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一般2024年04月10日 身辺調査、民間人に拡大 経済安保新法案、衆院通過 恣意的情報指定の懸念 国会監視導入で修正 提供:共同通信社

 機密情報の保全対象を経済安全保障分野にも広げる新法案「重要経済安保情報保護・活用法案」は9日の衆院本会議で、自民、公明両党と立憲民主党などの賛成多数により可決され、衆院を通過した。国が民間人を身辺調査し、資格を与えた人のみが情報を扱う「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度の導入が柱。恣意(しい)的な情報指定により、国民の知る権利が制限されかねないとの懸念も根強い。野党の修正を受け入れ、国会による監視を盛り込んだ。
 漏えいすると国の安保に支障を与える可能性があるものを「重要経済安保情報」に指定する。情報を漏らした場合は、5年以下の拘禁刑などの罰則。従業員の所属企業に罰金を科すケースも想定する。
 より機密性が高く、漏えいで安保に著しい支障の恐れがある情報は「特定秘密保護法」の運用拡大で対応。新法案と合わせ二段構えで秘密保護法制を強化する。参院での審議を経て今国会で成立する見通しだ。
 既に適性評価の制度を運用する欧米各国と足並みをそろえ、当局間の情報共有や民間の競争力強化を図る。経団連は国際的な共同開発などに参加できないとして、制度の創設を求めていた。三菱重工業は、軍事転用可能な民生技術の獲得競争が激化しているなどとして「保全すべき情報を指定し、厳格に管理する必要がある」とコメントした。
 ただ新法案では対象となる具体的な情報は明示されていない。有識者はプライバシーが侵害されかねないとも指摘する。
 法案の修正で、対象情報の指定や解除、適性評価の実施状況などを国会が監視する制度となる。日本維新の会、国民民主党も賛成。れいわ新選組や共産党は反対した。
 自民側は「重要経済安保情報を保護しつつ、民間で活用を図っていくため必要不可欠だ」と主張。立民は、情報の指定件数などに「なお不明点が残る」と指摘した。共産は機微な個人情報の調査には断固反対とした。
 政府は新法案の情報指定や解除など具体的な運用基準に関し、法制化後に有識者会議で検討を進めるとしている。
 この日の本会議では、サイバー攻撃などを防ぐため「基幹インフラ」に港湾運送事業を追加する経済安全保障推進法の改正案も可決された。

新法案のポイント

 重要経済安全保障情報保護・活用法案の主なポイントは次の通り。
 一、先端技術や重要インフラなど、漏えいすると国の安保に支障を与える恐れがあり秘匿する必要のある情報を「重要経済安保情報」に指定。
 一、重要経済安保情報の取り扱いを有資格者に限定する「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度を導入。
 一、適性は犯罪歴や飲酒の節度、家族の国籍、精神疾患、薬物の使用などに関して身辺調査を実施して判断。
 一、漏えいした場合は5年以下の拘禁刑か500万円以下の罰金、またはその両方を科す。

プライバシー侵害の恐れ 安保新法案の身辺調査

 【解説】新法案「重要経済安保情報保護・活用法案」の目玉「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度は、国が民間の研究者や企業の従業員の身辺を調査することになる。対象は犯罪歴や薬物使用の有無に始まり、精神疾患や飲酒の節度、借金など幅広く個人の生活の機微に触れ、プライバシー侵害の恐れが拭えない。
 調査項目は家族の国籍にも及ぶ。「本人の同意が前提」としているが、職場の上司や同僚らが協力を求められるケースもあり得る。調査対象者は自身の職場での処遇を気にして調査を断ることが難しくなり、事実上の強制となる可能性も否定できない。
 調査で適性が認められなかったり、調査自体を拒んだりした従業員に対し、所属企業が不利益な扱いをした場合は「(政府は)契約を打ち切る」(高市早苗経済安保担当相)と強調するが、罰則規定はなく実効性に疑問が残る。
 新法案は情報の指定や調査の実施状況を国会が監視するよう修正された。だが既に施行されている特定秘密保護法では、国会の審査会が秘密の開示を求めても政府側が情報提供を拒む例が相次いでいる。監視が機能するかどうかは見通せない。

国民の知る権利制限も 経済安保の情報指定

 機密情報の保全対象を経済安全保障分野に広げる新法案が衆院を通過した。情報の指定状況などを国会が監視する仕組みが盛り込まれたものの、対象となる具体的な情報は明らかにされていない。国が都合の良いように機密を指定し、国民の知る権利が制限される懸念も残っている。
 法案は、漏えいすると国の安全保障に支障を与える恐れがある経済分野の情報について、国が指定する仕組みだ。
 「密室で機密情報を指定し、知る権利を阻害する」(日本維新の会の堀場幸子氏)事態を防ぐため、9日に衆院を通過した修正案では指定や解除の実施状況を毎年国会に報告し、公表することを明記した。
 機密の保護と知る権利のバランスを取るのが狙いだが、実効性をどう担保するかは見通せない。機密情報を扱う資格を国から与えられた人が罰則を恐れて必要以上に開示に消極的になる恐れもある。

秘密保護法制拡大の経過

 秘密保護法制の拡大を巡る主な経過は次の通り。
 2013年12月6日 自民、公明両党の賛成多数で特定秘密保護法成立
 14年12月10日 特定秘密保護法が施行
 23年2月22日 政府が「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度の導入に向けた有識者会議を初開催
 24年2月27日 政府がセキュリティー・クリアランス制度を導入する新法案「重要経済安保情報保護・活用法案」を閣議決定し、国会提出
 3月19日 新法案が衆院本会議で審議入り
 4月5日 新法案が衆院内閣委員会で与野党の賛成多数で可決
 9日 新法案が衆院本会議で与野党の賛成多数で可決

セキュリティー・クリアランス

 安全保障に関する機密情報へのアクセス権限を国が認めた有資格者に限定する制度。日本語では「適性評価」などと訳される。防衛や外交分野などを対象とした特定秘密保護法で既に導入されている。保全する情報を指定した上で、本人の同意を前提に犯罪歴や飲酒の節度、家族の国籍などの身辺調査を実施し資格付与を判断する。

(2024/04/10)

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