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解説記事2018年07月09日 【税制改正解説】 平成30年度における所得税関係の改正について(2018年7月9日号・№746)

税制改正解説
平成30年度における所得税関係の改正について
 黒岩伸太郎

 働き方の多様化を踏まえ、様々な形で働く人をあまねく応援する等の観点から個人所得課税の見直しを行うとともに、デフレ脱却と経済再生に向け、賃上げ・生産性向上のための税制上の措置及び地域の中小企業の設備投資を促進するための税制上の措置を講じ、さらに、中小企業の代替わりを促進する事業承継税制の拡充等が行われるほか、国際課税制度の見直し、税務手続の電子化の推進やたばこ税の見直し等を行うことを内容とした「所得税法等の一部を改正する法律」は、国会における審議を経て平成30年3月27日に参議院本会議で可決・成立し、3月31日に関係政省令とともに公布され、原則として4月1日から施行されている。
 以下これらの改正内容について概要を説明する。

第一 所得税法等の改正
Ⅰ 所得税の見直し関係の改正

1 給与所得控除の改正(所法28関係等)
(1)改正の趣旨
 近年、経済社会の構造が著しく変化する中で、働き方が様々な面で多様化している。かつては、「学校卒業後、1つの会社で定年まで勤めあげ、年金生活に入る」といったライフコースが典型的であったが、特定の企業や組織に属さず専門分野の能力等を活かしてフリーランスとして業務単位で仕事を請け負う、子育てをしながら会社員時代に培った技能を活かして在宅で仕事を請け負う、高齢者が長年培った能力や経験を活かし業務単位の仕事の請負や起業支援等の形で活躍するなど、多様な働き方が増えつつある。人生100年を生きる時代には、さらにこうした傾向が強まることも想定される。
 他方、わが国の個人所得課税は、こうした多様な働き方の拡大を想定しているとは言い難い仕組みとなっている。事業所得等については事業収入等から必要経費を差し引く一方、給与所得については給与収入から給与所得控除額(一定の支出額が給与所得控除額の2分の1を上回る場合には、その2分の1を上回る部分の支出額(特定支出控除)と給与所得控除額の合計額)を差し引くこととされている。また、公的年金等収入については、経済的稼得力が減退する局面にある者の生計手段とするための公的な給付であること等を考慮し、公的年金等控除を差し引くこととされている。このように、現行の仕組みは、働き方や収入の稼得方法により所得計算が大きく異なるものとなっている。
 平成30年度税制改正においては、働き方の多様化を踏まえ、「働き方改革」を後押しする観点から、特定の収入にのみ適用される給与所得控除や公的年金等控除から、どのような所得にでも適用される基礎控除に、負担調整の比重を移していくことが必要であるとの基本的考え方の下、給与所得控除額及び公的年金等控除額を10万円引き下げるとともに、基礎控除の額を10万円引き上げることとされた。
(2)改正の内容 イ 給与所得控除の改正
  次のとおり改正が行われた。
(イ)給与所得控除額を一律10万円引き下げることとされた。
(ロ)給与所得控除額の上限額が適用される給与等の収入金額が850万円(改正前:1,000万円)とされるとともに、その上限額を195万円(改正前:220万円)に引き下げることとされた。
  この結果、平成32年分以後の給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じて、それぞれ表1のとおりとなる。

ロ 税額表の改正
  上記イの改正に伴い、次に掲げる給与所得の源泉徴収税額表等が改められている(所法別表第2~別表第5)。
(イ)別表第2 給与所得の源泉徴収税額表(月額表)
(ロ)別表第3 給与所得の源泉徴収税額表(日額表)
(ハ)別表第4 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表
(ニ)別表第5 年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表
ハ 給与所得控除額の一律「10万円」引下げについて
  今回の改正は、働き方の多様化を踏まえ、「働き方改革」を後押しする観点から、特定の収入にのみ適用される給与所得控除や公的年金等控除から、どのような所得にでも適用される基礎控除に、負担調整の比重を移していくことが必要との観点から行われたものであるが、負担の変動が急激なものとならないよう、まずは、10万円を給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除へ振り替えることとされたところである。
ニ 給与所得控除額の上限額が適用される給与等の収入金額の「850万円」への引下げについて
  給与所得控除については、給与所得者の勤務関連支出や主要国の概算控除額と比べて過大となっていることを踏まえ、給与所得控除額が上限となる給与収入を850万円に引き下げることとされたところである。ただし、後述「第二 租税特別措置法等(所得税関係)の改正」の「I 所得税の見直し関係の改正」の「1 所得金額調整控除の創設」のとおり、子育て世帯等に配慮することとされており、96%の給与所得者は負担増にならない見込みとなっている。この給与所得控除が上限額となる給与収入の水準については、与党の税制調査会において、800万円超とする案も含め様々な議論が行われた中、最終的に、家計への影響や地方財政への影響等を総合的に勘案しつつ、850万円超とされたところである。
(3)適用関係 イ 上記(2)イの改正は、平成32年分以後の所得税について適用され、平成31年分以前の所得税については従前どおりとされている。
ロ 上記(2)ロの改正は、平成32年1月1日以後に支払うべき給与等について適用され、同日前に支払うべき給与等については従前どおりとされている。

