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解説記事2020年05月25日 解説 スチュワードシップ・コードの再改訂の概要(2020年5月25日号・№835)

解説
スチュワードシップ・コードの再改訂の概要
 金融庁企画市場局企業開示課課長補佐 島貫まどか

Ⅰ はじめに

 2020年3月24日、金融庁に設置された「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」(令和元年度)(座長・神作裕之東京大学大学院法学政治学研究科教授。以下「有識者検討会」という)において、「『責任ある機関投資家』の諸原則《日本版スチュワードシップ・コード》」の再改訂版(以下「再改訂版コード」という)が公表された。スチュワードシップ・コード(以下「本コード」という)は2014年2月に策定、2017年5月に改訂されており、今回が二度目の改訂(以下「本再改訂」という)となる。
 我が国では、2012年の第二次安倍内閣発足以降、政府の成長戦略の一環としてコーポレートガバナンス改革が位置付けられ、本コードとコーポレートガバナンス・コードの策定・改訂等の取組みが進められてきた。その結果、コーポレートガバナンス改革における機関投資家の取組みには一定の進捗がみられる一方で、国内外から、改革の実効性をより高めるべきではないかとの指摘もされているところである。
 こうした中、コーポレートガバナンス改革の実効性をより高めるため、金融庁・東京証券取引所が事務局を務める「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(座長・池尾和人立正大学経済学部教授。以下「フォローアップ会議」という)において、2019年4月24日、「コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討の方向性」と題する意見書(以下「本意見書」という)が公表され、本コードの再改訂を見据えた今後の検討の方向性が示された。
 本意見書の提言を受け、金融庁において2019年10月から3回にわたって有識者検討会を開催し、同年12月20日、有識者検討会は、本コードの再改訂案を公表し、パブリックコメント手続に付した。その後、国内外の67の個人・団体から寄せられたコメントを踏まえ、2020年3月24日に再改訂版コードが公表された。

Ⅱ 本再改訂の内容

 本再改訂の全体像は図表1・図表2のとおりである。本再改訂の内容は、本コード全体に関わる点と、主体(運用機関、アセットオーナー、議決権行使助言会社や年金運用コンサルタントを含む機関投資家向けサービス提供者)ごとの改訂点に大別することができる。

 以下、まず全体に関わる本再改訂の内容について解説し、その後、主体ごとに本再改訂の内容について解説を行う。

1 全体に関する改訂
(1)サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)の考慮(前文、指針1−1、指針1−2、指針4−2、原則7、指針7−1)

