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解説記事2017年03月20日 【ニュース特集】 相続税の報酬請求をめぐる最近の訴訟トラブル(2017年3月20日号・№683)

ニュース特集
申告業務や更正の請求、相当な報酬は幾らか
相続税の報酬請求をめぐる最近の訴訟トラブル

 平成27年1月からの相続税の基礎控除引下げ等により、相続税の課税対象者及び申告件数が大幅に増加している(改正前と比べ約倍増)。相続税申告実務の重要性が高まるなか、依頼者である相続人と税理士との間で相続税の申告業務に係る報酬をめぐるトラブルが訴訟にまで発展するケースも少なからず見受けられるところだ。そこで本特集では、相続人と税理士との間で相続税の報酬金額が争われた最近の裁判事例を2つ紹介する。
 最初の事例は、報酬額の明確な合意がない場合に税理士が請求できる相当な報酬金額は幾らであるかなどが争われたもの。裁判所は、東京税理士会の旧税理士報酬規定をもとに相当な報酬を約170万円と算定した。2番目の事例は、相続税の申告業務を受任した税理士が遺産分割協議の成立後に行った更正の請求に係る相当な報酬は幾らかが争われたもの。裁判所は、更正の請求に至る各事情を踏まえ相当な報酬は105万円であると判断している。

相続人との間で明確な合意なし、相続税申告業務に係る相当な報酬は幾らか
 最初に紹介する事例は、税理士(原告)が相続人ら(被告2名)から相続税の申告業務を受任し、その業務を行ったと主張して相続税の申告業務に係る報酬216万円(消費税含む)を請求した訴訟である。
 事実関係をみると、相続人らは被相続人からの生前贈与について相続時精算課税制度を利用しており、税理士に対しそれを前提とした税務申告の手続きを相談していた。その際に相続人らは、税理士に対し5万円を支払っていた。税理士は、相続人らから税務代理権限証書による授権を得て、相続税の申告書を完成させたうえで同申告書を税務署に提出した。税理士は、相続人らに対し相続税の申告業務に係る報酬200万円(消費税抜き)を請求したものの、相続人らは同額の支払いを拒否していた。
 本件で争点となったのは、相続人らは税理士との間で申告業務の委任契約を締結し、これを前提にその報酬として200万円を支払う旨を合意していたか否か、仮に委任契約を締結していたとしても報酬額の明確な合意がない場合に税理士が請求できる相当な報酬額は幾らかという点である。この点に関し税理士は、相続人らとの間で委任契約を締結するとともに、相続人らがその報酬として200万円を支払う旨の合意があったと主張。仮に200万円の支払いの合意が成立していないとしても、相続人らは相当額の報酬を支払うことの合意を黙示的にしていたと指摘し、本件における相当な報酬額は200万円であると主張した。これに対し相続人らは、委任契約はもとより200万円の報酬支払いを合意した事実はない旨などを主張していた。
旧税理士報酬規定により相当な報酬を算定  裁判所は、相続人らは税理士に対し相続税の申告に関する相談をし、申告が必要であるとの説明を受けて同申告業務を税理士に委託したこと、税理士が申告書を作成するとともに相続人らの授権を得てその提出をし、申告業務を行っていることなどに照らすと、税理士と相続人らとの間で相続税の申告業務に係る委任契約が成立していたと認定。一方で裁判所は、本件において委任契約の報酬額を200万円とする旨の合意があったことは認めることができないと判断した。
 そして委任契約の報酬額について裁判所は、当事者間で明確に定めた形跡がない本件においては、当事者間の合意の内容は委任契約の事務処理に関して合理的に考えられる相当額の報酬を支払うというものであったと解するほかないとした。
 そのうえで裁判所は、合理的な報酬額の算定に当たり、従前適用されていた東京税理士会の「税理士報酬規定」(平成14年3月末で廃止)によれば本件における委任契約の報酬額は合計156万7,500円となり、同金額は税理士報酬規定廃止後の各税理士の相続税申告業務の報酬基準(税理士側が本件訴訟のなかで証拠として提出した4つの会計事務所の報酬基準)を単純に適用した場合と比較しても高額とはいえないことなどを指摘。
 税理士報酬規定により算定した156万7,500円は合理的で相当な報酬額と認めることができ、これに消費税相当額を加えた169万2,900円が相当な報酬額となると解すべきであるとした(平成28年10月19日判決・確定済み)。



Column 旧報酬規定による報酬額の増額を求めた税理士の主張を斥ける
 最初に紹介した裁判事例(東京地裁平成28年10月19日判決)で原告である税理士は、相続物件が73画地に及ぶなど事案の複雑性等(財産の評価事務等が著しく困難)を考慮すれば東京税理士会の旧税理士報酬規定による報酬額の増額が認められるべきであると主張していた。これに対し裁判所は、加算を相当とする「著しく複雑」(旧税理士報酬規定22条2項)とは「事案の内容が極めて繁雑又は広範にわたり、かつ、資料の収集、法令の適用その他の事務処理のための特別の調査、研究若しくは役務の提供を要するもの」であり、本件の委任契約に係る申告及び申告書作成業務がこのような「著しく複雑」であるかどうかが明らかではないと指摘。また他に増額を相当と認めるに足りる的確な証拠がないことから、この点に関する税理士の主張は採用できないとした。

