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解説記事2011年06月13日 【第2特集】 税制優遇の認定NPO法人制度の改正ポイント(2011年6月13日号・№406)

議員立法による認定基準の緩和で大幅増も
税制優遇の認定NPO法人制度の改正ポイント

 「特定非営利活動促進法の一部を改正する法律案」(以下「NPO改正案」という)が6月8日、議員立法として国会に提出された。所轄庁を内閣府から主たる都道府県知事等に変更するほか、税制上の優遇措置を受けられる認定制度について、国税庁長官から都道府県知事等に認定事務を移行するなど、大きな見直しとなっている。施行は平成24年4月1日の予定だ。今回の特集では、NPO改正案の概要を紹介する。

与野党の超党派のNPO議員連盟が中心に策定  NPO法は、平成10年12月から施行され、平成23年3月末現在で認証されたNPO法人は4万2,387件にのぼっているが、これまでの認証制度の問題点や、税制上の優遇措置の適用を受けることができる認定NPO法人の少ない現状を踏まえ、大きく見直すこととしたもの。NPO改正案については、超党派のNPO議員連盟が中心となり取りまとめられたものである。すでに、民主党だけでなく、自民党でも了承済みの法案であり、早期の成立が見込まれている。

認証制度は実務上の問題点を踏まえた見直し  今回の改正案の項目は多岐にわたるが、(1)認証制度の見直し、(2)財政基盤の確立のための措置の大きく2つに分けることができる(図表1参照)。

(1)の認証制度の見直しでは、①活動分野の追加、②所轄庁の変更、③簡素化・柔軟化、④信頼性向上が挙げられる。
NPO法人の活動分野を追加  ①では、NPO法2条の別表に記載されている「保健、医療又は福祉の増進を図る活動」「社会教育の推進を図る活動」「まちづくりの推進を図る活動」「学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動」「環境の保全を図る活動」など、17の活動分野に加えて、「観光の振興を図る活動」「農山漁村及び中山間地域の振興を図る活動」「法第2条別表の各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動」が追加される。
内閣府から都道府県に変更  ②は、最も大きな改正の1つである(図表2参照)。現行は、2以上の都道府県の区域内に事務所を設置しているNPO法人については、内閣府が所轄庁となっているが、これを都道府県の知事に変更することとしている(その事務所が一の指定都市の区域内のみに所在する特定非営利活動法人の場合は指定都市の長)。なお、内閣府が認証しているNPO法人は約3,300件あるといわれている。

「役員の定数」等の定款変更も届出でOK  ③については、(ア)縦覧期間中の補正および認証審査期間の柔軟化、(イ)社員総会の決議の省略、(ウ)理事の代表権の制限に関する登記、(エ)定款変更の際の届出事項の拡大、(オ)解散公告の簡素化が行われる。
 たとえば、(ア)では、申請書類中に軽微な不備があった場合には、所轄庁が申請書を受理した日から1月を経過するまでの間に限り補正を認めるほか、認証審査期間については、縦覧期間が終了した日から2月以内とされているが、都道府県または指定都市の条例で2月以内よりも短い期間とすることができることとする。これにより従来よりもスピーディーに認証を受けることが可能になる。
 (イ)については、社員の全員が書面等により意思表示をした場合には、社員総会の決議を省略することができるようにする。また、(ウ)に関しては、理事の代表権に加えた制限は、善意の第三者に対抗できないという規定を削除する。
 (エ)に関しては所轄庁への届出のみで定款の変更を行うことができる場合として、「役員の定数」「会計に関する事項」「事業年度」「解散に関する事項(残余財産の帰属すべき者に係るものを除く。)」を追加するというもの。現行では、これらの定款を変更しようとする度に所轄庁の認証を受けることになり、実務上、NPO法人の足かせとなっていた問題である。
 また、(オ)については、解散時における債権者への債権の申出の催告についての公告の回数を「3回以上」から「少なくとも1回」に簡素化するもの。公告を3回以上しなければならないため、NPO法人を解散する場合の大きな事務負担となっていたものである。
財産目録は附属明細書に  ④の信頼性の向上については、(ア)認証後未登記団体の認証の取消し、(イ)「収支計算書」に係る改正、(ウ)情報開示の充実が挙げられる。
 (ア)については、設立の認証を受けた者が設立の認証日から6月を経過しても設立の登記をしない場合は、所轄庁は設立の認証を取り消すことができることとしている。これは、認証を受けたNPO法人がその後、設立の登記をしないケースがあることを憂慮したものである。
 (イ)に関しては、NPO法人が作成すべき会計書類のうち、「収支計算書」を「活動計算書」(活動に係る事業の実績を表示するもの)に改め(設立時に作成する「収支予算書」は「活動予算書」に改める)、この「活動計算書」と「貸借対照表」を計算書類とし、財産目録については、附属明細書的な位置付けにするとしている。
 (ウ)では、所轄庁は、事業報告書等の閲覧に加え、コピーもできるようにするなどの措置を講じている。


