

原処分庁

請求人ら

 次のとおり、×××において本件各資産の取得が行われたことにより請求人らの本件相続税の負担が著しく軽減された上、×××による本件各資産の取得の意思決定に当たり、本件相続税の負担の軽減について、本件被相続人又は請求人×××は租税負担の軽減を意図していたと推認されるから、本件贈与株式の価額を評価通達の定めによって評価した価額を上回る価額とすることについて合理的な理由があるといえ、租税法上の一般原則としての平等原則に違反しない。
 本件被相続人又は請求人×××が×××の意思決定者であるところ、×××では、一定の裁量が与えられた経理・財務責任者が、不動産購入の際の交渉など運営上の実務を行い、重要事項について、請求人×××から意思決定を受け、本件被相続人に報告の上、運営を行っていた。
 また、本件被相続人又は請求人×××は、本件各資産の取得に当たり、租税負担の軽減を意図して意思決定を行ったと推認されるところ、当該軽減は、×××の営利活動とは直接的に関係がないことから、本件各資産の取得については、本件被相続人又は請求人×××の行為と同視できる。
 一般的に、×××のような、株主が親族のみで構成されている資産管理会社においては、親族の意思を反映して、新たな資産を購入したり、資産と負債を計上するなどして株式保有割合を変動させるなど、恣意的に非上場株式の相続税評価額を変動させることが容易に実施できる。
 したがって、本件被相続人又は請求人×××は、相続税軽減の効果を認識し、かつ、それを意図して本件各資産の取得の意思決定を行ったものである。
 次のとおり、×××による本件各資産の取得の意思決定に当たり、本件相続について、本件被相続人及び請求人×××には租税負担の軽減の意図はなく、本件贈与株式の価額を評価通達の定めによって評価した価額を上回る価額とすることについて合理的な理由は存在せず、租税法上の一般原則としての平等原則に違反する。
 ×××では、経理・財務責任者を選任して投資事業における重要な業務を任せているところ、×××の事業目的が投資を通じて経済的な成果を上げること、すなわち、純投資にあること、基礎事実等の(3)のニに係る資産の取得については、本件被相続人個人のキャッシュフロー悪化の回避を目的としたもの、同チに係る資産の取得については、法人税の負担が増加する点を踏まえたキャッシュフローマネジメントを目的としたものであることからすれば、×××が本件各資産の取得をする際に、経理・財務責任者が本件相続に係る租税負担の軽減を認識していなかったと解するのが自然かつ合理的である。仮に、経理・財務責任者が本件各資産の取得をする際に、租税負担の軽減の認識を有していたとしても、これらの認識は、経理・財務責任者から本件被相続人及び請求人×××に情報共有されていないことは明らかである。
 したがって、本件被相続人及び請求人×××が本件各資産の取得に関して、租税負担の軽減を認識していなかったことは明白である。

審判所の判断

(1)法令解釈
 相続税法第22条は、同法第3章において特別の定めのあるものを除くほか、相続等により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価による旨定めているところ、ここにいう時価とは、当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。
 ところで、相続税法(平成31年法律第6号による改正前のもの)は、地上権及び永小作権の評価(第23条)、定期金に関する権利の評価(第24条、第25条)及び立木の評価(第26条)を除き、財産の評価方法について定めを置いていないところ、課税実務においては、評価通達において財産の価額の評価に関する一般的な基準を定めて、画一的な評価方法によって相続等により取得した財産の価額を評価することとされている。このような方法が採られているのは、相続税又は贈与税(以下「相続税等」という。)の課税対象である財産には多種多様なものがあり、その客観的な交換価値が必ずしも一義的に確定されるものではないため、相続等により取得した財産の価額を上記のような画一的な評価方法によることなく個別事案ごとに評価することにすると、その評価方法、基礎資料の選択の仕方等により異なった金額が時価として導かれる結果が生ずることを避け難く、また、課税庁の事務負担が過重なものとなり、課税事務の効率的な処理が困難となるおそれもあることから、相続等により取得した財産の価額をあらかじめ定められた評価方法によって画一的に評価することとするのが相当であるとの理由に基づくものと解される。このような課税実務は、評価通達の定める評価方法が相続等により取得した財産の取得の時における適正な時価を算定する方法として合理的なものであると認められる限り、納税者間の公平、納税者の便宜、効率的な徴税といった租税法律関係の確定に際して求められる種々の要請を満たし、国民の納税義務の適正な履行の確保(国税通則法第1条、相続税法第1条)に資するものとして、相続税法第22条の規定の許容するところであると解される。
