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解説記事2016年12月05日 【未公開裁決事例紹介】 対価補償金は収用土地上の資産の対価相当部分に限定(2016年12月5日号・№669)

未公開裁決事例紹介
対価補償金は収用土地上の資産の対価相当部分に限定
建物対価部分は再建築工法算定の建物移転料に含む

○収用される土地の上にある建物の移転雑費補償金の一部として受領した設計工事管理費用等が租税特別措置法64条(収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例)1項の適用を受ける対価補償金に当たるか否かで争われた裁決で、国税不服審判所は、本件特例の適用を受ける対価補償金とは、収用等された土地の上にある資産の対価に相当する部分に限られるとの判断を示した(平成28年2月23日、棄却)。

基礎事実等
(1)事案の概要
 本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、その所有する土地が土地収用法に基づいて収用されたことにより取得した当該土地及び当該土地上の建物等に係る補償金等について、租税特別措置法第64条《収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例》第1項の規定による課税の特例(以下「本件特例」という。)を適用して申告したところ、原処分庁が、その一部(設計工事監理費用及び申請手数料)について、本件特例の対象とならないとして、法人税の更正処分を行ったのに対し、請求人が、同処分には本件特例の解釈適用を誤った違法があるとして、同処分の全部の取消しを求めた事案である。
(2)審査請求に至る経緯  請求人の平成25年4月1日から平成26年3月31日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の法人税の審査請求(平成27年8月6日請求。国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第4項第1号の規定による。)に至る経緯は、別表1(略)記載のとおりである。
(3)関係法令等の要旨(略)
(4)基礎事実
 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によっても、その事実が認められる。
イ 請求人は、ホテルの経営、ゴルフ場の企画、開発及び運営等を目的とする法人である。
ロ 請求人は、××に所在する別表2(略)記載の順号1から5までの土地(以下、これらの土地を併せて「本件各土地」という。)及び本件各土地の上に存する建物(以下「本件建物」という。)、構築物並びに立竹木を所有し、これらを請求人の関連会社へ賃貸していた。
ハ ××(以下「本件起業者」という。)から委託を受けた××(以下「本件公社」という。)は、平成25年4月26日、請求人に対し、土地収用法第3条《土地を収用し、又は使用することができる事業》第1号所定の事業である「××」の用に供するため、本件各土地の買取り等の申出をしたところ、請求人と本件公社との間で、同年6月4日、本件各土地の買取り等に係る契約が締結された。この契約に係る同日付「土地等の売買に関する契約書」には、本件各土地に物件が存するときは、請求人は当該物件を移転する旨及び本件公社は1,357,843,801円(土地代金50,989,016円と物件の移転料及びその他通常受ける損失の補償金1,306,854,785円の合計額。以下「本件補償金等」という。)を請求人へ支払う旨の記載があり、また、物件の移転料及びその他通常受ける損失補償の内容については、建物移転料、工作物移転料、立竹木補償金、移転雑費補償金、家賃減収補償金及び残地補償金と表示されている。
ニ 請求人が本件公社から交付を受けた「公共事業用資産の買取り等の証明書」(以下「本件証明書」という。)には、要旨別表2(略)のとおり記載がある。
  なお、本件補償金等のうち移転雑費補償金の内訳及びその金額は、別表3(略)「確定申告」欄の移転雑費補償金の内訳に記載のとおりである。
ホ 請求人は、本件建物を移築することなく取り壊した上で、本件各土地を本件起業者へ引き渡した。
へ 請求人は、平成26年3月31日に、本件補償金等をもって二つのゴルフ場の土地、建物、構築物等(以下「本件代替資産」という。)をそれぞれ1,100,000,000円及び220,000,000円で取得し、同日、本件代替資産の帳簿価額を雑損失として、それぞれ972,722,775円及び192,919,596円減額する、いわゆる圧縮記帳の会計処理を行った。
ト 請求人は、本件事業年度の法人税の所得金額の計算において、本件補償金等で取得した本件代替資産について本件特例の適用があるとして、所要の明細書(法人税確定申告書別表十三(四)《収用換地等に伴い取得した資産の圧縮額等の損金算入に関する明細書》)において圧縮限度額の計算上、本件補償金等のうち、家賃減収補償金として支払われた352,250円を除く1,357,491,551円が対価補償金に当たるとして別表3(略)「確定申告」欄記載の圧縮限度額を計算し、損金算入されない金額(以下「圧縮限度超過額」という。)はないとして、本件証明書を添付の上、法人税の確定申告を行った。
チ 請求人は、別表3(略)記載の移転雑費補償金のうち、設計工事監理費用51,012,900円及び申請手数料541,000円(以下、併せて「本件設計工事監理費用等」という。)以外は圧縮限度額の計算上、対価補償金に当たらないとして、同表「修正申告」欄記載のとおり圧縮限度額及び圧縮限度超過額を再計算し、法人税の修正申告をした。
リ 原処分庁は、本件設計工事監理費用等についても圧縮限度額の計算上、対価補償金に当たらないとして、別表3(略)「更正処分」欄記載のとおり圧縮限度額及び圧縮限度超過額を再計算し、また、圧縮限度超過額の増加に伴い所得金額から減算すべき減価償却額を算出して、本件事業年度の法人税の更正処分(以下「本件更正処分」という。)を行った。

