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企業法務2007年11月01日 制度開始の秒読み段階に入った「内部統制報告制度」 執筆者:水野行雄

1.金融商品取引法における内部統制報告制度

 平成18年(2006年)6月7日に、「証券取引法等の一部を改正する法律」により「金融商品取引法」が成立しました。これは従来の証券取引法の内容を大幅に拡充し、関連法規を統合したものです。これにもとづき、平成20年(2008年)4月1日以降に開始する事業年度から、内部統制報告制度、代表者による確認書制度および四半期報告書制度が新たに適用されることになりました。これらは、企業内容開示制度を整備するためのものであり、特に、「内部統制報告制度」と「代表者による確認書制度」は、アメリカにおいて、2002年7月に制定されたサーベインス・オクスリー法(Sarbanes-Oxley Act of 2002、通称SOX法)の一連の規定と対応するものです。
 金融商品取引法における「内部統制報告制度」は、平成16年(2004年)10月に起きた、「西武鉄道事件」が契機となっています。「西武鉄道事件」とは、上場企業である西武鉄道が、有価証券報告書の「株主の状況」欄に虚偽記載を行ったという事件で、上位10位の保有する持ち株比率が、当時の証券取引所の上場廃止基準である80%を超えている事実を隠蔽するため、虚偽の記載を行ったというものです。その後、他社においても同様の事実が、また株式の名義貸しによる虚偽記載も発覚し、続いて起きたカネボウ・ライブドアによる粉飾決算事件が後押しし、日本でも、アメリカにおけるSOX法と同様の規制をすべきとの意見が高まり、証券取引法が改正されることとなりました。

2.内部統制報告制度とは

 金融商品取引法では、内部統制報告制度について、つぎのように規定しています。

第二四条の四の四
 第二四条第一項の規定による有価証券報告書を提出しなければならない会社のうち、第二四条第一項に掲げる有価証券の発行者である会社その他政令で定めるものは、事業年度ごとに、当該会社の属する企業集団及び当該会社にかかる財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府令で定めるところにより評価した報告書(以下「内部統制報告書」という。)を有価証券報告書と併せて内閣総理大臣に提出しなければならない。
第一九三条の二
2 金融商品取引所に上場されている有価証券の発行会社その他の者で政令で定めるものが、第二四条の四の四の規定に基づき提出する内部統制報告書には、その者と特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人の監査証明を受けなければならない。〈以下、略〉

3.内部統制基準

 内部統制報告制度の実施にあたっては、企業において内部統制が整備・運用されることが求められますが、その拠り所となるものが、内部統制基準となります。内部統制基準は、企業会計審議会に設けられた、内部統制部会(部会長―八田信二・青山学院大学大学院教授)によって、平成19年(2007年)2月に公表されました。正式には、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」という、意見書として公表されたものです。

4.内部統制の整備と運用の状況について

 平成19年5月27日付日本経済新聞に掲載された中堅監査法人の調査結果によると、 内部統制プロジェクトの立ち上げ未決企業が18.7%、整備状況の評価に未着手の企業が 73.7%となっており、評価作業はまだこれからというのが実態のようです。運用状況の 評価に至っては、92.7%の企業が評価作業に着手していないようです。時間的には、間に合うと考えている企業が80.2%、厳しいとしているのは19.8%で、整備 状況の評価が未着手の企業が多い割には、間に合うと考えている企業が比較的多く、こ の結果から、完成時の水準が合格点ぎりぎりをねらう企業が56.4%という数字という ことになったかと思われます。
 準備期間については、各企業によって差があると思われますが、一般的には、6ヶ 月から18ヶ月を要するとされています。特に3月決算会社については、残された 時間を有効に使って、適用開始を迎える必要があります。

(2007年9月執筆)

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