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税務ニュース2003年03月24日 どうしたら良い?複雑怪奇な新証券税制(上) 口座選択と節税のポイントを徹底解説!投資家のための新証券税制解説(上)

ニュース特集

どうしたら良い?複雑怪奇な新証券税制
口座選択と節税のポイントを徹底解説!投資家のための新証券税制解説(上)


 平成15年度税制改正案が3月4日に衆議院を通過しました。証券税制は平成14年度の税制改正後、度重なる政省令等の改正を経て、今回で一応の決着が着きました。各メディアで繰り返し特集が組まれ報道されている新証券税制ですが、多くの投資家は未だに困惑した状態で口座選択もままならない様子です。どの口座を選んだら良いのか、節税法はないのか、今回の特集は新証券税制に詳しい宝田税理士の協力のもと、新証券税制を「投資家側」から解説していきます。

1.投資家から見た新証券税制とは ~申告分離課税の影響とその対応~

新証券税制
 源泉分離課税が廃止され申告分離課税に一本化されました。たいていの投資家は、平成14年末までは売却のつど儲かっていたら源泉分離課税を、損をしていたら申告分離課税を選択していましたが、平成15年からは原則として全ての投資家に申告分離課税が適用されます。
 申告分離課税により投資家が受ける影響(問題点)は以下の2点です。1つ目は確定申告をしなければならないという事務負担増加の問題です。日本のサラリーマンなどの給与所得者の多くは、年末調整で課税関係が完結し、確定申告とは縁遠い人が多いため、申告そのものに抵抗感があります。2つ目は譲渡益課税による税負担増加の問題です。従来、源泉分離課税により、売却額の1.05%の税金を手数料程度の感覚で負担していた投資家にとって、譲渡益の10%(上場株式等)の税金は大きな負担になります。
 これらの問題点を解決するために設けられた制度が、事務負担を軽減する「特定口座制度」と税負担を軽減する「特例制度」です。特定口座制度では、証券会社が投資家に代わって譲渡益を計算してくれるため、確定申告が簡単になります。さらに源泉徴収ありを選択すれば確定申告不要とすることもできます。特例制度には、「譲渡損失の繰越控除」、「みなし取得費の特例」、「元本1000万円までの譲渡益非課税」の3つがあり(P7一口解説参照)、これらを適用することで税負担を軽減することができます。

 投資家がまず行うべきことは、新証券税制の中身を十分に理解することです。全体像を掴んだ後、次第に細かく見ていくと良いでしょう。
 また、特定口座にはメリット・デメリットがあり、特例適用には保有株式の種類や取得時期などに制限が設けられているものがあります。投資家は自分に合った方法を選択するために、制度と自身の状況(投資スタンスや保有株式の状況)とを照らし合わせて検討することが大切です。
 これらを検討した内容を踏まえて、的確に判断し行動することで、投資家はより有利かつ快適な株式投資を行うことができます。

2.各口座の特徴
新証券税制

 新証券税制で投資家が利用できる口座には、「一般口座」と「特定口座」があります。特定口座にはさらに、「源泉徴収なし」と「源泉徴収あり」の2種類があります。
 投資家は、一つの証券会社で一般口座と特定口座(源泉徴収あり又は、なし)を併用することができますが、源泉徴収なしの特定口座と源泉徴収ありの特定口座を併用することはできません。それぞれの口座には以下のような特徴があります。

 一般口座とは、証券会社の単なる保護預かり口座です。一般口座で売却した際には源泉徴収は行われません。
 投資家は一年間の売買損益を自ら計算して確定申告をし、納税する必要があります。なお、一般口座ではすべての特例制度を利用することができます。

 源泉徴収なしの特定口座とは、証券会社が投資家に代わって売買損益を計算するしくみを持つ口座です。源泉徴収なしの特定口座で売却した際には、売却時に源泉徴収は行われません。
 投資家は証券会社が発行する「特定口座年間取引報告書」を用いて確定申告をし、納税する必要があります。なお、源泉徴収なしの特定口座では「みなし取得費の特例」を適用できません(ただし取得日・取得方法などの要件を満たす場合には、特定口座への入庫時に、特定口座での取得価額として、みなし取得費を用いることが可能)。

 源泉徴収ありの特定口座とは、証券会社が投資家に代わって売買損益と税額を計算するしくみを持つ口座で、売却のつど、一定の方法により譲渡益に対する源泉徴収が行われます。
 投資家は源泉徴収により課税関係が完結するので、確定申告をする必要がありません(ただし譲渡損失の繰越控除を適用するためには確定申告が必要です)。なお、源泉徴収ありの特定口座では「みなし取得費の特例」と「元本1000万円までの譲渡益非課税」を適用できません。
 また、源泉徴収ありの特定口座では、株式の譲渡益が合計所得金額に含まれないため、配偶者控除や扶養控除などに影響を与えません。
各口座の特徴一覧
一般口座
源泉なし・特定
源泉あり・特定
確定申告
不要
源泉徴収
なし
なし
あり
特定口座年間取引報告書
なし
あり
あり
譲渡損失の繰越控除
みなし取得費の特例
不可
不可
元本1000万円までの譲渡益非課税
不可
合計所得金額
含まれる
含まれる
含まれない
※特例適用の要件は、P7の一口解説参照

