税務ニュース2023年05月19日 業績連動報酬が低下、金額調整の課題は(2023年5月22日号・№979) 予測不可能な事象・短期インセンティブ限定、調整部分の損金算入不可
インフレ、為替変動、地政学的リスクの高まり等に伴い、役員の業績連動報酬のボラティリティが高まっている。こうした中、業績連動報酬を支給している上場会社等では、予想以上に低額となった業績連動報酬の事後的な調整が報酬委員会等で議論されている。確かに予測困難な外部環境の変化の責任を役員に帰すのは酷と言えるが、上場会社等では、無条件に業績連動報酬の事後調整が認められるわけではない。
まず、報酬委員会等において、社外取締役を中心とした委員が中立な立場から議論を行い、合理的な判断を下し、その意思決定プロセスを開示する必要がある。もっとも、近年は気候変動対応をはじめ、役員に高度なリスクマネジメントが求められる中、例えばパンデミックから時間が経ったコロナを「不可抗力」とする言い訳は通用しなくなりつつある。報酬の事後調整について株主等を納得させられるのは、一定水準以上のリスクマネジメントを実施しても予測出来なかった事象に限定されることになろう。
また、一般的に、業績連動報酬の事後調整は年次賞与のような短期インセンティブに限定される。長い時間的猶予が与えられ、その間に企業価値を向上させることが求められるパフォーマンス・シェアのような中長期インセンティブに、そもそも事後調整は馴染まないからだ。
事後調整においては税務も問題となる。事後調整は定性評価、いわば「裁量」に基づいて行われるため、業績連動給与として損金算入できない。なお、パフォーマンス・シェアには事前交付型(PS)と事後交付型(PSU)があるが、PSUは業績連動給与として損金算入できる一方、PSのように勤務期間以外の事由(業績など)により無償取得する数が決まる特定譲渡制限付株式はそもそも損金算入対象外となる。
役員報酬制度設計上の工夫として、業績連動報酬を定量評価部分と定性評価部分にあらかじめ分離し、定量評価部分のみ損金算入の対象とする一方、数字に表れない役員の経営努力を評価したり、一過性の特殊要因等の影響を排除するため、KPIの上・下限に幅をもたせることも考えられよう。
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