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解説記事2019年07月01日 【税制改正解説】 令和元年度における消費税・間接諸税関係の改正について(2019年7月1日号・№793)

税制改正解説
令和元年度における消費税・間接諸税関係の改正について
 山本 仁

消費税関係の改正

1 金地金等の密輸に対応するための仕入税額控除制度の見直し

(1)改正の背景
 消費税は、国内において行った課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れ並びに保税地域から引き取る課税貨物について課税することとされている。したがって、貨物を輸入する者については、当該貨物の保税地域からの引取りの際、当該貨物に係る消費税を納める義務が生じるのが原則である。
 しかしながら、近年、この輸入に係る消費税を免れる金の密輸が社会的に大きな問題となっている。
 そのような密輸が行われる目的は、消費税を免れて密輸した金を国内の買取業者に対し消費税込みの価格で売却し、その際生じる消費税相当額を不正に稼得しようとするところにあり、また、こうした金の密輸は、多くの場合、組織的に行われ、また、手口も巧妙化し、密輸形態が多様化しているところである。こうした現状に、税関当局は、平成29年11月7日「「ストップ金密輸」緊急対策」(財務省関税局)を策定し、検査の強化、処罰の強化、情報収集及び分析の充実を3つの柱に据え、金の密輸を阻止するための緊急かつ抜本的な対策を講じ、対策を進めてきた。
 こうしたことを背景として、平成30年度税制改正において、金地金等の密輸に対する関税法・消費税法等における罰金上限額の大幅な引上げを行い(図1)、その一定の効果が現れていたところではあるが、依然として摘発件数は高止まりしている現状にあり、消費税制度における更なる対策を求められている状況であった。

(2)改正の内容  金地金等に係る取引の適正化を図り、より一層の密輸抑止を進める観点から、令和元年度税制改正においては、仕入税額控除制度について以下の見直しを行うこととされた。
一 仕入税額控除の要件強化   消費税の納付税額の計算に当たっては、課税期間中の課税標準額に対する消費税額から、その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額を控除(以下1において「仕入税額控除」という。)することとなるが、仕入税額控除の制度の適用を受けるためには、原則として、その課税仕入れ等に関する仕入先等の諸事項が記載された帳簿及び請求書等を保存することが要件とされている(消法30⑦~⑨)。
  ただし、不特定かつ多数の者から課税仕入れを行わざるを得ない再生資源卸売業等の場合には、帳簿の保存のみで仕入税額控除が可能とされており、金又は白金の地金の課税仕入れの場合も同様の取扱いである(消令49①②)。
  今般の改正においては、金又は白金の地金に係る仕入税額控除について、課税仕入れの相手方の本人確認書類(電磁的記録を含む。)の保存を、制度の適用を受けるための要件に追加し、その保存がない場合には、その課税仕入れに係る仕入税額控除の制度の適用を認めないこととされた(消法30⑩)。
  ここでいう本人確認書類は、課税仕入れの相手方の氏名又は名称及び住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地の記載又は記録のあるものに限られ、課税仕入れの相手方の属性に応じ、以下のいずれかの書類とされている(消規15の4①)。
① 国内に住所を有する個人 次のいずれかの書類
 イ 個人番号カードで課税仕入れの日において有効なものの写し
 ロ 住民票の写し又は住民票の記載事項証明書で、課税仕入れの日前1年以内に作成されたもの又はその写し
 ハ 戸籍の附票の写し又は印鑑証明書で、課税仕入れの日前1年以内に作成されたもの又はその写し
 ニ 国民健康保険、健康保険、船員保険、後期高齢者医療若しくは介護保険の被保険者証、健康保険日雇特例被保険者手帳、国家公務員共済組合若しくは地方公務員共済組合の組合員証又は私立学校教職員共済制度の加入者証の写し
