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解説記事2020年07月13日 税務マエストロ 令和元年台風第19号により被災した財産の評価(2020年7月13日号・№842) -租税特別措置法第69条の6・同第69条の7の適用について-

税務マエストロ
令和元年台風第19号により被災した財産の評価
-租税特別措置法第69条の6・同第69条の7の適用について-
#250
 梶野研二(税理士)


略歴
国税庁 課税部 資産評価企画官付企画専門官、同資産課税課課長補佐、東京地方裁判所 裁判所調査官、国税不服審判所本部 国税審判官、東京国税局 課税第一部資産評価官、玉川税務署長などを経て、平成25年6月 税理士登録。現在、相続税を中心に税理士業務を行っている。○主な著書 「ケース別 相続土地の評価減」、「非公開株式評価実務マニュアル」(新日本法規)、「判例・裁決にみる非公開株式評価の実務」(共著)(新日本法規)、「株式・公社債評価の実務」、「土地評価の実務」(共著)(大蔵財務協会)

今回のテーマ

 日本各地に甚大な被害をもたらした令和元年台風第19号は特定非常災害に指定されました。これにより同台風による被害が発生した日より前に被害の著しい一定の地域内に存する土地等や一定の地域内に保有する資産の割合が高い法人の株式等を相続等により取得した場合には、相続税や贈与税の申告期限が令和2年8月11日まで延長されています。延長された申告期限が近づいてきましたので、今回は、同台風により被害を受けた財産の評価方法について説明します。

マエストロの解説

第1 特定の災害が発生した場合の相続税及び贈与税の特例措置の概要

 相続税の申告書は相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に所轄税務署長に提出することとされており(相法27①)、贈与税の申告書は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に納税地の所轄税務署長に提出することとされています(相法28①)。また、相続税及び贈与税(以下「相続税等」といいます。)の課税価格の計算上、相続、遺贈又は贈与(以下「相続等」といいます。)により取得した各財産の価額は、相続開始の日又は贈与を受けた日におけるそれぞれの財産の時価によることとされています(相法22)。
 しかしながら、相続等があった時から相続税等の申告書の提出期限までの間に発生した災害により甚大な被害が生じた場合には、このような原則的な課税は納税者の税負担等の観点からは必ずしも適当ではありません。従来、相続等により取得した財産について物理的な被害を受けた場合には「災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律」(以下「災害減免法」といいます。)により対応し、また、阪神・淡路大震災や東日本大震災が発生した際には各震災特例法の立法による対応が行われてきたところですが、平成29年度税制改正において「被災者の不安を早期に解消するとともに、税制上の対応が復旧や復興の動きに遅れることのないよう」に次の特例措置が設けられました(脚注1)。
① 特定土地等及び特定株式等に係る相続税の課税価格の計算の特例
② 特定土地等及び特定株式等に係る贈与税の課税価格の計算の特例
③ 相続税及び贈与税の申告書の提出期限の延長の特例

