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厚生・労働2014年06月06日 非正規雇用をめぐる法改正と紛争リスク 執筆者:山口寛志

 総務省の「労働力調査」によると、平成24年時点でパート、契約社員等の非正規労働者の割合は全労働者の35.2%になり、3人に1人以上を占めるという結果が出ています。この割合はここ30年で約2倍となり、バブル崩壊以降、正社員数の伸びが抑えられ、その代わりに短時間労働、有期雇用等を特徴とした非正規労働者数が増加していることを示しています。
 そうした中、国は非正規労働者の雇用安定化を図るべく、労働法の規制強化に動いています。
 最近では平成25年4月に労働契約法が改正され、有期労働契約期間が5年を超え労働者が申込みをした場合には無期労働契約に転換される制度や、有期契約労働者と無期契約労働者との間で期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止する規定等ができました。
 また、同じく平成25年4月に高年齢者雇用安定法が改正され、定年後の継続雇用者について対象者を限定できる仕組みが廃止され、経過措置はあるものの原則として65歳まで希望者全員を継続雇用の対象とすることが義務付けられました。
 この流れは平成26年になっても続き、4月23日にパート(短時間労働者)の公正な待遇を確保し、雇用環境の改善を図ることを目的としてパートタイム労働法の改正法が公布されました(施行は平成26年4月23日から1年以内)。
 その主要な改正点として、通常の労働者(正社員)との差別的取扱いが禁止される短時間労働者の対象範囲の拡大が挙げられます。現行のパートタイム労働法8条(改正法9条)では、差別的取扱いが禁止される短時間労働者として次の3つの要件がありました。
 ① 職務の内容が同じ
 ② 人材活用の仕組みや運用が同じ
 ③ 無期労働契約になっている
 今回の改正により、③無期労働契約の要件がなくなり、①と②に該当すれば、有期労働契約の短時間労働者も賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、通常の労働者との差別的取扱いが禁止されることとなりました。
 このような法規制により、正社員と短時間労働者との待遇の差が差別的取扱いとされないために雇用形態区分の整理が求められているといえますが、平成25年12月にこの現行法8条(改正法9条)違反を認める判決が出ましたのでご紹介します(N社事件・大分地判平25・12・10労経速2202・3)。
 本件は、運送会社で1日所定労働7時間の準社員として勤める原告労働者が、フルタイムの正社員と職務内容や人材活用の仕組み等が同一であるとして、正社員との賃金差額や慰謝料等を求めた事案です。被告会社は、ドライバーの職務に関して正社員と準社員とで違いはないと認めたものの、転勤や役職への任命等の扱いで差異があると主張しました。
 判決では、転勤、出向、業務内容の変更等の有無について、正社員と準社員とでは就業規則上で明確な違いがみられたものの、実態として正社員の転勤や出向は極めて少なく、チーフやグループ長といった役職への任命についても準社員が対象になった事例もあるとして、配置の変更範囲が大きく異なっていたとはいえないと判断されました。結果として、職務内容だけでなく人材活用の仕組みも正社員と同一であり、正社員と準社員とで賞与額や週休日、退職金の支給の有無が異なる点は現行法8条1項に違反すると認められました。
その他、本年5月に提訴されたメトロコマース(東京メトロの子会社)や日本郵便の労働契約法20条訴訟等、正社員と非正規労働者との間の待遇格差をめぐる紛争が拡大する可能性もあります。
 今回、このような紛争リスクを回避するには日頃どのような点に気を付けて労務管理をしていけばよいかを明らかにすることを目的として、「裁判事例から見える 労務管理の対応策」を執筆しました。この非正規雇用に関係するテーマのほか、労働時間、賃金、解雇、安全配慮義務等、労務管理の広範なテーマを扱っています。
 ぜひ労務管理の実務でお役立ていただければ幸いです。

(2014年5月執筆)

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