 ホ 国民年金手帳、児童扶養手当証書、特別児童扶養手当証書、母子健康手帳、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳又は戦傷病者手帳の写し
 ヘ 運転免許証(課税仕入れの日において有効なものに限る。)又は運転経歴証明書の写し
 ト 旅券で課税仕入れの日において有効なものの写し
 チ 在留カード又は特別永住者証明書で、課税仕入れの日において有効なものの写し
 リ 国税若しくは地方税の領収証書、納税証明書若しくは社会保険料の領収証書(領収日付の押印又は発行年月日の記載のあるもので、その日が課税仕入れの日前1年以内のものに限る。)又はこれらの書類の写し
 ヌ 上記イからリまでの書類のほか、官公署から発行され、又は発給された書類その他これらに類するもので、課税仕入れの日前1年以内に作成されたもの(有効期間又は有効期限のあるものにあっては、課税仕入れの日において有効なもの)又はその写し
② 国内に住所を有しない個人 上記①ハからヌまでのいずれかの書類
③ 内国法人(国内に本店又は主たる事務所を有する法人をいい、人格のない社団等及び法人課税信託の受託事業者を除く。) 次のいずれかの書類
 イ 内国法人の設立の登記に係る登記事項証明書(当該内国法人が設立の登記をしていないときは、当該内国法人を所轄する行政機関の長の当該内国法人の名称及び本店又は主たる事務所の所在地を証する書類)又は印鑑証明書で、課税仕入れの日前1年以内に作成されたもの又はその写し
 ロ 上記①リ又はヌの書類
④ 人格のない社団等(国内に主たる事務所を有するものに限る。) 次のいずれかの書類
 イ 人格のない社団等の定款、寄附行為、規則又は規約(名称及び主たる事務所の所在地に関する事項の定めがあるものに限る。)で、その代表者又は管理人の当該人格のない社団等のものである旨を証する事項の記載のあるものの写し
 ロ 上記①リ又はヌの書類
⑤ 外国法人 次のいずれかの書類
 イ 当該外国法人の登記事項証明書又は印鑑証明書で、課税仕入れの日前1年以内に作成されたもの又はその写し
 ロ 上記①リ又はヌの書類
⑥ 法人課税信託の受託事業者 次の書類
 イ 法人課税信託の受託者の上記①から⑤の区分に応じそれぞれの書類(受託者の氏名又は名称及び住所又は本店若しくは主たる事務所の所在地の記載のあるものに限る。)
 ロ 法人課税信託の信託約款その他これに類する書類(法人課税信託の名称及び当該法人課税信託の信託された営業所、事務所その他これらに準ずるものの所在地の記載のあるものに限る。)の写し
   また、金又は白金の地金の課税仕入れが媒介、取次ぎ又は代理(以下「媒介等」という。)を行う者を介して行われる場合には、先物取引等の一定の場合を除き、課税仕入れの相手方と媒介等を行う者の両方の本人確認書類の保存が必要となる(消規15の4②)。
   なお、本人確認書類については、その課税仕入れの日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間、納税地等に保存(当該本人確認書類が電磁的記録である場合には、一定の方法による保存に限る。)をしなければならない(消令50②、消規15の4③)。
二 仕入税額控除の制限   仕入税額控除は、端的に言えば、税の累積を排除する仕組みであるが、密輸品については、輸入時点で納めるべき消費税が納められておらず、また、密輸者の行う当該密輸品の譲渡に係る消費税も適正に納められるとは言い難いことから、その課税仕入れについては、前段階における税の累積が生じていないとも言える。
  そのため、今般の改正において、課税仕入れに係る資産が納付すべき消費税を納付しないで保税地域から引き取られた課税貨物(密輸品)であることを、課税仕入れの時点で課税仕入れを行う事業者が知っていた場合には、その仕入税額控除の適用を認めないこととされた(消法30⑪)。
(3)適用関係  上記(2)一の改正は、令和元年10月1日以後に国内において事業者が行う課税仕入れについて適用し、同日前に国内において事業者が行った課税仕入れについては、従前の例によることとされている(改正法附則1五イ、25①)。
 上記(2)二の改正は、平成31年4月1日以後に国内において事業者が行う課税仕入れについて適用し、同日前に国内において事業者が行った課税仕入れについては、従前の例によることとされている(改正法附則1、25②)。