2 公的年金等控除の改正(所法35関係等)
(1)改正の趣旨
 公的年金等控除は、公的年金等収入が経済的稼得力が減退する局面にある者の生計手段とするための公的な給付であること等に配慮して設けられているものであるが、給与所得控除とは異なり収入が増加しても控除額に上限はなく、公的年金等収入以外の所得がいくら高くても公的年金等収入のみで暮らす者と同じ額の控除が受けられるなど、高所得の年金所得者にとって手厚い仕組みとなっている。また、主要国は、基本的に、拠出段階、給付段階のいずれかで課税される仕組みとなっているが、わが国は、拠出段階では全額控除され、給付段階でも公的年金等控除が受けられ、拠出・給付の両段階で十分な課税がなされない仕組みになっているとの指摘がある。
 こうした点を踏まえ、世代内・世代間の公平性を確保する観点から、公的年金等控除について、公的年金等収入が1,000万円を超える場合には、控除額に上限(見直し後の上限額:195.5万円(公的年金等控除から基礎控除への振替による10万円引下げ分を含む。))を設けることとされた。また、公的年金等収入以外の所得金額が1,000万円を超える場合には控除額を10万円引き下げ、2,000万円を超える場合には控除額を20万円引き下げることとされた。
(2)改正の内容 イ 公的年金等控除の改正
  公的年金等控除について、次の改正が行われた。
(イ)控除額が一律10万円引き下げられた。
(ロ)公的年金等の収入金額が1,000万円を超える場合の控除額については、195万5千円の上限が設けられた。
(ハ)公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円を超え2,000万円以下である場合の控除額を上記(イ)及び(ロ)の見直し後の控除額から一律10万円、公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が2,000万円を超える場合の控除額を上記(イ)及び(ロ)の見直し後の控除額から一律20万円、それぞれ引き下げることとされた。
  なお、上記の「合計所得金額」とは、その年の所得税法第70条(純損失の繰越控除)及び第71条(雑損失の繰越控除)の規定を適用しないで計算した場合における同法第22条(課税標準)に規定する総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額をいうこととされている。
(注)租税特別措置法の規定により所得税法上の総所得金額に含めないで別の課税標準に置き換えられている場合があるが、上記の「総所得金額」には、租税特別措置法の定めにより、その置き換えられたものを含めたところで計算することとされている。以下同じ。
  この結果、平成32年分以後の公的年金等控除額は、公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額及び公的年金等の収入金額に応じてそれぞれ表2のとおりとなる。

ロ 公的年金等の収入金額が「1,000万円」を超える場合の上限設定について
  今回の公的年金等控除の見直しについては、これまでなかった上限設定を初めて導入するものであり、十分に高い水準として1,000万円超とすることとされたところである。
ハ 公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が「1,000万円」を超える場合の公的年金等控除額の引下げについて
  今回の公的年金等控除の見直しについては、公的年金等控除が、経済的稼得力が減退する局面にある者に対する配慮である一方、公的年金等以外の所得金額が十分に高い者には、こうした配慮を行う必要性は乏しいのではないかとの観点から、公的年金等以外の所得金額が1,000万円を超える者の公的年金等控除額を引き下げることとされた。この公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額の基準については、十分に高い水準として1,000万円超に設定されたところである。
  また、合計所得金額の基準については、今回のように「公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額」ではなく、「公的年金等収入と公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額との合計額」に応じて公的年金等控除額が決まる仕組みとするほうが、経済的稼得力を判定する観点からはより合理的であるものと考えられるが、「制度がより複雑なものとなること」及び「公的年金等収入の額に応じて、公的年金等以外の所得金額を一定金額以下に抑えるよう、就業調整が行われるおそれがあること」等を踏まえ、今回のような「公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額」を基準とする仕組みとされたところである。
(3)適用関係  上記(2)の改正は、平成32年分以後の所得税について適用され、平成31年分以前の所得税については従前どおりとされている。

3 基礎控除の改正(所法86関係等)
(1)改正の趣旨
 わが国の基礎控除については、所得の多寡によらず一定金額を所得から控除する所得控除方式が採用されているが、高所得者にまで税負担の軽減効果を及ぼす必要性は乏しいのではないか等の指摘がある。
 主要国においては、一定の課税所得までは税率をゼロとする「ゼロ税率方式」や、課税所得に累進税率を適用した後に一定の控除額を差し引く「税額控除方式」、所得控除方式を維持しつつ高所得者について控除額を逓減・消失させる「逓減・消失型の所得控除方式」が採用されており、いずれもわが国の所得控除方式と比べて所得再分配機能が高い仕組みである。
 「ゼロ税率方式」や「税額控除方式」は、所得再分配機能の強化に寄与するものの、現行の所得控除方式から変更した場合、負担の変動が急激なものとなりかねないことから、「逓減・消失型の所得控除方式」を採用することとされた。また、基礎控除は、人的控除の中で最も基本的な控除であり、より広い所得階層に適用されるべきものであることを踏まえ、所得金額2,400万円超から逓減し、2,500万円超で消失する仕組みとされたところである。
(2)改正の内容 イ 基礎控除の改正
  基礎控除について、控除額を一律10万円引き上げるとともに、合計所得金額が2,400万円を超える個人についてはその合計所得金額に応じて控除額が逓減し、合計所得金額が2,500万円を超える個人については基礎控除の適用はできないこととされた。また、この改正に伴い、年末調整において基礎控除の適用を受ける場合に合計所得金額の見積額を申告する等の所要の措置が講じられた。この結果、平成32年分以後の基礎控除額は、個人の合計所得金額に応じてそれぞれ表3のとおりとなる。

ロ 給与所得者の基礎控除申告書
  上記イの改正に伴い、国内において給与等の支払を受ける居住者は、年末調整の際に、基礎控除の額に相当する金額の控除を受けようとする場合には、その給与等の支払者(2以上の給与等の支払者から給与等の支払を受ける場合には、主たる給与等の支払者)からその年最後に給与等の支払を受ける日の前日までに、次に掲げる事項を記載した申告書を、その給与等の支払者を経由して、その給与等に係る所得税の納税地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされた。
(イ)給与等の支払者の氏名又は名称
(ロ)この申告書を提出する者の氏名及び住所(国内に住所がない場合には居所とし、国内に住所及び居所がない場合には国外における住所又は居所とされている。)
(ハ)その者のその年の合計所得金額の見積額
(ニ)上記(ハ)の見積額に応じて計算した基礎控除の額に相当する金額及びその計算の基礎
(ホ)その他参考となるべき事項
ハ 基礎控除の逓減、消失となる合計所得金額の水準の「2,400万円」、「2,500万円」について
  今回の見直しにおいて、基礎控除の逓減、消失となる合計所得金額の水準については、所得再分配機能の回復の観点を踏まえつつも、基礎控除が最も基本的な控除であり、より広い所得階層に適用されるべきものであることを総合的に勘案し、合計所得金額2,400万円超から逓減し、2,500万円超で消失する仕組みとすることとされたところである。
(3)適用関係 イ 上記(2)イの改正は、平成32年分以後の所得税について適用され、平成31年分以前の所得税については従前どおりとされている。
ロ 上記(2)ロの改正は、平成32年1月1日以後に支払うべき給与等について適用される。

