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解説記事2007年01月08日 【会社法解説】 「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令」の概要(2007年1月8日号・№193)

解説
「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令」の概要

 法務省民事局付検事 細川 充
 法務省民事局付 小松岳志
 法務省民事局調査員 和久友子

Ⅰ 改正に至る経緯


 「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令」(平成18年法務省令第87号。以下「本改正省令」という)が平成18年12月22日に公布された(本改正省令に先立って公布された「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令」(平成18年法務省令第84号)について、後述参照)。
 本改正省令は、会社法(平成17年法律第86号)の施行(同年5月1日)後の会計基準等の整備その他の状況を踏まえて、会社法施行規則(平成18年法務省令12号。以下「施行規則」という)および会社計算規則(平成18年法務省令第13号。以下「計算規則」という)等の一部改正を行うことを内容とするものである。
 すなわち、会社法の施行後、企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という)において、株式交付費等の取扱いや企業結合についての会計処理の再検討がなされ、「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」(実務対応報告第19号)および「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(改正企業会計基準適用指針第10号。以下「改正適用指針」という)が公表され、また、施行規則および計算規則等について、施行以降、関係各方面から様々な見直しの要望が寄せられたことを受けて、施行規則、計算規則および商法施行規則(平成14年法務省令第22号)の一部について、所要の改正を行うこととしたものである。
 なお、平成18年10月4日から11月2日までの間、パブリック・コメント手続を行って、本改正省令の改正案(以下「改正案」という)についての意見を募集し、寄せられた意見等を検討のうえ、本改正省令では、改正案から若干の形式的変更を行っている(変更点については、後述⑥参照※)。

※パブリック・コメントへの対応結果の詳細については、平成18年12月19日公表に係る「『会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案に関する意見募集』の結果について」(http://www.moj.go.jp/PUBLIC/index2.html)を参照されたい。なお、改正案の概要については、細川充・小松岳志・和久友子「『会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令案』の概要」本誌182号12頁参照。

Ⅱ 会計基準の見直しに伴う計算規則の改正事項

1 株式交付費等の資本控除の見直し(改正後の計算規則附則11条関係)

 新株発行の場合等における資本金等の増加額に関する「株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額」(会社法445条1項)の算定にあたって、株式交付費等を控除することができる旨の規定(37条1項2号、40条1項3号、41条1項2号、53条1項1号ハ、74条1項2号、75条1項3号)を、当分の間、適用しないこととしている。
 これらの規定は、国際的な会計基準とのコンバージェンスを見据えて設けられた規定であるが、改正後の計算規則附則11条は、ASBJにおいて株式交付費等の取扱いについての検討がされた結果、最終的には、「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」において、「国際的な会計基準の動向を踏まえて、今後見直しを行う可能性がある」との留保付きで、従前どおり費用ないし繰延資産として処理するとされたことに対応するものである。

2 組織再編行為の計算規定の見直し
 本改正省令における組織再編行為の計算規定の見直しは、おおむね、改正適用指針に対応したものである。
(1)共通支配下の取引等のうち子会社と孫会社の合併等の会計処理(改正後の計算規則14条、18条、58条2項4号、63条2項4号関係)
 従前は、親・子会社間の吸収合併におけるのれんの計上・株主資本の算定規定(改正前の計算規則14条・60条)は、グループの最上位の親会社が存続会社となり、その子会社が消滅会社となるものに限って適用があり、グループの最上位以外の親会社が存続会社となるもの(いわゆる子・孫会社間の吸収合併)については、共通支配下の取引等の原則的な規定(改正前の計算規則13条・59条)の適用があるものとされていた。
 本改正省令は、改正適用指針(206項)に対応して、子・孫会社間の吸収合併についても、親・子会社間の吸収合併におけるのれんの計上・株主資本の算定規定の適用対象となる(ただし、少数株主持分の取扱いは異なる)ものとして整理している(改正後の計算規則14条・58条2項4号)。
 これに伴い、親・子会社間の分割型吸収分割(計算規則2条3項41号)におけるのれんの計上・株主資本の算定規定(改正前の計算規則18条・65条)についても、同様の整理を行っている(改正後の計算規則18条・63条2項4号)。
 表1は、以上で述べた親子会社間の合併・会社分割における少数株主持分、中間子会社等持分および親会社の子会社に対する持分のそれぞれに対応するのれんと損益の計上について、改正後の条文の適用関係をまとめたものである。

