コラム2005年04月18日 【石部家の人びと -父と娘の税理士問答-】 故斉藤了英氏の相続税務訴訟で見えるもの(2005年4月18日号・№111)

石部家の人びと -父と娘の税理士問答-
「国が争点を急遽付け加えることは信義則違反にならないの?」みどり

故斉藤了英氏の相続税務訴訟で見えるもの
石部税理士とみどりさんは、3月30日に判決があった故斉藤了英氏の相続税務訴訟について話しています。
 「お父さん、「T&Amaster」No.110に、「故斉藤了英氏の相続税務訴訟でゴッホの絵画評価額を判断」というニュースが掲載されているわね。この斉藤了英氏って有名な人なの?」みどりさんは1982年生まれです。
「そりゃあ有名だよ。1961年に大昭和製紙(現日本製紙)の社長になって、その後30年間もワンマンオーナーとして君臨していた人さ。1990年にゴッホの「医師ガシェの肖像」という名画を絵画の落札史上最高額の125億円で落札して、その年の申告所得は全国1位の31億円という大富豪でもあるのさ。」と言う石部税理士は、1955年生まれです。
「へえーそうなの…。で、そのゴッホの名画の評価額について、裁判でもめたのよね?」
「まあそうなんだけど、ちょっと違うんだよ。実は、当初の税務調査の結果、申告漏れを指摘されていたのは、主に、息子の借金返済を肩代わりするために斉藤了英氏が出した32億円についてだったのさ。その争点については今回の判決で、「贈与だった」とされて、贈与税の課税時効を過ぎているから納税の必要はないとされたよね。原告側は、ゴッホの名画の評価額については、更正処分の対象外だったにも関わらず、肩代わりした32億円の問題が国側不利になった訴訟の中段になって、急遽付け加えられたから、「租税法上若しくは訴訟法上の信義則違反だ」と主張していたんだよ。みどり、ちゃんとニュースを読んだのか?」
「あら、そうだったの!?ふむふむ…。でも、原告側のこの主張は認められなかったようね。どうしてかしら?」
「うん。税務訴訟では、「原処分の理由とされていた課税要件事実が存在しないことが判明した場合に、課税庁は、その処分の適法性を維持するために別の課税要件事実を新たに提出することができる」とする“総額主義”が通説となっているのさ。今回の判決では、更正処分の際に、絵画の価額を容認する「公的見解を表示したとは認められない」とされた上で、原告側は一応の反論、反証を尽くしたのだから「若干遅きに失した嫌いはあるが、それが訴訟法上信義則違反として許されないとまでは認められない」と判断されたんだよ。」
「なるほど。これじゃあ税務訴訟における納税者敗訴率が高いのも納得ね。」

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