2 外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)の見直し

(1)改正の背景
 訪日外国人旅行者数はここ数年で劇的に増加しており、外国人旅行者向け消費税免税制度(輸出物品販売場制度)についても、わが国におけるショッピングツーリズムの魅力をさらに高めるべく、近年、数度にわたり大きな改正が行われ、これに伴い平成26年4月には全国で5,777店だった輸出物品販売場の数は、平成31年4月には50,198店に増加している。
 また、観光立国推進閣僚会議において平成30年6月に取りまとめられた「観光ビジョン実現プログラム2018」では、地方の商店街等における伝統工芸品等の消費拡大に向け取り組みを実施するとともに、地方における輸出物品販売場数については、2018年に2万店規模への増加に向け、その拡大に取り組むこととされた。
 このような中、令和元年度税制改正においては、地域のイベント等における特産品等の外国人旅行者への販売機会を増やし、外国人旅行消費額のより一層の拡大と地方を含めた輸出物品販売場の増加を図る観点から、地域のお祭りや商店街のイベント等に出店する場合において、簡素な手続により免税販売することが可能となる臨時販売場制度の創設要望が、観光庁より提出された。
(2)改正前の制度の概要  改正前の制度においては、納税地を所轄する税務署長の許可を受けた輸出物品販売場を経営する事業者が、外国人旅行者等の非居住者(以下(2)において「外国人旅行者」という。)に対して、当該外国人旅行者がその出国の際に海外に持ち出す一定の物品(最終的に輸出される物品)を所定の手続により譲渡した場合には、消費税を免除することとされている(消法8)。
 これは、輸出物品販売場における資産の譲渡等は、国内において行う資産の譲渡等ではあるが、外国人旅行者がその出国の際に国外へ持ち出すことを前提とした販売であり、その実質は輸出取引と変わるところがないと考えられることから、輸出取引と同様に消費税が免除されているものである。
 また、いわゆる外航クルーズ船等により訪日する外国人旅行者に対応するため、事業者がその寄港する港湾の施設内において期間を定めた臨時販売場を設置する場合、当該臨時販売場を設置する港湾施設についてあらかじめその納税地を所轄する税務署長の承認を受け、当該臨時販売場を設置する日の前日までに設置期間等を記載した届出書を当該税務署長に提出することにより、当該期間に限り当該臨時販売場を輸出物品販売場とみなす制度(以下2において「港湾施設臨時販売場制度」という。)が、平成27年度税制改正において創設された(旧消法8⑧⑨)。
(3)改正の内容
一 臨時販売場に係る届出制度の創設
  一定の期間を定めた臨時の販売場については、上記(2)の港湾施設臨時販売場制度により設置するもの以外は輸出物品販売場として免税販売することができなかった。
  令和元年度税制改正においては、上記(1)の状況等を踏まえ、7月以内の期間を定めた臨時販売場を設置しようとする事業者(既に輸出物品販売場の許可を受けている事業者に限る。)が、
 ・あらかじめ臨時販売場を設置する事業者としてその納税地を所轄する税務署長の承認を受け、
 ・その設置の日の前日までに、臨時販売場を設置する具体的な場所、期間等を記載した届出書を当該税務署長に提出したときは、
 その臨時販売場を輸出物品販売場とみなす「臨時販売場に係る届出制度」が創設されることとなった。なお、本制度の創設に伴い、現行の港湾施設臨時販売場制度は廃止され、本制度に統合された。上記の承認申請及び届出の具体的内容は以下のとおりである。
① 臨時販売場を設置する事業者に係る事前承認申請
  臨時販売場(輸出物品販売場とみなされる臨時販売場をいう。以下一において同じ。)を設置しようとする事業者(既に輸出物品販売場の許可を受けている事業者に限る。)は、あらかじめ、その納税地を所轄する税務署長の承認を受けなければならないこととされている(消法8⑨)。さらに、当該承認を受けようとする事業者は、輸出物品販売場の許可を受けた年月日等の事項を記載した申請書に、必要書類を添付して当該税務署長に提出することとされている(消令18の4①、消規10の5①②)。
  臨時販売場における免税販売について、事業者による免税販売手続の適切な履行や税務当局による適正な管理・監督の観点から、当該承認に当たっては次の要件が設けられており、当該事業者がこれらの要件を満たしている場合に限りその申請は承認されることとなる(消令18の4②、消規10の5③)。
 イ 臨時販売場において行った免税販売手続について、検証を行うための必要な体制が整備されていること
 ロ 手続委託型輸出物品販売場のみを経営する事業者にあっては、臨時販売場において自ら免税販売手続を行うための必要な体制が整備されていること
 ハ 輸出物品販売場の許可又は本承認の取消しの日から3年を経過しない者であることその他輸出物品販売場を経営する事業者として特に不適当と認められる事情がないこと
 (注)上記イの「臨時販売場において行った免税販売手続について、検証を行うための必要な体制が整備されていること」とは、臨時販売場を設置していた期間中の免税販売の記録等が臨時販売場を閉鎖した後においても適切に保存され、確認できるような体制が整備されていることをいう。
② 臨時販売場の設置の届出
  上記①の承認を受けた事業者が、実際に臨時販売場を設置する場合には、その設置の日の前日までに、その臨時販売場の名称及び所在地並びに設置期間等を記載した届出書に、臨時販売場を設置することを証する書類等の必要書類を添付して、その納税地を所轄する税務署長に提出することとされている(消法8⑧、消規10の6①②)。
  また、当該届出書に記載した事項に変更があったときは、遅滞なく、変更の内容等を記載した届出書を当該税務署長に提出することとされている(消令18の4⑤前段)。ただし、本制度における臨時販売場の設置期間の上限は7月とされているため、その設置期間を変更しようとする場合に、変更後の設置期間が7月を超えることとなるときは、その変更前の期間に限り、輸出物品販売場として免税販売ができることとなる(消令18の4⑤後段)。この場合において、設置期間後も引き続き免税販売を行う場合は、その販売場について常設型の輸出物品販売場の許可を受けなければならない(消法8⑥、消令18の2①~③)。
(注)臨時販売場については、当該臨時販売場を設置しようとする事業者の経営する他の輸出物品販売場の区分にかかわらず、一般型輸出物品販売場又は手続委託型輸出物品販売場のどちらにより設置することも可能である。

二 手続委託型輸出物品販売場許可申請書の添付書類の簡略化   デジタル・ガバメント実行計画(平成30年7月20日デジタル・ガバメント閣僚会議決定)においては、①デジタルファースト、②ワンスオンリー、③コネクテッド・ワンストップの3原則に沿い、行政サービスの100%デジタル化を実現するとされ、既に行政機関が保有している情報については、添付書類の必要性の精査や行政機関間の情報連携等によって添付書類の提出を省略することで、ワンスオンリーの実現を目指すこととされている。
  輸出物品販売場制度における手続委託型輸出物品販売場許可申請については、許可要件の確認の観点から、免税販売手続を委託する承認免税手続事業者の承認通知書の写しを許可申請書に添付することとされていた。しかし、当該申請書には承認免税手続事業者の氏名又は名称及び納税地の記載があり、当該記載事項と国税当局の部内情報を照合することにより許可要件を確認することが可能であることから、承認免税手続事業者の承認通知書の写しの提出は不要とする改正が行わることとなった(消規10②二)。
(4)適用関係  上記(3)一の改正は、令和元年7月1日以後に行われる課税資産の譲渡等について適用される(改正法附則1三ニ)。ただし、上記(3)一①の申請書及び②の届出書については同年5月1日から提出することができる(改正消令附則1一、2①③前段)。この場合、②の届出書は同年7月1日に提出されたものとみなされ、その適用は同日からとなる(改正消令附則2③後段④)。
 上記(3)二の改正は、平成31年4月1日以後に提出する当該申請書について既に適用されている(改正消規附則1)。

