税務ニュース2003年03月10日 相続時精算課税制度の生前贈与財産からも債務控除は可 贈与税額控除の場所は今後政令等で明らかに
相続時精算課税制度の生前贈与財産からも債務控除は可
贈与税額控除の場所は今後政令等で明らかに
相続時精算課税制度の特定贈与者から相続等した場合の相続税の課税価格計算では、相続時精算課税制度の適用を受けた生前贈与財産も債務控除の対象になることが改正相続税法には規定されている。一方、相続時精算課税制度での贈与税額を相続税の計算で控除する場合には、配偶者の税額軽減前で行われるか、各種税額控除後において行われるかについて、法律で規定されておらず、今後政令等で明らかになる見込みとなる。
相続時精算課税制度で相続税申告書も新様式が必要
まず相続税申告書の第1表の様式を参考にしてほしい。申告書A表は、現行の相続税の申告書の第1表の様式で、2億4千万円の相続財産・7,000万円の債務控除等を3人の子(兄弟)が分割して取得した場合の申告書である。
一方申告書B表は、当該相続財産を、相続時精算課税制度を適用して、太郎は1億円(非課税枠2,500万円)・花子は3,500万円(非課税枠3,500万円)・次郎は4,500万円(非課税枠2,500万円)の生前贈与を甲から受けており、適正に相続時精算課税の適用手続きを行ってきたものとした場合の相続税の申告書である。合計1億8,000万円もの生前贈与により、甲の相続時の財産の価額は、2億4,000万円から6,000万円に下がっている。しかし、各相続人が生前贈与と相続時に取得した財産の合計は、A表と一致させている。
債務控除後に加算か?加算後に債務控除か?
新相続税法21条の15①では、特定贈与者からの相続等により財産を取得した相続時精算課税適用者については、相続時精算課税制度の適用を受ける生前贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算した価額をもって、相続税の課税価格とすることが規定されている。
現行の3年内贈与財産は、現行申告書様式A表からも明らかなように、債務控除後の金額(③の金額、赤字のときは0)に贈与財産の価額(④の金額)を加えて課税価格(⑤の金額)を算出しているが、相続時精算課税の適用がある場合には、債務控除(相法13条)の規定について、対象財産を「取得した財産及び相続時精算課税制度の適用を受ける生前贈与財産」と読み替えることで、生前贈与財産からも債務控除できるように規定した(新相続税法21条の15②)。すなわち、3年内贈与財産のように④欄ではなく、①と②の間(B表(イ))で相続時精算課税制度の生前贈与財産は、加算計算が行われることになる。
B表で検証すると、太郎の課税価格は、(イ)で加算することにより、8,500万円となるが、④で加算する場合には1億円となってしまうので要注意だ。
さらに、新相続税法21条の16①では、特定贈与者からの相続等により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者についても、生前贈与財産から債務控除できる旨を規定している。
花子は、相続時には、財産を取得しないことになったが、相続時精算課税の適用を受ける生前贈与財産について相続財産とみなして債務控除を適用することから、課税価格は引き受けた債務控除等の額500万円を控除して、3,000万円となる。
税額控除の場所で還付税額は違ってくるが
相続時精算課税適用者は、相続税額から相続時精算課税の贈与税を控除した金額をもって納付すべき相続税額となる(新相続税法21条の15③)。また、相続時精算課税制度における贈与税額がある場合に、その金額を相続税額から控除しても控除しきれなかった金額については、還付することが規定されている(新相続税法33条の2①)。還付が生じる場合には、どの段階で贈与税額を控除するかで、還付税額が異なってくる場合もあるが、改正相続税法からは、読み取ることができない。
申告書B表の次郎を検証してみよう。算出税額から直ちに相続時精算課税制度における贈与税額を控除した場合((ハ)欄での控除)には、その時点ですでに16万円の還付となっており、その後の障害者控除120万円を控除する余地がない。
一方、他の税額控除が行われた後に相続時精算課税制度における贈与税額を控除した場合((ニ)欄での控除)には、次郎は障害者控除をした後で精算課税贈与税額400万円を控除することになるので、控除しきれなかった金額136万円が還付されることになる。