1 特定土地等及び特定株式等に係る相続税の課税価格の計算の特例

 相続税の課税価格の計算上、相続や遺贈により取得した財産の価額は、相続開始時における各財産の時価とされており(相法22)、相続開始後に生じた原因により財産の価額が下落したとしても、相続税の課税価格の計算には影響しません。
 しかしながら、特定非常災害の発生日前に相続が開始し、かつ、その相続に係る相続税の申告書の提出期限前に特定非常災害が発生した場合には、相続又は遺贈等により取得した財産のうち、特定非常災害の発生日において所有していた特定土地等又は特定株式等について相続税の課税価格に算入すべき価額は、「第2 令和元年台風第19号による災害の発生直後の価額」で説明する特定非常災害の発生直後の価額とすることができます(措法69の6①)。この特例を適用するためには相続税の申告書又は更正の請求書にこの特例の適用を受ける旨の記載が必要となります(脚注2 3)(措法69の6③)。
 この特例における「特定非常災害」とは、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律第2条第1項の規定により特定非常災害として指定された災害をいいます。令和元年台風第19号は特定非常災害に指定され、その発生日は令和元年10月10日とされています(脚注4)。
 この特例の対象となる「特定土地等」とは、特定非常災害発生日以後に相続税の申告期限の到来する者が、当該特定非常災害発生日前に相続若しくは遺贈により取得した特定地域内にある土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」といいます。)又は贈与により取得した特定地域内にある土地等(当該特定非常災害発生日の属する年(当該特定非常災害発生日が1月1日から当該特定非常災害発生日の属する年分の前年分の贈与税の申告期限までの間にある場合には、その前年)の1月1日から当該特定非常災害発生日の前日までの間に取得したもので、相続税法第19条((相続開始前3年以内に贈与があった場合の相続税額))又は第21条の9((相続時精算課税の選択))第3項の規定の適用を受けるものに限ります。)で当該特定非常災害発生日において所有していたものをいいます。また、「特定株式等」とは、特定非常災害発生日以後に相続税の申告期限の到来する者が、当該特定非常災害発生日前に相続若しくは遺贈により取得した株式及び出資(上場株式等を除きます。以下「株式等」といいます。)又は贈与により取得した株式等(当該特定非常災害発生日の属する年(当該特定非常災害発生日が1月1日から当該特定非常災害発生日の属する年分の前年分の贈与税の申告期限までの間にある場合には、その前年)の1月1日から当該特定非常災害発生日の前日までの間に取得したもので、相続税法第19条又は第21条の9第3項の規定の適用を受けるものに限ります。)で、課税時期において特定地域内にあった動産(金銭及び有価証券を除きます。)、不動産、不動産の上に存する権利及び立木(以下「動産等」といいます。)の価額が保有資産の合計額の10分の3以上である法人の株式等(当該特定非常災害発生日において所有していたものに限ります。)をいいます。
 この「特定土地等」又は「特定株式等」に該当するかどうかを判定する場合の「特定地域」とは、被災者生活再建支援法第3条第1項の規定の適用を受ける地域(同項の規定の適用がない場合には、その特定非常災害により相当な損害を受けた地域として財務大臣が指定する地域)をいいます。令和元年台風第19号に関しては、左表の地域が該当します。

2 特定土地等及び特定株式等に係る贈与税の課税価格の計算の特例

 特定土地等(特定非常災害発生日の属する年(当該特定非常災害発生日が1月1日から当該特定非常災害発生日の属する年分の前年分の贈与税の申告期限までの間にある場合には、その前年)の1月1日から当該特定非常災害発生日の前日までの間に贈与により取得した特定地域内にある土地等で当該特定非常災害発生日において所有していたものをいいます。)及び特定株式等(特定非常災害発生日の属する年(当該特定非常災害発生日が1月1日から当該特定非常災害発生日の属する年分の前年分の贈与税の申告期限までの間にある場合には、その前年)の1月1日から当該特定非常災害発生日の前日までの間に贈与により取得した株式等で、課税時期において特定地域内にあった動産等の価額が保有資産の合計額の10分の3以上である法人の株式等(当該特定非常災害発生日において所有していたものに限ります。)をいいます。)については、贈与税の課税価格に算入すべき価額は、「第2 令和元年台風第19号による災害の発生直後の価額」で説明する特定非常災害の発生直後の価額とすることができます(措法69の7①)。この特例を適用するためには贈与税の申告書又は更正の請求書にこの特例の適用を受ける旨の記載が必要となります(脚注5 6)(措法69の7②)。

3 相続税及び贈与税の申告書の提出期限の延長の特例

(1)相続税の申告書の提出期限
 相続税の申告書は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に提出しなければなりません。しかしながら、この本来の提出期限までの間に災害が発生した場合には、本来の申告書の提出期限内に申告をすることが困難となることも考えられます。そこで、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者のうちに、上記1の特例の適用を受けることのできる者がいる場合で、本来の申告書の提出期限が次の①又は②の前日以前であるときには、その相続又は遺贈により財産を取得した相続人及び受遺者の相続税の申告書の提出期限は、次の①又は②のいずれか遅い日(以下「特定日」といいます。)となります(措法69の8①)(脚注7)。
① 特定非常災害に係る国税通則法第11条の規定により延長された申告期限
  一定の地域内に納税地のある者について、国税通則法第11条及び国税通則法施行令第3条第1項の規定に基づく国税庁告示により申告期限が延長されています(地域指定)(脚注8)。なお、延長される期限は、令和2年8月31日とされました(脚注9)。
  なお、国税庁告示により指定された地域以外に納税地のある者についても、所轄税務署長が、令和元年台風第19号による災害により、申告、申請、納付等をその期限までに行うことができないと認めるときは、納税者の申請に基づいて、期日を指定して期限の延長が行われます(個別指定)(通令3③)。
② 特定非常災害発生日の翌日から10か月を経過する日
  令和元年台風第19号に係る特定非常災害発生日は、令和元年10月10日ですので、その日の翌日から10か月を経過する日は、令和2年8月10日ですが、同日は祝日(山の日)であるため、その翌日である令和2年8月11日が申告書の提出期限となります。
 したがって、同一の被相続人から相続等により財産を取得した相続人又は受遺者の中に特定土地等又は特定株式等を相続等により取得した者がいる場合にはその全員の相続税の申告書の提出期限が令和2年8月11日まで(①が適用される者については令和2年8月31日まで。ただし、個別指定があった場合には、指定された期限まで。)延長されることとなります。
(2)贈与税の申告書の提出期限
 贈与税の申告書は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に納税地の所轄税務署長に提出することとされています(相法28①)が、特定非常災害発生日の属する年(当該特定非常災害発生日が1月1日から当該特定非常災害発生日の属する年分の前年分の贈与税の申告期限までの間にある場合には、その前年)の1月1日から12月31日までの間に贈与により財産を取得した個人で上記2の特例を適用することができる者については、この本来の贈与税の申告書の提出期限が上記(1)の特定日の前日以前であるときには、その贈与税の申告書の提出期限は、上記(1)の特定日となります(措法69の8③)。

