税務ニュース2023年02月10日 非上場株式の評価は併用方式が妥当も(2023年2月13日号・№966) 審判所、比準3要素は適切な数値として原処分を一部取消し
本件は、請求人が取引相場のない株式を関連法人に譲渡したことに係る譲渡所得について、原処分庁が当該株式の価額を財産評価基本通達により算定すれば、「著しく低い価額の対価」(所法59条①二)による譲渡に当たるとして更正処分等を行ったことから、原処分の全部の取消しを求めた事案である。請求人は、譲渡価額はDCF法に基づく株式の客観的交換価値を大幅に上回っていることなどから、評価通達に定める評価方法によっては株式の客観的交換価値を適切に算定できないと主張した。
審判所は、DCF法を単独で用いる評価方法が譲渡の時点において所有者である譲渡人の下に生じている増加益を客観的に把握する上で、唯一・最善の評価方法であるとは認め難いなどとし、請求人が参酌すべきと主張する譲渡に係る諸事情は、いずれも不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額の検討において参酌することが相当なものとはいえないと指摘。その上で、譲渡所得課税に係る取引が、その時点において所有者である譲渡人の下に生じている増加益に対する課税の機会にすぎないことや、譲渡人の発行会社に対する支配の程度、譲渡人の下に生じている増加益の額に影響を及ぼすと解されることからすると、譲渡人が「中心的な同族株主」(評価通達188(2))に該当し、発行会社を小会社として取り扱う場合において、類似業種比準方式を単独で用いる評価方法が妥当とはいえないことから、併用方式により株式の価額を算定することに合理性があるとの判断を示した。
ただし、併用方式による算定に当たっては、原処分庁は株式の発行会社が関連会社を吸収合併したことにより、法人の会社実態が変化し、比準3要素のうち1株当たりの①配当金額及び②年利益金額の2要素について適切な数値と認められないことから、評価通達189(1)に定める比準要素数1の会社に準じて、当該割合を0.25及び0.75として評価すべきと主張したが、審判所は、吸収合併により法人の会社実態に顕著な変化があったとは認められず、比準3要素のうち2要素について適切な数値と認められない事実もないことから、併用方式の算定での割合はいずれも0.50とすることが相当であるとして、原処分の一部を取り消した。
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