 昨今、国内外を問わず、投資家・企業等の間でサステナビリティに対する関心が急速に高まっている。このような状況下で、有識者検討会においても、世界中での昨今のESGを巡る動きの急速な変化に鑑みれば、こうした変化自体がリスクや収益機会に影響を及ぼし得るとの指摘がなされた。
 こうした指摘等を踏まえ、再改訂版コードにおいては、冒頭の「スチュワードシップ責任」の定義における建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)が、「運用戦略に応じたサステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)の考慮」にも基づくことについて、新たに明記されることとなった。
 他方で、本コードに関して、ESG要素の追求は企業価値の向上に資する範囲で行うものとすべきとの意見が有識者検討会で複数出されたことも踏まえ、再改訂版コードでは、スチュワードシップ責任の定義にサステナビリティの考慮を取り入れつつも、本再改訂前と同様に、企業価値の向上や企業の持続的成長を促すことにより、顧客・受益者(最終受益者を含む)の中長期的な投資リターンの拡大を図ることが本コードの目的であるという点は飽くまでも維持することとした。このように、本コードにおいては、本コードの目的に沿う形でサステナビリティの考慮をすることを想定している点には留意が必要である。
 また、再改訂後の指針1−2では、機関投資家がスチュワードシップ責任を果たすための方針において、「運用戦略に応じて、サステナビリティに関する課題をどのように考慮するかについて、検討を行った上で明確に示すべき」との記載を新たに追加している。
 さらに、サステナビリティを巡る課題に関する対話に当たっては、機関投資家は、「運用戦略と整合的で、中長期的な企業価値の向上や企業の持続的成長に結び付くものとなるよう意識すべき」とする指針4−2を新設している。
(2)上場株式以外の資産に投資する機関投資家への本コードの適用(前文10)
 本コードは、従前より、日本の上場株式に投資を行う場合を基本的に念頭に置いている。これに関して、有識者検討会においては、投資先企業との建設的なエンゲージメントを通じて、当該企業の中長期的な企業価値の向上や持続的成長を促すということと同時に、最終受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るというコードの趣旨に照らして考えると、その対象は上場株式にとどまるものではない等の指摘がなされた。これに対し、
・中長期的な観点では株主と社債権者とで利害が一致する場合もあると考えられるが、両者間には利益相反が生じる場合がある
・特に日本の場合には、メインバンクによるデッドガバナンスから株主によるエクイティガバナンスへと移行してきたことに鑑みると、株主資本コストの意識付けや資本生産性の改善等はエクイティガバナンスの規律の中で引き続き定着させていく必要がある
等の指摘もなされた。
 こうした指摘を受け、前文10では、「本コードの冒頭に掲げる『スチュワードシップ責任』の遂行に資する限り」において、本コードを、日本の上場株式以外の資産にも適用することが可能であることが明記された。「本コードの冒頭に掲げる『スチュワードシップ責任』」に言及したのは、日本の上場株式以外の資産に投資する際に本コードを適用する場合であっても、企業価値向上や企業の持続的な成長に向けたスチュワードシップ活動が行われることが期待されることを明示する趣旨である。
(3)「中長期的な企業価値の向上及び持続的な成長」という目的への意識(指針7−4)
 有識者検討会においては、本コードに係る議論の対象が拡大しているところ、企業価値の向上と企業の持続的な成長という本コードの目的への意識が薄れることにより、スチュワードシップ活動が形式的になってしまうのではないか、との指摘がなされた。
 こうした指摘等を踏まえ、再改訂版コードの指針7−4においては、機関投資家が本コードに基づきスチュワードシップ活動を行う際には、本コードの目的を意識した上で、実効的な取組みを進めることが重要であることが明確化された。

2 建設的な対話の促進に向けた運用機関の情報提供の充実
(1)議決権の行使結果の公表の充実(指針5−3)

 フォローアップ会議や有識者検討会では、運用機関については、アセットオーナーへの説明責任を果たすとともに投資先企業との相互理解を深める観点から、個別の議決権行使に係る賛否の理由等の情報提供の充実を促すことが重要であるとの考えが示された。有識者検討会ではさらに、利益相反が懸念される議案や世間で注目されている議案に対して賛否の理由を開示することが望ましい、との意見も出された。
 そこで、指針5−3においては、「特に、外観的に利益相反が疑われる議案や議決権行使の方針に照らして説明を要する判断を行った議案等、投資先企業との建設的な対話に資する観点から重要と判断される議案については、賛否を問わず、その理由を公表すべき」という記載を追加した。ここでの「外観的に利益相反が疑われる議案」に該当すると判断される可能性が高い場合としては、例えば、親会社など、運用機関と同一グループ内の企業における議案などが考えられる。
(2)運用機関の自己評価及びスチュワードシップ活動の結果の公表(指針7−4)
 フォローアップ会議では、投資先企業との対話活動及びその結果や、コードの各原則の実施状況の自己評価等について、説明や情報提供の充実を運用機関に促すことが重要であるとの指摘があった。有識者検討会の議論においても、スチュワードシップ活動の結果を意識することが重要ではないかとの指摘がなされた。
 これらの指摘を踏まえ、再改訂後の指針7−4では、運用機関において定期的に行われる自己評価の結果の公表に合わせ、投資先企業との対話を含むスチュワードシップ活動の結果も公表することを求めている。

3 企業年金等のアセットオーナーによるスチュワードシップ活動の後押し(指針1-3、指針1-4、指針1-5)
 顧客・受益者から投資先企業へと向かう投資資金の流れ(インベストメント・チェーン)全体の機能向上を促すためには、最終受益者の最も近くに位置するアセットオーナーの役割が重要である。このような観点から、2018年のコーポレートガバナンス・コードの改訂において、企業年金がアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう、母体企業による人事面・運営面でのサポートを求める原則2−6が追加された。これを受け、企業年金による本コードの受入れは少しずつ増加しているが、その数は未だ少数に留まっている(次頁図表3参照)。