酒税関係の改正

1 入国者が輸入するウイスキー等に係る酒税の税率の特例措置の改正

(1)改正前の制度の概要
 輸入する酒類には、関税、酒税及び消費税(地方消費税を含む。以下「酒税関係の改正」において同じ。)がそれぞれ課されることが原則であるが、本邦に入国する旅行者等(以下「酒税関係の改正」において「入国者」という。)がその入国の際に携帯し、又は別送して輸入する酒類(免税となる数量を超えて商業量に達するまでの数量のものに限る。)については、通関時における納税手続の簡素化等を図る観点から、関税、酒税及び消費税の率を総合した率が定められ、関税の簡易税率として適用されている(関税定率法3の2)。
 しかし、この関税の簡易税率は関税が課される物品に対する特例税率として設けられているものであり、関税が無税のものには適用されない(関税定率法3の2②一)。このため、輸入する酒類のうち関税が無税とされているウイスキー、ブランデー、スピリッツ(ラム、ジン、ウオッカ等の蒸留酒の一部)、リキュール等、ビール及び発泡酒(以下「酒税関係の改正」において「ウイスキー等」という。)については、関税の簡易税率が適用されず、入国者が携帯し、又は別送して輸入するウイスキー等については、通関時における納税手続の簡素化等を図る観点から、関税の簡易税率の代替措置として、酒税及び消費税の率を総合した率により酒税を課税する特例措置が租税特別措置法に規定されている。
 改正前の本特例の税率は、下記の表のとおりとされていた(旧措法87の3)。

対象酒類 特例税率
一 ビール(関税についての条約の税率が無税とされるものに限る。)又は発泡酒 200,000円/kl
二 ウイスキー又はブランデー(アルコール分が50%以上のもの(2l未満の容器入りにしたものは除く。)は除く。) 600,000円/kl
三 スピリッツ(ラム、ジン又はウオッカ等) 400,000円/kl
四 リキュール 300,000円/kl
(注)本特例の適用を受けるウイスキー等については、消費税を課さないこととされている(措法86の3)。

(2)改正の内容  令和元年10月1日から消費税率(地方消費税率を含む。)が10%に引き上げられることを踏まえ、入国者が携帯して輸入する対象酒類の通関実態等を勘案し、本特例の対象酒類のうち、ウイスキー及びブランデーの特例税率を800,000円/klに、スピリッツの特例税率を500,000円/klに、リキュールの特例税率を400,000円/klに引き上げることとされた(措法87の3)。
(3)適用関係  上記の改正は、令和元年10月1日以後に、入国者が携帯し、又は別送して輸入するウイスキー等について適用される(改正法附則1)。

揮発油税及び地方揮発油税関係の改正

1 揮発油税及び地方揮発油税の税率の見直し

(1)改正前の制度の概要
 揮発油税及び地方揮発油税の税率については、昭和49年度の税制改正において税率引上げが行われた際に、暫定的な措置として、租税特別措置法により税率の特例措置が講じられた。その後、昭和51年度及び昭和54年度の税率引上げの際にも同法による税率の特例措置として改正がなされ、以来、累次その適用期限が延長されてきた(いわゆる「暫定税率」)が、平成22年度税制改正において、そのような暫定的な措置は廃止し、その上で、厳しい財政事情や、地球温暖化対策との関係に留意する必要があること等から、当分の間、その税率水準を維持することとされた(旧揮法9、旧地方揮法4、旧措法88の8)。

(参考)改正前の税率水準(1kl当たり)
揮発油税 地方揮発油税
48,600円
(本則税率:
24,300円)
5,200円
(本則税率:
4,400円)
53,800円
(本則税率:
28,700円)