NPO議員連盟事務局長の中谷元衆議院議員(左)

認定は国税庁長官から都道府県知事等に変更  認定制度については、これまで国税庁長官が認定するかどうかの決定を行っていたが、これを所轄庁の都道府県知事または指定都市の長に変更することになる。この点が最も大きな改正点だ(図表2参照)。
3,000円以上の寄附が100人以上  認定の基準が厳しいとされているパブリック・サポート・テスト(PST)基準については、現行の判定方式のほか、絶対値基準の方式を導入する。これは、事業収入の多いNPO法人以外であっても、PST基準をクリアすることを可能にするものだ。
 具体的には、①相対値基準(実績判定期間中の経常収入金額の総額のうちに寄附金等収入金額の総額の占める割合が政令で定める割合(5分の1)以上であること)、②絶対値基準(実績判定期間中の判定基準寄附者(各事業年度において政令で定める額(3,000円)以上の寄附を行った者)の各事業年度当たりの平均が政令で定める数(100人)以上であること)、③個別の条例指定(事務所が所在する地域の地方団体から、住民の福祉の増進に寄与する法人として、条例により個人住民税の控除対象として個別の指定を受けた法人であること)のいずれかの基準をクリアすればよいことになる(図表3参照)。

【図表3】 認定の基準
 所轄庁は、認定の申請をした特定非営利活動法人が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、当該認定をするものとすること。
ア 広く市民からの支援を受けているかどうかを判断するための基準(パブリック・サポート・テスト(PST)基準)として次に掲げる基準のいずれかに適合すること。
 ① 相対値基準:実績判定期間中の経常収入金額の総額のうちに寄附金等収入金額の総額の占める割合が政令で定める割合(5分の1)以上であること。
 ② 絶対値基準:実績判定期間中の判定基準寄附者(各事業年度において政令で定める額(3,000円)以上の寄附を行った者)の各事業年度当たりの平均が政令で定める数(100人)以上であること。
 ③ 個別の条例指定:その事務所が所在する地域の地方団体から、住民の福祉の増進に寄与する法人として、条例により個人住民税の控除対象として個別の指定を受けた法人であること。
イ 実績判定期間における事業活動のうちに次に掲げる共益的活動の占める割合として内閣府令で定める割合が100分の50未満であること。
 ① 会員等に対する資産の譲渡等、会員等相互の交流、連絡又は意見交換その他その対象が会員等である活動
 ② その便益の及ぶ者が会員等その他特定の範囲の者である活動
 ③ 特定の著作物又は特定の者に関する普及啓発等その他の活動
 ④ 特定の者に対し、その者の意に反した作為又は不作為を求める活動
ウ 運営組織及び経理に関し、次に掲げる基準に適合していること。
 ① 各役員について、次に掲げる者の役員の総数のうちに占める割合が、それぞれ3分の1以下であること。
  ・役員、役員と親族関係を有する者及び役員と特殊の関係のある者
  ・特定の法人の役員又は使用人である者、これらの者の配偶者又は3親等以内の親族及びこれらの者と特殊の関係のある者
 ② 各社員の表決権が平等であること。
 ③ 会計について公認会計士若しくは監査法人の監査を受けていること、又は青色申告法人並みに帳簿書類を備え付けてこれらにその取引を記録し、かつ、当該帳簿書類を保存していること。
 ④ 費途不明金その他の不適正な経理が行われていないこと。
エ 事業活動に関し、次に掲げる基準に適合していること。
 ① 次に掲げる活動を行っていないこと。
  ・宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成すること。
  ・政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対すること。
  ・特定の公職の候補者若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対すること。
 ② 役員、社員、職員若しくは寄附者若しくはこれらの者の配偶者又は3親等以内の親族又はこれらの者と特殊の関係にある者に対し特別の利益を与えないことその他特定の者と特別の関係がないものとして内閣府令で定める基準に適合していること。
 ③ 実績判定期間における事業費の総額のうちに特定非営利活動に係る事業費の額の占める割合が100分の80以上であること。
 ④ 実績判定期間における受入寄附金総額のうち100分の70以上を特定非営利活動に係る事業費に充てていること。
オ 次に掲げる書類について閲覧の請求があった場合には、正当な理由がある場合を除き、これをその事務所において閲覧させること。
 ① 事業報告書等、年間役員名簿等、役員名簿及び定款等
 ② 認定の基準に適合する旨及び欠格事由に該当しない旨を説明する書類又は寄附金を充当する予定の具体的な事業の内容を記載した書類
 ③ 役員報酬又は従業員給与の支給に関する規程及び収入の明細その他の資金に関する事項、資産の譲渡等に関する事項、寄附金に関する事項その他の内閣府令で定める事項を記載した書類等
 ④ 助成の実績並びに海外送金等の金額及び使途並びにその予定日を記載した書類
カ 各事業年度において事業報告書等、年間役員名簿等を所轄庁に提出していること。
キ 法令に違反する事実、偽りその他不正の行為により利益を得、又は得ようとした事実その他公益に反する事実がないこと。
ク 認定の申請書を提出した日を含む事業年度開始の日において、その設立の日以後1年を超える期間が経過していること。
ケ 実績判定期間において、ウ、エの①及び②、オ、カ並びにキの基準に適合していること。
平成23年度税制改正でも  なお、この点は、平成23年度税制改正法案でも盛り込まれているもの。税制改正法案が成立し、かつNPO改正案が成立することになれば、平成23年から引き続き同様の措置が講じられることになる。

