一般2026年08月29日 近畿M6・8以上50~60% 今後30年、最も危険9区間 人口密集地や原発敷地も 活断層長期評価 提供:共同通信社

政府の地震調査委員会(委員長・小原一成防災科学技術研究所フェロー)は28日、近畿地域で今後30年以内にマグニチュード(M)6・8以上の地震が発生する確率を50~60%とする活断層の長期評価を公表した。これまでの主要活断層の評価から、対象を45活断層に拡大。京都市、大阪市といった人口密集地にも存在し、危険度の最も高い地震発生確率3%以上の「Sランク」は3区間から9区間に増えた。神戸市の活断層や、福井県の原発敷地内を走る活断層もSランクとなった。
近畿全域の確率は関東の50~60%に匹敵し、M8を超える巨大地震も想定された。経済活動が盛んな近畿で大きな地震が起きれば、全国に影響が及ぶ。大阪府・市は副首都指定を目指しているが、地震リスクの高さが浮き彫りになった。
小原委員長は「この地域には活断層が多く、発生確率も他の地域と比べて高い」と指摘。自治体の被害想定や防災計画への反映を求めている。
国内には沿岸を含め2千を超える活断層があるとされる。南海トラフ巨大地震のような海溝型地震だけでなく、地域の実情に合わせた活断層地震への備えが必要だ。
2013年に公表が始まった地域評価の一環で、九州、関東、中国、四国に続き5例目。三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山に加え、福井、岐阜、愛知、岡山の一部の活断層を対象とし、電力会社、大学などの調査結果を反映した。活断層は地震発生確率の高い順にS、A、Z、さらに不明のXを加えた4段階でランク付けした。
調査委は、この地域を活断層の特徴や分布などから三つのエリアに分けて評価した。敦賀湾と兵庫の淡路島、伊勢湾を結んだ線に囲まれた「近畿三角帯」は活断層が密集し、地震発生確率が40~60%と最も高い。京都市や大阪市、神戸市を含み、Sランクの9区間は全てこのエリアだった。
兵庫や京都の北部などを含む「近畿北西部」は30%、「紀伊半島」は7%だった。
活断層ごとの評価では、福井、滋賀、岐阜にまたがる柳ケ瀬―関ケ原断層帯の約127キロが連動した場合の地震の規模はM8・1~8・3程度。日本原子力発電敦賀原発敷地内を通る浦底―柳ケ瀬山断層帯をSランクとした。
兵庫の六甲・淡路島断層帯のうち、1995年兵庫県南部地震(阪神大震災)の主な震源域に隣接する六甲山地南縁―淡路島東岸区間がSランクとなった。大阪市街地直下の上町断層帯は、これまでのSランクから引き下げられた。
Sランクとされた活断層
近畿地域の活断層長期評価で、今後30年以内の地震発生確率が「Sランク」とされた9区間の長さ、想定される地震のマグニチュード(M)、発生確率は次の通り。
▽六甲・淡路島断層帯の六甲山地南縁―淡路島東岸区間(約57キロ、M7・8程度、ほぼ0~7%)
▽京都盆地―奈良盆地断層帯の南部区間(約35キロ、M7・4程度、ほぼ0~6%)
▽琵琶湖西岸断層帯の北部区間(約29キロ、M7・3程度、3~14%)
▽浦底―柳ケ瀬山断層帯(約35キロ、M7・4程度、ほぼ0~18%)
▽池田山断層(約16キロ、M6・8程度、0・3~12%以上)
▽養老―桑名―四日市断層帯の北部区間(約35キロ、M7・4程度、ほぼ0~4%)
▽同、中部区間(約18キロ、M6・9程度、0・04~14%)
▽高茶屋断層帯(約36キロ、M7・4程度、0・1~6%)
▽伊勢湾断層帯南部の白子―野間区間(約20キロ、M7・0程度、0・1~6%)
原発地震対策にも影響か 福井にSランク活断層
