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訴訟手続2026年08月24日 心神喪失事件、格差大きく 質問できず付き添いもなし 提供:共同通信社

 刑事手続きへの被害者の参加拡充に向け、平口洋法相が6月、法制審議会(法相の諮問機関)に制度の見直しを諮問した。検討課題の一つが、心神喪失などを理由に不起訴となった加害者の処遇を決める審判の傍聴の在り方だ。通常の刑事裁判と違い、加害者に質問したり、弁護士に付き添ってもらったりといった制度がない。法制審は司法参加の格差を埋める一歩となるのか―。被害者らは期待を抱きながら静かに見守っている。

 ▽わずか1時間
 2023年1月、東京都豊島区の自宅にいた60代の女性はガラスの割れる音の後、夫の叫び声を聞いた。玄関に行くと、夫は近所の男ともみ合いになり、何度も切りつけられていた。男はこの10日ほど前、「俺の部屋にカメラを仕掛けている」といきなり夫妻の自宅を訪ねてきていた。
 男は駆けつけた警察官に殺人未遂容疑で逮捕された。しかし、刑事責任能力がないと判断され不起訴に。検察が「心神喪失者等医療観察法」に基づき審判を申し立てた。審判で裁判官や精神科医が入院が必要と判断すれば、加害者は医療機関での治療に移る。
 審判は非公開だが、裁判官が認めれば被害者や遺族は傍聴できる。夫は当初「顔を覚えられたくない」とためらっていたが、次第に「なぜうちを狙ったのか」を知りたくなり審判に足を運んだ。
 ところが、事件の詳細にはほぼ触れず、審判はわずか1時間で終了した。刑事裁判には被害者が意見を述べる制度があるのに、審判では疑問をぶつける機会さえ与えられなかった。

 ▽加害者と面識
 夫妻はその後、同じ境遇の遺族が立ち上げた「医療観察法と被害者の会」に参加。今年6月に開かれた会主催のシンポジウムでは、加害者と面識があるとの理由で審判の傍聴が認められなかったり「内容を口外しない」との誓約書を書かされたりといった理不尽な実体験が次々に紹介された。
 傍聴する際の弁護士らの付き添いも認められていない。こうした現行ルールへの不満は少なくなく、法制審では傍聴制度をどの程度充実させるかが検討課題となる。

 ▽平和に暮らす権利
 課題は他にもある。通常の事件では刑務所の出所時期を被害者や遺族へ事前に通知する仕組みがあるが、医療観察法適用事件では退院後にしか知らされない。
 夫妻は今年4月、加害者の退院通知を受け取り「またやってくるのでは」との恐怖に駆られた。出かける際には玄関を少しだけ開けて外の様子を確認するようにしている。女性は「誰も被害者の希望を聞いてくれない。平和に暮らす権利は、誰が守るのでしょうか」と悲痛に訴える。
 東海大の柑本美和教授(刑事法)は「今の被害者施策を踏まえ、医療観察制度での被害者支援の在り方を大幅に見直す必要がある」と強調。まずは、被害者側が裁判官に意見を伝えられ、審判傍聴に付き添いを認める仕組みがある少年法を参考に被害者支援を拡充すべきだと話した。

 心神喪失者等医療観察法 善悪を判断する能力が完全にない「心神喪失」や、著しく低下している「心神耗弱」の状態で殺人や放火などの重大事件を起こした加害者の処遇を定める。不起訴や無罪となった後、検察官の申し立てを受け、裁判官が精神科医との合議で審判を開き、入院や通院などを決める。2001年6月に大阪教育大付属池田小で児童8人が殺害された事件を機に03年に成立し、05年に施行された。

(2026/08/24)

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