4 特定支出控除の改正(所法57の2関係)  特定支出の範囲に、勤務する場所を離れて職務を遂行するために直接必要な旅費等で通常要する支出を加えるとともに、特定支出の範囲に含まれている単身赴任者の帰宅旅費について、1か月に4往復を超えた旅行に係る帰宅旅費を対象外とする制限を撤廃した上、帰宅のために通常要する自動車等を使用することにより支出する燃料費及び有料道路の料金の額を加えることとされた。
 上記の改正は、平成32年分以後の所得税について適用され、平成31年分以前の所得税については従前通りとされている。

5 上記1から3までの改正に伴う所得税法関係の改正(所法2関係等)
(1)改正の内容
イ 雑損控除
  雑損控除の対象となる資産を有する親族に係る総所得金額等の要件を48万円以下(改正前:基礎控除の額に相当する金額以下)に引き上げることとされた。
ロ 寡婦(寡夫)控除
  寡婦(寡夫)に該当するかどうかの判定におけるその者と生計を一にする子に係る総所得金額等の要件を48万円以下(改正前:基礎控除の額に相当する金額以下)に引き上げることとされた。
ハ 勤労学生控除
  勤労学生の合計所得金額要件を75万円以下(改正前:65万円以下)に引き上げることとされた。
ニ 配偶者控除
  同一生計配偶者の合計所得金額要件を48万円以下(改正前:38万円以下)に引き上げることとされた。
ホ 配偶者特別控除
  対象となる配偶者の合計所得金額要件を48万円超133万円以下(改正前:38万円超123万円以下)とし、その控除額の算定の基礎となる配偶者の合計所得金額区分を、それぞれ10万円引き上げることとされた。
  上記ニ及びこのホの改正により、平成32年分以後の配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額は、その居住者の合計所得金額及び配偶者の合計所得金額に応じて、表4のようになる。

ヘ 扶養控除
  扶養親族の合計所得金額要件を48万円以下(改正前:38万円以下)に引き上げることとされた。
ト 給与等又は公的年金等の源泉徴収の際の配偶者に関する控除
  源泉控除対象配偶者の合計所得金額要件を95万円以下(改正前:85万円以下)に引き上げることとされた。
チ 災害減免法の徴収猶予
  徴収猶予限度額の算定をする場合には、基礎控除についても他の各種控除と同様に、その見積額により計算することとされた。
(2)適用関係  上記(1)の改正は、平成32年分以後の所得税について適用され、平成31年分以前の所得税については従前どおりとされている。

Ⅱ 金融・証券税制の改正

1 信託財産に係る利子等の課税の特例等の改正(所令300関係等)
(1)改正の内容
イ 集団投資信託の収益の分配の支払を受ける者が確定申告書に記載するその収益の分配に係る源泉徴収税額から控除外国所得税の額(その収益の分配に係る源泉徴収所得税の額から控除された外国源泉所得税の額に、その収益の分配の額の総額のうちにその者が支払を受けた収益の分配の額の占める割合を乗じて計算した金額)を控除することとされた。
ロ 集団投資信託を引き受けた内国法人は、その集団投資信託の収益の分配の支払を受ける者に対して通知外国所得税の額その他の事項を通知しなければならないこととされた。
ハ 集団投資信託の収益の分配に係る源泉徴収所得税の額から控除する外国源泉所得税の額は、その収益の分配に係る源泉徴収所得税の額にその集団投資信託の外貨建資産割合を乗じて計算した金額を限度とすることとされた。
ニ 受益権投資目的証券投資信託について、その設定に係る受益権の募集を一定の公募により行われたものとする要件が撤廃された。
(2)適用関係  上記(1)の改正は、平成32年1月1日以後に支払われる収益の分配について適用し、同日前に支払われた収益の分配については従前どおりとされている。

2 個人が氏名又は住所の変更をした場合の告知等の改正(所令336関係等)
(1)
その都度告知等を要しないこととされる特例の対象となる個人が、氏名又は住所の変更に係る告知等をする場合には、その者の個人番号の告知等を要しないこととされ、その告知等の際の個人番号を証する書類の提示等に代えて、変更前の氏名又は住所及び変更後の氏名又は住所が記載された住所等変更確認書類の提示をすることができることとされた。
(2)個人が氏名又は住所の変更に係る(特別)非課税貯蓄に関する異動申告書を提出する場合には、その申告書に個人番号の記載を要しないこととされ、その提出の際の個人番号を証する書類の提示等に代えて、変更前の氏名又は住所及び変更後の氏名又は住所を証する書類の提示をすることができることとされた。
(3)非課税貯蓄申告書等の提出等をした者が、その告知をした事項が記載された帳簿の記載事項の変更届出書(氏名又は住所の変更に係るものに限る。)を提出する場合には、個人番号の記載を要しないこととされ、その届出書には、個人番号を証する書類の写しの添付等に代えて、変更前の氏名又は住所及び変更後の氏名又は住所を証する書類の写しの添付ができることとされた。
(4)公的年金等の支払者が公的年金等の受給者本人に係る機構保存本人確認情報の提供を受けて作成した帳簿を備えている場合におけるその帳簿は、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書に個人番号の記載を要しないこととすることができる公的年金等の支払者が備え付けるべき帳簿に該当することとされた。

3 無対価組織再編成に係る整備(所法25関係等)  対価が交付されない合併、分割及び株式交換について、非適格組織再編成となる場合における処理の方法が明確化された。

4 信託財産に係る利子等の課税の特例の改正等に伴う支払調書等の改正(所法225関係等)  信託財産に係る利子等の課税の特例の改正等に伴い利子等の支払調書等に通知外国所得税の額等を記載することとされた。
 上記の改正は、支払の確定した日が平成32年1月1日以後である利子等又は配当等について適用され、支払の確定した日が同年1月1日前である利子等又は配当等については従前どおりとされている。

Ⅲ その他の改正

1 返品調整引当金制度の廃止(旧所法53関係)
 所要の経過措置が講じられた上で、制度が廃止された。

2 固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例の改正(所法58関係)  この特例の適用対象に、農作物の栽培を耕作に該当するものとみなして適用される農地の上に存する農作物の栽培に関する権利が追加された。

3 延払条件付販売等に係る収入及び費用の帰属時期の改正(改正後:リース譲渡に係る収入及び費用の帰属時期)(所法65関係)  所要の経過措置が講じられた上で、対象となる資産の販売等がリース譲渡に限定された。