 また、地方揮発油税の税収については、地方揮発油譲与税法(昭和30年法律第113号)の規定に基づき、その全額を都道府県及び市町村(特別区を含む。)に譲与することとされている。
(2)改正の背景及び内容  社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成24年法律第68号。以下(2)において「税制抜本改革法」という。)においては、次のとおり、車体課税の見直しについて規定されている。
○税制抜本改革法(抄)
(税制に関する抜本的な改革及び関連する諸施策に関する措置) 第7条 第2条及び第3条の規定により講じられる措置のほか、政府は、所得税法等の一部を改正する法律(平成21年法律第13号)附則第104条第1項及び第3項に基づく平成24年2月17日に閣議において決定された社会保障・税一体改革大綱に記載された消費課税、個人所得課税、法人課税、資産課税その他の国と地方を通じた税制に関する抜本的な改革及び関連する諸施策について、次に定める基本的方向性によりそれらの具体化に向けてそれぞれ検討し、それぞれの結果に基づき速やかに必要な措置を講じなければならない。
 一 消費課税については、消費税率(地方消費税率を含む。以下この号において同じ。)の引上げを踏まえて、次に定めるとおり検討すること。
  イ~ワ 省 略
  カ 自動車取得税及び自動車重量税については、国及び地方を通じた関連税制の在り方の見直しを行い、安定
的な財源を確保した上で、地方財政にも配慮しつつ、簡素化、負担の軽減及びグリーン化(環境への負荷の低減に資するための施策をいう。)の観点から、見直しを行う。
  ヨ 省 略
 二~八 省 略
 この規定に基づき、平成26年度税制改正において、消費税率の8%への引上げを踏まえた自動車取得税の税率の引下げや自動車重量税の免税等の特例措置(いわゆる「エコカー減税」)の拡充などの措置が講じられた。また、令和元年度税制改正においては、令和元年10月1日からの消費税率の10%への引上げにあわせ、自動車ユーザーの負担を軽減するとともに消費税率引上げ前後の需要を平準化する等の観点から、自動車の保有に係る税である自動車税(地方税)の恒久的な引下げ等を行い、その一方で、この恒久減税による地方税の減収について、地方税の見直しにより財源を確保し、なお生じる財源不足額についてはその全額を国費で補填することとされた。この地方税財源の確保策の一つとして、自動車重量税のエコカー減税の見直し(後述参照)や自動車重量税の譲与割合の引上げを行うほか、揮発油税及び地方揮発油税の税率を変更することとされた。
 なお、「平成31年度税制改正大綱」(平成30年12月14日 自由民主党・公明党)の中で、税制抜本改革法以来の懸案事項とされてきた車体課税の見直しについては、令和元年度税制改正における、こうした措置をもって最終的な結論とすると整理されている。
 揮発油税及び地方揮発油税の税率の変更について具体的な内容としては、揮発油税及び地方揮発油税の税率について、次のとおり、揮発油税の税率を300円引き下げ、地方揮発油税の税率を300円引き上げることとされた(揮法9、地方揮法4、措法88の8)。

  (1kl当たり)
改正前 改正後
揮発油税 48,600円
(本則税率:
24,300円)
48,300円
(本則税率:
24,000円)
地方
揮発油税
5,200円
(本則税率:
4,400円)
5,500円
(本則税率:
4,700円)
     
(3)適用関係  上記の改正は、令和16年4月1日に施行することとされた(改正法附則1十二)。また、その改正前の規定の適用を受けた揮発油につき、戻入れの場合の揮発油税の控除等の規定(揮法17、地方揮法9①)の適用がある場合に、当該規定による控除等を受けようとする月分が令和16年4月分以後の各月分であるときは、当該揮発油については、改正後の規定の適用を受けた揮発油を揮発油の製造者がその製造場に戻し入れ、又は移入したものとみなして、戻入れの場合の揮発油税の控除等の規定を適用することとされている(改正法附則26、82)。

航空機燃料税関係の改正

1 沖縄路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置の見直し

(1)改正前の制度の概要
 平成9年度税制改正において、沖縄振興策の一環として、沖縄の重要な産業の一つである観光の一層の振興を図る観点から、本土-那覇路線(本土-沖縄本島間)の航空運賃引下げのための措置として、空港使用料の引下げ及び航空会社による協力とともに、当該路線航空機に平成14年3月31日までに積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率を1kl当たり15,600円(本則の5分の3)に軽減する特例措置が講じられた。
 その後、平成11年度税制改正及び平成23年度税制改正において、税率が引き下げられ、現在の1kl当たり9,000円(本則の2分の1)とされた。
 また、累次の税制改正において、本特例措置の適用対象に、貨物便並びに本土-宮古島、石垣島又は久米島間(那覇経由便を除く。)及び沖縄県の区域内の各地間を航行する航空機が追加されるとともに、その適用期限が延長され、令和2年3月31日までの措置とされていた(旧措法90の8の2)。
(2)改正の内容  平成31年3月30日に下地島空港旅客ターミナルが開業し、下地島と本土間の定期路線が就航した。宮古圏域への観光客は年々増加しており、本路線に搭乗する乗客の多くもそうした宮古圏域への観光客であると考えられるため、沖縄の観光の振興を図る観点から、本特例措置の適用対象に、下地島と沖縄県以外の本邦の地域(離島振興法に規定する離島振興対策実施地域に含まれる離島等を除く。)との間を航行する航空機を追加することとされた(措法90の8の2)。
(3)適用関係  上記の改正は、平成31年4月1日から既に施行されている(改正法附則1)。