政府の地震調査委員会が示した近畿地域の活断層の長期評価では、原発が多く立地し「原発銀座」と呼ばれる福井県若狭地方も対象となった。原子力規制委員会は各原発の地震対策に取り入れる必要があるかどうかを検討する。中でも再稼働の前提となる審査に不合格となった日本原子力発電敦賀原発2号機(敦賀市)の直近にある「浦底―柳ケ瀬山断層帯」について、調査委は想定される地震の規模を引き上げ、危険度が最も高い発生確率3%以上の「Sランク」と評価した。
調査委は今回、福井県越前町の沖合から敦賀湾を縦断し滋賀県長浜市まで続くこの活断層について、2004年の評価と比べて長さは約10キロ延ばし約35キロに、地震の規模を示すマグニチュード(M)は0・2引き上げ7・4程度とした。地震発生確率はほぼ0~18%で、今回の評価でSランクとなった活断層の中で最も高くなった。
このうち浦底断層は、敦賀原発2号機の東側約250メートルを通る。規制委は24年、浦底断層から枝分かれするように延びる「K断層」が活断層で、原子炉直下まで続く可能性を否定できないとして不合格を決定。原電は再申請に向け追加調査を進めるが、浦底断層が高い壁として立ちはだかることは必至だ。
また、関西電力美浜原発(美浜町)や、国が廃炉後に研究炉の設置を計画する日本原子力研究開発機構(原子力機構)の高速増殖炉もんじゅ(敦賀市)近くを通る「白木―丹生断層」は、長さ約15キロ、地震の規模はM6・8程度と評価。関電の調査などを基に初めて出された長期評価で、南側には推定活断層が存在する可能性も示唆した。
規制委はこれまで、調査委が行った日本海側海域活断層の長期評価を受け、一部の原発で津波想定を引き上げるなどしている。担当者は、今回の評価結果を踏まえ、福井県内の原発への影響を確認するとしている。
中枢機能の打撃計り知れず
京都大防災研究所の西村卓也教授(測地学)の話 大阪、京都、神戸といった大都市で起きる地震は被災者数が多くなり、行政や経済の中枢機能に与える打撃は計り知れない。Sランクと評価された活断層で必ず地震が起こるわけではないが、ランクが低い地域でも活断層の存在自体がリスクだ。ランクが下がった活断層帯でも、近くに大阪府庁や大企業の本社が立地し、梅田や難波などの繁華街が近いものもある。評価をきっかけに、住居や職場周辺の危険性を把握し、家族との連絡手段や緊急時の行動の在り方を見直してほしい。
日本全体に壊滅的ダメージ
神戸大の室崎益輝名誉教授(防災計画)の話 大阪や京都、神戸には人口が集中し、それだけ大きな被害が生じる。都市機能が壊され、被害は波及、連鎖し拡大する。日本全体が壊滅的なダメージを受けるため、事前の備えが必要だ。高齢化や街の変化など、阪神大震災が起きた30年前とは、何が違うのかという視点が大切だ。超高層マンションや地下街で発生する火災で、消火や避難ができるのか。帰宅困難者で道路が大混雑すれば群衆事故につながる。どんなことが起こり得るのか、その対策ができているのか、行政、市民が真剣に考えなければいけない。
「リスク念頭に対策取る」 活断層評価で大阪府知事
近畿地域で今後30年以内にマグニチュード(M)6・8以上の活断層地震が発生する確率は50~60%になるとした政府の長期評価を受けて、大阪府の吉村洋文知事は28日、大阪市街地直下にある上町断層帯など「リスクがあるものを頭に置いて防災対策を取る」と述べた。訪問先の熊本県庁で取材に応じた。
上町断層帯は、発生確率が最も高い「Sランク」から引き下げられた。吉村氏は「どこで起きてもおかしくないことを前提に対策を取ることが大事。確率はあまり信用していない」と指摘。南海トラフ巨大地震を含め、ハード、ソフト両面で対策を進めているとした。
大阪府は熊本地震を受けて職員を派遣。吉村氏は「府職員には被災地支援で培ったつながりや経験を、防災力の強化に役立ててもらいたい」と語った。
(2026/08/29)
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