4 資産に係る控除対象外消費税額等の必要経費算入の改正(所令182の2関係)  控除対象外消費税額等の計算において、課税仕入れ等が軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合等の課税仕入れ等の税額に係る地方消費税の額に相当する金額は、地方消費税を税率が1.76%の消費税であると仮定して消費税に関する法令の規定の例により計算した金額とされた。

5 生命保険料控除及び地震保険料控除に係る年末調整手続の改正(所法198関係等)  給与等の支払を受ける居住者は、給与所得者の保険料控除申告書に記載すべき事項を電磁的方法により提供する場合には、生命保険料控除証明書又は地震保険料控除証明書の書面による提出又は提示に代えて、その給与等の支払者に対し、これらの書類に記載されるべき事項を電磁的方法により提供することができることとされた。

6 光ディスク等による調書等の提出の特例の改正(所法228の4関係)  この特例の対象となるかどうかの判定基準となる調書等の提出期限の属する年の前々年の1月1日から12月31日までの間に提出すべきであった調書等の枚数が100枚以上(改正前:1,000枚以上)に引き下げられた。

7 寄附金控除制度の改正(所令217関係等)  特定公益増進法人の範囲に、市町村の窓口関連業務又は介護医療院の設置及び管理の業務を行う地方独立行政法人が追加された。

8 厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律の改正に伴う所得税関係の改正(所令72関係等)
(1)
厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)の施行の日の前日において特例退職共済年金、特例退職年金、特例減額退職年金、特例通算退職年金又は特例老齢農林年金の受給権を有していた者に対して支給するこれらの年金に係る特例一時金が、退職手当等とみなす一時金とされた。
(2)改正法による特例年金給付の廃止に伴い、次の見直しが行われた。
イ 特例年金給付に係る源泉徴収の方法の特例が廃止された。
ロ 障害者等の少額預金の利子所得等の非課税の対象となる障害者等の範囲から、厚生年金保険制度及び農林漁業団体職員共済組合制度の統合を図るための農林漁業団体職員共済組合法等を廃止する等の法律附則の特例障害農林年金を受けている者及び同法附則の特例遺族農林年金を受けている遺族(妻に限る。)である者が除外された。

第二 租税特別措置法等(所得税関係)の改正
Ⅰ 所得税の見直し関係の改正

1 所得金額調整控除の創設(措法41の3の3関係等)
(1)制度創設の趣旨
イ 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除
  平成30年度税制改正において、前述「第一 所得税法等の改正」の「Ⅰ 所得税の見直し関係の改正」の「1 給与所得控除の改正」のとおり、給与収入が850万円を超える場合の給与所得控除額を195万円(給与所得控除から基礎控除への振替による10万円引下げ分を含む。)に引き下げることとされたが、子育て等に対して配慮する観点から、23歳未満の扶養親族を有する者や特別障害者控除の対象である扶養親族等を有する者等については、負担増が生じないようにするため、子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除が措置されたところである。これは、子育て等の負担がある者については経済的余裕が必ずしも十二分とは考えられないことから、給与所得控除の見直しにより、負担増とならないように措置されたところである。
ロ 給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除
  平成30年度税制改正において、前述「第一 所得税法等の改正」の「I 所得税の見直し関係の改正」の「1 給与所得控除の改正」、「2 公的年金等控除の改正」及び「3 基礎控除の改正」のとおり、給与所得控除額及び公的年金等控除額を10万円引き下げるとともに、基礎控除の額を10万円引き上げることとされた。これにより、給与所得、年金所得のいずれかを有する者については、基礎控除との控除額の振替により負担増は生じなくなるが、給与所得、年金所得の両方を有する者については、給与所得控除額及び公的年金等控除額の両方が10万円引き下げられることから、基礎控除の額が10万円引き上げられたとしても、給与所得、年金所得の金額によっては、給与所得控除額及び公的年金等控除額の合計額が10万円を超えて減額となり、負担増が生じるケースがあり得ることとなる。このような場合の負担増が生じないようにするために、給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除が措置されたところである。
(2)制度の内容 イ 子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除
  その年の給与等の収入金額が850万円を超える居住者で、特別障害者に該当するもの又は年齢23歳未満の扶養親族を有するもの若しくは特別障害者である同一生計配偶者若しくは扶養親族を有するものの総所得金額を計算する場合には、給与等の収入金額(その給与等の収入金額が1,000万円を超える場合には、1,000万円)から850万円を控除した金額の10%相当額を、給与所得の金額から控除することとされた。
(注)この控除の対象者は、居住者に限定されている。
  なお、この控除については、所得税法の扶養控除と異なり、2以上の居住者の扶養親族に該当する者がある場合には、その者は、これらの居住者のうちいずれか一の居住者の扶養親族にのみ該当するものとみなすこととは、されていない。よって、例えば、夫婦の両方ともその年の給与等の収入金額が850万円を超える居住者に該当し、夫婦の両方の23歳未満の扶養親族に該当する子どもがいるような場合には、その夫婦両方が、この控除の適用を受けることができる。
ロ 給与所得と年金所得の双方を有する者に対する所得金額調整控除
  その年の給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額がある居住者で、給与所得控除後の給与等の金額及び公的年金等に係る雑所得の金額の合計額が10万円を超えるものの総所得金額を計算する場合には、給与所得控除後の給与等の金額(10万円を限度)及び公的年金等に係る雑所得の金額(10万円を限度)の合計額から10万円を控除した残額を、給与所得の金額から控除することとされた。
(注)この控除の対象者は、居住者に限定されている。
ハ 上記イの所得金額調整控除は、年末調整において適用できることとされ、居住者が、その年に年末調整の適用を受ける給与等の支払を受けるべき場合において、所得金額調整控除に係る申告書をその給与等の支払者を経由してその給与等に係る所得税の納税地の所轄税務署長に提出したときは、給与所得控除後の給与等の金額は、その金額に相当する金額から上記イの所得金額調整控除をされる金額に相当する金額を控除した金額に相当する金額とすることとされている。
ニ 公的年金等に係る確定申告不要制度における公的年金等に係る雑所得以外の所得金額を算定する場合には、上記ロの所得金額調整控除額を給与所得の金額から控除することとされた。
(3)適用関係 イ 上記(2)イ、ロ及びニの制度は、平成32年分以後の所得税について適用することとされている。
ロ 上記(2)ハの制度は、平成32年1月1日以後に支払うべき給与等について適用することとされている。