第2 令和元年台風第19号による災害の発生直後の価額

1 特定土地等についての令和元年台風第19号による災害の発生直後の価額

 特定土地等の特定非常災害の発生直後の価額については、特定土地等の課税時期における現況が特定非常災害の発生直後も継続していたものとみなして当該特定土地等を評価した価額とされています(措令40の2の3③一)。したがって、特定土地等について、課税時期から特定非常災害の発生直後までの間に区画形質や権利関係の変更等があった場合でも、これらの事由は考慮しません(措通69の6・69の7共−2)。
 相続等により取得した土地等は、路線価方式又は倍率方式により評価することとなりますが、これらの方式における路線価や評価倍率は、毎年1月1日を評価時点として、1年間を通して適用されることとされていることから、その年中における災害等による地価下落は、路線価や評価倍率の評定に織り込まれていません。
 そこで、実務的には、特定土地等の特定非常災害の発生直後の価額は、各国税局長が不動産鑑定士等の意見を基として特定地域内の一定の地域ごとに特定土地等の特定非常災害の発生直後の価額を算出するための率(以下「調整率」といいます。)を別途定めている場合には、特定非常災害発生日の属する年分の路線価及び評価倍率にこの調整率を乗じたものを当該年分の路線価及び評価倍率として評価することができるものとされています(措通69の6・69の7共−2なお書き)。令和元年台風第19号に係る特定地域における特定非常災害の発生直後の価額についても、令和2年2月26日に、特定地域に指定された各地域ごと、かつ地目の別に定められた調整率が公表されましたので、令和元年分の路線価又は評価倍率にこの調整率を乗じて求めた価格を令和元年分の路線価及び倍率として特定非常災害発生直後の特定土地等の価額を算定することができます(脚注10)。この調整率表は、国税庁ホームページで確認することができます。

【設例1】路線価地域にある宅地(自用地の場合)
(問)路線価地域に所在する特定土地等である次の宅地はどのように評価しますか。

  令和元年分の路線価  120,000 円
  地区区分       普通住宅地区
  調整率        0.90
  地積         450㎡
  奥行距離       25m
  利用区分       自用地

(答)特定土地等が路線価地域にある場合の「令和元年台風第19号の発生直後の価額」は、令和元年分の路線価に「調整率」を乗じて求めた調整率適用後の路線価を基に、奥行価格補正等の画地計算を行います。

(令和元年分の路線価) (調整率) (調整率適用後の路線価)
   120,000 円   ×  0.90 =   108,000 円
(調整率適用後の路線価)(奥行価格補正率)  (地積)  (特定非常災害発生直後の価額)
   108,000円   ×     0.97   ×  450㎡ =   47,142,000円

【設例2】路線価地域にある宅地(貸家建付地の場合)
(問)路線価地域に所在する特定土地等である次の貸家建付地はどのように評価しますか。

  令和元年分の路線価  200,000 円
  地区区分       普通住宅地区
  調整率        0.95
  地積         300㎡
  奥行距離       20m
  利用区分       貸家建付地
  借地権割合      60%
  借家権割合      30%

(答)特定土地等が貸宅地、貸家建付地、借地権などである場合には、調整率適用後の路線価により計算した自用地としての価額を基に、貸宅地、貸家建付地、借地権などとしての価額を計算します。

