カートの中身空

税務ニュース2004年11月01日 不正の意図なくても免責条項は適用(2004年11月1日号・№089) 東京地裁・税賠保険による無申告加算税相当額のてん補認めず

不正の意図なくても免責条項は適用
東京地裁・税賠保険による無申告加算税相当額のてん補認めず


 東京地裁民事第30部(佐藤哲治裁判官)は8月25日、税理士法人が保険会社に対し、税賠保険契約に基づいて、無申告加算税相当額の保険金を請求する事案に対する判決を言い渡した。佐藤裁判官は、「不正の意図が明らかにないような場合においても、無申告加算税が免責条項から除外される、あるいは、明らかに不正の意図がない場合にはこれを除外するとの解釈は困難というべき」と判示して、原告の請求を棄却する判決を下した。

延長承認受けた法人税の申告期限と錯覚
 この事件は、K公社における平成15年6月期の法人税及び消費税申告書の作成・提出の委任を受けていた税理士法人が、消費税申告書の提出期限を申告期限延長特例の承認を受けた法人税の申告期限と同様と錯覚し、消費税申告書の提出を期限である同年9月1日までに行わなかったため、税務署から無申告加算税117万9千円を賦課決定されたことに基因するもの(下表参照)。 
 申告期限の延長に関しては、国税通則法11に定められる災害等を受けた場合の申告期限の延長制度があるが、法人税法75条(確定申告書の提出期限の延長)及び第75条の2(確定申告書の提出期限の延長の特例)に規定されている申告期限の延長制度は、消費税等の申告期限には適用できない。
 原告(税理士法人)は、被告(保険会社)に対し、保険契約に基づき、消費税無申告加算税相当額の損害を被ったとして損害賠償のてん補を請求したが、被告はそれに応じなかったため、本件訴訟が提起された。


「不正の意図」VS「政策的判断」
 この事件の争点は、原告の請求について、免責条項の適用があるかどうか。これについて、原告側は、税賠保険の免責条項は、「申告税額と本来納付すべき税額の差額を依頼者に賠償し、その賠償に係る損害を税賠保険によりてん補されることによって生じ得る不正の助長を防止しようとするところにあるものとみるべき(最高裁H15年9月9日判決)」とした上で、「本件は、勘違いで申告期限を徒過したに過ぎず、納税申告の不正を意図したものではない」と主張した。
 これに対して被告側は、「特約条項5条は、無申告加算税に相当する損害について免責事由としている。このような免責条項が設けられたのは、国税庁から加算税・延滞税等は、わが国税制の根幹である申告納税制度を確保する役割を果たしており、ペナルティー的性質を有するものについて損害として把握し保険によりてん補することは税務行政上問題があると指摘されたことを受けて、このような付帯税については、政策的判断から免責とされたのである」などと反論し、原告が主張する最高裁判決についても、「特約条項5条2項の解釈であり、本件は特約条項5条1項に該当する事案であるから、同裁判所判例が直接妥当する場面ではない」と主張した。

免責条項、形式的にも実質的にも適用
 佐藤裁判官は、「原告の過失により、消費税の申告期限を徒過したことから、無申告加算税を課され、その損害をてん補するというものであるから、特約条項5条1項により、無申告加算税に相当する損害として、形式的に免責条項に当たるものである。」と判示。さらに、「原告が不正に申告をしなかったというものではないことは明らか」であるとしながらも、下記のような理由から、無申告加算税が免責条項から除外される、あるいは、明らかに不正の意図がない場合にはこれを除外するとの解釈は困難であり、免責条項は、「形式(特約条項5条1項)的にも実質(税賠保険開発の経緯)的にも適用される」と判断した。

免責条項が適用された実質的な理由
・日税連と保険会社が、昭和52年頃から税賠保険の作成を検討し、大蔵省や国税庁の審査を受けていたこと
・大蔵省や国税庁から、加算税・延滞税等、本税等を保険のてん補対象とすることは申告納税制度の根幹を揺るがし、税務行政上問題があるとの理由で、申請を拒否され一旦は開発が頓挫したこと
・再度開発を進め、昭和59年頃には、重加算税は免責とし、税理士の故意、犯罪行為等は免責とし、税理士法上の禁止規定を免責とすることとするほか、過少申告加算税、無申告加算税等に相当する損害賠償責任については一定の免責金額及び縮小てん補等を骨子とする案を作成し、国税庁と折衝したが、昭和61年頃、国税庁は、過少申告加算税等に相当する損害を一切免責とすることを条件に本保険の開発を認めるという見解を示したこと
・昭和62年12月25日に、本保険が認可承認されたこと
・最終的に認可された本保険では、税額を過大申告させてしまったことによる賠償責任のみが保険の対象となったこと
・そのことを保険各社も日税連も認識していたことを認めることができること

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