2 青色申告特別控除の改正(措法25の2関係)
(1)改正の内容
 青色申告特別控除について、取引を正規の簿記の原則に従って記録している者に係る青色申告特別控除の控除額を55万円(改正前:65万円)に引き下げる一方、取引を正規の簿記の原則に従って記録している者であって、次に掲げる要件のいずれかを満たすものに係る青色申告特別控除の控除額を65万円とすることとされた。
イ その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律に定めるところにより「電磁的記録の備付け及び保存」又は「電磁的記録の備付け及びその電磁的記録の電子計算機出力マイクロフィルムによる保存」(以下これらを「電磁的記録の備付け等」という。)を行っていること。
ロ その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、その提出期限までに電子情報処理組織(e-Tax)を使用して行う。
(注)平成32年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳の備付けを開始する日に、これらの帳簿の電磁的記録の備付け等に係る承認を受けていない場合において、同年中にその承認を受けてこれらの帳簿の電磁的記録の備付け等を行っているときは、上記イの要件を満たすこととする等の所要の措置が講じられている。
(2)適用関係  上記(1)の改正は、平成32年分以後の所得税について適用され、平成31年分以前の所得税については従前どおりとされている。

3 公的年金等控除の最低控除額等の特例の改正(措法41の15の3関係)
(1)改正の内容
 前述「第一 所得税法等の改正」の「Ⅰ 所得税の見直し関係の改正」の「2 公的年金等控除の改正」に伴い、65歳以上の者に係る公的年金等控除の最低控除額も引き下げることとされた。
 具体的には、所得税法本法における公的年金等控除における最低控除額が公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額の区分に応じ60万円、50万円、40万円に引き下げられたことに伴い、本特例の65歳以上の者に係る最低控除額も改正前の120万円から公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額の区分に応じそれぞれ110万円、100万円、90万円に引き下げられた。ただし、65歳以上の者の最低控除額について、65歳未満の者の最低控除額に50万円を加算するということは変わっていない。
 この結果、平成32年分以後の65歳以上の者に係る公的年金等控除額は、公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額及び公的年金等の収入金額に応じてそれぞれ表5のとおりとなる。

(2)適用関係  上記(1)の改正は、平成32年分以後の所得税について適用され、平成31年分以前の所得税については従前どおりとされている。

4 家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例の改正(措法27関係)  家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例について、必要経費に算入する金額の最低保障額が55万円(改正前:65万円)に引き下げられた。
 上記の改正は、平成32年分以後の所得税について適用され、平成31年分以前の所得税については従前どおりとされている。

Ⅱ 金融・証券税制の改正

1 上場株式等の配当等に係る源泉徴収義務等の特例等の改正(措法9の3の2関係等)
(1)
支払の取扱者が交付をする上場株式等の配当等の次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める金額がある場合には、その金額は、支払の取扱者が源泉徴収するその上場株式等の配当等に係る源泉徴収所得税の額を限度としてその源泉徴収所得税の額から控除することとされた。
イ 投資信託(証券投資信託その他一定のものに限る。)又は特定受益証券発行信託の収益の分配
  その投資信託又は特定受益証券発行信託の信託財産についてその投資信託又は特定受益証券発行信託を引き受けた法人が納付した所得税及び外国源泉所得税の額のうちその収益の分配に対応する一定の金額
ロ 特定目的会社の利益の配当
  その特定目的会社が納付した外国法人税の額のうちその利益の配当に対応する一定の金額
ハ 投資法人の投資口の配当等
  その投資法人が納付した外国法人税の額のうちその配当等に対応する一定の金額
ニ 特定目的信託の受益権の剰余金の配当
  その特定目的信託に係る受託法人が納付した外国法人税の額のうちその剰余金の配当に対応する一定の金額
(2)上記(1)により控除する外国源泉所得税及び外国法人税の額は、その上場株式等の配当等に係る源泉徴収所得税の額にその投資信託若しくは特定受益証券発行信託、特定目的会社、投資法人又は特定目的信託の外貨建資産割合を乗じて計算した金額を限度とすることとされた。また、上記(1)により控除する金額その他の一定の金額は、その上場株式等の配当等の金額に加算することとされた。
(3)上記(1)により控除された金額に相当する金額のうち外国源泉所得税又は外国法人税の額に対応する一定の金額は、分配時調整外国税相当額の控除制度の対象とすることとされた。
(4)支払の取扱者は、上記(1)の控除をする場合には、上場株式等の配当等の交付を受ける者に対し、控除外国所得税相当額その他の事項を通知しなければならないこととされた。

2 非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置等の改正(措法37の14関係等)
(1)非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置
イ 非課税口座簡易開設届出書の創設
  非課税口座を開設しようとする居住者等は、金融商品取引業者等の営業所の長に対し、非課税適用確認書等の添付を要しない非課税口座簡易開設届出書の提出をすることができることとされた。
ロ 非課税口座内上場株式等の移管手続の簡素化
  非課税口座内上場株式等は、非課税期間終了の日に非課税口座が開設されている金融商品取引業者等に開設されている特定口座がある場合には、他の年分の非課税管理勘定に移管されるもの及び特定口座以外の他の保管口座への非課税口座内上場株式等移管依頼書に記載されたものを除き、その特定口座に移管されることとされた。
ハ 非課税口座廃止手続の見直し
  平成28年1月1日前に非課税口座を開設した居住者等でその非課税口座を開設している金融商品取引業者等の営業所の長に個人番号の告知をしていないものが非課税口座廃止届出書を提出する場合には、その金融商品取引業者等の営業所の長が所轄税務署長に提供する廃止届出事項から個人番号を除外することとされた。
(2)未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置  未成年者口座内上場株式等は、非課税期間終了の日に未成年者口座が開設されている金融商品取引業者等に開設されている特定口座がある場合には、他の年分の非課税管理勘定等に移管されるもの及び特定口座以外の他の保管口座への未成年者口座内上場株式等移管依頼書に記載されたものを除き、その特定口座に移管されることとされた。

3 特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例の改正(措令25の10の2関係)
(1)
特定口座に受入れ可能な上場株式等の範囲に、居住者等が取得した特定譲渡制限付株式等で、特定口座への受入れをその譲渡についての制限が解除された時にその制限が解除された特定譲渡制限付株式等の全てについて振替の方法により行う一定のものが追加された。
(2)居住者等が開設する特定口座に係る特定口座内保管上場株式等を発行した法人は、分割型分割、株式分配又は払戻し等を行った場合には、その特定口座が開設されている金融商品取引業者等の営業所の長に対し、特定口座内保管上場株式等の取得価額の計算に必要な情報を通知しなければならないこととされた。

