税務ニュース2023年03月10日 意思能力、医学的要素と法的要素で判断(2023年3月13日号・№970) 審判所、被相続人は成年後見を付する必要があるとは認められず
本件は、原処分庁が被相続人の死亡により効力が生じる代物弁済に基づき被相続人に譲渡所得が生じているなどとして、無申告加算税の賦課決定処分等を行ったことに対し、請求人が、代物弁済契約は被相続人の意思無能力によって無効であるとして、原処分の一部の取消しを求めた事案である。請求人は、医師による医学意見書の見解からすると、被相続人(請求人の父)が、本件被相続人を担保提供者とする代物弁済予約契約の締結時に意思能力を欠いていたことが認められ、本件契約の内容は被相続人の意思に沿うものではなく、無効であると主張した。
審判所は、意思能力の有無に関しては、精神上の障害の存否などの医学的要素と、行為の動機、行為に至る経緯、行為の内容・難易度、行為の効果の軽重、行為の意味についての理解の程度、行為時の状況などの法的要素の組合せにより判断することになるとの見解を示した上で、医学的要素については、契約の締結時に被相続人の認知機能が低下していたことが意思能力を欠くと評価されるほど重度のものかどうかについて、医療の専門家の間でも見解が分かれている状況にあるものの、改訂長谷川式簡易知能評価スケールやミニメンタルステート検査の点数などから、被相続人は成年後見を付する必要がある程度ではなかったものと認められると指摘。また、法的要素については、契約内容は法律的な思考や判断等を必要とするもので、平易なものとはいえず、根抵当権の極度額が20億円で負担の程度が小さいものとはいえないものの、契約の締結に至る経緯などを踏まえると、契約の締結は被相続人の意思に沿うものであったと認められ、加えて、本件契約は、弁護士が被相続人に契約の内容を確認させながら手続が行われていたことも踏まえると、被相続人は、契約の意味内容を理解した上で締結したものと認められるとした。
したがって、審判所は、被相続人は契約の締結時において、契約により自己が負担すべき義務の意味内容を理解する能力があったといえるから、意思能力を欠いていたとは認められず、代物弁済契約は有効に成立していたものと認められるとの判断を示し、請求人の請求を棄却した。
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