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行政・財政2026年05月15日 行政財産の使用許可と住民訴訟 3 執筆者:髙松佑維

1.はじめに

前回の記事では、財産等に関する従前の経緯・経過や具体的状況等の検討の結果、住民側の主張が認められなかった例を取り上げました。
今回は他の法令に基づく許可の事例になりますが、行政が使用料を免除した事案において、住民訴訟で行政側の主張が認められなかった一例を取り上げます。

2.事案検討の前提(関係規定の確認)

都市公園法には、都市公園に公園管理者以外の者が公園施設を設けるときに関する許可(第5条1項)や、公園施設以外の工作物等による占用に関する許可(第6条1項)が定められており、同法令以外に必要な事項は条例等で定めるとされています(第18条)。
これに基づき、各自治体ではそれぞれ都市公園に関する条例を定め、その条例の中に使用料(や占用料)に関する規定を置いています。
そのため、都市公園の許可に関する事案では、通常、上記関係法令や条例等の定めを前提に、具体的事案に応じて、具体的諸事情を踏まえながら、検討を行うことになります。

3.事案の概要

自治体(市)が市内に設置し自ら管理していた都市公園法上の都市公園(本件公園)には、もともと公園施設として各種スポーツ等に市民等が使用できる広大な多目的グラウンド(本件多目的グラウンド)がありました。
市が、ある会社(本件会社)に対して、“本件多目的グラウンドの場所にサッカー専用スタジアム、サッカー専用天然芝練習場等を新たに設置し、それらをサッカークラブ(本件会社の持株会社の子会社が運営し、当時、関東サッカーリーグ1部に所属していたクラブ)のホームスタジアム及び練習場として利用すること等”を目的とした公園施設の設置管理許可を行ったところ、本件会社は上記場所に上記施設等を建設し、本件会社が設置した建物(本件建物)を含む運動施設(本件運動施設)が完成しました。なお、これに伴い、本件多目的グラウンドは廃止されました。
市長が本件会社に対して、事前に本件会社と交わした覚書のとおり、条例で定められていた使用料及び本件建物等に関する固定資産税を各条例内の規定により免除したところ、市の住民である原告らが市の監査委員に対してこれらの免除が違法である旨の住民監査請求を行いました。
監査委員は請求に理由がないとしたため、原告らは裁判所に対して地方自治法第242条の2第1項 に基づき住民訴訟(最終的には、固定資産税の免除決定の各取消し(2号)及び使用料を請求しないことの違法確認(3号) を求める内容)を提起しました。

4.裁判所の判断と事案検討の際のポイント

(1)  この住民訴訟では、住民側の請求をいずれも認める判決が下されました(東京高裁令和5年10月18日判決 )。
今回はその中で、使用料免除に関する判断部分 を主に見ていきます。
(2)  市長側は、①クラブのホームスタジアム等使用による市の経済発展、②本件運動施設の市民利用等による市民生活上の福祉向上等の理由により、本件では「公益上その他特別の理由」(市の条例内の免除規定)が存在するとして、使用料免除の適法性を主張しました。
裁判所は、①に関して、証拠上、経済効果試算等の的確性が不明とし(ホームスタジアム使用をしなかった場合との比較がない、相当以前から前身クラブが当該市に活動本拠を置くチームだった、市全体経済への影響や上位リーグ昇格見込みの程度が不明等とも指摘し)、②に関して、周辺や廃止前グラウンドと比べて利用料金設定がかなり高額で、今後、以前を上回る市民一般利用は見込めない、利用需要を他の市内の公園施設で完全に吸収できておらず、市民の利便の後退の可能性すらある、地元イベントでの無料使用が仮にあっても従前と比べて福祉が維持されているだけに過ぎない等と指摘しました。
(3)  さらに、“市が免除決定に至った経緯”にも着目し、他の自治体からの現実の誘致や誘致協議の進展程度、市と本件会社の交渉内容、施設設置後の本件会社等の収益や施設設置費用回収見込みに関する市側の予測等がいずれも証拠上明らかでなく、庁議や議員研究会における具体的な協議内容や免除経緯も判然とせず、住民説明会で免除決定まで説明された事実は認められない等と指摘し、見込み等を慎重に考慮して免除決定されたのか不明で、判断過程の適切性も判然としないとしました。
(4)  加えて、“財産や許可に関するその他の周辺事情”にも着目し、免除対象面積が相当広範囲で免除額も年額約1354万円にも上るほか、免除について多くの市民の理解が得られているのか判然としない等と指摘しました。
なお、市長側の“市の財政改善への寄与”の主張については、施設設置自体によって生じるもので免除しなければ得られない効果ではなく、使用料が免除され続けることも考慮すると、財政改善効果が十分なものとして免除判断に合理性があるとはいえないとし、“他の自治体の免除例”の主張については、誘致経緯、競合状況、免除決定経緯、期待される経済効果等の程度、上位リーグ昇格の見通し、免除対象の範囲や規模、免除期間や額の見込み等の諸事情が地域実情等によって様々であり、他の例が本件と同じ状況か判然とせず、他の例の存在から直ちに本件免除に合理性があるということにはならないとしました。
(5)  その上で、使用料免除規定の適用についても慎重な判断が求められ、免除判断の前提となった事情に事実的基礎があり、その判断が社会通念に照らして合理性を有すると認められる場合でなければならないと示した上で、本件ではそれらを認めることはできず、「公益上その他特別の理由」があるとは認められないと結論付けました。
(6)  上記例は当該事案の判断ではあるものの、やはり財産等に関する従前の経緯・経過や具体的状況等も、結果に大きな影響を及ぼすポイントになるようです。
具体的な状況は事案によって様々で、考慮すべき諸事情も多岐にわたるため、他事例との比較検討や結果予測等には難しい部分もあると思われます。
ただ、財産の使用対価である使用料を免除する場合は、(使用料が支払われないという面で)住民全体の財産が減少し、(対価無しでの財産独占使用という面で)住民全体の財産の適正管理や適正利用といえるのか、という問題が出てきます。
そのため、上記裁判例の指摘のように、少なくとも慎重な判断が求められ、免除に値するだけの諸事情の確認と検討をどれだけ詳細に行ったか、検討過程や根拠、その合理性を裁判上でどれだけ立証できるか等の点は、どの事案でも特に念頭に置く必要があるポイントといえるでしょう。

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

(2026年4月執筆)

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執筆者

髙松 佑維たかまつ ゆうい

弁護士

略歴・経歴

早稲田大学高等学院 卒業
早稲田大学法学部 卒業
国土交通省 入省
司法試験予備試験 合格
司法試験 合格
弁護士登録(東京弁護士会)
惺和法律事務所

大学卒業後、約7年半、国土交通省の航空局に勤務。
国土交通省本省やパイロット養成機関の航空大学校などに配属され、予算要求・予算執行・国有財産業務などに従事。

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