有効期間3年の仮認定制度を創設へ  もう1つの大きな改正は、仮認定制度の創設だ。特定非営利活動法人が①PST基準を除く認定基準に適合すること、②設立の日から5年を経過していないこと、③認定または仮認定を受けたことがないことのすべてに該当すれば、所轄庁に申請することにより認められることになり、寄附金控除の対象となる。仮認定の有効期間は3年となる。
 仮認定NPO法人については、認定の有効期間が過ぎた場合や解散した場合のほか、認定NPO法人の認定を受けた場合等については、その効力を失うことになる。
監督規定の整備  認定基準の緩和や仮認定制度の創設を行い、認定NPO法人の増加を促す一方、所轄庁による監督規定を整備することにより、細やかな対応を行うこととしている。
 たとえば、所轄庁は、認定NPO法人等が法令等に基づいてする行政庁の処分や定款に違反している疑いがあるときは、業務の状況や財産の状況に関して報告させるほか、立入検査などができるようにしている。加えて、正当な理由なく、所轄庁の命令に従わないなどの場合には、認定等を取り消すことができるようにしている。

改正NPO法で税制上の優遇措置を引継ぎ  税制上の優遇措置については、現行の認定NPO法人と同様、①寄附金控除やみなし寄附金制度の適用が認められる(仮認定を受けたNPO法人は、寄附金控除の対象)、②みなし寄附金の損金算入限度額について、社会福祉法人等と同等の監督規定等が整備される場合には、社会福祉法人等と同等の限度額(所得金額の50%または200万円のいずれか大きい金額)に引き上げられることになる。
 なお、平成23年度税制改正法案では、認定NPO法人への寄附について、税額控除(所得税と個人住民税で合わせて50%まで)を導入(所得控除との選択制)することなどの拡充策が盛り込まれている。これらの税制改正での措置についても、改正予定のNPO法において受け継がれることになる(租税特別措置法で規定される認定特定非営利活動法人制度は廃止される)。

Column
内閣府がNPO法人会計基準の研究報告を公表へ
 NPO法人の会計基準については、民間のNPO法人会計基準協議会が平成22年7月に「NPO法人会計基準」を策定し、公表している。
 また、内閣府では、平成23年5月に「特定非営利活動法人の会計の明確化に関する研究会」(座長:川村義則早稲田大学商学学術院教授)を設置。NPO法人会計基準協議会の「NPO法人会計基準」などを参考にNPO法人の会計基準について検討を行っている。平成23年10月頃には研究報告を取りまとめる予定だ。

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