3.口座選択のポイント
新証券税制

 各口座の特徴には、一長一短があり一様に選択することはできません。投資家は投資スタンスや保有株式の状況に応じて、重点を置くポイントを定めて検討することが大切になります。主なポイントとして以下の3つ(事務負担面、税負担面、資金負担面)があります。

事務負担面~取引頻度
 申告分離課税では、売却のつど総平均法に準ずる方法により取得価額を計算し、譲渡益を算出しなくてはなりません。月に1、2回程度しか売買しない投資家であれば自ら計算することが可能ですが、それ以上に頻繁に取引している投資家にはこの計算は実務上困難ですので、特定口座の利用を検討する必要があります。また、投資額が多い投資家は、計算ミスにより想定外の負担(加算税)が生ずるおそれがありますので、特定口座の利用と共に税理士などの専門家に依頼することも検討する必要があるでしょう。

税負担面~保有株式の取得時期
 特例制度を利用することにより税負担を軽減することが可能ですが、「みなし取得費の特例」と「元本1000万円までの譲渡益非課税」には、株式の取得時期に要件が設けられています。節税を重視する投資家は、これらの要件と自分の保有する株式の取得時期とを照らし合わせることが口座選択の際に重要になります。 「みなし取得費の特例」は「平成13年9月30日以前」に購入した株式に適用することができます。これを適用するためには、投資家は一般口座を選択する必要があります。(ただし取得日・取得方法などが一定の要件を満たす場合には、特定口座への入庫時に、特定口座での取得価額として、みなし取得費を用いることが可能)。
 「元本1000万円までの譲渡益非課税」は「平成13年11月30日~平成14年12月31日」に購入した株式に適用することができます。これを適用するためには、投資家は一般口座か源泉徴収なしの特定口座を選択する必要があります。

資金負担面~源泉徴収による影響
 源泉徴収ありの特定口座では、売却のつど一定の方法により譲渡益の7%(平成15年4月1日より。平成16年以降は10%)相当の源泉徴収が行われます。一方、一般口座と源泉徴収なしの特定口座では、年中は一切税金が徴収されません。売却、再投資を繰り返している投資家にとっては、売却のつど税金を差し引かれる源泉徴収ありの特定口座は、キャッシュ面でデメリットがあります。

 新証券税制では、売却の直前に課税方法を選択することはできません。投資家は前もって自分に合った口座を選択しておく必要があります。確定申告時に大変な手間がかかったり、思わぬ税負担を強いられたりすることの無いよう、十分に検討した上で口座を選択することが大切です。

一口解説
譲渡損失の繰越控除
 上場株式等の譲渡損失をその年の株式譲渡益から引ききれなかった場合には、これを3年間繰り越して翌年以降の株式譲渡益と通算できる。損失が発生した年から控除の年まで継続して確定申告が必要。繰り越す損失は上場株式等のみだが、充当する譲渡益は非上場株式の譲渡益でも可。

みなし取得費の特例
 平成13年9月30日以前に取得した上場株式等を平成15年1月1日~平成22年12月31日までに売却した場合には、実際の取得価額に代えて平成13年10月1日の株価の80%を用いて、譲渡損益を計算することができる。みなし取得費の特例を適用する際には確定申告が必要。

元本1000万円までの譲渡益非課税
 平成13年11月30日~平成14年12月31日までに取得した上場株式等を、平成17年~平成19年に売却した場合には、元本金額1000万円までは譲渡益を非課税とすることができる。売却した年の翌年3月15日までに、「特定上場株式等非課税適用選択申告書」の提出が必要。平成15年、16年中は保有期間に該当するため、この期間に売却すると原則として適用できなくなる。

 次回「投資家のための新証券税制解説(下)」では、新証券税制での節税のポイントをとりあげます。各特例制度の注意点や活用法を、具体例を用いて解説していきます。

Profile

宝田 健太郎(たからだけんたろう)
税理士(東京税理士会)
宝田税務会計事務所
金融資産税務を専門分野とし、税務会計・資産管理業務を中心に取り扱う。
(著書)
「決定版 これ以上やさしく書けない!新証券税制」
(ダイヤモンド社)
(監修・寄稿)
ダイヤモンドザイ(ZAi)、週刊ダイヤモンド

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