一般2025年04月07日 贋作どうする?自治体苦慮 返金不透明、展示向け調整 贋作絵画に自治体苦慮 提供:共同通信社

徳島、高知の県立美術館がそれぞれ所蔵する2点の絵画を巡り苦慮している。いずれもドイツで詐欺罪の実刑判決を受けた有名贋作(がんさく)家が自作と主張し、調査した徳島、高知両県は偽物と判断した。両県とも今後贋作と明示した上で展示する方向だが、売り手の画商に返金を求める交渉の先行きは不透明で、作品をどう活用するべきか模索している。
▽25年気づかず
「信じ難くショックを受けた」。徳島県立近代美術館(徳島市)の竹内利夫(たけうち・としお)課長は昨年6月に贋作の疑いがあることを把握した。海外の報道によると、同館が所蔵するフランスの画家作とされた油彩画「自転車乗り」が、ドイツの贋作家ウォルフガング・ベルトラッキ氏の作品リストに含まれていた。
作品は1999年に6720万円で購入、鑑定書や、鑑定書が本物だとする証明書まで確認していた。竹内氏は「鑑賞した人の時間や思いは返って来ない。途方もない苦しみを感じる」と疑惑浮上までの25年間を振り返り無念さをにじませた。
同じ報道で高知県立美術館(高知市)が96年に1800万円で買った油彩画「少女と白鳥」も偽物の疑いがあることが発覚。ベルトラッキ氏は共同通信の取材にいずれも模造でなく、技法をまねた自らの作品だと話した。
同館は京都大の専門家に依頼し、昨年11月、エックス線を使った絵の具の成分などの調査を開始した。描いたとされていたドイツの画家ハインリヒ・カンペンドンクが制作した年代に一般的ではない画材が使われており、贋作と断定した。
▽真贋とは何か
今後、売り手の画商に返金を求め、交渉する。高知県と同館はこれまでの経緯の説明を添えて展示する方針で、早ければ9月にも公開する。偽物と判断したことから鑑賞を有料とするかどうかは検討中だ。同館の奥野克仁(おくの・かつひと)学芸課長は「贋作であっても人の心を打つ作品はある。真贋(しんがん)とは何かを考えるきっかけになれば」と語る。
高知県が調査結果を発表した11日後、徳島県も科学調査を実施しないまま偽物との判断に踏み切った。ドイツ・ベルリン州警察の情報提供によるベルトラッキ氏の供述などを根拠とした。画商に対する損害賠償請求も視野に、弁護士に対応を相談している。
県幹部は「県民に対し購入経緯の説明責任を果たすため展示するが、他の絵と並べて鑑賞用として公開するべきではない」として無料にする見込みだ。
真贋論に詳しい東京大学の西野嘉章(にしの・よしあき)名誉教授は「美術館はそもそも社会教育施設で、贋作も教材として意味を持つ」と指摘する。描いたとされた画家の作品と並べて展示するなどして、教育の目的に沿う形で役立てることを提案した。
(2025/04/07)
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