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相続・遺言2008年02月25日 遺言 その重要性と新たな可能性 執筆者:中込一洋

1 遺言信託を知っていますか?

 遺言信託とは、遺言によって信託を設定する方法です。ここにいう信託とは、委託者が一定の方法により受託者に財産を帰属させ、受託者が信託目的に従い、財産の管理又は処分及びその他の信託目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることです。委託者は財産権を受託者に移転し、受託者が、自己の名において、財産の管理又は処分等の行為をします。なお、信託銀行の扱う「遺言信託」は、実態としては、遺言の保管や執行を行うことを業務としている場合が多く、信託法に定められる本来的な意味での遺言信託は少ないようです。
 遺言信託は、遺言の効力発生(遺言者の死亡)によりその効力が生じます。但し、遺言により受託者として指名された者が受託者たることを強制されることはありませんので、受託者として引受けたときに、遺言による信託が成立し、その効力が遺言者の死亡時に遡ります。
 遺言信託の場合に通常想定されるのは、親族等への財産の利用価値の移転等を目的として、遺言者自身が死亡した後に、親族や法人が、受託者や受益者となるケースでしょう。
 平成19年9月30日に約80年ぶりの全面改正である新信託法が施行されたことにより、多様で柔軟な信託制度が創設されましたので、委託者の様々なニーズに、より柔軟に応えられる可能性があります。また、平成19年度税制改正では、信託税制についても大幅な改正がなされました。
 今後は、このような分野における研究と実践が期待されていくと思います。

2 遺言書を作成していますか?

 遺言信託という最先端のことには興味がない? そんな人でも、それなりの財産がある限り、遺言をしておくことは有益です。
 遺言は、その人の最終意思を実現するものです。遺言によって、その財産関係を変動させるだけではなく、その財産管理や運用の場面にも重要な役割を果たすことが期待されています。
 遺言の解釈においては、遺言者の真意が重視されます。それは、最終意思をできるだけ実現するためでもあり、遺言が単独行為であるため相手方の信頼保護を必要としないためでもあります。
 しかし、遺言の解釈が問題となる時点では、遺言者は死亡しており、遺言者の真意を直接に確認することはできません。そこで、遺言者の真意を確保し、他人による偽造・変造を防止する手段として、遺言には一定の方式が定められています。
 自筆証書遺言は、筆跡によって本人が書いたものであることを判定でき、それ自体で遺言者の真意に基づくことが保障されます。そのため、証人や立会人を必要としませんが、一方で、偽造・変造の危険が最も大きいという側面があります。これに対し、公正証書遺言は、厳格な方式であり、その原本が公証役場に保管されるため、偽造・変造の恐れはありません。
 最終意思をしっかりと実現するためには、遺言書作成や遺言執行の実務について学ぶ努力が必要とされています。

(2008年2月執筆)

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