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一般2026年10月29日 カスハラとおもてなし エムズ人財開発研究所 宮原淳二 提供:共同通信社

 今年10月、企業にカスタマーハラスメント(カスハラ)対策を求める法律が施行された。
 かつて「お客さまは神様」という名のもと「おもてなし」が重視され、顧客の要望にはできるだけ応えるよう求められ、従業員は我慢を強いられてきた。筆者はバブル経済期だった20代に、ある先輩社員から、顧客にミスをとがめられ「土下座」を強要されたという話を聞いたことがある。
 当時はコンプライアンスという言葉もなく、顧客の要望が絶対という雰囲気がまん延していた。しかし時代は大きく変わり、顧客とのトラブルが原因で従業員が休職や退職に追い込まれるケースが散見される。精神障害の労災認定基準には、2023年の改正で「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」という評価項目(具体的出来事)が明記されている。「著しい迷惑行為」とは、暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等をいう。慢性的な人手不足が続く中、せっかく採用した従業員がカスハラによって精神的ダメージを受けることを防ぐための措置が義務付けられた意義は大きい。
 一方で気になる調査結果がある。Job総研のカスハラ調査結果2026によると、サービスなどに不満を感じた人のうち、相手(店側)に伝えなかった割合が44%もあった。主な理由としては「時間や手間がかかると思った」や「面倒な客と思われたくなかった」が上位に挙がった。本来は注意すべき点を伝えることをちゅうちょすると、サービスレベルが低下してしまう。この法律の施行を機に成熟した関係になることを期待したい。
 そもそもサービスを提供する側と受ける側に上下関係があるという意識自体を世の中全体で見直すべきだ。提供する側はあくまで仕事として行っており、顧客は金額以上のサービスを求め過ぎてはいないだろうか。サービスを提供する側、受ける側が互いに尊重し合いながら、感謝の気持ちを伝え合える関係が求められる。
 この関係は組織における上司と部下にも当てはまる。役職は仕事上の役割であって、役職者が人として部下よりも偉いわけではない。役職者はそのことを肝に銘じたい。
 ×   ×
 みやはら・じゅんじ 資生堂、東レ経営研究所を経てエムズ人財開発研究所代表取締役。

(2026/10/29)

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