(令和元年分の路線価)  (調整率)  (調整率適用後の路線価)
   200,000円    ×  0.95  =    190,000円
(調整率適用後の路線価)(奥行価格補正率)(地積) (特定非常災害発生直後の自用地としての価額)
   190,000円    ×  1.00    × 300㎡ =     57,000,000円
(特定非常災害発生直後の自用地としての価額)    (特定非常災害発生直後の価額)
   57,000,000円 × (1− 0.6 × 0.3)    =     46,740,000円

【設例3】課税時期後に借家人が退去した場合
(問)課税時期に貸家の敷地(貸家建付地)として利用していましたが、その後、借家人が転居してしまい令和元年台風第19号による被害発生時にはその建物は空き家となっていました。特定非常災害発生直後の価額を算定する際には、自用地として評価しなければならないのですか。

(答)特定土地等の特定非常災害の発生直後の価額については、租税特別措置法施行令第40条の2の3第3項第1号の規定により、特定土地等の課税時期における現況が特定非常災害の発生直後も継続していたものとみなして当該特定土地等を評価した価額とされています(措令40の2の3③一)。したがって、特定非常災害発生時に空き家の敷地となっていた特定土地等であっても、課税時期において貸家建付地に該当するものであれば、貸家建付地として特定非常災害の発生直後の価額を算定することとなります。

【設例4】倍率地域にある宅地
(問)倍率地域に所在する特定土地等である次の宅地はどのように評価しますか。

  令和元年分の固定資産税評価額  12,000,000 円
  令和元年分の評価倍率      1.1
  調整率             0.95
  地積              300㎡
  利用区分            自用地

(答)特定土地等が倍率地域にある場合の「令和元年台風第19号の発生直後の価額」は、令和元年分の評価倍率に「調整率」を乗じて計算します。なお、評価対象地が貸宅地、貸家建付地、借地権などである場合には、調整率適用後の路線価により計算した自用地としての価額を基に、貸宅地、貸家建付地、借地権などとしての価額を計算します。

(令和元年分の評価倍率)  (調整率)  (調整率適用後の評価倍率)
     1.1      ×  0.90 =     0.99
(令和元年分の固定資産税評価額)(調整率適用後の評価倍率)(特定非常災害発生直後の価額)
   12,000,000円      ×      0.99     =    11,880,000円

2 特定株式等についての令和元年台風第19号による災害の発生直後の価額

 特定株式等の特定非常災害の発生直後の価額は、課税時期において当該特定株式等に係る株式の発行法人又は出資のされている法人が保有していた特定地域内にある動産等(当該法人が特定非常災害発生日において保有していたものに限ります。)の課税時期における状況が特定非常災害の発生直後の現況にあつたものとみなして、当該課税時期における当該特定株式等の価額として評価した額に相当する金額となります(措令40の2の3③二)。この金額は、実務上は、財産評価基本通達(以下「評価通達」といいます。)の定めによって評価した1株当たりの特定株式等の価額にその特定株式等の数を乗じて計算した額によることとなりますが、具体的な計算は次によります(措通69の6・69の7共−4)。
 なお、特定株式等を評価する場合において、同族株主に該当するかどうかの判定、評価対象法人の規模等の判定及び特定株式等が特定の評価会社の株式のいずれかに該当するかどうかの判定は課税時期における評価対象法人の現況によって行います(措通69の6・69の7共−5)(脚注11)。
(1)類似業種比準方式によって評価する場合(措通69の6・69の7共−4(1))
 評価通達183((評価会社の1株当たりの配当金額等の計算))に定める評価会社の「1株当たりの配当金額」、「1株当たりの利益金額」及び「1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)」を次のとおり計算した金額によって評価した1株当たりの特定株式等の価額
 イ 1株当たりの配当金額
  次のロにより計算した「1株当たりの利益金額」を基に次の算式により求めた金額

 ロ 1株当たりの利益金額
  評価通達183(2)に定めるところにより計算した「1株当たりの利益金額」と特定非常災害の発生直後の状況に基づいて合理的に見積もった特定非常災害発生日の属する事業年度の末日以前1年間における所得金額を基として計算した利益金額の見積額(以下「見積利益金額」といいます。)を直前期末における発行済株式数(1株当たりの資本金等の額が50円以外の金額である場合には、直前期末における資本金等の額を50円で除して計算した数によるものとします。)で除して計算した金額との合計額(その金額が負数のときは0円とします。)の2分の1に相当する金額

