カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

一般2026年09月15日 海外で炎上、配信停止も…日本アニメの“らしさ”どう守る? 市場規模2兆円超に、人気の裏で続く模索 提供:共同通信社

 海外市場が2兆円を超え、国内を上回る規模に成長した日本のアニメが思わぬジレンマに直面している。海外での「炎上」だ。問題となるのは暴力や性的な描写、宗教に関わる表現から現地の法規制までさまざまで、作品の修正や配信停止に追い込まれるケースも出てきた。配信サービスの普及で海外でも同時に見られるようになり、ネガティブな反応もSNSですぐ広まる。海外からの批判に国内のファンが反発することもしばしばだ。政府もコンテンツ産業の輸出拡大を後押しする中、世界で愛される作品づくりと、日本アニメの“らしさ”をどう両立させるのか。模索する現場を取材した。(共同通信=高坂真喜子)

 ▽配信停止、原因はたばこ
 今年7月に放送を開始した、講談社のコミックスが原作のアニメ「ヤニねこ」。たばこを手放せないヘビースモーカーの獣人が主人公で、喫煙シーンが頻繁に登場する。海外でも配信されたが、香港では、作中でたばこのブランド名が繰り返し表示され、たばこの広告が含まれていると苦情があった。法律に違反する可能性があると行政側が指摘し、香港の配信サービスでは配信停止となったという。
 「ヤニねこ」の製作委員会は8月下旬、取材に対し「香港での配信停止は事実です。原因は調査中であり、製作委員会としては現地の法令に適した形で配信すべく、現地ライセンシーと協議中です」とコメントしている。
 インターネット上では「海外は喫煙に厳しいので、放映は難しいのでは」と香港での動きに理解を示すコメントもあれば、「最初から海外受けを狙って表現を小さくするよりもこれでいい」と擁護する意見も少なくなかった。

 ▽「イスラム教徒の皆さまに…」と謝罪
 日本のアニメの産業規模は2024年で約3兆8千億円(日本動画協会調べ)で、このうち海外市場は2兆1千億円超と国内市場を上回る。政府は、アニメなど日本のコンテンツ産業を「基幹産業」と位置づけ、海外売り上げを2023年の約5・8兆円から、2033年までに20兆円にする目標を掲げる。
 大人気アニメ『鬼滅の刃』も、かつて文化の違いによる問題に直面していた。2019年11月、ブルーレイとDVD第4巻の特典CDに、イスラム教の「アザーン」と呼ばれる礼拝の呼びかけの音声が不適切に使われていたとして、製作会社のアニプレックスが商品の出荷を停止し、回収した。同社によると、市販されている素材を利用して音源を制作したが、外部からの指摘で、宗教上の理由から他の音と一緒に流してはならないと判明したという。
 同社は、イスラム教やイスラム教徒の心を傷つけたり、冒涜したりする意図はなかったと説明し、「当該音声の意味や内容を十分理解しないまま収録し、発売したことにより、イスラム教徒の皆さまに、ご不快の念を抱かせてしまいましたことを深くおわび申し上げます」と謝罪した。
 同作の人気が海外で高まると、韓国で主人公の耳飾りの模様が旭日旗に見えると指摘され、配信サービス上でデザインを変更する事態にもなった。

 ▽海外の批判の声、SNSが可視化
 アニメビジネスに詳しい宮城学院女子大の小新井涼准教授は「海外でも、これまでアニメに触れてこなかった層まで日本の作品を見るようになった。日本の文化に理解の深い熱心な現地のファンだけでなく、日本の文化を知らない人にまで作品が届き始めているので、現地の文化、宗教、法律、倫理観について、今以上に気をつける必要も出てくるかもしれない」と語る。
 小新井さんによると、一部の海外からの批判の声がSNSの翻訳機能で可視化されたことによって、日本のファンが海外からの批判に反発する場面も目立つようになってきたという。背景にあるのは、日本と海外のアニメの受容の仕方の違いだ。
 日本のファンはフィクションはフィクションとして受け止め、創作者のクリエーティビティーを尊重する意識が強いと分析する。一方で、海外ファンの一部には作品をより良くするために、変更を働きかけるべきだとする考えもあるという。「一部ファンの大きな声が目立つが、日本と同じように純粋に作品を楽しんでいるファンも多いのではないか」
 小新井さんは、ファンの顔色をうかがい過ぎると、作品の本来の面白さが損なわれかねないとも指摘する。「神経質になり過ぎても作品の味を失ってしまう。海外のファンも実は日本で作られたオリジナルのままを楽しみたいと思っているはずで、一概に規制を強めた方が良い、とも言えない。現地の文化や空気感をよく知る人が、作品のローカライズ(現地化)に携わることが大切になってくるのではないか」

 ▽表現の自由を尊重、あくまで「助言」
 日本の製作側も対策に本腰を入れている。「バンダイナムコホールディングス」(東京)は、「グループ倫理表現方針」を掲げ、グループ会社の担当者が集まる「グループ倫理分科会」を2019年度に設置した。最新情報の収集のほか、グループ全体の商品や作品の表現に関する検討、提案をしている。
 同社子会社で、ガンダムシリーズなどを手がけるアニメーションを中心とした映像製作会社「バンダイナムコフィルムワークス」(東京)でも、作品の表現が適切かどうか、制作に携わる監督やプロデューサーから相談を受ける担当者を置いている。
 担当者は、現場から相談があった場合や懸念が生じた際に検討に入る。ただ、表現の自由を尊重し、あくまで現場への「助言」の形で、最終的な作品の表現は監督やプロデューサーに任せられているという。
 同社法務部IPサポート課の武井潤さんは「表現の自由や作品のテーマを大切にしながら、その表現が見る方にどう届くか、不用意に誤解や反感を引き起こさないかなど制作側と一緒に考え、助言する。少し行き過ぎていると感じるような表現などについて相談された場合は、伝えたいテーマを大切にした上で、その表現がマッチしているのか話し合います」と話す。
 それでも悩みは尽きない。
 「以前より配慮が求められるポイントは増えているが、当たり障りのない表現だけでは伝えたいことが誰にも刺さらない。正解はありません」

(2026/09/15)

(本記事の内容に関する個別のお問い合わせにはお答えすることはできません。)

ここから先は新日本法規WEB会員の方のみ
ご覧いただけます。

会員登録していただくと、会員限定記事・動画の閲覧のほか、様々なサービスをご利用いただけます。登録は簡単・無料です。是非ご利用ください。

ログイン新規会員登録

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索