 そして、評価対象の財産に適用される評価通達の定める評価方法が適正な時価を算定する方法として一般的な合理性を有する場合においては、評価通達の定める評価方法が形式的に全ての納税者に係る全ての財産の価額の評価において用いられることによって、基本的には、実質的な租税負担の公平を実現することができるものと解されるのであって、相続税法第22条の規定も租税法上の一般原則としての平等原則を当然の前提としていることに照らせば、特定の納税者あるいは特定の財産についてのみ、評価通達の定める評価方法以外の評価方法によってその価額を評価することは、原則として許されないものというべきである。すなわち、課税庁が、特定の者の相続財産又は贈与財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、たとえ当該価額が客観的な交換価値としての時価を上回らないとしても、合理的な理由がない限り、上記の平等原則に違反するものとして違法というべきである。
 もっとも、相続税等の課税価格に算入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するものではないと解するのが相当である。
(2)認定事実
 請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
イ 本件被相続人は、×××において、×××の設立から×××まで代表取締役を務めており、請求人×××は同時期において取締役であった。
ロ ×××の平成24年3月期ないし平成28年3月期における「損益計算書」には別表3のとおり、「販売費及び一般管理費の内訳」には別表4のとおり、それぞれ記載されている。また、×××の売上高の内訳書に記載されている売上げは、不動産賃貸料及びリース料のみである。
ハ ×××における、本件各資産の取得前(平成23年6月)の株式保有割合は95.2%であり、平成28年3月24日現在の株式保有割合は43.0%である。
ニ 本件贈与株式の価額を評価通達179の(2)の定める方法により評価すると、本件贈与株式の価額は×××となり、その結果、本件相続税に係る課税価格の合計額は×××及び本件相続税の合計額は×××、本件贈与税の額は×××になる。なお、仮に、本件各資産の取得が行われなければ、×××は株式保有特定会社に該当し、評価通達189−3の定める方法により評価することとなるから、本件贈与株式の価額は×××となり、同価額に基づく本件相続税に係る課税価格の合計額及び本件相続税の合計額は、それぞれ×××及び×××、本件贈与税の額は×××になる。
ホ 本件贈与の実行の採否は、請求人×××が決定し、本件被相続人及び請求人×××の承諾を得て、本件贈与が実行された。なお、本件贈与税の納税資金の準備などは、請求人×××が委任を受けて行った。
(3)×××の申述
 令和4年10月12日、令和5年2月14日、同年3月7日又は同月23日、×××の経理・財務責任者である×××は本件調査担当職員に対して、要旨、次のとおり申述した。
イ ×××、×××、×××、×××、×××及び×××は、×××の資産管理会社であり、×××は前任者が亡くなった×××以降、当該各資産管理会社の経理・財務責任者である。
ロ 前任者が亡くなった後、金融機関等から上記イの各資産管理会社の不動産購入や売却について紹介があった場合は、×××が検討し、必要に応じて請求人×××に報告及び相談をしていた。
ハ ×××における投資又は出資の意思決定については、満期償還に伴う金融商品の入替えや×××の手持ちの運用資金で購入できる安全性の高い金融商品の場合には×××の裁量に任されており、また、多額の投資若しくは出資又は銀行の借入れが必要な場合などの重要なものは、請求人×××の承認と本件被相続人への報告が必要であり、契約に至るまでの途中経過の説明は必要に応じて行い、購入するか否かの最終判断は請求人×××が行っていた。
ニ ×××の役割は、会社の財産を守ることや増やすことにある。
ホ ×××における本件各資産の取得の理由は、従前まで×××等の上場株式のみを所有し、配当収入しかなかったことから、運用先の1つとしたことによるものである。
