一般2025年09月01日 経済安保新機関の創設検討 政府、情報収集・分析強化 官民連携へ中核役割 提供:共同通信社

 政府が、経済安全保障の総合的なシンクタンク機能を持つ新機関創設を検討していることが分かった。重要技術や半導体など重要物資のサプライチェーン(供給網)への脅威が増す中、情報収集・分析能力の強化を図る。官民連携の中核的役割や友好国のシンクタンクとの国際協力も担う。まずは政府関係機関の人員増強と連携を進め、新機関創設につなげる段取りを検討している。複数の政府関係者が31日、明らかにした。
 新機関では、各国の貿易統計や各業界へのヒアリング、民間が持つ航路情報を活用して供給網のリスクを洗い出し、各省庁に提供する。分野横断的なデータ活用も促進する。官民協議会の運営を行い、分析結果の民間への共有や民間からのフィードバックを推進する。
 米ランド研究所やオーストラリア戦略政策研究所といった海外のシンクタンク、経済協力開発機構(OECD)などの国際機関との協力も進める。
 政府の検討案では、新機関創設に向け、第1段階として国家安全保障局(NSS)が司令塔となって経済安保を担当する経済産業省と内閣府が2026年度に設置する先端技術のシンクタンク「重要技術戦略研究所」の連携を推進。第2段階で、省庁横断で情報収集・分析を担う人員・機構を強化する。
 第3段階として、シンクタンク機能を持つ独立行政法人を新設。官民連携促進の基盤整備や経済安保全般の政策提言を委ねる。その上で、最終的に政府保有データの分析を通じて機微度の高い政策提言が行える総合的なシンクタンク機能を備えた機関を創設する流れだ。

経済安保政策を巡る経過

 政府の経済安全保障政策を巡る主な経過は次の通り。
 2013年11月 国家安全保障会議(NSC)創設関連法成立
 12月 NSC発足
 14年1月 事務局の国家安全保障局(NSS)発足
 20年4月 NSSに経済班新設
 22年5月 重要物資の確保や重要技術の開発支援を盛り込んだ経済安保推進法が成立
 12月 経済安保推進法に基づき、国民生活や経済活動に重要な物資として半導体や天然ガス、重要鉱物など11物資を政令で指定
 24年2月 重要物資に先端電子部品を追加
 25年5月 経済安保上の重要情報のアクセス権限を有資格者に限定する「セキュリティー・クリアランス」制度の運用開始

経済安全保障

 国民の生命や財産を守る安全保障を、政府の経済政策や企業活動などの経済分野と結びつける考え方。米中対立の激化に伴い、外交・軍事の従来の枠組みだけでは対応できなくなったとして近年広まったが、経済のブロック化への懸念も出ている。半導体をはじめとした戦略物資の安定した調達やサイバー攻撃への対処、先端技術の開発など対象は幅広い。日本では2022年、重要物資の確保や重要技術の開発支援を盛り込んだ経済安全保障推進法が成立した。

(2025/09/01)

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