(2)共通支配下関係にある会社間の吸収合併等における抱き合わせ株式の会計処理(改正後の計算規則13条1項、22条1項、58条2項2号、77条関係)
 従前は、共通支配下関係にある会社間の吸収合併において、合併対価の全部または一部が存続会社株式の場合には、消滅する抱き合わせ株式(存続会社が有する消滅会社の株式)の帳簿価額に相当する額だけ、その他資本剰余金を減額するものとされていた(改正前の計算規則59条1項3号ニ)。
 本改正省令では、改正適用指針(247項・254項)に対応して、消滅会社の株主資本の額から抱き合わせ株式の帳簿価額を控除したうえで、のれんの額・資本金等の変動額を算定することとしている(改正後の計算規則13条1項・58条2項2号)。
 その結果、抱き合わせ株式の帳簿価額に相当する額は、のれんの算定との関係では、資産としてののれんの額を増加させ(または負債としてののれんを減少させ)、資本金等の変動額の算定との関係では、これを減少させるものとして取り扱われることとなる。
 これに伴い、共通支配下の取引等の会計基準が適用される新設合併についても、同様の整理を行っている(改正後の計算規則22条1項・77条)。
(3)共通支配下関係にある会社間の吸収合併等のうち無対価のものの取扱い(改正後の計算規則18条1項、59条、64条、78条関係)
 従前は、共通支配下の吸収合併をする際、消滅会社における資産・負債の帳簿価額のほか、資本金・資本準備金・その他資本剰余金・利益準備金・その他利益剰余金をそのまま引き継ぐ会計処理(改正前の計算規則61条)が認められるのは、合併対価が存続会社の株式のみの場合に限定されていた(改正前の計算規則59条1項ただし書)。
 本改正省令では、改正適用指針(203-2項)に対応して、共通支配下の無対価の吸収合併においても、このような会計処理(ただし、消滅会社の資本金・資本準備金はその他資本剰余金となり、利益準備金はその他利益剰余金となる)をすることも可能としている(改正後の計算規則59条)。
 これに伴い、新設合併についても同様に整理を行うとともに(改正後の計算規則78条)、無対価の吸収分割においても分割型吸収分割における資本金等を適当に定める処理と同様の処理(ただし、分割会社において減少させた資本金・資本準備金はその他資本剰余金となり、利益準備金はその他利益剰余金となる)を許容することとしている(改正後の計算規則64条)。
 改正適用指針においては、このような会計処理が認められるのは100%子会社間の無対価の吸収合併・吸収分割をする場合に限られるとするとともに、この場合に該当すれば当該会計処理が義務付けられているが、改正後の計算規則の規定としては、合併等対価として株式を発行した場合との理論的整合性を確保するために、このような制約は設けていない。
 なお、無対価の吸収分割について、分割型吸収分割と同様の処理を許容したことに伴い、共通支配下の取引等のうち親会社と子会社の分割型吸収分割の規定(計算規則18条1項)の適用範囲についても無対価の場合に同規定の適用を可能とする調整を行っている。
(4)吸収合併等において自己株式を処分した場合の取扱い(改正前の計算規則59条2項、60条2項、61条2項、64条2項、65条2項、66条3項、69条2項関係)
 従前は、吸収合併・吸収分割・株式交換の際に、存続会社等が自己株式を処分した場合においては、自己株式の帳簿価額を増加する資本金等の額から控除する(減額した結果、マイナスになる場合には、当該自己株式の帳簿価額に相当する額はその他資本剰余金を減少させる)取扱い(改正前の計算規則59条1項1号ロ(2)・3号等)のほか、払込資本に相当する金額を新株対応部分・自己株式対応部分に区分して計算することに対応する規定(同条2項等)が設けられていたが、本改正省令では、改正適用指針(80項、112項、135項)に対応して、これらの規定を削除することとしている。
(5)資本金等の増加限度額についての規律の調整(改正後の計算規則58条2項3号、63条2項3号、76条1項関係)
 増加する資本金等の額を複数の部分ごとに定めたうえで、これを合算することとする規定(改正前の計算規則60条1項1号ロ・ハ等)について、本改正省令では、これらの部分を合算したうえで、増加する資本金等の額を定めることとしている(改正後の計算規則58条2項3号等)。
(6)吸収合併等をする場合における株主資本の算定規定の条文構成の整理(改正後の計算規則58条、63条関係)
 従前は、吸収合併に際しての株主資本の算定規定については、①パーチェス法が適用される場合(改正前の計算規則58条)、②共通支配下関係にある場合(改正前の計算規則59条)、③親子会社間の合併等の場合(改正前の計算規則60条)、④持分プーリング法が適用される場合(改正前の計算規則61条)、⑤その他の場合(改正前の計算規則62条)と、適用される会計基準の類型に応じてそれぞれ条を分けて規定が設けられていた。
 これは、各類型における会計処理に細部において差異が存したため、1つの条において統一的な規律を設けることが困難であったためであるが、今回の改正の結果、ほぼ共通の規律により資本金等の算定がされることになったうえ、今回取扱いが定められた子・孫会社間の吸収合併について新たに規定を設ける必要が生じたことから、本改正省令では、前記①~③・⑤の類型の規律を1つの条にまとめて規定することとしている(改正後の計算規則58条)。
 これに伴い、吸収分割に際しての株主資本の算定規定についても、同様の整理をしている(改正後の計算規則63条)。
 これらの条文構成の変更に伴う新旧条文の対応関係については、表2のとおりである。
 また、会計基準における会計処理の類型に応じた改正後ののれんおよび株主資本に関する条文の適用関係については、表3のとおりである。