 フォローアップ会議や有識者検討会では、本コードの受入れが少数に留まっている理由として、アセットオーナーである企業年金等においてスチュワードシップ活動の範囲に関する理解が進んでいないのではないか、との指摘がなされた。金融庁において企業年金等を対象として行ったヒアリングにおいては、規約型企業年金については、本コードの受入れができないのではないかとの誤った認識が広がっているとの声も聞かれたところである。
 こうした指摘を踏まえ、指針1−3では、自家運用を行っていないアセットオーナーに求められるのは、基本的に委託先の運用機関において実効的なスチュワードシップ活動が行われるよう、運用機関に促すということである旨が明確に示された(脚注1)。それに加え、規約型の確定給付企業年金についても本コードの受入れ対象である旨が明確に示された(脚注9)。また、各企業年金によってその規模や体制に差異があること等を踏まえ、指針1−3から指針1−5において、「自らの規模や能力等に応じ」運用機関のモニタリングを行うことが求められていることを明確化した。さらに、アセットオーナーの運用機関に対するモニタリングに際しては、運用機関と投資先企業との間の対話等のスチュワードシップ活動の「質」に重点を置くべきであり、各指針はアセットオーナーから運用機関に対して必ずしも個別詳細な指示を行うことまでを求めるものではないという点も明確化している(脚注12)。
 また、前述のヒアリングにおいては、母体企業の理解があればあるほど企業年金は本コードを受け入れやすくなる、との声も聞かれたところである。
 アセットオーナーの中でも特に企業年金におけるスチュワードシップ活動を促進するためには、その母体企業において、企業年金によるスチュワードシップ活動に対する適確な理解と、企業年金がアセットオーナーとして期待される機能を実効的に発揮するための人事面・運営面でのサポートを行うことが必要不可欠である。この点については、2018年12月に、日本経済団体連合会より会員企業向けに文書を発出しているところである。本再改訂を契機に、母体企業においても、企業年金によるスチュワードシップ活動の促進に向けたサポートが更に進むことを強く期待する。

4 機関投資家向けサービス提供者のサービスの質の向上
(1)機関投資家向けサービス提供者に関する原則の新設(前文9、原則8、指針8−1、指針8−2、指針8−3)

 近年、パッシブ運用が広く行われるようになる中で、機関投資家に対する議決権行使助言会社の影響力の大きさが指摘されている。また、年金運用コンサルタントによる利益相反管理の重要性等も指摘されている。
 これらの指摘を踏まえて、再改訂版コードにおいては、議決権行使助言会社や、従前本コードにおいては明示的に言及されていなかった年金運用コンサルタントを含む概念として、新たに「機関投資家向けサービス提供者」という主体が定義され(前文9)、これについて、新たに原則8、指針8−1、指針8−2、及び指針8−3が設けられた。指針8−1においては、機関投資家向けサービス提供者に対し、利益相反管理体制の整備・公表を求めている。
(2)議決権行使助言会社による助言の透明性の確保(指針8−2、指針8−3)
 フォローアップ会議や有識者検討会では、議決権行使助言会社による助言が正確な情報を前提として透明性をもって発信されるために必要な、個々の企業の状況を実質的に判断するための人的・組織的体制が備わっていないのではないか、との意見等が出された。
 そこで、再改訂版コードの指針8−2においては、議決権行使助言会社に対し、本再改訂前の指針5−5に引き続き、助言の策定プロセス等に関して自らの取組みを公表すべきとしているほか、今回新たに、日本に拠点を設置することを含め十分かつ適切な人的・組織的体制を整備すべきであるとしている。
 また、有識者検討会においては、
・スチュワードシップ・コードの仕組みにおいて議決権行使助言会社は重要なゲートキーパーであるため、建設的な対話の機能も担うべきである
・企業の持続的成長に資する議決権行使の助言が行われるためには、個々の企業に関する正確な情報を前提とした適切な助言が行われることが重要である
との指摘がなされた。これらの指摘等を踏まえ、指針8−3が策定された。具体的には、議決権行使助言会社に対し、「企業の開示情報に基づくほか、必要に応じ、自ら企業と積極的に意見交換しつつ、助言を行うべき」としていることに加え、「企業の求めに応じて、助言の前提となる情報に齟齬がないか等を確認する機会を与え」ること等も、その正確性や透明性の確保に資するとしている。
 一方で、パブリックコメントにおいては、議決権行使助言会社が指針8−3に基づく取組みを行うためには、日本企業の株主総会の開催時期の分散や総会資料の早期開示が必要であり、そうした企業側の取組みがなければ議決権行使助言会社はよりタイトなスケジュールで助言策定を行わざるを得ず、サービスの質の低下が懸念される、との意見も出された。これらについては、投資先企業における取組みも同時に促進していく必要があるため、再改訂版コードと同日に公表した「本コードの再改訂に当たって」において、今後、実態も踏まえながらフォローアップ会議や金融庁を含む関係者において更に検討が進められることを期待するとされている。議決権行使助言会社のサービスの質の向上のためにも、企業においても、株主総会の開催時期の分散や総会資料の早期開示に向けた自主的な取組みが積極的に行われることを期待する。