4 特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例の改正(措法41の19関係)
(1)
地域再生法の特定地域再生事業を行う株式会社に係る措置の特定新規株式が、地域再生法の特定地域再生事業を行う株式会社により発行される株式で、地域再生法の一部を改正する法律の施行の日(平成30年6月1日)から平成32年3月31日までの間に発行されるものに改められた。
(2)特定新規株式の範囲から、総合特別区域法の指定会社により発行される株式が除外された。
(3)国家戦略特別区域法の株式会社により発行される特定新規株式の発行期限が平成32年3月31日まで2年延長された。

5 個人が氏名又は住所の変更をした場合の手続の改正(措規3の5関係等)
(1)
財産形成非課税住宅(年金)貯蓄申告書を提出した個人が、氏名又は住所の変更に係る財産形成非課税住宅(年金)貯蓄に関する異動申告書を提出する場合には、個人番号の記載を要しないこととされた。
(2)居住者等が氏名又は住所の変更に係る特定寄附信託異動申告書等の提出をする場合には、その特定寄附信託異動申告書等に個人番号の記載を要しないこととされ、その提出の際の個人番号を証する書類の提示等に代えて、変更前の氏名又は住所及び変更後の氏名又は住所を証する書類の提示をすることができることとされた。
(3)特定の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等の適用を受けている権利者等が氏名又は住所の変更をした場合の届出事項から、個人番号を除外することとされた。

6 特別事業再編を行う法人の株式を対価とする株式等の譲渡に係る譲渡所得等の課税の特例の創設(措法37の13の3関係)  個人が、産業競争力強化法の認定特別事業再編事業者(産業競争力強化法等の一部を改正する法律の施行の日から平成33年3月31日までの間に特別事業再編計画の認定を受けた法人に限る。)の行ったその認定に係る特別事業再編計画に係る特別事業再編によりその有する他の法人の株式等を譲渡し、その認定特別事業再編事業者の株式の交付を受けた場合には、その株式等の譲渡はなかったものとみなし、その譲渡に係る事業所得、譲渡所得及び雑所得の課税を繰り延べることとされた。

Ⅲ 住宅・土地税制の改正

1 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例の改正(措法36の2関係)
 買換資産が建築後使用されたことのある家屋で耐火建築物以外のものである場合の要件に、その取得の日以前25年以内に建築されたものであること又はその取得期限までに地震に対する安全性に係る規定若しくはこれに準ずる基準に適合することのいずれかを満たすことが加えられるとともに、適用期限が平成31年12月31日まで2年延長された。

2 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の改正(措法41の5関係)  適用期限が平成31年12月31日まで2年延長された。

3 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の改正(措法41の5の2関係)  適用期限が平成31年12月31日まで2年延長された。

4 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除の改正(措法34の2関係)
(1)
特定の民間住宅地造成事業のために土地等を譲渡した場合の適用期限が平成32年12月31日まで3年延長された。
(2)食品商業集積施設整備事業の用に供するために土地等が買い取られる場合が適用対象から除外された。

5 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の800万円特別控除の改正(措令22の9関係)  適用対象に農作物の栽培を耕作に該当するものとみなして適用される農地及びその上に存する農作物の栽培に関する権利が加えられるとともに、独立行政法人農業者年金基金に対して一定の農地等を譲渡した場合が適用対象から除外された。

6 大規模な住宅地等造成事業の施行区域内にある土地等の造成のための交換等の場合の譲渡所得の課税の特例の廃止(旧措法37の7関係等)  特例が廃止された。

Ⅳ 事業所得等に係る税制の改正

1 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の廃止(旧措法10の2関係)
 適用期限(平成30年3月31日)の到来をもって廃止された。

2 高度省エネルギー増進設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の創設(措法10の2関係)  青色申告書を提出する個人が、平成30年4月1日(エネルギーの使用の合理化等に関する法律の認定を受けた工場等を設置している者及び荷主は、エネルギーの使用の合理化等に関する法律の一部を改正する法律の施行の日)から平成32年3月31日までの期間内に、高度省エネルギー増進設備等の取得等をして、これを国内にあるその個人の事業の用に供した場合には、その事業の用に供した年においてその高度省エネルギー増進設備等の取得価額の30%相当額の特別償却ができることとされた。また、青色申告書を提出する中小事業者に該当する個人は、高度省エネルギー増進設備等の取得価額の7%相当額の税額控除(供用年分の調整前事業所得税額の20%相当額が上限)との選択適用ができることとされた。

3 地方活力向上地域において特定建物等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の改正(改正後:地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度)(措法10の4の2関係)  移転型事業の対象地域に準地方活力向上地域とされた近畿圏の中心部及び中部圏の中心部が追加された上、地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定期限が平成32年3月31日まで2年延長された。

