会計ニュース2019年04月01日 ASR取引の会計処理の開発を断念(2019年4月1日号・№781) ASBJ、将来的な検討課題に
ASR取引の会計処理の開発を断念
ASBJ、将来的な検討課題に
企業会計基準委員会(ASBJ)は2014年12月に基準諮問会議の提言を受け、「一括取得型による自社株式取得取引」(ASR(Accelerated Share Repurchase)取引)の会計処理の検討を開始したが、このほど検討テーマから除外することを決めた。
ASR取引とは、日本では取引事例はないものの、米国では企業の主要な自社株買いの手法の1つとされている取引のこと。ASR取引によれば、投資銀行等を介してインサイダー取引に抵触することなく、株価の変動に合わせて自社株を裁量的に買うことができる。大量に買うことも可能でこの場合には株価上昇などにもつながりやすく株主にとってもメリットがある。このため、日本企業の潜在ニーズはあるが、資本取引となるのか、損益取引となるのか、会計処理の取扱いが不明確なため、企業会計基準委員会が会計処理の検討を行っていたものだ。
日本でASR取引が導入された場合、企業は自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)で自己株式を取得することになるが、当該株式は証券会社が市場から貸株として借り入れたものであり、証券会社との間で株価の推移に合わせて調整が行われることになる。その後、平均株価が上昇すれば株式で、逆に下落した場合には現金決済をすることになる。
会計処理は、これらの取引を個別取引として認識するのか、あるいは一連の取引とみるかで大きく異なってくるが、前者の取引ごとに会計処理を認識する方法では、取引開始後の平均株価がToSTNeT-3の取得価格よりも低い場合には現金決済契約の評価差額について損益が計上される一方で、平均株価が取得価格よりも高い場合には新株予約権について損益が計上されないため、平均株価が上昇した場合と下落した場合で損益計上が不整合となるといった問題点が指摘されていた。一方、一連の取引を1つの取引として会計処理を行う方法についても、現金決済契約により将来のキャッシュ・フローが変わるため、毎期の評価差額の変動を損益として計上しないと、現金決済契約の実態が反映されない可能性があるといった問題点などが指摘されており、いずれの方法で会計処理の検討を進めた方がよいのか結論がでていなかった。
加えて、IFRS等との整合性や会社法上の課題などもあり、同委員会ではASR取引の会計処理を確定することは現時点で困難であると判断。会計処理の検討を断念し、将来的な課題とすることとしている。
ASBJ、将来的な検討課題に
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ASR取引とは、日本では取引事例はないものの、米国では企業の主要な自社株買いの手法の1つとされている取引のこと。ASR取引によれば、投資銀行等を介してインサイダー取引に抵触することなく、株価の変動に合わせて自社株を裁量的に買うことができる。大量に買うことも可能でこの場合には株価上昇などにもつながりやすく株主にとってもメリットがある。このため、日本企業の潜在ニーズはあるが、資本取引となるのか、損益取引となるのか、会計処理の取扱いが不明確なため、企業会計基準委員会が会計処理の検討を行っていたものだ。
日本でASR取引が導入された場合、企業は自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)で自己株式を取得することになるが、当該株式は証券会社が市場から貸株として借り入れたものであり、証券会社との間で株価の推移に合わせて調整が行われることになる。その後、平均株価が上昇すれば株式で、逆に下落した場合には現金決済をすることになる。
会計処理は、これらの取引を個別取引として認識するのか、あるいは一連の取引とみるかで大きく異なってくるが、前者の取引ごとに会計処理を認識する方法では、取引開始後の平均株価がToSTNeT-3の取得価格よりも低い場合には現金決済契約の評価差額について損益が計上される一方で、平均株価が取得価格よりも高い場合には新株予約権について損益が計上されないため、平均株価が上昇した場合と下落した場合で損益計上が不整合となるといった問題点が指摘されていた。一方、一連の取引を1つの取引として会計処理を行う方法についても、現金決済契約により将来のキャッシュ・フローが変わるため、毎期の評価差額の変動を損益として計上しないと、現金決済契約の実態が反映されない可能性があるといった問題点などが指摘されており、いずれの方法で会計処理の検討を進めた方がよいのか結論がでていなかった。
加えて、IFRS等との整合性や会社法上の課題などもあり、同委員会ではASR取引の会計処理を確定することは現時点で困難であると判断。会計処理の検討を断念し、将来的な課題とすることとしている。
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