Ⅲ その他の計算規則の改正事項

1 剰余金の額および分配可能額に関する所要の改正(改正後の計算規則178条1項5号、同条2項11号、186条8号ロ関係)

 最終事業年度後に計算規則44条に基づき増加したその他資本剰余金を剰余金の額にいったん加算することとする(改正後の計算規則178条1項5号、同条2項11号)など、剰余金の額および分配可能額に関する規定について所要の調整を加えている。

2 その他形式的調整
 その他、計算規則につき主として用語の修正等を行う一部改正を行っている。

Ⅳ 施行規則等の改正事項

 施行規則においては、次のような改正を行っている。
① 「特定関係事業者」の定義の調整(改正後の施行規則2条3項18号関係)
 親会社がない場合に対応した規定を設けることとしたものである。
② 書面等による議決権行使期限について「時」を「日」とする改正(改正後の施行規則9条1号ロ・ハ、63条3号ロ・ハ、153条2号・5号イ、172条2号・5号イ関係)
 書面または電磁的方法による議決権の行使期限を定める場合に確保すべき期間について、「日」単位で計算するとの規律を明文化したものである。
③ 会計監査人選任議案に関する株主総会参考書類に関する改正(改正後の施行規則77条7号関係)
 親会社がない場合に対応した規定を設けるとともに、開示不要な場合についての規律の整理を行ったものである。
④ 事業報告に記載すべき「株式会社の現況に関する事項」に関する改正(改正後の施行規則120条5号へ関係)
 他の会社の株式等の「取得」に加えて、その「処分」についても公開会社の事業報告の記載事項とする改正を行ったものである。
⑤ その他の改正
 その他、施行規則および商法施行規則につき、主として用語の修正等を行う一部改正を行っている。
⑥ パブリック・コメントに対応した変更点
 パブリック・コメントとして寄せられた意見のうち、会計監査人候補者に関する開示事項(施行規則77条7号関係)について、本改正省令では改正案から次の2点の形式的変更を行うこととした。
 (イ)改正案は、当該候補者が施行規則2条3項18号の特定関係事業者のうち同号イに掲げる者から受ける財産上の利益のみを開示対象とし、同号ロに掲げる者から受けるものについては開示対象外としていたが、同号イおよびロのいずれにも該当する者から受ける財産上の利益の取扱いが条文上明確ではないとの指摘に対応して、同条3項第18号イおよびロの両方に該当する者からの財産上の利益が開示対象に含まれることが明確になるよう変更を行った。
 (ロ)改正案において開示の対象から除外される「会計監査人(これに相当するものを含む。)としての報酬等」のうち、「これに相当するもの」の範囲が明確ではないとの指摘に対応して、会社法以外の法令の規定によって設置されるものであって、会社法上の会計監査人に相当するものを指すことが明確になるよう変更を行った。

Ⅴ 施行期日・経過措置

 本改正省令の施行期日は、平成19年1月20日としている(本改正省令附則1条)。
 また、本改正省令附則3条から6条までに本改正省令の施行に伴う経過措置を定めている。
 具体的には、①施行日前に招集の決定(会社法298条等)があった株主総会等(本改正省令附則3条)、②施行日前にその末日が到来した事業年度のうち最終のものに係る事業報告(同4条)、③施行日前に募集事項として株式交付費のうち資本金等増加限度額から控除すべき額を定めた募集株式の発行等(同5条)、④施行日前に吸収合併契約が締結等された吸収合併等(同6条)については、なお従前の例により、改正前の規律が適用される。
 なお、上記③については、改正前においては一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行で認められる限り株式交付費等の資本控除が認められていたものの、現時点では、これを認めるわが国の会計基準等は不見当であることに留意されたい。

Ⅵ 信託法の施行に伴う整備を内容とする法務省令

 本改正省令の公布に先立って、平成18年12月15日に「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令」(平成18年法務省令第84号)が公布されている。
 この省令は、第165回国会において成立した信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成18年法律第109号)(以下「信託法整備法」という)による会社法の改正部分のうち信託法整備法の公布日に即施行された事項に関連して、施行規則および計算規則の一部につき形式的な整備を行うものである。
(ほそかわ・みつる/こまつ・たけし/わく・ともこ)

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