  この場合の見積利益金額は、具体的には、次のとおり計算します(脚注12)。
(イ)評価対象法人が相続税等の申告期限までに決算を了している場合
  被災事業年度の所得金額を基として計算した利益金額が把握できるときには、その利益金額によります。
(ロ)評価対象法人が相続税等の申告期限までに決算を了していない場合
  合理的に見積もった被災事業年度の所得金額を基として計算した利益金額とします。
  例えば、被災事業年度における法人税法第72条((仮決算をした場合の中間申告書の記載事項等))第1項に規定する所得の金額又は欠損金額(以下「中間所得金額」といいます。)がある場合には、被災事業年度の所得金額を被災事業年度の前の事業年度における確定決算に基づく所得金額に、その事業年度における中間所得金額に対する被災事業年度における中間所得金額の割合を乗じて計算した金額とする方法等が考えられます。

【設例5】見積利益金額の算定
(問)次の場合、被災事業年度の1株当たりの見積利益金額をどのように求めればよいでしょうか。

被災事業年度の前の事業年度における所得金額        80,000千円
被災事業年度の前の事業年度における中間所得金額      32,000千円
被災事業年度の中間所得金額                15,000千円
1株当たりの資本金等の額を50円とした場合の発行済株式数   10,000株

(答)次のように計算することができます。

ハ 1株当たりの純資産価額(帳薄価額によって計算した金額)
  評価通達183(3)に定める「1株当たりの純資産価額(帳簿価額によって計算した金額)」
  ただし、上記ロの見積利益金額が欠損となる場合には、次に掲げる金額の合計額を直前期末における発行済株式数で除して計算した金額とします。
(イ)評価通達183(3)に定める直前期末における資本金等の額
(ロ)評価通達183(3)に定める法人税法第2条第18号に規定する利益積立金額に相当する金額(法人税申告書別表五(一)「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」の差引翌期首現在利益積立金額の差引合計額)
(ハ)上記ロに定める見積利益金額
(注)上記(イ)から(ハ)の合計額が負数となる場合には、その金額は0となります。
(2)純資産価額方式によって評価する場合(措通69の6・69の7共−4(2))
 課税時期において特定地域内にあった動産等(評価対象法人が特定非常災害発生日において保有していたものに限ります。)の状況が特定非常災害の発生直後の現況にあったものとみなして特定非常災害の発生直後におけるその動産等の価額(以下「直後価額」といいます。)を評価した場合の各資産の価額の合計額が、同項に定める「課税時期における各資産をこの通達の定めるところにより評価した価額の合計額」であるものとして評価した1株当たりの特定株式等の価額
 なお、次の点に注意する必要があります。
イ 評価対象法人が特定地域内に有する土地等の直後価額は、特定土地等と同様に、特定非常災害発生日の属する年分の路線価及び倍率に「調整率」を乗じたものをその年分の路線価及び倍率として評価することができます。
(注)租税特別措置法施行令の規定によれば、①特定株式等を純資産価額方式で評価する場合における評価対象法人が保有していた特定地域内の土地等の「直後価額」と②特定土地等の「特定非常災害の発生直後の価額(特定非常災害後を基準とした価額)」とでは、下表のとおり評価単位や特定非常災害による物理的な損失の取扱い等が異なることに注意する必要があります(脚注13)。

ロ 評価対象法人が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地及び土地の上に存する権利並びに家屋及びその附属設備又は構築物の価額についても、特定非常災害の発生直後におけるこれらの資産の価額として評価することとなります(措通69の6・69の7共−4(2)(注))。
ハ 評価対象法人が課税時期に保有していた動産等を特定非常災害発生日前に売却している場合には、そのような動産等の価額は、原則どおり課税時期における相続税評価額によることとなります。一方、特定非常災害により滅失した動産等については、特定非常災害発生日に保有していたと認められますので、その価額は「直後価額」によることになります(脚注14)。
ニ 特定非常災害により動産等が滅失又は毀損したことによって損害保険金請求権が発生した場合には、その動産等を「直後価額」によって評価したものを純資産価額に計上し、その損害保険金請求権については純資産価額には計上しません(脚注15)。
ホ 特定非常災害に係る特例の適用を受ける特定株式等を純資産価額方式により評価する場合における特定地域内にある被災した家屋の価額は「直後価額」によることになります。
  家屋の「直後価額」については、評価通達89((家屋の評価))の定めにより評価した特定非常災害の発生直前の家屋の価額から、その価額に地方税法第367条((固定資産税の減免))の規定に基づき条例に定めるところによりその被災した家屋に適用された固定資産税の軽減又は免除の割合を乗じて計算した金額を控除した金額によって評価することができます(脚注16)。これを算式で示すと、下記のとおりとなります。