4 特定の地域において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除制度の改正(改正後:地方活力向上地域等において雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除制度)(措法10の5関係)
(1)
特定地域基準雇用者数に係る措置は、適用期限(平成30年)の到来をもって廃止された。
(2)地方事業所基準雇用者数に係る措置について、次の見直しが行われた上、地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定期限が平成32年3月31日まで2年延長された。
イ 適用要件のうち「基準雇用者数が5人以上(中小事業者は、2人以上)であることにつき証明がされたこと」との要件が「特定新規雇用者等数が2人以上であること」との要件とされた。
ロ 適用要件のうち給与等支給額に係る要件における比較給与等支給額の算出において適用年の前年分における給与等の支給額にその適用年の基準雇用者割合を乗じて計算した金額に乗ずる割合が20%(改正前:30%)に引き下げられた。
ハ 移転型事業に係る特定業務施設に、準地方活力向上地域とされた近畿圏の中心部及び中部圏の中心部において認定地方活力向上地域等特定業務施設整備計画に従って整備されたものが追加された。
ニ 地方事業所税額控除限度額について、その算出における基準雇用者割合に係る要件が「基準雇用者割合が8%以上(移転型事業は、5%以上)(改正前:10%以上)であること」とされた上、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額とされた。
(イ)基準雇用者割合が8%以上であること又はその適用年の前年の12月31日における雇用者(その適用年の12月31日において高年齢雇用者に該当する者を除く。)の数が零であることにつき、証明がされた場合
  次に掲げる金額の合計額
 (i)60万円に、特定新規雇用者基礎数を乗じて計算した金額
 (ii)50万円に、非特定新規雇用者数のうち新規雇用者総数の40%相当数に達するまでの数と地方事業所基準雇用者数から新規雇用者総数を控除した数とを合計した数を乗じて計算した金額
(ロ)基準雇用者割合が5%以上であることにつき証明がされた場合(上記(イ)の場合を除く。)
  次に掲げる金額の合計額
 (i)30万円に、特定新規雇用者基礎数(移転型特定新規雇用者数がある場合には、その特定新規雇用者基礎数のうちその移転型特定新規雇用者数に達するまでの数を加算した数)を乗じて計算した金額
 (ii)20万円に、非特定新規雇用者数のうち新規雇用者総数の40%相当数に達するまでの数(移転型非特定新規雇用者数がある場合には、40%相当数に達するまでの数のうち移転型非特定新規雇用者数に達するまでの数に1.5を乗じた数を加算した数)とその地方事業所基準雇用者数からその新規雇用者総数を控除して計算した数(移転型非新規基準雇用者数が零を超える場合には、その計算した数のうちその移転型非新規基準雇用者数に達するまでの数に1.5を乗じた数を加算した数)とを合計した数を乗じて計算した金額
(ハ)上記(イ)及び(ロ)の場合以外の場合
  次の金額の合計額
 (i)30万円に、特定新規雇用者基礎数を乗じて計算した金額
 (ii)20万円に、上記(イ)(ii)の合計した数を乗じて計算した金額
ホ 地方活力向上地域等において特定建物等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の適用を受ける年分については、この措置を適用しないこととされるとともに、税額控除額の上限が、この措置及び下記(3)の措置の合計(改正前:この措置、上記(1)及び下記(3)の措置並びに上記3の制度における税額控除の合計)とされた上、適用年の調整前事業所得税額の20%(改正前:30%)相当額に引き下げられた。
(3)地方事業所特別基準雇用者数に係る措置について、次の見直しが行われた上、地方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定期限が平成32年3月31日まで2年延長された。
イ 上記(2)ハと同様の改正が行われた。
ロ 上記イの改正に伴い、地方事業所特別税額控除限度額について、計画の認定に係る特定業務施設が準地方活力向上地域内にある場合におけるその特定業務施設に係る地方事業所特別基準雇用者数を乗ずる金額が20万円とされた。
ハ 税額控除額の上限が適用年の調整前事業所得税額の20%(改正前:30%)相当額に引き下げられた。

5 雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除制度の改正(改正後:給与等の引上げ及び設備投資等を行った場合等の所得税額の特別控除制度)(措法10の5の4関係)
(1)
青色申告書を提出する個人が、平成31年から平成33年までの各年において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、次の①及び②に掲げる要件を満たすとき(雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以下である場合を除く。)は、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額(上記4の制度の適用を受ける場合には、その控除を受ける金額の計算の基礎となった者に対する給与等の支給額を控除した残額)の15%(教育訓練費の額から比較教育訓練費の額を控除した金額のその比較教育訓練費の額に対する割合が20%以上である場合には、20%)相当額の税額控除(その年分の調整前事業所得税額の20%相当額が上限)ができることとされた。
イ 継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額のその継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が3%以上であること。
ロ 国内設備投資額が償却費総額の90%相当額以上であること。
(2)青色申告書を提出する中小事業者が、平成31年から平成33年までの各年(上記(1)の適用を受ける年等を除く。)において国内雇用者に対して給与等を支給する場合において、継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額のその継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が1.5%以上であるとき(雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以下である場合を除く。)は、雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額(その年において上記4の制度の適用を受ける場合には、その控除を受ける金額の計算の基礎となった者に対する給与等の支給額を控除した残額)の15%(次に掲げる要件を満たす場合には、25%)相当額の税額控除(その年分の調整前事業所得税額の20%相当額が上限)ができることとされた。
イ 継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額のその継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が2.5%以上であること。
ロ 次に掲げる要件のいずれかを満たすこと。
(イ)教育訓練費の額から中小企業比較教育訓練費の額を控除した金額のその中小企業比較教育訓練費の額に対する割合が10%以上であること。
(ロ)その中小事業者が、その年の12月31日までにおいて中小企業等経営強化法の認定を受けたものであり、その認定に係る経営力向上計画に記載された経営力向上が確実に行われたことにつき証明がされたものであること。

6 革新的情報産業活用設備を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の創設(措法10の5の5関係)  青色申告書を提出する個人で生産性向上特別措置法の認定革新的データ産業活用事業者であるものが、同法の施行の日(平成30年6月6日)から平成33年3月31日までの間に、特定ソフトウエアの新設又は増設をする場合において、その新設又は増設に係る革新的情報産業活用設備の取得等をして、これをその個人の事業の用に供したときは、その事業の用に供した日の属する年(供用年)においてその革新的情報産業活用設備の取得価額の30%相当額の特別償却とその取得価額に供用年において次に掲げる場合のいずれに該当するかに応じそれぞれ次に定める割合を乗じて計算した金額に相当する金額の税額控除(供用年分の調整前事業所得税額の20%(供用年において次の(2)に掲げる場合に該当する場合には、15%)相当額が上限)との選択適用ができることとされた。
(1)継続雇用者給与等支給額から継続雇用者比較給与等支給額を控除した金額のその継続雇用者比較給与等支給額に対する割合が3%以上である場合
  5%
(2)上記(1)以外の場合
  3%

7 所得税の額から控除される特別控除額の特例の改正(措法10の6関係)  個人(中小事業者を除く。以下同じ。)が、平成31年から平成33年までの各年において特定税額控除規定の適用を受けようとする場合において、その年において次に掲げる要件のいずれにも該当しないときは、その特定税額控除規定は適用することができないこととされた。ただし、その年分の事業所得の金額がその前年分の事業所得の金額以下である場合については、この措置の対象外とされた。
(1)その個人の継続雇用者給与等支給額がその個人の継続雇用者比較給与等支給額を超えること。
(2)その個人の国内設備投資額が償却費総額の10%相当額を超えること。