自動車重量税関係の改正

1 自動車重量税の免税等の特例措置(いわゆる「エコカー減税」)の延長等

(1)制度の趣旨等
 平成20年当時、厳しい経済情勢の下で、自動車の販売台数が減少し、裾野の広い関連産業に影響を及ぼすことが懸念されたことから、自動車の買換え・購入需要を促進するとともに、環境性能に優れた自動車の普及・促進を図り、今後我が国が目指すべき低炭素社会の実現につながる措置を講ずる観点から、平成21年度税制改正において、平成21年4月1日から平成24年4月30日までの間に最初に受ける車検の際に納付すべき自動車重量税について、環境性能に優れた自動車に係る負担を時限的に免除・軽減する措置(いわゆる「エコカー減税」)が創設された。
 その後、累次の税制改正において、燃費基準等の切替えや2回目の車検時に係る自動車重量税の免除など、所要の見直しが行われるとともに、平成24年度税制改正、平成27年度税制改正及び平成29年度税制改正において、その適用期限が延長され、平成31年4月30日までの措置とされていた。
(2)改正前の制度の概要  排出ガス性能及び燃費性能の優れた環境負荷の小さい検査自動車のうち、平成29年5月1日から平成31年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受けたものについて、その納付すべき自動車重量税を免税、75%軽減、50%軽減又は25%軽減とすることとされていた(旧措法90の12①~④、旧措規40の4①~ )。
(3)改正の背景及び内容  本特例措置は、自動車の買換え・購入需要を促進するとともに、環境性能に優れた自動車の普及・促進を図り、今後我が国が目指すべき低炭素社会の実現につながる措置を講ずる観点から創設されたものであるが、自動車の燃費水準が向上することにより、自動車重量税の減免措置の対象となる自動車が増加するため、本特例措置は、見直しを行わなければその政策インセンティブ機能が低下するという性質を有している。こうした点を踏まえ、政策インセンティブ機能の強化を図る観点から、軽減割合等の見直しを行った上で、その適用期限を2年延長することとされた(措法90の12)。
 具体的には、次のとおり対象となる自動車の軽減割合等を見直すこととされた。
① 乗用自動車
 イ 税率が75%軽減されていた自動車に係る軽減割合を50%とし、税率が50%軽減されていた自動車に係る軽減割合を25%とすることとされた。
 ロ 新車に係る新規検査後に受ける最初の継続検査等の際に納付すべき自動車重量税を免除する措置(②及び③において「2回目免税」という。)の対象となるガソリン自動車及び石油ガス自動車は、平成32年度燃費基準値より90%以上(改正前:50%以上)燃費性能の良い自動車とすることとされた。
② バス・トラック(車両総重量が2.5t以下のもの)
  2回目免税の対象となる自動車の範囲から、ガソリン自動車を除外することとされた。
③ バス・トラック(車両総重量が2.5tを超えるもの)
 イ 本特例措置の適用対象となる自動車の範囲から、改正前において税率が25%軽減されていた自動車を除外することとされた。
 ロ 2回目免税の対象となる自動車の範囲から、ガソリン自動車及びディーゼル自動車を除外することとされた。
(4)適用関係  上記の改正は、令和元年5月1日から既に施行されている(改正法附則1一)。

2 公共交通移動等円滑化基準に適合した乗合自動車等に係る免税措置の見直し

(1)改正前の制度の概要等
 乗合自動車等のバリアフリー化については、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律第3条第1項に基づき定められた「移動等円滑化の促進に関する基本方針」に基づき、計画的に進められているところであるが、高齢者等の増加に加え、ベビーカーを使う方や子ども連れの方でも利用しやすい公共交通機関の実現等を要請する声の高まりもあり、より高いレベルの新たな目標(平成32年度(令和2年度)末目標)を定める同基本方針の改正(平成23年3月31日国家公安委員会・総務省・国土交通省告示第1号)が行われた。
 また、バリアフリー化は社会に望まれているものの、事業者にとってバリアフリー車両の導入に応じて収入が増加するものではないことから、バリアフリー化をさらに進めていくためには、公的な支援を通じた適切な導入インセンティブを確保する必要がある。
 さらに、乗合自動車等は、一般の乗用車等と比べて、一度に輸送できる人員が多いことなどから、交通渋滞、交通事故、CO2等の温室効果ガスの発生という外部不経済がその車両重量に比して軽減されているといった面もある。
 こうした点を踏まえ、平成24年度税制改正において、バリアフリー車両の新車に係る新規検査を受ける際の自動車重量税を免除する特例措置が創設された。
 具体的には、平成24年5月1日から平成27年4月30日までの間に新車に係る新規検査を受ける次の自動車について、その納付すべき自動車重量税を免除することとされた。
① 一般乗合旅客自動車運送事業を経営する者が路線定期運行の用に供する次の自動車
 イ ノンステップバス(自動車検査証にその自動車がノンステップバスであることが記載されている自動車に限る。)(旧措法90の13一、旧措規40の6①一②一)
 ロ リフト付きバス(自動車検査証にその自動車がリフト付きバスであることが記載されている自動車に限る。)(旧措法90の13一、旧措規40の6①二②二)
② 一般乗用旅客自動車運送事業を経営する者がその事業の用に供するユニバーサルデザインタクシー(自動車検査証にその自動車がユニバーサルデザインタクシーであることが記載されている自動車に限る。)(旧措法90の13二、旧措規40の6③④)
 その後、平成27年度税制改正及び平成30年度税制改正においてその適用期限が延長され、「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において定められている目標の期限である令和3年3月31日までの措置とされていた。
(2)改正の内容  2020年の東京パラリンピック大会の開催を見据え、平成31年4月1日より、これまでバリアフリー化の対象とされていなかった一般貸切旅客自動車運送事業を経営する者がその事業の用に供する自動車(いわゆる「貸切バス」)についてもバリアフリー基準適合が義務化されるとともに、「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において、貸切バスについても新たにバリアフリー車両の導入目標が設定されることとなった。
 これを踏まえ、貸切バスについても、バリアフリー化をさらに進めるため、公的な支援を通じたバリアフリー車両の適切な導入インセンティブを確保する観点から、貸切バスとして使用される一定のバリアフリー車両を本特例措置の対象とすることとされた。具体的には、一般貸切旅客自動車運送事業を経営する者がその事業の用に供する次の自動車を対象に加えることとされた。
① ノンステップバス(自動車検査証においてその自動車がノンステップバスであることが明らかにされている自動車に限る。)(措法90の13一、措規40の6①二イ②二イ)
② リフト付きバス(自動車検査証においてその自動車がリフト付きバスであることが明らかにされている自動車に限る。)(措法90の13一、措規40の6①二ロ・②二ロ)
(3)適用関係  上記の改正は、平成31年4月1日から既に施行されている(改正法附則1)。