立法当局も相続時精算課税制度における贈与税額控除の規定については、解釈の余地が残るとしている。A表とB表の結果を一致させるという原則からすれば、納税者有利の(ニ)欄での控除だが、解釈上の混乱を避けるためにも、政令に規定する方向で調整の模様である。
贈与税額控除の場所は今後政令等で明らかに
相続時精算課税制度の特定贈与者から相続等した場合の相続税の課税価格計算では、相続時精算課税制度の適用を受けた生前贈与財産も債務控除の対象になることが改正相続税法には規定されている。一方、相続時精算課税制度での贈与税額を相続税の計算で控除する場合には、配偶者の税額軽減前で行われるか、各種税額控除後において行われるかについて、法律で規定されておらず、今後政令等で明らかになる見込みとなる。
相続時精算課税制度で相続税申告書も新様式が必要
まず相続税申告書の第1表の様式を参考にしてほしい。申告書A表は、現行の相続税の申告書の第1表の様式で、2億4千万円の相続財産・7,000万円の債務控除等を3人の子(兄弟)が分割して取得した場合の申告書である。
一方申告書B表は、当該相続財産を、相続時精算課税制度を適用して、太郎は1億円(非課税枠2,500万円)・花子は3,500万円(非課税枠3,500万円)・次郎は4,500万円(非課税枠2,500万円)の生前贈与を甲から受けており、適正に相続時精算課税の適用手続きを行ってきたものとした場合の相続税の申告書である。合計1億8,000万円もの生前贈与により、甲の相続時の財産の価額は、2億4,000万円から6,000万円に下がっている。しかし、各相続人が生前贈与と相続時に取得した財産の合計は、A表と一致させている。
債務控除後に加算か?加算後に債務控除か?
新相続税法21条の15①では、特定贈与者からの相続等により財産を取得した相続時精算課税適用者については、相続時精算課税制度の適用を受ける生前贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算した価額をもって、相続税の課税価格とすることが規定されている。
現行の3年内贈与財産は、現行申告書様式A表からも明らかなように、債務控除後の金額(③の金額、赤字のときは0)に贈与財産の価額(④の金額)を加えて課税価格(⑤の金額)を算出しているが、相続時精算課税の適用がある場合には、債務控除(相法13条)の規定について、対象財産を「取得した財産及び相続時精算課税制度の適用を受ける生前贈与財産」と読み替えることで、生前贈与財産からも債務控除できるように規定した(新相続税法21条の15②)。すなわち、3年内贈与財産のように④欄ではなく、①と②の間(B表(イ))で相続時精算課税制度の生前贈与財産は、加算計算が行われることになる。
B表で検証すると、太郎の課税価格は、(イ)で加算することにより、8,500万円となるが、④で加算する場合には1億円となってしまうので要注意だ。
さらに、新相続税法21条の16①では、特定贈与者からの相続等により財産を取得しなかった相続時精算課税適用者についても、生前贈与財産から債務控除できる旨を規定している。
花子は、相続時には、財産を取得しないことになったが、相続時精算課税の適用を受ける生前贈与財産について相続財産とみなして債務控除を適用することから、課税価格は引き受けた債務控除等の額500万円を控除して、3,000万円となる。
税額控除の場所で還付税額は違ってくるが
相続時精算課税適用者は、相続税額から相続時精算課税の贈与税を控除した金額をもって納付すべき相続税額となる(新相続税法21条の15③)。また、相続時精算課税制度における贈与税額がある場合に、その金額を相続税額から控除しても控除しきれなかった金額については、還付することが規定されている(新相続税法33条の2①)。還付が生じる場合には、どの段階で贈与税額を控除するかで、還付税額が異なってくる場合もあるが、改正相続税法からは、読み取ることができない。
申告書B表の次郎を検証してみよう。算出税額から直ちに相続時精算課税制度における贈与税額を控除した場合((ハ)欄での控除)には、その時点ですでに16万円の還付となっており、その後の障害者控除120万円を控除する余地がない。
一方、他の税額控除が行われた後に相続時精算課税制度における贈与税額を控除した場合((ニ)欄での控除)には、次郎は障害者控除をした後で精算課税贈与税額400万円を控除することになるので、控除しきれなかった金額136万円が還付されることになる。
