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税務ニュース2003年06月02日 国が訴訟で負けたから税法が変わったぞ!(2003年6月2日号・№021) ニュース特集 相続税法の特則で「更正の請求」ができる場合

ニュース特集

国が訴訟で負けたから税法が変わったぞ!

相続税法の特則で「更正の請求」ができる場合

 平成15年度税制改正では、相続税又は贈与税の申告書についての更正の請求の特則(相続税法32条・相続税法施行令8条)が改正され、相続税法による更正の請求ができる場合に「権利の帰属に関する訴えについての判決があったこと」等が新たに明示的に規定された。この改正は、東京地裁1・東京高裁2 で相続開始後の認知判決を得て他の共同相続人から価額請求に基づく価額金の支払を受けた納税者への相続税の決定処分を巡る争いで、国側が敗れたこと(確定)から、国税通則法70条に基づく更正・決定等の期間制限に制約されずに更正・決定等が行えるように、立法上の手当てがなされたものである。
 相続に関しては、遺産分割協議の不調・遺留分減殺請求・予期せぬ相続人の存在・遺贈(遺言書)の有効性などを巡り、法的な解決を求められる場合が数多く見受けられるが、実務家は判決を受けた場合の手続きをしっかりと整理しておく必要があるだろう。

当事者の主張と控訴審の判断

Xの主張
① 乙らは相続税法32条2号に基づき、認知裁判の確定により更正の請求をすることができる。
⇒乙らはそれをしなかった。
② 価額金支払額が具体的に確定した場合は、国税通則法に定める事由による更正の請求ができるに過ぎない。
③ 乙らは期限を徒過した更正の請求を行ったものであり、これを基礎として行った本件決定は違法なものである。
対立
Y税務署長の主張
① 認知裁判確定時に価額支払請求権が既に確定しているとはいえない。
⇒価額金が決まるまでわからない。
② 価額金が具体的に確定した場合は、相続税法32条2号に基づき、更正の請求をすることができる。
⇒実務的にはこうするしかない。
③ 仮に、本件の場合が相続税税法32条2号の認知裁判の確定に含まれないとしても、相続税法32条1号所定の更正事由に該当する。

東京高裁の判断
 税務署長が相続税法第35条3項に基づく更正・決定を行う場合には、相続税法32条による適法な更正の請求に基づく更正処分が前提であり、本件更正の請求は期限を大幅に徒過した不適法なものであるからから、これに応じた本件更正処分には重大かつ明白な瑕疵がある。
本件決定は、その前提を欠くものというべきであり、違法なものといわざるを得ない。と判示し、Y税務署長の控訴を棄却した。

1 平成11年(行ウ)第182号、平成13年5月25日判決 2 平成13年(行コ)第146号、平成14年8月25日判決

東京高裁・東京地裁判決の事案の概要

控訴審判決が示す制度上の問題点

根拠法による更正の請求の違い
 控訴審判決では、「相続税法第32条第2号は、認知裁判の確定を更正の請求の事由とはしているが、認知裁判確定後に価額支払額が具体的に確定したときまで含まれると解することはできない。」と判示している。しかし、Y税務署長が主張するように、価額金支払額が具体的に確定した場合に相続税法に基づく更正の請求を容認しなければ、価額金支払確定時の更正の請求は国税通則法23条2項1号に基づく更正の請求となり、価額金支払を受けた被認知者に対する相続税法35条3項に基づく更正・決定ができず、被認知者が受けた価額金への課税が実質上不可能になるなど弊害が生じるものである。相続税法による特則と国税通則法では、更正の請求について下表のような規定の違いが見られている。
 判決では、「しかしながら、租税法規については、租税法律主義の見地から納税義務者の不利益利益を問わず、文理から乖離した拡張解釈をすることには、慎重であるべきことが要請されている。合目的的解釈の趣旨に合理性があるとしても、同条2号の文言に価額支払請求権行使・価額金支払が含まれるとの解釈は、文理上の乖離があまりにも大きく、採用することは困難と言わざるを得ない。」と判示して、価額金支払時に相続税法上の更正の請求を認めるとする主張に合理性を認めながらも、合目的的解釈の限界を超えると判断している。