(4)×××の行員の申述等
 令和5年3月29日又は同月30日、請求人×××及び×××の経理・財務責任者に対し事業承継などの説明を行った×××の行員は、本件調査担当職員に対して、要旨、次のとおり申述した。
イ 平成24年1月11日、請求人×××及び×××の経理・財務責任者に対して、「×××」及び「×××」と題する書面をそれぞれ交付した。当該各書面に基づき、株式保有特定会社に該当していると思われる6社の自社株評価方式の見直し、資産管理会社の組織再編及び贈与などについて、メリット、デメリット及び相続財産軽減効果などを説明した。
  なお、「×××」と題する書面には、「自社株評価方式の見直し」による対応策として、株式保有特定会社に該当していると思われる6社について、資産構成を見直す方策として不動産やリース資産の購入等が考えられる旨、メリットとして、資産管理会社の株式評価に当たり、純資産価額と類似業種比準価額の併用方式等が選択可能になる場合がある旨が、また、「贈与」による対応策として、資産管理会社の株式をはじめとした資産を次世代若しくは次々世代へ贈与する方策として値上がりが期待できる資産について、相続時精算課税制度を利用して贈与する方法もある旨、メリットとして、相続財産の軽減につながるため相続税の軽減効果がある旨がそれぞれ記載されている。
  おって、「×××」と題する書面には、「株式保有特定会社は原則として純資産価額方式により評価する」旨のほか、株式保有特定会社に該当するか否かの判定において「評価する会社の資産構成の変動があり、その変動が株式保有特定会社と判定されることを免れるためのものと認められるときは、その変動はなかったものとして判定を行う」旨、例えば「借入金をして、取得の必然性が低い不要不急の不動産等を購入している場合などは注意が必要である」旨がそれぞれ記載されており、加えて、「不動産(収益物件)を購入して賃貸する場合、土地は路線価、建物は固定資産税評価額を基に算出(取得から3年以内は通常の取引価額で評価)するため、取得から3年以降は純資産価額方式における効果がある」旨も記載されている。
ロ 平成24年4月26日、請求人×××及び×××の経理・財務責任者に対して、「×××」と題する書面を交付した。なお、上記の書面には、×××が×××の不動産を全額借入れにより購入し、当該不動産の3年経過後の相続税評価額が×××であった場合とそれをしなかった場合における、×××の貸借対照表が記載され、加えて、各場合における本件被相続人が所有する本件株式の概算の相続税評価額がそれぞれ比較する形で記載されている。
ハ 平成24年9月3日、請求人×××及び×××の経理・財務責任者に対して、「×××」と題する書面を用いて、本件被相続人の相続を一次相続、本件被相続人の配偶者の相続を二次相続とする各相続における納税資金について、金額や対応策などの概略を説明した。
(5)×××の行員の申述
イ 令和4年9月26日、×××による借入金の稟議書を作成した×××の行員は、本件調査担当職員に対して、要旨、次のとおり申述した。
(イ)平成24年10月頃、×××から×××に対して、融資の申出があったと記憶している。
(ロ)株特外しとは、評価対象の株式について、評価方法の一つである株式保有特定会社から外すことにより、類似業種比準価額と純資産価額の併用方式で評価することになり、当該株式の相続税評価額が安くなるという意味である。
(ハ)×××の借入理由は、相続税対策である株特外しと認識し、先方からも特に借入理由が違うとの話がなかったため、稟議書に「相続税対策である株特外しのための物件購入である」旨記載した。
(ニ)×××が不動産を購入すると保有株式比率の引下げや株特外しのほかに、時価よりも低い路線価で評価されることから、×××の純資産価額の評価減というメリットがある。
ロ 令和5年3月22日又は同年4月13日、×××による借入金の稟議書を作成した×××の行員(上記イに記載した行員とは別の行員)は、本件調査担当職員に対して、要旨、次のとおり申述した。
(イ)×××の経理・財務責任者に対し、本件被相続人の将来の納税資金をどのように確保するのかという観点から、収益性の高い不動産投資によるいわゆる株特外しを提案した。
(ロ)当行以外の他の金融機関が、×××の経理・財務責任者に対し、同様の話をしていたと思う。そして、×××の行員が、×××の経理・財務責任者に対し、株特外しの話をした平成23年5月頃、同責任者は、既に株特外しのことをよく知っていたと思う。
(6)申述の信用性
イ ×××申述について