遺産分割協議成立後の更正の請求の手続き、相当な報酬金は幾らか
 次に紹介する事例は、税理士(原告)が相続人(被告)に対し更正の請求に関する報酬の残金約461万円を請求する一方で、相続人が税理士に対し既に支払った報酬100万円のうち84万円は支払う必要がなかったと主張して同金額の返還を求めた訴訟である。
 事実関係をみると、税理士は相続人との間で相続税の申告代理及び税務書類の作成を報酬金210万円(消費税含む)で行うことを内容とする委任契約を締結した。
 被相続人の遺産分割協議が進展しなかったため、税理士は相続人に対し申告期限までに遺産が未分割として申告をすることを提案。この提案に相続人が了承したことから、税理士は遺産分割が未了の状態で相続税の申告を行った(以下「仮申告」という)。その後、税理士は、相続人に申告書の写しを交付し、報酬金210万円の交付を受けた。
 仮申告から約2年4か月経過後に遺産分割協議が成立したことを受け税理士は、更正の請求を行った。この更正の請求はすべて認められ、約2,700万円が相続人に還付された。
 税理士は相続人に対し、更正の請求の報酬として約540万円(還付金の20%相当)及び消費税相当額27万円を請求した。これに対し相続人は、更正の請求の報酬として105万円を支払った。
 本件で争点となったのは、更正の請求に係る報酬について相続人の合意があったか否か、更正の請求に係る相当な報酬額は幾らかという点である。
 この点に関し税理士は、相続人から遺産分割協議による更正の請求を委任され、還付金の20%相当額を報酬金とする合意があったと主張。また仮にこの合意が認められない場合であっても、相続人に弁護士を紹介して遺産分割協議を進めさせ税額の試算や助言を行い3年以内に協議がまとまるように尽力したこと、相続人らに対する税務調査に立ち会ったこと、小規模宅地特例をどこに使うのかの検討や減額計算など専門的知識や実務経験に基づく検討や査定を行ったことなどを踏まえれば、その正当な報酬は約540万円(還付金の20%相当)であると主張した。これに対し相続人は、仮申告から更正の請求までの一連の業務について報酬金210万円で委託しており、更正の請求について別途報酬を支払う合意はしていなかったと主張。また、更正の請求の正当な報酬は21万円であると主張し、既に支払った105万円のうち84万円は本来支払うべきものではなかったとして不当利得返還請求権に基づき返還を求めた。
相当の報酬を支払うとの黙示の合意あり  裁判所はまず、税理士と相続人との間で締結された委任契約の内容は相続税の申告の税務代理及び税務書類作成であり、その申告後に行われる可能性のある更正の請求については委任されていなかったと認定。また、税理士が相続人に対し更正の請求の報酬が還付額の20%であることを説明し合意を得ていた事実を認めるに足りる証拠がないことなどから、更正の請求について還付額の20%(消費税別)とする旨の合意が成立していたとは認められないと判断した。
 次に裁判所は、相続人は税理士に対し更正の請求を委任し、そのための税務代理権限証書とあらかじめ作成されていた更正の請求書に押印した事実を認定。相続人と税理士との間には更正の請求の税務代理及び更正の請求書の作成について相当額の報酬を支払うとの黙示の合意があったというべきであるとした。
 そして更正の請求に係る相当な報酬額について裁判所は、相続人が税理士に対し更正の請求の報酬として支払った105万円を超えるか否かを検討。本件における更正の請求に係る各事情(表2参照)を総合考慮すると、税理士が行った更正の請求の税務代理及び更正の請求書の作成についての相当な報酬が105万円を超えるとは認められないと判断した。

【表2】相当な報酬額を検討するにあたり裁判所が考慮した本件の各事情
・相続人(被告とは別の相続人である)が相続した宅地に小規模宅地特例を適用して相続税の総額を減少させており、単に遺産分割協議の結果に従って更正の請求を行う場合に比べて還付額が増加していること
・相続人に対して実施された税務調査の結果も踏まえ、仮申告時の各相続財産の評価を改めるべきかについて検討を行ったうえで、各相続財産の価格を決定していること
・更正の請求は全て認められ、現実に2,695万4,800円が還付されていること
・仮申告の相続税申告書の作成について税理士は既に報酬の支払いを受けているが、更正の請求書の内容は、仮申告の申告書と多くの部分で重複しており、更正の請求の段階から初めて委任された場合に比べればその作業内容は容易であったといえること

 そのうえで裁判所は、本件の更正の請求に関する相当な報酬は105万円であると認定し、相当な報酬は約540万円であると主張した税理士及び21万円であると主張した相続人の請求をいずれも棄却する判決を下した(平成28年11月14日判決・敗訴した税理士側は控訴を提起している)。

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