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2025年01月17日 災害時の労務管理-事前の対策と発生時の対応-(前編) 執筆者:福田惠一

 地震列島日本では「ここが危ない!」という地域だけでなく、「発生の可能性が低い」とされていた地域でもしばしば大きな地震が発生しています。また、地球温暖化の影響からか、「想定外」・「かつてないほど危険なレベル」・「これまでに例のないコースをたどる」台風がしばしば襲ってきています。そのため経営者は、今や「忘れぬ先からやってくる」非常災害発生時に対する方針や体制を整えることが強く求められます。今回は、特に労務管理を中心に話を進めてまいります。

Ⅰ.基本方針の明確化
 まず、災害時の労務管理の基本方針を明確にすることがスタートです。昨今はJRはじめ多くの公共交通機関が、災害発生の予想に基づき早々に「計画運休」することは何ら不思議ではないと、世の常識が変化してきました。したがって、かつてのような仕事、顧客第一主義で「リスクを冒しても出社する社員を褒めたたえる」のではなく、災害対策上の最優先の基本方針は「社員の安全を守ること」とすることが求められます。

Ⅱ. 災害発生時の労務管理上の検討事項
 上記の基本方針のもと、災害発生時の労務管理に関しては以下の4点を検討します。

1.社員の生命・身体の安全確保
   出退社の判断基準の明確化と、発生時の連絡体制の構築
2.災害時における労務提供と賃金支払の関係性の明確化
   労基法に照らしての賃金手当の支給要否と、福利厚生面からの社員支援策
3.災害時の労務管理体制構築のポイント
4.災害後のフォローアップ
 以下、順を追って詳しくみていきます。

1.社員の生命・身体の安全確保
 社員の生命・身体の安全確保の観点から出退社の判断基準を明確にします。そして、その基準をあらかじめ全員に周知徹底することで、災害発生時に迷うことなく判断ができるようになるとともに、無理な出社を試みて身体を危険にさらすようなことも防げます。そのためには、できるだけ詳細に災害時の出退社の判断基準を記した文書を作成し全員に配布。同時に、現実に発生した時に社員に対する指示が、正確かつ迅速に伝わる「安否確認システム」を構築して、発生時の安否確認等ができるようにしておきます。
 この出社させるか、または退社させるかの判断は、下表の各自治体が「特別警戒警報」が発する警報レベルを基準に判断します。下表の「警戒レベル5」が発令された場合には、緊急の安全確保を住民に求めます。従って、このレベルとなったときには、社員の安全確保のため出社を求めることはできません。また、その前段階にある「警戒レベル4」であっても、極力出社させないことが求められます。

「防災気象情報をもとにとるべき行動と、相当する警戒レベルについて」
警戒レベル 情報 取るべき行動
警戒レベル5相当 ・大雨特別警報
・氾濫発生情報
・キキクル(危険度分布)
「危害切迫」(黒)
 地元の自治体が警戒レベル5緊急安全確保を発令する判断材料となる情報です。何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高い状況となっています。命の危険が迫っているため直ちに身の安全を確保してください。
警戒レベル4相当 •土砂災害警戒情報
•氾濫危険情報
•高潮特別警報
•高潮警報
•キキクル(危険度分布)
「危険」(紫)
 地元の自治体が警戒レベル4避難指示を発令する目安となる情報です。
 災害が想定されている区域等では、避難指示が発令されていなくてもキキクル(危険度分布)や河川の水位情報等を用いて自ら避難の判断をしてください。
出典:避難情報に関するガイドライン(内閣府)(令和3年5月改定、令和4年9月更新)
https://www.bousai.go.jp/oukyu/hinanjouhou/r3_hinanjouhou_guideline/

 会社としては「計画運休」の実施の可能性等、「交通機関の運行状況」をできるだけ正確にキャッチすることが必要です。そして、社員が出社せず自宅で待機中に、地震や暴風雨等によって自宅建物の損壊や浸水のため避難が必要となる場合は、自治体からの避難誘導に従うことが求められます。また、マイカー通勤者が出勤する場合には、経路となっている道路の安全通行状況の把握が必要です。

<プロフィール>
福田 惠一
寿限無(じゅげむ)経営コンサルティング代表

 金融機関にて営業・融資を担当後、同総合研究所で人事金制度構築コンサルの経験を積み、退職後「寿限無経営コンサルティング」を開業。上場会社総務顧問も経験。経営の観点と社員の双方にとっての望ましい労使関係構築支援のため、人事・賃金・考課制度の整備、人事労務トラブル対応、紛争予防のための社内規程整備、マネジメント研修・ハラスメント研修等社員各層への研修、各種助成金申請支援等に注力。

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