8 特定設備等の特別償却制度の改正(措法11関係)  青色申告書を提出する個人が、平成30年4月1日から平成32年3月31日までの間に、その再生可能エネルギー発電設備等の取得等をして、これをその個人の国内にある事業の用に供した場合には、その事業の用に供した日の属する年において、その再生可能エネルギー発電設備等の取得価額の20%相当額の特別償却ができる措置が追加された。

9 障害者を雇用する場合の機械等の割増償却制度の改正(措法13関係)  適用要件のうち「基準雇用障害者数が20人以上であって、重度障害者割合が50%以上であること」とする要件における重度障害者割合が55%以上に引き上げられた上、その適用期限が平成32年3月31日まで2年延長された。

10 次世代育成支援対策に係る基準適合認定を受けた場合の次世代育成支援対策資産の割増償却制度の廃止(旧措法13の2関係)  適用期限(平成30年3月31日)の到来をもって廃止された。

11 企業主導型保育施設用資産の割増償却制度の創設(措法13の3関係)  青色申告書を提出する個人が、平成30年4月1日から平成32年3月31日までの間に、企業主導型保育施設用資産の取得等をして、これをその個人の保育事業の用に供したときは、その保育事業の用に供した日以後3年以内でその用に供した期間に限り、普通償却額の12%(建物等及び構築物については、15%)相当額の割増償却ができることとされた。

12 倉庫用建物等の割増償却制度の改正(措法15関係)  適用期限が平成32年3月31日まで2年延長された。

13 金属鉱業等鉱害防止準備金制度の改正(措法20関係)  適用期限が平成32年まで2年延長された。

14 特定災害防止準備金制度の改正(措法20の2関係)  準備金の一括取崩し事由に次に掲げる場合が追加された上、その適用期限が平成32年3月31日まで2年延長された。
(1)特定廃棄物最終処分場の廃止の確認を受けた場合
(2)特定廃棄物最終処分場に係る設置の許可が取り消された場合

15 農業経営基盤強化準備金制度の改正(措法24の2関係)  次の見直しが行われた上、その適用期限が平成32年3月31日まで2年延長された。
(1)適用対象となる交付金等から経営所得安定対策交付金が除外された。
(2)準備金の取崩し事由に農用地等の取得等をした場合が追加され、その場合における事業所得に係る総収入金額算入額が次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める準備金の金額とされた。
イ 認定計画等の定めるところにより農用地等の取得等をした場合
  その取得等をした日における農業経営基盤強化準備金の金額のうちその取得等をした農用地等の取得価額に相当する金額
ロ 農用地等(農業用の器具備品及びソフトウエアを除く。)の取得等をした場合(上記イの場合を除く。)
  その取得等をした日における農業経営基盤強化準備金の金額のうちその取得等をした農用地等の取得価額に相当する金額

16 農用地等を取得した場合の課税の特例の改正(措法24の3関係)  この制度の必要経費算入限度額の計算の基礎となる農業経営基盤強化準備金制度における事業所得に係る総収入金額算入額から上記15(2)イの金額が除外された。

17 中小事業者の少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例の改正(措法28の2関係)  適用期限が平成32年3月31日まで2年延長された。

Ⅴ その他の改正

1 公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税措置の改正(措法40関係等)
(1)
一般特例の適用を受けた寄附財産で一定の方法により管理されているものの譲渡をし、その譲渡による収入金額の全部に相当する金額をもって取得した資産を当該方法により管理する等の一定の要件を満たす場合には、非課税措置の継続適用を受けることができることとされた。
(2)承認手続の特例の対象となる贈与等の範囲に国立大学法人等に対する一定の贈与等を加えるとともに、承認手続の特例における贈与等を受けた財産が一定の株式等でないこととの要件が撤廃された。
(3)その他所要の措置が講じられた。

2 消滅時効を援用せずに支払うこととされた公的年金等に対する源泉徴収の不適用制度の創設(措法41の15の4関係)  国民年金法又は厚生年金保険法に規定する年金の給付を受ける権利の消滅時効が完成した場合において、これらの権利の消滅時効を援用せずに支払うこととされた年金については、源泉徴収を要しないこととされた。

3 社会保険診療報酬の所得計算の特例の改正(措法26関係)  適用対象となる社会保険診療の範囲に、介護医療院サービスが追加された。

4 山林所得に係る森林計画特別控除制度の改正(措法30の2関係)  適用期限が平成32年分まで2年延長された。

5 国等に対して重要文化財等を譲渡した場合の譲渡所得の課税の特例の改正(改正後:国等に対して重要文化財を譲渡した場合の譲渡所得の非課税)(措法40の2関係)  適用期限(平成30年12月31日)の到来をもって、国等に対して重要有形民俗文化財を譲渡した場合の2分の1課税の特例が廃止されることとなった。

6 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除に係る年末調整手続等の改正(措法41の2の2関係)
(1)
住宅ローン税額控除の適用を受けた個人は、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書の提出に代えて、税務署長の承認を受けている給与等の支払者に対し、その住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができることとされた。
(2)居住日の属する年分(平成31年から平成33年までの各年分に限ります。以下「居住年分」という。)又はその居住年分の翌年以後のいずれかの年分の所得税につき住宅ローン税額控除の適用を受けた個人は、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書に記載すべき事項を電磁的方法により提供する場合には、住宅借入金等を有する場合の所得税額特別控除証明書又は住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書の書面による提出に代えて、その給与等の支払者に対し、これらの書類に記載されるべき事項を電磁的方法により提供することができることとされた。
(3)住宅借入金等に係る債権者は、住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書の書面による交付に代えて、住宅ローン税額控除の適用を受けようとする個人の承諾を得て、その住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができることとされた。
(4)住宅ローン税額控除の適用を受ける際に、確定申告書又は住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除申告書に添付すべきこととされている住宅借入金等を有する場合の所得税額特別控除証明書又は住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書の範囲に、これらの書類に記載すべき事項を記録した電子証明書等の情報の内容を、国税庁長官の定める方法によって出力することにより作成した書面(電磁的記録印刷書面)が追加された。

7 光ディスク等による調書等の提出の特例の改正(措法42の2の2関係等)  この特例の対象となるかどうかの判定基準となる調書等の提出期限の属する年の前々年の1月1日から12月31日までの間に提出すべきであった調書等の枚数が100枚以上(改正前:1,000枚以上)に引き下げられた。

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