立法当局も相続時精算課税制度における贈与税額控除の規定については、解釈の余地が残るとしている。A表とB表の結果を一致させるという原則からすれば、納税者有利の(ニ)欄での控除だが、解釈上の混乱を避けるためにも、政令に規定する方向で調整の模様である。
相続税の申告書(第1表)・A表 |
| | | | ||
| | | | | |
続柄(取得原因) | | | | | |
取得財産の価額 | | 240,000,000 | 150,000,000 | 35,000,000 | 55,000,000 |
債務・葬式費用 | | 70,000,000 | 65,000,000 | 5,000,000 | |
純資産価額 | | 170,000,000 | 85,000,000 | 30,000,000 | 55,000,000 |
加算贈与財産 | | ||||
課税価格 | | 170,000,000 | 85,000,000 | 30,000,000 | 55,000,000 |
遺産・基礎控除 | | 80,000,000 | |||
相続税の総額 | | 12,000,000 | |||
あん分割合 | | 1.00 | 0.50 | 0.18 | 0.32 |
算出税額 | | 12,000,000 | 6,000,000 | 2,160,000 | 3,840,000 |
贈与税額控除 | | ||||
配偶者税額軽減 | | ||||
未成年者控除 | | ||||
障害者控除 | | 1,200,000 | 1,200,000 | ||
相次相続控除 | | ||||
外国税額控除 | | ||||
税額控除計 | | 1,200,000 | 0 | 0 | 1,200,000 |
差引税額 | | 10,800,000 | 6,000,000 | 2,160,000 | 2,640,000 |
相続税の申告書(第1表)・B表 |
| | | | ||
| | | | | |
続柄(取得原因) | | | | | |
取得財産の価額 | | 60,000,000 | 50,000,000 | 0 | 10,000,000 |
相続時精算課税の生前贈与財産 | | 180,000,000 | 100,000,000 | 35,000,000 | 45,000,000 |
仮計(①+(イ)) | | 240,000,000 | 150,000,000 | 35,000,000 | 55,000,000 |
債務・葬式費用 | | 70,000,000 | 65,000,000 | 5,000,000 | |
純資産価額 | | 170,000,000 | 85,000,000 | 30,000,000 | 55,000,000 |
加算贈与財産 | | ||||
課税価格 | | 170,000,000 | 85,000,000 | 30,000,000 | 55,000,000 |
遺産・基礎控除 | | 80,000,000 | |||
相続税の総額 | | 12,000,000 | |||
あん分割合 | | 1.00 | 0.50 | 0.18 | 0.32 |
算出税額 | | 12,000,000 | 6,000,000 | 2,160,000 | 3,840,000 |
精算課税贈与税額控除 | | 19,000,000 | 15,000,000 | 0 | 4,000,000 |
贈与税額控除 | | ||||
配偶者税額軽減 | | ||||
未成年者控除 | | ||||
障害者控除 | | 1,200,000 | 1,200,000 | ||
相次相続控除 | | ||||
外国税額控除 | | ||||
税額控除計 | | 1,200,000 | 0 | 0 | 1,200,000 |
差引税額 | | 11,880,000 | 6,000,000 | 2,160,000 | 2,640,000 |
精算課税贈与税額控除 | | 19,000,000 | 15,000,000 | 0 | 4,000,000 |
納付(還付)税額 | | ?△7,000,000 ?△8,200,000 | △9,000,000 | 2,160,000 | ?△160,000 ?△1,360000 |
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