(注)特定非常災害の発生に伴い地方税法等において固定資産税の課税の免除等の規定が別途定められた場合についても、同様に取り扱います。
  なお、地方公共団体において家屋の固定資産税の減免を行っていない場合など、上記の取扱いの対象とならない場合であっても、被災した家屋について、特定非常災害の発生直前の固定資産税評価額によって家屋を評価することが適当でないと認められる場合には、被害の状況を反映して評価することとなります。例えば、その家屋の損害の程度に応じて「災害被害者に対する地方税の減免措置等について(平成12年自治省事務次官通知)」に定める家屋の固定資産税の軽減又は免除の割合を乗じて計算した金額を控除することなどが考えられます。
(参考)「災害被害者に対する地方税の減免措置等について(平成12年自治省事務次官通知)」に定める家屋の固定資産税の軽減又は免除の割合
  (損害の程度)(軽減又は免除の割合)
①全壊、流失、埋没、復旧不能等 全部
②10分の6以上の価値減10分の8
③10分の4以上10分の6未満の価値減10分の6
④10分の2以上10分の4未満の価値減10分の4
(3)類似業種比準方式と純資産価額方式との併用方式によって評価する場合
 類似業種比準方式及び純資産価額方式の併用方式により評価する特定株式等の「特定非常災害の発生直後の価額(特定非常災害発生後を基準とした価額)」は、上記(1)及び(2)に基づき計算することができます。ただし、純資産価額方式による価額を「特定非常災害の発生直後の価額(特定非常災害発生後を基準とした価額)」により評価した場合には、類似業種比準方式による価額も「特定非常災害の発生直後の価額(特定非常災害発生後を基準とした価額)」により評価しなければなりません(脚注17)。
(4)配当還元方式によって評価する場合(措通69の6・69の7共−4(3))
 評価通達188−2に定める評価会社の「その株式に係る年配当金額」を上記(1)イにより計算した金額(ただし、その金額が2円50銭未満のものにあっては2円50銭とします。)によって評価した1株当たりの特定株式等の価額

第3 災害減免法との関係

 租税特別措置法第69条の6及び第69条の7は、相続税等の申告書の提出期限までに特定非常災害が発生した場合における特定土地等又は特定株式等について課税価格の計算の特例を定めたものです。したがって、これらの財産以外の財産については相続等により取得した後、相続税等の申告書の提出期限までの間に災害により被害を受けたとしてもこれらの特例を適用することはできません。また、これらの特例の適用上、特定土地等の価額は、特定土地等の課税時期における現況が特定非常災害の発生直後も継続していたものとみなして当該特定土地等を評価した価額とされていますので、特定土地等について、物理的な損失が生じた場合には、これらの特例においては考慮されません(措通69の6・69の7共−2)。
 しかしながら、相続等により取得した財産(以下「相続財産等」といいます。)について 災害により被害を受けた者で、次の①又は②のいずれかに該当するときは、災害減免法により、相続税等が減免されます(災害減免法6、災害減免法令12①)。なお、この場合の災害は、震災、風水害、落雷、火災その他これらに類する災害をいい(災害減免法1)、特定非常災害に限られません。
① 相続税等の課税価格の計算の基礎となった財産の価額(相続税については債務控除後の価額)のうちに被害を受けた部分の価額の占める割合が10分の1以上であること。
② 相続税等の課税価格の計算の基礎となった動産等(脚注18)の価額のうちに当該動産等について被害を受けた部分の価額の占める割合が10分の1以上であること。
 相続税等の申告書の提出期限前に災害により被害を受けた場合で、①又は②に該当するときには、相続税等の課税価格に算入する価額は次の算式により計算した金額とされます(脚注19)。

【設例6】土砂崩れなどのあった特定土地等
(問)土砂崩れ等が生じた特定土地等はどのように評価するのですか。

(答)上記①又は②の要件に該当する場合には、土砂崩れ等により物理的な損失が生じた特定土地等については、災害減免法第6条と特定非常災害に係る特例の両方を適用することができます。
  この場合には、特定非常災害に係る特例を適用して特定非常災害発生日の属する年分の路線価及び倍率に「調整率」を乗じたものを基に計算した価額から災害減免法第6条を適用して「被害を受けた部分の価額」を控除した額が、その特定土地等に係る相続税等の課税価格に算入すべき価額となります(脚注21)。