平成15年度改正での取扱い
 判決は控訴審で確定しているが、更正の請求を認めた一方で、更正・決定ができないことになれば、課税上の弊害が大きい。平成15年度税制改正では、抜け穴封じが手当てされている。
 まず、遺留分減殺請求でも認知と同様な問題が生じうることから、「請求があったこと」という言い回しを「返還すべき、又は弁償すべき額が確定したこと」という文言に改めた。
 さらに、更正の請求の対象となる事由を明確化させるため、法32条第5号・政令8条を設けた。
 相続税法施行令8条は、更正の請求の対象となる事由として①相続等により取得した財産について権利の帰属に関する訴えについての判決があったこと②民法第910条(分割後の被認知者の請求)の規定による請求があったことにより弁済すべき額が確定したこと③条件付又は期限付きの遺贈について、条件が成就し、又は期限が到来したことを列挙している。
 また、相続税法第35条第3項(相続税法の特則による更正の請求に基づき更正があった場合の特例)も政令委任規定(相続税法32条5号)を包含するように改正されている。
原則(国税通則法23条2項)
特則(相続税法32条)[改正後]










・税額計算等の基礎となった事実に関する訴えについての判決(刑事事件・馴れ合い・通謀虚偽表示による場合、客観的・合理的根拠を欠くものを除く。)
・所得その他課税物件が他の者に帰属するものとする当該他の者にかかる更正・決定
・官公署の許可その他の処分の取消
・解除権の行使等による解除又は取消
・帳簿等の押収等の事情の消滅
・未分割財産の分割
・認知・廃除又はその取消に関する裁判の確定などにより相続人に異動を生じたこと
・遺留分による減殺の請に基づき返還すべき、又は弁償すべき額が確定したこと
・遺贈に係る遺言書の発見又は遺贈の放棄
・権利の帰属に関する訴えについての判決
・民法第910条(分割後の被認知者の請求)の規定による請求があったことによる弁済すべき額の確定
・条件付又は期限付きの遺贈について、条件の成就、又は期限の到来

確定した(理由が生じた)日の翌日から起算して2月以内事由が生じたことを知った日の翌日から4月以内



更正等の期間制限(通則法70条)が適用される相続税法第32条第1号から第5号までの規定による更正の請求に基づき更正をした場合において、更正・決定は、その請求があった日から1年間はすることができる。

改正項目新旧対照表
平成15年度改正前
平成15年度改正後
相続税法
第32条(更正の請求の特則)
相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する事由により、当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額が過大となったときは、当該各号に規定する事由が生じたことを知った日の翌日から4月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき国税通則法第23条第1項の規定による更正の請求をすることができる。
一 未分割財産について民法の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されていた場合において、その後当該財産の分割が行われ、共同相続人又は包括受遺者が当該分割により取得した財産に係る課税価格が当該相続分又は包括遺贈の割合に従って計算された課税価格と異なることとなったこと。
二 民法の規定による認知、相続人の廃除又はその取消しに関する裁判の確定、相続の回復、相続の放棄の取消しその他の事由により相続人に異動を生じたこと。
三 遺留分による減殺の請求があったこと。
四 遺贈に係る遺言書が発見され、又は遺贈の放棄があったこと。
五   (省略)
六   (省略)
七   (省略)
第35条(更正及び決定の特則)
3 税務署長は、第32条第1号から第4号までの規定による更正の請求に基き更正をした場合において、当該請求をした者の被相続人から相続又は遺贈に因り財産を取得した他の者につき次に掲げる事由があるときは、当該事由に基き、その者に係る課税価格又は相続税額を更正し、又は決定する。ただし、当該請求があった日から1年を経過した日と国税通則法第70条の規定により更正又は決定をすることができないこととなる日のいずれか遅い日以後においては、この限りでない。
相続税法
第32条  (同左)
一    (同左)
二    (同左)
三 遺留分による減殺の請求に基づき返還すべき、又は弁償すべき額が確定したこと。
四    (同左)
五 前各号に規定する事由に準ずるものとして政令で定める事由が生じたこと。
六    (省略)
七    (省略)
八    (省略)
第35条(更正及び決定の特則)
3 税務署長は、第32条第1号から第5号までの規定による更正の請求に基づき更正をした場合において、当該請求をした者の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した他の者(当該被相続人から第21条の9第3項の規定の適用を受ける財産を贈与により取得した者を含む。以下この項において同じ。)につき次に掲げる事由があるときは、当該事由に基づき、その者に係る課税価格又は相続税額の更正又は決定をする。ただし、当該請求があった日から1年を経過した日と国税通則法第70条の規定により更正又は決定をすることができないこととなる日のいずれか遅い日以後においては、この限りではない。

相続税法施行令
第8条(更正の請求の対象となる事由)((新設)) 
法第32条第5号に規定する政令で定める事由は、次に掲げる事由とする。
一 相続若しくは遺贈又は贈与により取得した財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決があったこと。
二 民法第910条(分割後の被認知者の請求)の規定による請求があったことにより弁済すべき額が確定したこと。
三 条件付又は期限付の遺贈について、条件が成就し、又は期限が到来したこと。

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