税務ニュース2022年09月30日 採用時等に臨時付与する株式報酬が出現(2022年10月3日号・№948) 日本の法人税法上は損金算入困難な場合も
日本企業が海外子会社の幹部へのインセンティブ報酬として株式報酬を付与するケースが増えている。その背景には、グローバルな株式報酬の管理・運用を支援するサービスプロバイダーが日本にも本格的に進出してきたことや、海外現地での人材獲得競争がある。
法人税法上、海外子会社の幹部に付与した譲渡制限付株式報酬は、「役員等が非居住者である場合には、その役員等が居住者であるとしたときに給与等課税額が生ずることが確定した日において、役務提供を受けたものとして、その役務提供に係る費用の額が損金算入される」ことになる(法法54条①、法令第111条の2③ 経産省「攻めの経営」を促す役員報酬Q31)。ただ、欧米企業では四半期や月次で細かく権利確定する株式報酬が普及しているほか(本誌943号参照)、幹部採用・登用時に株式報酬を臨時的に付与する(New hire grant, Promotion grant)ケースもある。
日本では、例えば譲渡制限付株式報酬を臨時的に付与した場合、税務上の取扱いが問題になる。事前確定届出給与として損金算入するには、その届出期限は「事前確定届出給与を定めた株主総会等の決議をした日」または「職務の執行を開始する日」のいずれか早い方から1か月を経過する日もしくは「会計期間開始日から4か月を経過する日」のうちいずれか早い日が原則とされており(法令69条④一)、New hire grantがこの要件を満たすのは困難だろう。一方、「臨時改定事由」があった場合には、「当該事由が生じた日から1月を経過する日」までに届出を行えばよいことになっている(同④二、同⑤一)。ここでいう臨時改定事由は「法人税法施行令第69条第1項第1号ロに規定する役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情」とされていることから(事前確定届出給与に関する変更届出書の記載要領等の「2」①参照)、「Promotion grant」については、損金算入される余地はあろう。
日本ではNew hire grantや Promotion grantの支給事例はまだ少なく、税務上のプラクティスも確立されているとは言えないが、企業からは、“お手盛り防止”を目的とした形式的な役員給与税制を見直す時期に来ているとの声も挙がっている。
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