 ×××の上記(3)の申述は、×××の×××における自身の職務、職責を述べているものであり、特にこれに反する事情もうかがえず、また、×××が基礎事実等の(3)のイのとおり、資産の運用等を主な業務として行っていると認められることとも整合していることから、信用することができる。
ロ ×××の行員の申述について
 ×××の行員の上記(4)の申述は、当該行員の立場からすると、敢えて虚偽の申述をする理由はなく、また、当該行員が請求人×××及び×××の経理・財務責任者に交付等をした資料に基づき述べている点も踏まえると、信用することができる。
ハ ×××の両行員の各申述について
 ×××の両行員の上記(5)の各申述は、株特外しを前提とした提案をしている点で符合しており、また、客観的な事実関係と相反するものはうかがえないことから、信用することができる。
(7)検討
 以下、×××による本件各資産の取得により、本件相続に係る租税負担がどの程度軽減されるか及び本件各資産の取得の意思決定に当たり、本件被相続人又は請求人らに本件相続に係る租税負担の軽減の意図が存していたか否かについて検討する。
イ 本件相続に係る租税負担の軽減の程度について
 上記(2)のニのとおり、本件各資産の取得が行われなければ、×××は株式保有特定会社に該当し、評価通達189−3の定める方法により評価した本件贈与株式の価額は×××となり、同価額に基づく本件相続税に係る課税価格の合計額及び本件相続税の合計額は、それぞれ×××及び×××、本件贈与税の額は×××であるにもかかわらず、本件各資産の取得が行われたことにより、×××は株式保有特定会社に該当しないこととなり、本件贈与株式の価額を評価通達179の(2)の定める方法により評価すると、本件贈与株式の価額は×××にとどまり、その結果、本件相続税に係る課税価格の合計額は×××及び本件相続税の合計額は×××、本件贈与税の額は×××となる。そうすると、本件各資産の取得が行われたことによって、本件相続税の合計額は×××減少(うち請求人らの本件相続税の合計額は×××減少)し、本件贈与税の額は×××減少することとなる。また、本件においては、請求人×××は、相続時精算課税制度を選択してることから、本件贈与税の金額が本件相続税の合計額に影響を与えるところ、×××が株式保有特定会社に該当する場合としない場合における本件贈与税の金額の差異は、上記のとおり、×××であり、相続時精算課税に係る贈与税額控除の額を通じ、本件相続税の合計額に影響を与えることをも考慮すると、本件相続に係る租税負担は、×××減少(うち請求人らの本件相続に係る租税負担は×××減少)することとなる。
 以上のことからすると、本件相続に係る租税負担は著しく軽滅されたといえる。
ロ 本件被相続人又は請求人らに本件相続に係る租税負担の軽減の意図が存していたか否かについて
(イ)×××について
 基礎事実等の(3)のイ及び上記(2)のイのとおり、×××は、×××、不動産の売買等、有価証券の保有、運用等を目的として設立され、本件被相続人は、×××において、設立時から×××まで代表取締役であり、請求人×××は取締役であった。また、基礎事実等の(3)のロのとおり、×××の株主は、×××の一族で占められていた。
 そして、基礎事実等の(3)のリ(別表1−1及び別表1−2)及び上記(2)のロ(別表3及び別表4)のとおり、平成24年3月期ないし平成28年3月期における×××の財務状況等は、不動産、有価証券等及び貸付金が資産合計の約90%を占めている状況であり、売掛金、在庫及び買掛金などの事業用資産等はないこと、主な収入が、不動産賃貸収入等の売上げ及び貸付金等からの営業外収益であること、また、主な費用が資産の取得及び維持費用並びに支払利息であり、人件費が生じていないことからすれば、×××は、独自の営業活動をするものではなく、資産の管理及び運用を主な業務として行っているものと認められる。
 他方、基礎事実等の(3)のイのとおり、本件被相続人及び請求人×××は、取締役会非設置会社である×××の役員であり、基礎事実等の(3)のロのとおり、本件被相続人は、×××の株式全体の95%を保有しており、×××の株主総会の決議のほとんどを単独で行うことができること、更には、上記(3)のハの申述から、×××における多額の投資若しくは出資又は銀行の借入れを伴う重要事項の意思決定については、請求人×××が行い、本件被相続人へは経理・財務責任者を通じて、その意思決定の内容が報告されていたことからすれば、本件被相続人及び請求人×××は、×××の株主又は役員として、直接又は経理・財務責任者を介して、×××がどのような資産をいつ取得するかを決定又は承認する立場にあったと認められる。