争点および主張  本件設計工事監理費用等は、対価補償金に該当するか否か。当事者の主張はのとおり。

【表】当事者の主張
原 処 分 庁 請 求 人
イ 本件設計工事監理費用等は、移転雑費補償金として支払われたものであると認められるところ、これは、損失補償基準第40条によれば、代替地等を取得した場合における、移転先又は代替地等の選定に要する費用、法令上の手続に要する費用、転居通知費、移転旅費、その他雑費等を補償するものであって、収用された本件各土地の上にある資産について補償したものではない。したがって、本件設計工事監理費用等は、対価補償金には該当しない。

ロ なお、措置法通達64(2)-8は、措置法第64条第2項と同様に、収用されることとなる土地の上にある建物又は構築物について取り壊した場合に、収用による譲渡があったものとみなして、交付された移転補償金を対価補償金として取り扱うこととしたものであるから、当該収用により代替資産を取得する場合に要する費用の補償である本件設計工事監理費用等は対価補償金に該当しない。
イ 措置法通達64(2)-8では、移転補償金であっても、「その交付を受ける者が実際に当該建物又は構築物を取り壊したとき」には対価補償金に当たると定めているところ、本件設計工事監理費用等は、建物の解体移築に伴い解体・運搬・組立作業等と並行して不可避に発生する費用であり、設計・監理等の業務なしには建物移築そのものが遂行できないものであるため、同通達に定める「移築するために要する費用」に当たる。したがって、本件設計工事監理費用等は、対価補償金に該当する。
ロ なお、本件設計工事監理費用等が、本件証明書に移転雑費補償金として別枠で記載されているのは、損失補償基準において、本件設計工事監理費用等が法令上の手続に要する費用に該当するものとされているためにすぎず、移転補償金及び移転雑費補償金がいずれも本件建物の解体移築を前提に解体移築費用及びその附帯的諸経費を補填する補償金として計算されている実態をみれば、措置法通達64(2)-8に定める「移築するために要する費用」に当たる。

審判所の判断
(1)法令解釈
 土地が土地収用法等の規定に基づいて収用され又は収用権を背景として買い取られることとなったことに伴い、その土地の上にある法人所有の資産につき、取壊し又は除去をしなければならなくなった場合において、その所有者である法人が交付を受けた当該資産の損失に対する補償金については、措置法第64条第2項第2号の規定により、当該資産について、同条第1項所定の収用等による譲渡があったものとみなし、その金額を同項に規定する補償金等の額とみなした上で本件特例を適用し、当該法人が当該補償金等の額の全部又は一部に相当する金額をもって当該収用等のあった日を含む事業年度において代替資産の取得をし、当該代替資産につき、圧縮限度額の範囲内でその帳簿価額を損金経理により減額したときには、その減額した金額に相当する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されることとなる。
 ただし、同条第3項は、同条第1項第1号等に規定する補償金の額は、名義がいずれであるかを問わず、資産の収用等の対価たるもの(対価補償金)をいうものとし、収用等に際して交付を受ける移転料その他当該資産の収用等の対価たる金額以外の金額を含まないものとすると定めており、同項の補償金等の額とみなされる同条第2項第2号所定の「資産の損失に対する補償金」の額も、これと同様に、土地の収用等に伴い取壊し又は除去により失った資産の対価に相当する金額をいうものと解するのが相当であるから、土地の収用等に伴いその土地の上にある資産の移転等に要する費用の補償を受けた者が、当該資産を取り壊して代替資産を取得した場合、当該補償を受けた金額のうち同号所定の補償金に当たるのは、当該資産の対価に相当する部分、すなわち対価補償金に限られるものというべきである。
(2)検討 イ 当審判所の調査の結果によれば、本件起業者は、本件補償金等のうち、①建物移転料名目の1,175,988,882円について、損失補償基準運用方針所定の再築工法によった場合の建物の移転料の算定方法で算定しており、本件建物の現在価値から発生材価額を差し引いた金額に相当する部分が含まれていること、②本件設計工事監理費用等を含む移転雑費補償金名目の55,258,010円について、損失補償基準運用方針第24に基づき算定しており、本件設計工事監理費用等は、同運用方針第24第3項所定の法令上の手続に要する費用として算定したことが認められる。
  これらの事実に照らせば、本件各土地の上にある本件建物の対価に相当する部分は、建物移転料名目の1,175,988,882円に包含されており、請求人が主張する本件設計工事監理費用等(設計工事監理費用51,012,900円及び申請手数料541,000円)がこれに当たらないことは明らかというべきである。
  したがって、本件設計工事監理費用等は、本件特例の適用を受ける対価補償金に該当しない。
ロ 請求人は、移転補償金及び移転雑費補償金がいずれも本件建物の解体移築を前提に解体移築費用及びその附帯的諸経費を補填する補償金として計算されている実態をみれば、措置法通達64(2)-8に定める「移築するために要する費用」に当たることから、対価補償金に該当し、本件特例が適用される旨主張する。
  しかしながら、本件特例の適用を受ける対価補償金とは、収用等された土地の上にある資産の対価に相当する部分に限られるのは上記(1)で述べたとおりであって、措置法通達64(2)-8の定める対価補償金に当たるものとして取り扱われる「移築するために要する費用として交付を受ける補償金」も、飽くまで収用等された土地の上にある資産の対価に相当する部分に限られる。したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(3)本件更正処分の適法性について  以上審理したところによれば、本件更正処分には、争点についてこれを取り消すべき理由はなく、請求人の本件事業年度の所得金額等を計算すると、いずれも原処分の額と同額となるから、本件更正処分は適法である。
(4)その他  原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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