3 被災自動車等に係る自動車重量税の還付措置の延長

(1)制度の趣旨等
 平成23年3月11日に発生した東日本大震災により多くの自動車が被災し、特に津波により自動車自体が滅失してしまうケースが数多く発生したが、津波により滅失してしまった自動車については、自動車リサイクル制度に基づいた解体はできないため、自動車重量税の廃車還付制度(措法90の15)を適用できない状況にあった。
 こうした状況を踏まえ、平成25年3月31日までの間、東日本大震災により被災した一定の検査自動車に係る自動車重量税の還付措置が創設され、その後、本特例措置の対象に二輪の小型自動車、届出軽自動車等が追加された。
 その後、平成25年度税制改正、平成26年度税制改正及び平成28年度税制改正において、当時の申請状況等を考慮して、その適用期限をそれぞれ1年、2年又は3年延長することとされた。
(2)改正前の制度の概要  令和元年度改正の前は、被災自動車及び被災届出軽自動車の所有者が、平成31年3月31日までに還付申請書を国土交通大臣等を通じて税務署長に提出することにより、自動車重量税の還付を受けることができることとされていた(旧震災税特法45)。
(注1)「被災自動車」とは、自動車検査証の交付又は返付を受けた自動車(大型特殊自動車及び一定の被牽引自動車を除く。)のうち、自動車検査証の交付又は返付を受けた際に当該自動車検査証に記載された有効期間の満了する日前に東日本大震災を原因として滅失し、解体し、又は自動車の用途を廃止したもので永久抹消登録等の手続がされたものをいう(旧震災税特法45①、旧震災税特令35①②)。
(注2)「被災届出軽自動車」とは、車両番号の指定を受けた軽自動車のうち、車両番号の指定を受けた後に東日本大震災を原因として軽自動車の使用を廃止したもので軽自動車届出済証を返納する手続がされたものをいう(旧震災税特法45②、旧震災税特規18①)。
(注3)災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(昭和22年法律第175号)第9条の規定の適用がある場合は、本特例措置の適用はない。
(3)改正の内容  「被災自動車等に係る自動車重量税の還付措置」については、最近における申請状況等を考慮し、その適用期限を2年延長し、復興・創生期間が終了する令和3年3月31日までの措置とすることとされた(震災税特法45)。

4 被災自動車等の使用者であった者が取得する自動車に係る自動車重量税の免税措置の延長

(1)制度の趣旨等
 上記3(1)で記述したとおり、東日本大震災により多くの自動車が被災し、使用できない状態となったが、被災地域においては、自動車は生活の足として重要な移動手段となっていることから、使用不能となった自動車の買換えを支援するため、平成23年3月11日から平成26年4月30日までの間、被災自動車の使用者であった者等が取得する一定の検査自動車に係る自動車重量税を免除する措置が創設され、その後、本特例措置の対象に二輪の小型自動車、届出軽自動車等が追加された。
 その後、平成26年度税制改正及び平成28年度税制改正において、当時の申請状況等を考慮して、その適用期限を2年又は3年延長することとされた。
(2)改正前の制度の概要  被災使用者が、平成23年3月11日から平成31年4月30日までの間に検査自動車(大型特殊自動車及び一定の被牽引自動車を除く。)又は届出軽自動車を取得し当該検査自動車又は当該届出軽自動車について自動車検査証の交付又は返付(平成23年3月11日以後最初に受けるものに限る。)を受ける場合には、自動車重量税を免除することとされていた(旧震災税特法46①)。
(注1)「被災使用者」とは、以下の者をいう(旧震災税特法46①、旧震災税特令36①)。
 ① 被災自動車又は被災届出軽自動車の使用者(法人も含む。)
 ② 被災自動車又は被災届出軽自動車の使用者の相続人(当該使用者と生計を一にしていた者に限る。)
 ③ 被災自動車若しくは被災届出軽自動車の使用者が法人であって、当該法人が合併により消滅した場合又は分割により被災自動車若しくは被災届出軽自動車に係る事業に関して有する権利義務を承継させた場合における当該合併に係る合併法人又は当該分割に係る分割承継法人
(注2)被災使用者が平成23年3月11日から平成31年4月30日までの間に取得し自動車検査証の交付等を受けた検査自動車の数と当該期間内に取得し車両番号の指定を受けた届出軽自動車の数とを合計した数が、当該被災使用者に係る被災自動車の数と被災届出軽自動車の数とを合計した数を超える場合には、当該合計した数を超えることとなる検査自動車又は届出軽自動車については、自動車重量税は免除されない(旧震災税特法46②)。
(注3)「被災自動車」、「被災届出軽自動車」については、3(2)の注を参照。
(3)改正の内容  「被災自動車等の使用者であった者が取得する自動車に係る自動車重量税の免税措置」については、最近における適用状況等を考慮し、その適用期限を復興・創生期間が終了する令和3年3月31日まで延長することとされた(震災税特法46)。