 そして、上記のとおり、×××の役員及び株主は、×××の一族で占められていることから、×××は×××の思惑にそった活動を行い、その利益は株主である本件被相続人及び本件被相続人の配偶者等に反映することとなる。そうすると、×××における資産運用等には、×××の財産を増やすこと(上記(3)のニの申述)のみならず、×××全体の資産運用も含まれているものと考えるのが相当であり、上記(3)のイのとおり、×××の経理・財務責任者の申述もこれに沿うものと認められる。
 したがって、×××は、設立目的、役員構成、株主構成、財務状況等、意思決定過程などから、本件被相続人や請求人×××をはじめとする×××のために資産を保有、管理し、本件被相続人や請求人×××などの意図にそうように運営されていたものと認められる。
(ロ)租税負担の軽減の意図について
 A 上記(4)及び(5)の信用できる申述及び上記(4)の請求人×××に交付等された各書面の記載内容によれば、請求人×××と×××の経理・財務責任者は、平成24年1月11日から同年9月3日までの間、3回にわたり、×××の行員と面談し、将来発生する本件被相続人に係る相続税に関する対応策として、不動産の購入により資産構成を見直す方法や相続時精算課税制度を利用して本件株式を贈与する方法についての説明を受けるとともに、現状のまま本件被相続人に係る相続が発生した場合と、×××が資金を借り入れて不動産を取得した場合の本件株式の相続税評価額を比較した説明を受けるなどしているところ、同責任者は、×××の行員と面談した平成23年5月頃、既に、いわゆる株特外しについて理解しており、同行員に対し、借入理由について、いわゆる株特外しであることを否定しなかった事実が認められる。そして、別表1−2のとおり、平成23年3月期における×××の主要資産の構成比をみると、有価証券、投資有価証券及び出資金が全財産の90%を超えることから、本件各資産の取得前の×××は、株式保有特定会社に該当していると認められるところ、基礎事実等の(3)のニないしチのとおり、×××は、平成23年7月8日から平成27年7月29日までの間、5回にわたり、×××から合計×××を借り入れ、これを原資に、本件各資産の取得をした。その結果、基礎事実等の(3)のハ、同リ及び上記(2)のハのとおり、本件各資産の取得前(平成23年6月)における×××の株式保有割合は、50%以上(95.2%、別表1−1及び別表1−2の貸借対照表の資産の部合計に占める割合は90.6%)であったものが、本件贈与の時点(平成28年3月24日)では、50%未満(43.0%、別表1−1及び別表1−2の貸借対照表の資産の部合計に占める割合は39.6%)となっているところ、この時点前、すなわち基礎事実等の(3)のチの資産の取得後において、本件株式について、いわゆる株特外しが実現した。その後、基礎事実等の(3)のヌ及び上記(2)のホのとおり、請求人×××は本件贈与を実行することを決定し、これを承諾した本件被相続人及び請求人×××は、平成28年3月24日、本件贈与を実行し、基礎事実等の(3)のル及び同ヲ並びに上記(2)のホのとおり、請求人×××は、請求人×××に各種手続を委任し、平成29年3月14日、本件贈与株式について、株式保有特定会社に該当しないとして評価した上で相続時精算課税制度を選択して、本件贈与税の申告書を×××に提出したものである。そうすると、×××の行員から、上記のような相続税の軽減に関する方策の説明を受けるなどして、それらにおおむね沿った形で本件各資産の取得の後に本件贈与の実行を決定した請求人×××は、本件各資産の取得がいわゆる株特外しによる相続税の節税効果を意図したものであることを当然に認識していたと認められる。加えて、信用できる上記(3)のハの申述からすれば、×××の経理・財務責任者にとって、×××の業務遂行に関し、多額の投資若しくは出資又は銀行の借入れが必要な場合など重要なものは、請求人×××の承認と本件被相続人への報告が必要であったところ、基礎事実等の(3)のニの貸付けに係る貸付債権の取得について、本件被相続人が相手方であった上、本件各資産の取得は、同ニないしチのとおり、合計×××という多額の借入れを必要とするものであり、上記(2)のロ(別表3及び別表4)のとおり、×××の収益構造を大きく転換するものであった。そして、×××の経理・財務責任者が本件各資産の取得に限って例外的に請求人×××や本件被相続人への報告等を行わなかったことをうかがわせる事情もない。
