一般2026年09月24日 119矯正施設が防災協定 避難所開設、熊本地震でも 10年で6倍「怖い」払拭 提供:共同通信社

刑務所や少年院といった矯正施設の4割超に当たる119施設が、災害発生時に避難者を受け入れるなどの防災協定を地元の自治体や自治会と結んでいることが23日、法務省への取材で分かった。19施設だった2015年から約6倍に増えた。今年7月の熊本地震では熊本刑務所(熊本市)が避難所を開設。近寄り難く「怖い」存在だった刑務所や少年院のイメージは払拭されつつある。
法務省によると、矯正施設は全国に265ある。自治体などと協定を結んだ施設は22年104、23年116、24年117と増加を続け、25年末時点で119だった。複数の自治体・自治会と協定を結んでいる施設もある。自家発電設備があり、浴槽や空調設備を完備している点が避難所に適していると判断された。避難者が受刑者や在院者と接触することはない。
最初の協定は08年、阪神大震災(1995年)で被災した兵庫県姫路市と、同市の姫路少年刑務所が結んだもの。刑務所側から「災害時に使ってもらいたい」と申し出があり、市が「地域防災貢献事業所」に登録した。
16年4月の熊本地震では、熊本市と熊本刑務所の間に協定は結ばれていなかったが、所長が避難所開設を決断。約40日にわたり開放し、最大約250人を受け入れた。協定は17年5月に結ばれた。矯正施設を抱える自治体でつくる「矯正施設所在自治体会議」で好事例として紹介され、他の自治体や自治会の協定締結を後押しした。阪神大震災でも協定未締結ながら神戸少年鑑別所(神戸市)が避難所となった。
熊本市などによると、今年7月の熊本地震では刑務所側が市に「利用可能」と連絡。同29日から8月3日まで、塀の外にある建物内の部屋を開放した。災害用テントを張ってプライバシーを確保したという。熊本市内は被害が少なく、利用者は延べ4人にとどまった。
設備充実も周知に壁 住民「高校へ避難」
熊本市内の住宅街に立つ熊本刑務所は、地震だけでなく台風の際にも避難所として利用されてきた。浴槽やシャワーが備わっている点で学校の体育館や公民館より優れていると言えるが、近隣住民でさえ避難できることを知らない人は多い。自治体が運営する指定避難所ではないため、市側が積極的に利用を呼びかけられない事情もある。
熊本刑務所の近くに住む70代男性は「刑務所が避難所になっているとは知らなかった」と話す。被災時は近所の高校に身を寄せているという。
熊本市防災対策課によると、刑務所は災害対策基本法が定める指定避難所ではないため、避難所を開設しても広報する必要はなく、市職員も運営に関わらない。
市の担当者は「受刑者が生活しているので、施設は頑丈だ。開放は非常にありがたい」と語るが、市と刑務所が2017年に結んだ防災協定は近隣住民の利用を想定。担当者は「広く利用を呼びかけにくい」と話す。法務省矯正局は公式X(旧ツイッター)に避難所を開設したと投稿した。
刑務所へ避難することへの抵抗感はなお根強いが、一部では「負のイメージ」が薄れつつある。
熊本刑務所の近くに住む男子大学生(20)は「有罪になった人が入っているから、多少は抵抗感がある」と打ち明ける。7月の地震で自宅は大きな被害を受けずに済んだ。仮に刑務所が開放されていると知っても「学校などに避難すると思う」と話した。
一方、刑務所内を見学したことがあるという女性(76)は「夜は明かりがついているし、宿直の職員もいる。かえって安心だ」。自治会長の男性も、見学を機にイメージが変わったと話した。
遠い存在、再考の契機に
熊本大大学院の矢原隆行教授(臨床社会学)の話 7月の熊本地震で熊本刑務所が避難所を開設した際、交流サイト(SNS)に驚きの声とともに多くの意見が書き込まれた。話題になるということは裏を返せば、刑務所が一般の市民から懸け離れた存在であるということでもある。受刑者への「懲らしめ」から更生重視への転換を図る拘禁刑が導入される中、熊本刑務所では2年ほど前から、受刑者が職員との対話を通じて自身を見つめ直す「リフレクティング」に取り組んでいる。受刑者が更生するには刑務所の組織風土も変わっていかなければならず、そのためには地域社会と刑務所の関係も変わらないといけない。避難所開設が地域と刑務所との関係を一緒に考える一つのきっかけとなることを期待したい。
(2026/09/24)
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