第4 令和元年台風第19号による災害の発生日以後に取得した財産の評価

 上記第1から第3では、令和元年台風第19号による災害発生日前に相続等により取得した財産で、その相続等による相続税等の申告期限が令和元年台風第19号による災害発生日以後である場合における相続税等の課税価格の計算に関する特例措置について説明しました。
 相続等により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価によることとされています(相法22)ので、災害発生後に、当該災害により被害を受けた財産を取得した場合には、被災後の価額により評価することとなりますので、相続税等の課税価格の計算に関して、制度上、特別の措置を講じる必要はありません。
 しかしながら、実務上、相続等により取得した財産の価額は評価通達の定めに従って評価しているところ、この評価通達の定めが、被災した財産の評価に必ずしも対応していないことから、被災した財産の評価については、一般的な評価方法の一部を修正して評価方法とすることとなります(脚注22)。
 以下では、令和元年台風第19号による災害の発生日以後に取得した財産の具体的な評価方法について説明します。
 令和元年台風第19号による災害の発生日以後令和元年12月31日までの間に相続等により取得した特定非常災害により被災した土地等については、次のとおり評価することができます(脚注23 24)。
(1)その土地等が特定地域内にある場合
 この場合の土地等の価額については、「特定非常災害の発生直後の価額(特定非常災害発生後を基準とした価額)」の評価方法に準じて評価することができます(特定非常災害発生後評価通達2)。具体的には、特定非常災害発生日の属する年分の路線価及び倍率に、上記第2の「1 特定土地等についての令和元年台風第19号による災害の発生直後の価額」で説明した特定土地等の特定非常災害の発生直後の価額を算出するための「調整率」を乗じたものをもって令和元年分の路線価及び倍率として評価することができます。
(2)その土地等が特定地域外にある場合
 この場合の土地等の価額については、原則として課税時期の現況に応じ評価通達の定めるところにより評価することになります。
 なお、豪雨により土砂崩れが生じたことなどによって、土地そのものの形状が変わったことによる被害(物理的な損失)が生じている土地等については、通常、一定の費用を投下することで特定非常災害の発生前の状態に復帰するため、特定非常災害による物理的な損失がないものとした場合の土地等の価額から原状回復費用相当額を控除して評価します(特定非常災害発生後通達(注)なお書き)。この場合の原状回復費用相当額については、①原状回復費用の見積額の100分の80に相当する金額、又は②市街地農地等を宅地に転用する場合において通常必要とされる宅地造成費相当額から算定した金額として差し支えないこととされています(脚注25)。

2 被災した家屋の評価

 令和元年台風第19号により被災した家屋について、被災後の現況に応じた固定資産税評価額が付されていない場合には、第2の「2 特定株式等についての令和元年台風第19号による災害の発生直後の価額」の「(2)純資産価額方式によって評価する場合」のホと同様に評価します(脚注26)。
 被災した家屋について修理、改良等を行っている場合の評価については、上記により計算した金額に災害発生直後から課税時期までに投下したその修理、改良等に係る費用現価の100分の70に相当する金額を加算して評価します(特定非常災害後通達6)。ただし、上記により計算した金額と修理、改良等(その価値を増すような工事(増改築等)を除きます。)に係る費用現価の100分の70に相当する金額の合計額が、災害の発生直前の家屋の価額を超える場合には、災害発生直前の固定資産税評価額により評価して差し支えありません(脚注27)。

3 株式等の評価

 特定地域内に保有する資産の割合が高い法人(特定非常災害発生日において保有していた資産の特定非常災害の発生直前の価額(特定非常災害の発生直前における時価をいう。)の合計額のうちに占める特定地域内にあった動産等の価額の合計額の割合が10分の3以上である法人の株式又は出資をいいます。)の株式等につき、評価通達180((類似業種比準価額))に定める類似業種比準価額により評価することとなる場合において、課税時期が特定非常災害発生日から同日の属する事業年度の末日までの間にあるときには、第22の「(1)類似業種比準方式によって評価する場合」に準じて評価することができます(脚注28)。
 また、評価対象法人の株式又は出資につき、評価通達185((純資産価額))に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」により評価することとなる場合には、評価対象法人が課税時期に有する資産を課税時期の現況に応じて評価することとなります。評価対象法人の有する資産の中に被災した土地等又は家屋がある場合には、上記1又は2により評価することとなります。なお、評価対象法人の各資産のうちに、評価対象法人が課税時期前3年以内に取得又は新築した特定地域内の土地等並びに家屋及びその附属設備又は構築物(以下「家屋等」という。)で、かつ、評価対象法人が特定非常災害発生日前に取得又は新築したものがあるときには、課税時期が特定非常災害発生日から起算して3年を経過する日までの間にあるときに限り、その土地等及び家屋等の価額については、評価通達185のかっこ書の定めを適用しないことができます(脚注29)。