印紙税関係の改正

1 特定の学資としての資金の貸付けに係る消費貸借契約書の印紙税の非課税措置の延長

(1)改正前の制度の概要等
 我が国においては、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、教育の機会均等の実現を図ることが、国や地方公共団体はもとより、国民全体に対して求められている(子どもの貧困対策の推進に関する法律3~5)。
 このため、義務教育以降の後期中等教育及び高等教育段階においても、意欲と能力のある者が家庭の経済状況によって進学を断念することがないよう支援をしていくことが重要である。
 このような観点を踏まえ、平成28年度税制改正において、それまでその事業に関し作成される消費貸借契約書について印紙税の非課税措置が講じられていた都道府県(都道府県に代わって奨学金事業を実施する公益社団法人及び公益財団法人を含む。)及び独立行政法人日本学生支援機構が実施する奨学金事業に加え、教育の機会均等の補完的な役割を担う公益法人等が実施する特定の学資としての資金の貸付けに係る消費貸借契約書についても印紙税の非課税対象とすることとされた。
 具体的には、高等学校、大学等の生徒又は学生であって経済的理由により修学に困難がある者に対して文部科学大臣の確認を受けた無利息で行われる学資としての資金の貸付けに係る消費貸借契約書のうち、平成28年4月1日から平成31年3月31日までの間に作成されるものには、印紙税を課さないこととされた(旧措法91の3②)。
(2)改正の内容  本特例措置については、引き続き、教育の機会均等の実現を図るため、その補完的な役割を担う公益法人等が実施する奨学金事業が重要であること等を踏まえ、その適用期限を3年延長し、令和4年3月31日までの措置とすることとされた(措法91の3②)。

2 特別貸付けに係る消費貸借契約書の印紙税の非課税措置の見直し

(1)制度創設の背景
 事業資金や住宅資金などを金融機関等から借り入れる際に作成する借用証書、ローン契約書などの消費貸借契約書については、その記載金額の区分に応じて、一通につき、200円から60万円まで(階級定額税率)の印紙税が課税されることから、公的貸付機関等又は金融機関が災害被害者に対して低利で融資する特別貸付制度により、災害被害者が金銭の貸付けを受ける際に作成する消費貸借契約書についても、原則として、その記載金額に応じた印紙税を納付することとされている(印法別表第一1号の3)。
 これまで阪神・淡路大震災や東日本大震災といった大規模な災害の際には、被害の状況や規模などを踏まえ、特別立法により、きめ細やかな対応を行ってきたところであるが、近年、災害が頻発していることを踏まえ、被災者や被災事業者の不安を早期に解消するとともに、復旧や復興の動きに遅れることなく税制上の対応を手当てする観点から、災害への税制上の対応の規定の常設化が検討された。その結果、指定災害(激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律第2条第1項の規定により激甚災害として指定され、同条第2項の規定により当該激甚災害に対して適用すべき措置として同法第12条に規定する措置が適用されたものをいう。以下2において同じ。)の被災者の復旧等のための資金調達に係る負担を軽減し、公的貸付機関等又は金融機関による金融支援を側面から支える観点から、平成29年度税制改正において、公的貸付機関等又は金融機関が指定災害により被害を受けた者に対して行う特別貸付けに係る消費貸借契約書に係る印紙税の非課税措置を講ずることとされた。
(2)改正前の制度の概要等  公的貸付機関等又は金融機関が、指定災害により被害を受けた者に対して他の金銭の貸付けの条件に比し特別に有利な条件で行う特別貸付けに係る消費貸借契約書のうち、当該指定災害が発生した日から同日以後5年を経過する日までの間に作成されるものについては、印紙税が非課税とされている(措法91の4、措令52の3)。
(3)改正の内容  株式会社商工組合中央金庫(商工中金)は、これまでも、指定金融機関として、指定災害の被害者に対して危機対応融資を行っており、当該融資に係る消費貸借契約書は本特例措置の対象とされていた。ところが、平成28年10月に商工中金の危機対応融資において不正事案が発覚し、これを受けて「商工中金の在り方検討会」が設置された。平成29年11月から同検討会において議論が行われ、平成30年1月11日にとりまとめられた提言では、危機対応融資の実施は真の危機時に限定するよう抜本的に見直すこととされた。これにより、平成30年5月20日以後に発生した西日本豪雨等については、激甚災害には指定されているものの危機対応融資の対象となる災害には認定されず、株式会社商工組合中央金庫が危機対応融資によらずに被災者に対して融資を行うという状況が新たに生じることとなった。こうした状況に対応するため、本特例措置の適用対象となる金融機関の範囲に株式会社商工組合中央金庫を加えることとされた(措令52の3③十五)。
(4)適用関係  上記の改正は、平成30年5月20日以後に発生した指定災害に係る消費貸借契約書について適用される(改正令附則40①)。なお、平成30年5月20日から平成31年3月31日までの間に改正後であれば本特例措置が適用される消費貸借契約書が作成され、当該消費貸借契約書に係る印紙税が納付されている場合には、当該納付された印紙税は印紙税法第14条第1項の過誤納金とみなして還付することとする措置が設けられている(改正令附則40②)。

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