  これらを前提にすると、本件贈与の実行を決定し、本件贈与に関する手続に関与した請求人×××は、本件被相続人の子であって、×××の役員であるだけでなく、本来は、本件被相続人から本件株式を相続し、本件各資産の取得によって節税効果を受ける立場であり、本件贈与が本件各資産の取得の完了を待って行われたことをそれぞれ考慮すれば、特段の事情がない限り、請求人×××は、本件各資産の取得による節税効果を認識した上で、その効果を受けるべく、本件各資産の取得の意思決定等をしていたものと推認される。
  そして、請求人らから、本件各資産の取得がいわゆる株特外しの目的とは無関係に、多額の銀行の借入れを原資に、比較的短期間に集中的になされた理由を説明する具体的、合理的な主張はなく、また、本件各資産の取得がいわゆる株特外しの目的とは無関係になされ、その後に本件贈与が実行された理由を説明する具体的、合理的な主張もなく、ほかに上記推認を妨げる事情も存しない。
  したがって、請求人×××は、×××の本件各資産の取得に際し、本件相続に係る租税負担の軽減の意図を有していたといえる。
 B 加えて、上記(イ)のとおり、×××は、設立目的、役員構成、株主構成、財務状況等、意思決定過程などから、本件被相続人や請求人×××をはじめとする×××のために資産を保有、管理し、本件被相続人や請求人×××などの意図にそうように運営されていたと認められるところ、本件被相続人は、基礎事実等の(3)のニの貸付けに係る貸付債権の取得について、その相手方であった上、本件贈与の当事者であり、かつ、×××における代表取締役であって、請求人×××が意思決定した重要事項については×××の経理・財務責任者から報告を受けていたことからすると、請求人×××及び×××の行為を容認していたと認められるから、本件被相続人についても×××の本件各資産の取得に際し、本件相続に係る租税負担の軽滅の意図を有していた蓋然性が高いといえる。
ハ 小括
 上記イのとおり、本件各資産の取得により、本件相続に係る租税負担は著しく軽減されたといえ、上記ロのとおり、×××による本件各資産の取得は、本件相続に係る租税負担の軽減をも意図して行われたものといえる事情があるところ、これらの事情の下においては、本件贈与株式の価額について評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが、本件各資産の取得のような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と請求人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであり、合理的な理由があると認められるから、本件贈与株式の価額を評価通達の定めによって評価した価額を上回る価額(国税庁長官の指示を受けて評価した価額)によるものとすることが、租税法上の一般原則としての平等原則に違反するということはできない。
(8)請求人らの主張について
 請求人らは、「請求人ら」欄のとおり、×××による本件各資産の取得は、純投資等を目的としたものであって、本件被相続人及び請求人×××が租税負担の軽減を認識していなかったことは明白であり、本件被相続人及び請求人×××に本件相続に係る租税負担の軽減の意図はなかった旨主張する。
 しかしながら、租税負担の軽減の意図については、他の意図・目的とも併存し得ると考えられるところ、×××による本件各資産の取得に際し、純投資等の目的があったとしても、上記(7)で述べたとおり、請求人×××は、本件各資産の取得に際し、本件相続に係る租税負担の軽減をも意図していたといえることに加え、本件被相続人についても当該軽減の意図を有していた蓋然性が高いことから、請求人らの主張には理由がない。なお、請求人らは、×××が平成20年のリーマンショックを経て、有価証券投資に比して相対的に優れた利回りとなった不動産投資を行うようになったこと及び本件各資産の取得の経緯について縷々主張を展開するものの、当該主張が客観的な証拠に基づくものではないことに加え、当審判所の調査及び審理によってもこれを裏付ける証拠がないことから、これらの主張を採用することはできない。
(9)本件各更正処分の適法性について(略)
(10)本件賦課決定処分の適法性について(略)
(11)結論

 よって、審査請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり裁決する。

別表1−1~別表4(省略)
別紙1(共同審査請求人明細)(省略)
別紙2(本件株式価値算定書の概要)(省略)

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