税務ニュース2012年07月02日 相続取得の土地への課税は二重課税か?(2012年7月2日号・№457) 審判所、長崎年金事件の最高裁判決後に初めての判断

相続取得の土地への課税は二重課税か?
審判所、長崎年金事件の最高裁判決後に初めての判断

相続時までの土地の値上がり益について相続税と所得税の二重課税となるかで争われた裁決で、審判所は所得税を課すことを容認。
年金の二重課税の最高裁判決後、国税不服審判所が初めて判断。同種の事件に影響も。
 最高裁が年金受給権に係る年金の各支給額のうち被相続人死亡時の現在価値に相当する部分は、所得税の課税対象とはならないと判断したのは記憶に新しいが(平成22年7月6日、平成20(行ヒ)16)、この最高裁判決を拠り所として、相続時までの土地の値上がり益について相続税と所得税の二重課税になるか争われた注目すべき裁決があった。
 本件は、審査請求人が相続した不動産(土地)の譲渡に係る所得税の確定申告をした後、被相続人が取得した時から相続開始時までの不動産の値上がり益相当額(約1,300万円)は所得税法9条1項15号(現16号)により非課税であるとして更正の請求を行った。これに対して、原処分庁は、所得税法60条1項1号は相続人が相続により取得した資産を譲渡した段階で被相続人の保有期間中の値上がり益をも含めて課税を行うことを予定しているとして更正処分を行ったものである。
 請求人は、土地の値上がり益の場合は、相続時までの増加額という経済的価値が相続税の課税対象額とその後の譲渡所得の課税対象額に二度含まれることになるため、同一の経済価値に対する相続税と所得税の二重課税に該当すると主張したわけだ。
 審判所は、所得税法は相続により取得した資産の譲渡に関し、相続時までの値上がり益について、相続税および所得税の双方の課税ベースに含まれることを前提に、その課税方法につき取得価額引継方式を採用することにより納税者に一定の配慮をしたものというべきであると指摘。所得税法は、資産の譲渡による収入金額から被相続人の取得費を控除した値上がり益について、所得税を課すことを容認していると解するのが相当であるとした。
 また、請求人が最高裁判決の趣旨から二重課税に該当する旨を主張している点については、本件は、顕在化した資産の値上がり益についての譲渡所得課税の適否が争われているものであり、今回の判断が同判決に反するものとはいえないとした。
 なお、審判所によれば、政府税制調査会で公表された「最高裁判決研究会」報告書(平成22年10月22日)においても、最高裁判決の射程は相続税法24条によって評価がなされる相続財産に限定されるとの旨が明記されていると指摘している。

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