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脚注
1 「平成29年度版 税制改正のすべて」(大蔵財務協会)582頁参照。
2  国税庁は、相続税申告書第11表の該当財産の「所在場所等」欄に、「(措置法69条の6第1項適用)」と記載する記載例を公表しています(平成30年1月15日付資産評価企画官情報第1号「特定土地等及び特定株式等に係る相続税の課税価格の計算の特例(措置法69の6)並びに特定土地等及び特定株式等に係る贈与税の課税価格の計算の特例(措置法69の7)に規定する特定土地等及び特定株式等の評価に関する質疑応答事例集」の送付について(情報)」(以下「情報1号」といいます。)Q1)。
3  相続税の申告書又は更正の請求書にこの特例の適用を受ける旨の記載をしなかった場合においても、その記載がなかったことについてやむを得ない事情があると税務署長が認めるときには、この特例を適用することができます(措法69の6③ただし書き)。
4 「令和元年台風第19号による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」(令和元年政令第129号)。
5 贈与税申告書第1表の該当財産の「所在場所等」欄に、「(措置法69条の7第1項適用)」と記載します。
6 贈与税の申告書又は更正の請求書にこの特例の適用を受ける旨の記載をしなかった場合においても、その記載がなかったことについてやむを得ない事情があると税務署長が認めるときには、この特例を適用することができます(措法69の7②)。
7 相続税の申告書の提出期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内とされていることから、相続の開始があったことを知った日が、相続の開始のあった日よりも後の日である場合には、本来の提出期限が①又は②の日よりも後の日となることがあります。この場合には本来の申告書の提出期限が優先されることとなります(措法69の8①)。
8 令和元年台風第19号に関しては、令和元年11月1日国税庁告示第13号により岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県及び長野県の一部の地域が指定されています。この指定された地域は、国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/law/kokuji/pdf/0019010-151.pdf)で確認することができます。
9 令和2年7月1日国税庁告示第9号。
10 一般的には、この方法により、特定非常災害の発生直後の特定土地等の価額を算定することとなりますが、この方法により算定した価額が、特定非常災害の発生直後の特定土地等の価額を上回る場合には、他の合理的な方法により特定非常災害の発生直後の特定土地等の価額を算定することができます。
11 前掲情報1号Q10,Q11,Q12。
12 前掲情報1号Q14。
13 前掲情報1号Q16。
14 前掲情報1号Q15(注)2。
15 前掲情報1号Q15(注)3。
16 前掲情報1号Q17。
17 前掲情報1号Q19。
18 動産等とは、動産(金銭及び有価証券を除きます。)、不動産(土地及び土地の上に存する権利を除きます。)及び立木をいいます(災害減免法令11①二)。
19 相続税等の申告書の提出期限後に相続等により取得した財産が災害により被害を受けた場合には、「被害のあった日以後に納付すべき相続税額又は贈与税額」(延納中の税額や延納又は物納の許可前の徴収猶予中の税額、農地等についての相続税等の納税猶予の特例の適用を受けている税額等をいいます。)のうち一定の税額が免除されます(災害減免法4)。
20 「相続財産等の価額」は、相続税の場合は、申告書第11表の「価額」(相続税の評価額)となります。なお、小規模宅地等の特例などの課税価格の計算の特例の適用を受けている場合は、適用後の価額となります。
21  前掲情報1号Q2。
22 平成29年4月12日付課評2.10ほか「特定非常災害発生日以後に相続等により取得した財産の評価について(法令解釈通達)」(以下「特定非常災害発生後評価通達」といいます。)に具体的な評価方法が定められています。
23 平成30年1月15日付資産評価企画官情報第2号「「特定非常災害発生日以後に相続等により取得した財産の評価に関する質疑応答事例集」の送付について(情報)」(以下「情報2号」といいます。)Q1。
24 令和2年1月1日以後に相続等により取得した土地等については、被災後の状況を織り込んだ路線価及び評価倍率が付されることとなりますので、調整計算は不要となります。
25 前掲情報2号Q3。
26 前掲情報2号Q10。
27 前掲情報2号Q11。
28 特定非常災害後評価通達8、前掲情報2号Q15、Q16。
29 特定非常災害後評価通達9、前掲情報2号Q17。

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