5 その他
(1)機関投資家の株式の保有状況(脚注15)

 再改訂版コードでは、有識者検討会での議論を踏まえ、脚注15が新たに追加され、機関投資家が企業と対話を行うに当たっては、自らが投資先企業の株式をどの程度保有しているかについて企業に対して説明することが望ましい場合もあることが示された。なお、パブリックコメントにおいて建設的な対話の質と保有株式の多寡は関係するものではないとの指摘があったことを踏まえ、同脚注では「株式保有の多寡にかかわらず、機関投資家と投資先企業との間で建設的な対話が行われるべき」との考え方があわせて明示されている。
(2)非業務執行役員との対話(脚注17)
 有識者検討会においては、投資先企業のガバナンスをより理解し、かつ、より中立的な観点からの対話を進める等の観点から、
・社外取締役に対し、執行側からの説明や資料の提出はあるのか、適時適切な報告がなされているのか等を聞けば、その企業の執行側のガバナンス意識及び非業務執行役員自らが報告を要求しているかどうかの姿勢が分かる
・非業務執行役員と対話を行うことで、非業務執行役員がどの程度ガバナンス等に対する知見を有し、実質的に貢献可能なのかを確かめられる
との指摘があった。これらの指摘を踏まえ、再改訂版コードに脚注17が新たに追加され、例えばガバナンス体制の構築状況や事業ポートフォリオの見直し等の経営上の優先課題については、投資先企業との認識の共有を図るために、業務の執行には携わらない役員との間で対話を行うことも有益と考えられることが示された。
 本脚注17に関しては、パブリックコメントにおいても非常に多くの賛同を得たところであるが、依然として、投資先企業が非業務執行役員との対話に応じない場合があるといった意見も寄せられたところである。企業価値の向上に向けた建設的な対話をより実りあるものとするため、投資先企業の非業務執行役員においても、積極的に機関投資家との建設的な対話に参加し、経営上の優先課題について機関投資家との認識の共有を図ることを期待する。

Ⅲ 本再改訂に伴う公表内容の追加等について

 再改訂前のコードを受け入れている機関投資家等は、再改訂版コードの公表の遅くとも6ヶ月後(2020年9月末)までに、本再改訂の内容を踏まえて、再改訂版コードの各原則(指針を含む)に基づく公表項目(以下「公表項目」という)の更新を行い(あわせて、更新を行った旨も公表)、その旨を金融庁に通知することが求められている。
 再改訂版コードの公表に当たっては、各機関投資家等において、2020年の株主総会シーズンから再改訂版コードを念頭に置いた対応を行うことができるようにとの観点で検討が進められ、2020年3月が公表時期とされた。スチュワードシップ活動をより実効的なものとしていく観点からは、準備が整っている各機関投資家等においては、6ヶ月の期間を待つことなく、率先して本再改訂を踏まえた対応や公表項目の更新を行うことが期待される。機関投資家等による公表が求められる項目については次頁図表4を参照されたい。

