税務ニュース2004年05月17日 不利益遡及立法に期限後の対応は可能か?(2004年5月17日号・№066) 当局も対応を慎重に検討中
不利益遡及立法に期限後の対応は可能か?
当局も対応を慎重に検討中
平成16年度税制改正により、一般的な「土地、建物等の長期・短期譲渡所得の金額」の計算上生じた損益と、「土地、建物等の譲渡による所得以外の所得の金額」の計算上生じた損益との損益通算は、認められなくなった(「T&Amaster」No.062、5頁参照)。平成16年1月1日以後に行う土地、建物等の譲渡について適用される。平成16年税制改正の内容は、平成15年分の所得税の申告にも間接的な影響が指摘されており、確定申告期限後の対応が実務家の間で話題になっている。
“間接的な影響”とは?
譲渡所得の計上年分は原則的には引渡基準だが、契約の効力発生日基準を選択することも可能だ。このことが、上記“間接的な影響”と関係してくる。
平成15年分の所得税の申告に影響を及ぼすケースとは、①当該土地建物等の譲渡所得の計算で譲渡損が生じており、改正案の検討が不十分であったため、平成15年中の譲渡とはしないことで税務上の不利益が生じた場合、②当該土地建物等の譲渡所得の計算で譲渡益が生じており、改正案の検討が不十分であったため、平成15年中の譲渡とはしないことで税務上の不利益が生じた場合の二つのケースである。本誌の取材に対し、当局は、上記①のケースの更正の請求について、「即答は避けたいが、平成15年度中に契約事実があれば…」と答え、上記②のケースの期限後申告、修正申告に対しては、「特段の事情がなければ認められる」との見解を示している。しかし、“確定申告の期限を守っていただくのが筋”“一旦申告した以上、修正の余地なし”という考え方もあるとしたうえで、「慎重に整理していきたい」と述べた。
計上年度の選択誤りで税賠の可能性も
上記の件に関連して、譲渡所得に関する税制改正により適用税率に差が生じているにもかかわらず、譲渡所得の計上年分の選択を誤り(譲渡所得計上年分を引渡基準として申告)、所得税及び住民税の過大納付を発生させた税理士が損害賠償請求を受けた事例がある(「税理士界」1088号掲載)。この事例における改正内容は、平成3年度の税制改正中に既に盛り込まれていたが、適用開始時期が平成4年1月1日からとなっていた。このことも選択を誤らせた要因の一つだったと考えられる。改廃の激しい租税特別措置法は、内容だけでなく、適用時期にも要注意だ。
二つの選択基準日が年をまたぐ事案における譲渡所得の計上年分の選択に際しては、適用税率の差異や損益通算の可否等について慎重に比較検討する必要がある。これに加え、書面にて顧客の同意を得るなどしておけば、税賠リスクも回避できる。
当局も対応を慎重に検討中
平成16年度税制改正により、一般的な「土地、建物等の長期・短期譲渡所得の金額」の計算上生じた損益と、「土地、建物等の譲渡による所得以外の所得の金額」の計算上生じた損益との損益通算は、認められなくなった(「T&Amaster」No.062、5頁参照)。平成16年1月1日以後に行う土地、建物等の譲渡について適用される。平成16年税制改正の内容は、平成15年分の所得税の申告にも間接的な影響が指摘されており、確定申告期限後の対応が実務家の間で話題になっている。
“間接的な影響”とは?
譲渡所得の計上年分は原則的には引渡基準だが、契約の効力発生日基準を選択することも可能だ。このことが、上記“間接的な影響”と関係してくる。
平成15年分の所得税の申告に影響を及ぼすケースとは、①当該土地建物等の譲渡所得の計算で譲渡損が生じており、改正案の検討が不十分であったため、平成15年中の譲渡とはしないことで税務上の不利益が生じた場合、②当該土地建物等の譲渡所得の計算で譲渡益が生じており、改正案の検討が不十分であったため、平成15年中の譲渡とはしないことで税務上の不利益が生じた場合の二つのケースである。本誌の取材に対し、当局は、上記①のケースの更正の請求について、「即答は避けたいが、平成15年度中に契約事実があれば…」と答え、上記②のケースの期限後申告、修正申告に対しては、「特段の事情がなければ認められる」との見解を示している。しかし、“確定申告の期限を守っていただくのが筋”“一旦申告した以上、修正の余地なし”という考え方もあるとしたうえで、「慎重に整理していきたい」と述べた。
計上年度の選択誤りで税賠の可能性も
上記の件に関連して、譲渡所得に関する税制改正により適用税率に差が生じているにもかかわらず、譲渡所得の計上年分の選択を誤り(譲渡所得計上年分を引渡基準として申告)、所得税及び住民税の過大納付を発生させた税理士が損害賠償請求を受けた事例がある(「税理士界」1088号掲載)。この事例における改正内容は、平成3年度の税制改正中に既に盛り込まれていたが、適用開始時期が平成4年1月1日からとなっていた。このことも選択を誤らせた要因の一つだったと考えられる。改廃の激しい租税特別措置法は、内容だけでなく、適用時期にも要注意だ。
二つの選択基準日が年をまたぐ事案における譲渡所得の計上年分の選択に際しては、適用税率の差異や損益通算の可否等について慎重に比較検討する必要がある。これに加え、書面にて顧客の同意を得るなどしておけば、税賠リスクも回避できる。
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