【図表4】機関投資家等による公表が求められる項目
※本再改訂により追加された箇所には下線

全ての機関投資家に当てはまるもの
スチュワードシップ方針
(指針1−2)
運用戦略に応じて、サステナビリティに関する課題をどのように考慮するかについて、検討を行った上で、スチュワードシップ責任を果たすための方針を公表
利益相反管理
(指針2−2)
〇あらかじめ想定し得る利益相反の主な類型について、これをどのように実効的に管理するのかについての明確な方針を策定し、これを公表
〇特に運用機関は、議決権行使や対話に重要な影響を及ぼす利益相反が生じ得る局面を具体的に特定し、顧客・受益者の利益を確保するための措置について具体的な方針を策定し、これを公表
議決権行使助言会社の利用
(指針5−4)
議決権行使助言会社のサービスを利用している場合には、議決権の行使結果の公表に合わせ、当該議決権行使助言会社の名称及び当該サービスの具体的な活用方法を公表
議決権行使を行う機関投資家に当てはまるもの
議決権の行使結果
(指針5−3)
〇議決権の行使結果を、個別の投資先企業及び議案ごとに公表(それぞれの機関投資家の置かれた状況により、個別の投資先企業及び議案ごとに議決権の行使結果を公表することが必ずしも適切でないと考えられる場合には、その理由を積極的に説明)
 ※ 個別に公表を行わない場合には、少なくとも議案の主な種類ごとに整理、集計して公表
特に、外観的に利益相反が疑われる議案や議決権行使の方針に照らして説明を要する判断を行った議案等、投資先企業との建設的な対話に資する観点から重要と判断される議案については、賛否を問わず、その理由を公表
 ※ 議決権の行使結果を公表する際、機関投資家が議決権の行使の賛否の理由を対外的に説明することも、可視性を高めることに資する
運用機関に当てはまるもの
利益相反管理
(指針2−3)
顧客・受益者の利益の確保や利益相反防止のため、例えば、独立した取締役会や、議決権行使の意思決定や監督のための第三者委員会などのガバナンス体制を整備し、これを公表
自己評価及びスチュワード
シップ活動の結果
(指針7−4)
本コードの各原則(指針を含む)の実施状況を定期的に自己評価し、自己評価の結果を投資先企業との対話を含むスチュワードシップ活動の結果と合わせて公表
機関投資家向けサービス提供者に当てはまるもの
利益相反管理
(指針8−1)
利益相反が生じ得る局面を具体的に特定し、これをどのように実効的に管理するのかについての明確な方針を策定して、利益相反管理体制を整備するとともに、これらの取組みを公表
議決権行使助言会社に当てはまるもの
助言策定プロセス
(指針8−2)
日本に拠点を設置することを含め十分かつ適切な人的・組織的体制の整備を含む助言策定プロセスを具体的に公表
※ 助言策定プロセスの公表については、一般的に、助言策定に当たって、依拠する主な情報源、対象企業との対話の有無、態様等を公表することが考えられる。

Ⅳ おわりに

 本コードの本来の目的、そして本再改訂の目的が達成されるためには、本コードの受入れを表明している機関投資家等において、今一度本コードの目的・趣旨を確認した上で、自らの行動が真に適切なものとなるよう創意工夫を重ねることが重要であり、それにより、本コードが真に定着していくことが強く期待される。そのためには、機関投資家のみならず、投資先企業においても、本再改訂の趣旨を理解した上で執務を行うことが非常に重要な意味を持つと考える。
 また、本再改訂に係るパブリックコメント手続においては、投資先企業のガバナンスに関するコメントも多くいただいたところであり、再改訂版コードと同日に公表した「スチュワードシップ・コードの再改訂に当たって」の「三 パブリックコメントを踏まえた対応」の3において、それらの指摘の一部を掲載しているところである。それらの指摘についても改めて確認した上で、投資先企業がより質の高いガバナンスを達成するための取組みを行うことが重要である。
 機関投資家・投資先企業共に将来の予測やリスク把握が困難な昨今ではあるが、このような情勢も、真に実効的なスチュワードシップ活動や企業の実効的なガバナンス体制の実現に向けた取組みを考える一つの契機として、機関投資家と投資先企業との対話を通じて企業価値の向上や持続的な成長が促され、中長期的なリターンの拡大に繋がることを期待し、本稿の結びとしたい。

脚注
1 なお、アセットオーナーが直接、議決権行使を伴う資金の運用を行う場合には、本コードは、引き続き、自ら投資先企業との対話等のスチュワードシップ活動に取り組むことを求めている(指針1−3後段参照)。

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